異世界憑依生活記〜治癒士と厄ネタを添えて〜   作:章介

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第三十二話 何とか合流出来ました

 

 

 

 

 

 

「───いやはや見事な働きだった。僕の先見の明は正しかった訳だ。それに君のお陰で他の治癒士がラリマーの仲間への治療に専念出来た。為政者の一員として感謝するよ」

「そりゃどーも。いきなりこんなんじゃ先行き不安ですけどね」

 

 

 治療を無事終わらせ、()()()()()一息吐く。何故戻ってきたかって?有り体に言えば逃げてきただけだ。

 

 ───貧すれば鈍するとはよく言ったもんだ。あの場所は何もかもが最低限を大きく下回っている。感謝の言葉を口にする奴も居たが、それより次の要求を矢継ぎ早にする方が圧倒的多数だった。

 

 こっちの物資だって有限だ。いちいち相手にしてたらキリがないし、支部長達に任せて応援組はこうして退避したって訳だ。

 

 

「全くもって頭が痛い話だ。生まれた土地の外に出稼ぎに来るってことは、元々地元やそこを治める領主と折り合いが良くない連中が少なくない。その状況からこの仕打ちでは、ね」

「既に存在した確執や偏見がより悪化しそうですね。貴族社会、ひいてはこの状況の大元である【浄血】への怒りを煽って信者を増やす・・・・・・酷い自作自演だ」

 

 

 この調子じゃ、今日の治療に関しても恩義を感じてくれてるとは思えない。やっぱりラリマー以外の冒険者は戦力に数えるべきじゃないな。想定してたとはいえ溜息の一つも吐きたくなる。

 

 今俺たちが居るのは収容所から少し離れた平野だ。元々野宿の予定だったから特に文句はないけど、こうして手伝いを免除されると少し申し訳なく感じるな。

 

 

「───表情で何考えてるか何となく分かるけど、君はもう休んどきなよ。さっきの変わった魔法の使い方にはまだ慣れてないんだろう?」

「トマス殿のおっしゃる通りです。それに同行している冒険者さん達も特別扱いなどと思ってませんよ。寧ろ上手くトラブルを回避したと、カーツさんを評価していると思いますよ?」

 

 

 そうかなぁ?まあ他の治癒士も休息に専念してるみたいだから悪目立ちしないか。一緒に仕事したことないからイマイチ勝手が分からん。偶に治療院での治療費をチョロまかそうとする連中だし。

 

 それはさておき、携帯食で晩飯を済ませたしあとは横になるだけだ。とはいえ先遣組を取り巻く状況をこの目で見た訳だし、今後のことについて改めて聞いてみた。

 

 

「今後の予定?大枠は変わらないよ。先遣組は元々、同郷以外はお邪魔虫としか考えてないし。明日の早朝には【明星】も到着する筈なので、それから手分けして迷宮街へ入るとしよう」

「たしか皆さんを隠れ蓑に我々で攻略するとのことでしたね。もし管理役の貴族から招聘依頼が来た場合はどうしますか?」

「いや、向こうの反応を待つのは面白くないし此方から押しかけましょう。それと申し訳ないが防人さまにはご臨席いただきたく。我々の切り札はカーツさんですから、貴方が前に出ればより隠すのが楽になるでしょう」

 

 

 対呪詛については俺ありきの作戦だもんな。万一狙い撃ちでの妨害や拉致とかされたら前提が破綻する。トマスさまがしきりに隠そうとするのは当然だろう。

 

 威力が弱まってたとしても、呪いとしての強度まで落ちてると考えるのは楽観的過ぎるだろう。さっきは時間経過の影響か俺でも治療出来たが、喰らった直後じゃきっと解呪にも相応の時間が要る。迷宮の深部でそんなことしてる暇はない。

 

 だが俺の【不全魔法(マルファンクション)】なら呪詛を一時停止させることが出来る。多少呪いを浴びたとしても、迷宮を踏破してからゆっくり治療に専念出来る。【明星】のトゥエルブさんと合流出来れば確実に治せる筈だ。

 

 

「まあ最悪カーツさんについて共有されてたとしても、替え玉を用意すれば問題ないか。射影機は高級品だし、君を軽々に撮らせたつもりもないし」

「射影機・・・・・・そんなのもあるのか。いや、『撮らせたつもりはない』って、やっぱり監視してたのか」

 

 

 ニコッとアルカイックスマイルしてるけど普通に怖いんですが・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───なるほど、それで街の中じゃなくこんな辺鄙なトコへ陣取ってた訳か。貴族の坊ちゃんがご苦労なこって」

「団長・・・・・・この方は時期ラリマー家当主を争う御方ですよ。無礼は慎むべきかと」

 

 

 そういう訳で適当に野宿を済ませ、片付けの最中に【明星】と合流出来た。数ヶ月そこそこ振りだけど久しぶりって感じがするな。それまでのアレコレが濃かったからかな。

 

 

「お久しぶりですエッジ団長。何時ぞやは推薦状をいただきありがとうございました」

「おう、相変わらずカタい奴だな。冒険者よりそっちの防人さんの付き人やった方がサマになるんじゃねぇか?」

「エッジ団長、たった数ヶ月で三等級に昇ったのですから、そんな皮肉を言うものではありませんよ・・・・・・お久しぶりですね。見違えましたよ」

 

 

 お二人は変わらずお元気そうで。しかし世話になったトゥエルブさんに誉められるのは満更でもない。

 

 しかしこの人たちも大変だなぁ、評判が良いのも善し悪しだ。俺たちと会った時も指名依頼に向かう途中だった。それだけ信頼されてるってことだろうけど、あっちこっち引っ張られてちゃんと休んでるんだろうか?

 

 

「お疲れのところすまないけど、早速僕と街の管理役のところへ来てもらうよ?カーツさんはウォルフくんと先んじて迷宮に向かってほしい」

「了解です。戦闘はあくまで最低限、諸先輩方から学ばせてもらう形で偵察に専念します」

 

 

 クインが居ない以上無茶は厳禁だ。ウォルフは強いけど呪詛対策が()()()()。あの呪詛の沼すら平気で済ませる特殊能力は、バレたら絶対面倒になる。

 

 支部長から貰ったマップの写し、それの正確さを擦り合わせること。それから呪詛の特徴を観察すること。この2点が今日の目標だ。

 

 収容所で治療した時には呪詛が消えてしまったからな。時間経過で弱まるのか、それとも実は解呪が不完全で、特定条件において再発するのか。その辺はきちんと把握しておきたい。

 

 

「・・・・・・はぁ。貴族、それも派閥争いが絡む面倒ごとなんざ御免だが仕方ねぇ。放っておいたら俺たちまで火の粉を被る」

「団長、もっと他に言い方が───申し訳ありませんトマスさま」

「いやいや、飛ぶ鳥を落とす勢いの【明星】相手じゃ何も言えないよ。それにこの程度で意地の悪いことするほど狭量じゃないつもりだしね」

 

 

 ・・・・・・そんな微妙に胃が痛くなる問答を背に、再会したばかりだけど別行動となった。まあ迷宮ではラリマーの先遣組と合流する訳だし、大船に乗ったつもりで行こう。

 

 

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