異世界憑依生活記〜治癒士と厄ネタを添えて〜   作:章介

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第二十八話 依頼完遂、だけど頭痛がいたい

 

 

 

 

 

 

 あれから大急ぎでラリマーに帰還した俺たちは、そのまま治療院へと叩き込まれた。現場検証やらはセレストゲイルとラリマー子爵家が対応するからゆっくり休めとのこと。

 

 懸念してた北の迷宮からの帰還組も無事戻ってこれたそうだ。治療院では別室だったから直接見ていないが、どうやら想定以上に衰弱しているらしい。扉や壁越しだったが、すすり泣く声が何度も聞こえてきた。

 

 

「・・・・・・俺も加勢した方がよくないですかね?」

「怪我人は大人しく寝ててください。医者の不養生なんて笑えませんので」

 

 

 治療院は現在、多数のパーティから引き抜いた治癒士がフル稼働で働いてる。本来なら所属するパーティを離れることはほぼあり得ないが、事態が事態なのでラリマー子爵家からの緊急依頼で召集したとのこと。

 

 この状況で呑気に寝てるのも心苦しいが、それならとっとと傷を癒せと言われれば返す言葉もない。お言葉に甘えて治療に専念しよう。

 

 

「───失礼します。お加減はどうですかカーツさん?」

「お、見舞いに来てくれたのかクイン。ありがとな。君の方はもう全快みたいだな」

「ええ、カーツさんに面倒をみていただいたお陰で回復も早くなりまして。カーツさんも順調そうで何よりです」

 

 

 見舞いに来てくれたクインも魔法を酷使してて心配だったが、どうやら杞憂だったらしい。定期的に【譲渡魔法(ディバイド)】で治療した成果がぼちぼち出てきたかな?俺より先に退院してからは、定期的に見舞いに来てくれている。

 

 何にせよ健康的になるのは大変結構なことだ。そのままクインと世間話を幾つか交わした後、見舞いついでに来客のアポイントを頼まれたと情報共有された。

 

 

「───どうしましょうか?カーツさんの都合さえ良ければ、今日の夕方にでもいらっしゃるそうですが」

「俺としてはこの通り暇だし、いつでもどうぞと返事してくれると助かる。今後の予定とか色々聞いておきたいし」

「分かりました、ではそのようにお伝えします。くれぐれも無理はなさらないでくださいね」

「この状況で無理なんかしたら物理的に寝かしつけられるよ、心配すんな」

 

 

 そう言い残してクインは洗濯物を持って帰っていった。本当に痒いところに手が届く仲間でありがたい限りだ。

 

 用意してくれた部屋着に着替えて来客を待っていると、ちょうど予告通りの時間に治癒士さんから連絡が入った。事前にアポがあったとはいえ、お貴族さまの登場で治療院が賑やかになった。

 

 

「やあカーツさん、今回は大変だったらしいね」

「わざわざお越しくださりありがとうございます、トマスさま」

「いやいや、僕達はこれから迷宮に挑む仲間じゃないか。このくらい当然だよ」

 

 

 任務前に会った時よりトマスさまはくたびれた様子だった。どうやら諸々の処理とこれからの準備で板挟みにあったらしい。

 

 まあラリマー子爵からすれば、どうやってセレストゲイルのアデルを呼び寄せたんだって話だしな。しかも任務先に現れたのは【献言する蛇(サマエル)】の中でも幹部クラスときた。

 

 

「いやはや、念の為情報網に使ってるブリキ製の鳥を付けておいて正解だったよ。まさか『大蛇衆』なんて大物が出てくるとはね」

「全くもって同感です。もしセレストゲイルが出てこなきゃ、間違いなく俺たちは今頃此処には居ませんでしたよ」

「君の防人さんから話は聞いたよ。とんでもないのに目を付けられたんだって?」

 

 

 おい、『俺の』防人って何だよ。とんでもない誤解を生む表現はやめろコラ。あと気が滅入る現実をわざわざ突きつけてくるな、泣きたくなる。

 

 

「・・・・・・洒落になってないです本当に。最後に不穏なこと言って消えやがるし、今から頭が痛いですよ」

「そうだよねぇ・・・・・・迷宮で発生してる呪詛絡みのトラブルから察するに、その『バシュム』とかいう幹部が北部に居る可能性は高いだろうね。因縁の対決再びってやつだ」

「やっぱり俺たちだけ残るってナシですかね・・・・・・」

「うん、絶対ナシだね。予想通りパイロガーネット公爵家から名指しでご指名されてるよ、君」

 

 

 やっぱりかこん畜生・・・・・・悪い予想ばっかり当たりやがって。一難去ってまた一難ってレベルじゃねぇよ。

 

 

「あれ、そういえば何で君ずっと入院してるんだっけ?怪我なら魔法で治せば良いんじゃないの??」

「・・・・・・自分の魔力で負った傷は光属性魔法でも治せないんですよ。特に怪我してる本人が使う訳にもいかないんで、こうして時間が解決してくれるのを待ってるんですよ」

「ああそういうこと。まああの状況じゃ無理しない訳にいかないもんね。勝利の代償としちゃ軽いかもだけど、中々上手くいかないものだ」

 

 

 まったくだ。魔法でパパッと治せたら、治療院の忙しさも少しは軽減出来たかもしれないってのに。

 

 

「はぁ・・・・・・何か良いニュースとか無いんですかね?」

「いや、一つだけあるよ。君達がお世話になったパーティ───【明星】だったかな?彼らも北の迷宮で合流してくれることになったよ。任務先から直行するってさ」

 

 

 それは・・・・・・今日この人から初めて良い話が聞けたな。信用出来るパーティってのもあるが、世話になった借りを返したいと思ってた。

 

 ラリマーに帰還した冒険者も全員がリタイアって訳じゃない。仲間を安全な場所へ送り届けに来ただけで、もう一度迷宮に挑むって人も少なくないらしい。当初の予定より戦力は多くなるかもしれない。

 

 

「しかし・・・・・・意外だったな。あの団長さんは兎も角、『ナンバーズ』の人間まで君たちのことを気にかけてたとは」

「・・・・・・?それって───」

「失礼します。トマスさま、そろそろ次のご予定が近づいております。そろそろお席を立つご用意を」

「ああ、もうそんな時間か。それじゃあカーツくん、お大事に・・・・・・っと言い忘れてた!僕達の出発は二週間後の予定だから、それまでに完治させといてくれよ!」

 

 

 ばったばたしながらトマスさまが帰っていった・・・・・・あの人言いたいことだけ言って行きやがったな。

 

 

 

「───『ナンバーズ』か。そういえばイーグレットさんよ苗字は確か『トゥエルブ』だったな。何かあるんだろうか・・・・・・?」

 

 

 気にはなるが答えは返ってこない。取り敢えず傷の治療に専念しよう。あの様子だと、治ってなくても問答無用で連れてかれそうだし。それは流石に嫌過ぎるからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

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