異世界憑依生活記〜治癒士と厄ネタを添えて〜   作:章介

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第三十五話 後悔先に立たず

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・何でこんなとこに居るんだお前?迷宮探索なんて滅多にやらなかったろ」

「う、うるせぇっ!!全部何もかもお前の所為だ!」

「いや、どう考えてもゴミみたいな扱いしてたお前の自業自得だろ。よく知らないけどさ」

「・・・・・・積もる話は後にしてもらえませんか?場所と状況を考えてください」

 

 

 あ、やべ。マリエッタさんが滅茶苦茶冷たい目で見てる。確かに悠長に喋ってる場合じゃないよな。ピーチクパーチクうるさい馬鹿の相手は後だ。

 

 取り敢えず負傷してる連中に改めて【快復魔法(ヒーリング)】を掛けておく。救援くらいはするけど、わざわざ入り口まで護送する義理はないからな。自分の足で帰れる程度には回復させておこう。

 

 

「ほら、どうしたウォルフ?師である私に早く成長した姿を見せてくれ。悠長にしていると狩り尽くしてしまうぞ?」

「そう慌てなさんな、今見せてやっからよっ!!」

 

 

 念の為前衛の方を向くが、まあ気持ち良く斬り伏せていくな。あれは心配するだけ無駄だな。一応備えておくけどさ。

 

 偶に流れ弾が飛んでくるけど、マリエッタさんがシールドみたいな魔法で全部叩き落としてしまう。やっぱりこの人もかなり強いな。安心感というか安定感が凄い。

 

 

「な、なんだありゃ・・・・・・バケモンみてぇに強ぇ・・・・・・」

「呆けてる場合かよ、加勢する気がねぇならせめて情報くらい吐け」

「───っ、奴隷野郎如きが俺に指図すんじゃねぇ!!」

「ああはいはい、時間の無駄だから他の奴に聞くわ。お前らどういう経緯でこうなってんだ?」

 

 

 ・・・・・・コイツだけ治療から外せば良かったな。元気になった途端うるさくて仕方ない。恩知らずにも殴りかかってきたから遠慮なく蹴り倒してやる。

 

 【吸魔魔法《ドレイン》】のお陰で、魔物を倒す際の【マナ】吸収の機会がかなり増えた。お陰で迷宮探索一日目ながら、結構階梯(レベル)も上がった気がする。

 

 

「えっと・・・・・・俺は借金のカタに迷宮を潜らされてる。パーティは組んでなかったからあっという間に路銀が尽きちまって」

「僕は仲間の治療費が原因で・・・・・・治癒士が怪我しちゃったんだけど、治療院の施術が金貨20枚なんて法外も良いとこだ」

「ひっどい話だなぁ・・・・・・で、コイツは?仲間は見当たらないけど」

「いや、ソイツも独りで来てた筈だ。詳しくは知らないが、確か憲兵に引っ立てられてたな」

 

 

 えぇ・・・・・・何やってんだ本当に。パーティに寄生してたアルマは兎も角として、他の連中まで居なくなったのか。ウォルフの予想が大当たりしてたっぽいな。

 

 

「しかし、幾らなんでもやり過ぎじゃないのか?アンタ達だって王都のお触れがあって来たんだろ。自主的に来たなら兎も角、ギルドの命令で来てる奴まで音沙汰無しじゃ怪しまれるだろ」

「その辺はしっかりしてるさ。この前地元のギルドから手紙が来たけど、送った覚えのない発掘品や派遣料が届いたってな。まあ俺らから毟り取ったモンのごく一部だろうが」

 

 

 ・・・・・・本当に貴族ってそういうリスク管理はちゃんとしてるよな。ギルドから指名依頼で来た連中は独断で引き上げたり出来ないし、窮状を伝えたくても情報統制されてる所為でそれも不可。

 

 自主的に来た奴らも借金で嵌めて使い潰し、か。ラリマー関係者も支部長が居なきゃ相当危険だったんじゃないか?寧ろ無事だったお陰で、迷宮探索の続行をダシに応援要請が叶った感じだろうか。

 

 あの人なら立場的にいつでも引き上げ指示が出せる。そうなると情報が漏れかねないし、何らかの取引をした可能性もあるな。

 

 

「───戦闘終了、お疲れさまでした。カーツさんの方も、治療は無事終わっていますね」

「あれ、そういや治療費ってどうするんすか?勝手に治療しちまったけど貰った方が良いだろ」

 

 

 あ、忘れてた。押し売りみたいで嫌だが他の冒険者と不公平になるのも不味いか。改めて治療費について説明してみたところ、何か寧ろ喜ばれた。

 

 案の定というか、苦労して集めた発掘品も安いってレベルじゃなく買い叩かれてるらしい。銀貨5枚分で治療が受けられるなら是非って快諾された・・・・・・一人を除いて。

 

 

「・・・・・・お前良い加減にしろよハンス。次からは見殺しにしてやろうか?」

「奴隷の分際で俺から金を取ろうってのか。ふざけてるのはお前だろうが!!」

「はぁ・・・・・・正規の手続きも踏んでねぇ、地元でしか通用しねぇ決まりに固執するなんざみっともないっすね。こうはなりたくねぇな」

 

 

 ウォルフだけでなく、その場の全員が呆れてるよ。一度染み付いた先入観が強固だってのは分かるが、時と場合くらい考えてほしい。だから仲間からも三行半突きつけられてんだろうが。

 

 とはいえこんなのに長々と付き合ってはいられない。もう面倒くさいし、とっとと終わらせるか。

 

 

「・・・・・・分かった。そこまで言うなら発掘品は要らない。あと俺がこの迷宮に居る間は治療してやっても良い」

「───っ!ははっ、ようやく理解したか!!」

「おいおい、良いんすかそんなこと言って───」

「ただし、俺が以前使ってた杖。アレと引き換えだ。あれも迷宮産だったろ?俺も思い入れがあるし、アレと引き換えなら引き受けてやる」

 

 

 あの時は意識がこの世界に来たばっかりだったからな。コイツらがカーツ少年に碌な教養付けさせなかった所為で、迷宮って呼び方もよく知らなかったんだよな。数ヶ月前だが懐かしく感じるよ。

 

 あの杖はそれなりの品だが、此処で掘れる逸品ほど上等って訳じゃない。だけどカーツ少年の手にはよく馴染んでたし、治療のフリーパスと引き換えなら破格の条件だろう。

 

 いやまて、コイツのことだ。あの杖もとっくに換金してるだろ。やっぱり無しで───。

 

 

「───おら、これで良いんだろ」

「・・・・・・・・・・・・え、何でまだ持ってんだよ?普通に気色悪いんだけど」

 

 

 差し出されたのは、記憶にある通りの長杖だった。警棒みたいに折り畳み可能で持ち運びし易く、思い切り殴り付けても平気な頑丈さを併せ持ってる。

 

 いや・・・・・・新しい治癒士を雇ってるなら兎も角、素寒貧になっても持ってるとか、よく考えると普通に引くんだが。

 

 

「俺が俺の所有物を持ってて何か文句あるかよ!?家出したと思ったら何時迄も帰ってきやがねぇしよ・・・・・・その間にアルマも他の奴も居なくなっちまうし」

「いや、何をどう考えればあの環境に戻ってくると?パーティ以前に冒険者登録すら───」

「ああもう、うるっせぇな!取り敢えずソレ渡したからな!!俺が呼べばいつでも治療しに来いよ!!」

 

 

 人の話ぶった斬ってさっさと消えやがった・・・・・・。最初から最後まで不愉快しか生んでいかなかったなアイツ。

 

 

「・・・・・・どっと疲れた」

「ご愁傷様、しかし随分執着されたっすねぇ。何がアイツを突き動かすんだか」

「ああいう手合いは偶に居る。君を連れ戻せばかつての立場を取り戻せると妄想しているのか・・・・・・あるいは、自分が得ていた立場が君ありきだったという事実に耐えられないのか。だから仕切りにカーツ君を所有物、即ち自分の力の一つだと喧伝するのさ」

 

 

 ああ、あのねちっこさはそういう意味もあるのか。治癒士、それも教会とかの面倒な紐が付いてない奴が前提のパーティだったからな。

 

 そこからアップデートする訳でなく、現状維持に甘んじたが結果がアレか。アルマに悪い遊びを教わってから最低限の鍛錬しかしなくなったからな。

 

 それはそれとして普通にキモい。鳥肌と震えが止まらねぇ。

 

 

「・・・・・・この迷宮を踏破する理由が一つ増えたな。最悪の動機付けだよ糞ったれ」

「まあ、何というか頑張れ。今日の晩飯は奢るっすよ。流石に見てて哀れだし」

「哀れ言うなこの野郎・・・・・・はぁ」

 

 

 取り敢えず、クインが居合わせなくて良かった。いや本当に・・・・・・。

 

 

 

 

 

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