異世界憑依生活記〜治癒士と厄ネタを添えて〜   作:章介

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第四十一話 受胎迷宮攻略戦③

 

 

 

 

 

 

 四方八方からウジャウジャ湧いてくる魔物の群れ。直前の階層に居なかった所為で油断したな。質は大したことなさそうだが、呪詛付きなのが面倒だ。

 

 "バシュム"は黒いアメーバをビーズクッションみたいに尻に敷いて観戦の構えだ。鬱陶しい薄ら笑いは変わらねぇが、ちょっかい掛けてこないなら後回しだ。

 

 

「クイン、魔法で援護頼む!出来るだけ広範囲を、呪詛対策は俺に任せろ!!」

「言われなくても、頼りにしてますよカーツさん───【大気よ、我に従え】!!」

「へえぇ、【真言】使えるんだぁ・・・・・・それに消耗してる風でもないねぇ。やっぱり直ってるのかなぁ?」

 

 

 なんか聞こえた気もするが無視だ無視。こっちは今、両手に持った剣杖をオタ芸みたい振り回すので忙しい。

 

 貯めに貯めた魔力は、此処で使い切るつもりで大盤振る舞いだ。【不全魔法(マルファンクション)】で事前に止めておけば、魔法で蹴散らしても呪詛は伝播しない。迷宮探索で何度も検証したから間違いない。

 

 ウォルフ、クイン、支部長が魔物の圧力を食い止め、俺が魔法を撃つと同時に反撃する。今のところ均衡は保っちゃいるが───。

 

 

「───足りないねぇ。カーツくんの魔法・・・・・・【不全魔法(マルファンクション)】だっけ?とっても素敵な魔法だけどぉ、効果範囲はイマイチだよねぇ」

「・・・・・・っ、言われなくても知ってるよ!」

 

 

 そう、【不全魔法(マルファンクション)】は一発で届く距離があんまり広くない。下手に薄く広げて阻害し切れない方がよっぽど不味いからな。

 

 だがその所為で、クインや支部長の殲滅力を活かし切れてない。間違って魔法が効いてない奴を倒したら、マルチタスクが増え過ぎて俺のキャパが保たなくなる。

 

 効果を絞る味方向けの【不全魔法(マルファンクション)】は結構集中力を持っていかれる。しかも呪詛が入る度に掛け直しが要る。初っ端から複数人に施す事態は出来れば避けたいところだ。

 

 

「マリエッタさん、どうですか?」

「・・・・・・非常に高度な迷彩によって魔力を隠されています。ですが、先ほどの話が本当なら相当の魔力を蓄えている筈です。痕跡を追うのに、あと少しだけお待ちください」

 

 

 やはり鍵はマリエッタさんだな。此処はまだ無理をするタイミングじゃない、もう暫く様子見と行きたいが───向こうがそれに付き合う義理も無いよな。

 

 

「あれれぇ、もう膠着させちゃうのぉ?なら"劇薬"を投入してみようか?おーいみんなぁ、これ被っちゃってぇ!」

「───は?おいおい、まじかよ・・・・・・」

 

 

 ウォルフが思わず溢した言葉に全面同意だ。懐から試験管を取り出したかと思えば、そいつを魔物の群れに放り投げる。その瞬間、怪物達が()()した。

 

 さっきまでゴブリンみたいなヒョロガリだった奴が、ゴリラも真っ青なガチムチに進化しやがった。他の奴も大体一〜二回りほどデカくなってる。お前そんなことも出来んの!?

 

 

「・・・・・・"バシュム"は呪詛を吐く大蛇と聞いていたが」

「いやいやぁ、呪詛だけで【凡人(ヒューム)】が100年も200年も生きたりしないよぉ?ちゃんと伝えておいてよ毎回言うのも億劫なんだからぁ・・・・・・僕の『天職』は【薬師】だよぉ」

 

 

 確か『天職』は【細工師】みたいな、特殊な魔力操作で独自の成果を出せる先天的素養だっけか?鑑定系の魔導具で調べられるのは属性魔法の適正と同じだった筈。

 

 いや待て、【呪詛師】だって『天職』だろ!?呪いは闇属性魔法を修めれば使えるらしいが、物に呪いを込めたりとかは魔法だけじゃ無理だ。

 

 ・・・・・・まさか『天職』二つ持ってんのか?そんなの聞いたことねぇぞ!?魔物を使役出来る、第三の『天職』があるってオチだけは勘弁してくれよ!

 

 

「ほらほらぁ、考えごとしてていーの?ちゃんと守ってあげなきゃぁ」

「───うおっと!?流石に抜けてくるのが出てくるか」

 

 

 ただでさえ数が多いのに、質が一律で上がったんだ。三人の防衛網にも綻びが出てくる。とはいえ抜けたといっても満身創痍だ。長杖に【魔技】を載せてぶっ叩けば俺でも倒せる。

 

 だが消耗戦に持ち込まれたらこっちは圧倒的に不利だ。まだ【魔核(コア)】を見つけてない段階でこっちの戦力を削られる訳にはいかない。

 

 

「全員退避してくれ!───【魔除魔法(アヴォイダンス)】」

「そいつは───了解っす!」

 

 

 よし、ウォルフ達もすぐ範囲内まで下がってくれたな。コイツは呪詛を"予防"する魔法を試行錯誤してた時に生まれた副産物だ。

 

 残念ながら予防魔法は無理だったが、偶然"呪詛を帯びた魔物への忌避剤"みたいな魔法は出来上がった。念の為練習しておいて正解だった。

 

 

「あれれぇ?魔物が虫除けスプレー喰らった害虫みたいに下がっちゃったぁ。おっかしいなぁ、さっきまでの魔法をみるにキミの魔法って階梯(レベル)4が精々でしょ?今のこの子たちをどうこう出来る筈ないんだけどなぁ」

「専門家なんだろ?当ててみろよ」

「・・・・・・結界、はないよねぇ。そんな便利な特技があるならとっくに使ってるでしょ。光属性で攻撃力がある魔法なんて聞いたことないし、避けるだけで見失ったり苦しんだりもしてない。となると、これはどうかなぁ?」

 

 

 近くに居たゴリラに指示して瓦礫をぶん投げてきた。流石に対応が早いな、この魔法の弱点を早速見抜いてきやがる。

 

 この魔法はあくまで虫除けならぬ魔除けに過ぎない。呪詛付きの魔物は自分から近寄れないが、投擲なんかの遠距離攻撃なら特に支障はない。とはいえこっちにはクインが居るから大した問題じゃねぇが。

 

 大事なのはあの蛇の思考リソースを奪うことだ。実は俺自身もこの魔法の仕組みはよく分かってないからな。思い付きのアイデアだったが、プライドを刺激されたのか思考の沼にどっぷり浸かってやがる。

 

 

「・・・・・・やっぱり属性魔法じゃないよねぇ。でもそうなると・・・・・・理屈としては可能だけど、本当に出来るものなの───って、あ・・・・・・」

「───随分と長い考えごとでしたのね?お陰で()()()()()()よ。ふっ───!!」

 

 

 ついさっき頂戴した嘲笑を、そっくりそのまま返してやる。ようやく突き止めたマリエッタさんが、ずっとチャージしてた魔力を拳に纏って地面を砕く。飛び散った破片に紛れて、ブリキの小鳥が空を飛んでいった。

 

 一瞬だけ時が止まったように静止し、すぐさま足元が崩落していく。クインの風に守られながら落下する先は、さっきまで居た空間とそっくりのコロッセオだ。

 

 

「───随分と手の込んだ嫌がらせっすね。さも此処が最深部ですよって顔しときながら、まだ下に階層があったなんてよ」

「・・・・・・誰もあそこが最深部なんて言ってないよぉ?けどまぁ、よく見つけれたねぇ。褒めてあげるよ」

「ええ、想像以上に手を煩わされました。しっかり熨斗つけてお返ししますよ」

 

 

 本当によく見つけてくれたよマリエッタさん。俺みたいに、先入観にやられてあの層だけ調べてたら一生見つからなかった。

 

 どうやら迷宮に楽園を作るなんて話も、丸っ切り吹かしって訳じゃないらしいな。最深部と全く同じ作りの階層を上に用意するなんて前代未聞だ。人工的に増やした階層は思ってた以上に融通が効くみたいだな。

 

 ただ一点、さっきまでの階層とは決定的に違うものがある。上の階で"バシュム"が居たコロッセオの中心───そこに俺たちが破壊しなきゃいけないモノが鎮座してやがる。

 

 

「あれは・・・・・・私も見たことがない大きさの【魔核(コア)】だ。一体どれだけのマナを喰わせたのだ?」

「なぁクイン、【魔核(コア)】ってヤツはあんな風に脈動してるもんなのか?」

「・・・・・・いいえ、本来なら鉱石のように無機物の形をしている筈です。手を加えた、などと可愛らしい所業ではなさそうですね」

 

 

 まるで心臓のように脈動・・・・・・いや、胎動する振動には覚えがある。俺たちが迷宮に通ってすぐの頃に感じたアレだ。

 

 クインの言う鉱石とは似ても似つかない。クソデカい蛹だって言われた方がしっくりくる。中で何が起こってるのか知らないが、碌でもないことだけははっきり伝わってきた。

 

 

 

 

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