異世界憑依生活記〜治癒士と厄ネタを添えて〜   作:章介

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第四十二話 受胎迷宮攻略戦④

 

 

 

 

 

 ───迷宮の【魔核(コア)】を発見した。形状が違っていようが、進展には違いない。兎に角アレを破壊さえすれば俺たちの勝ちだ。

 

 

「しっかし・・・・・・最初は心臓みたいだって思ったけど、改めて観察すると卵にも見えるな」

「お、冴えてるねぇ。ソレねぇ、ウチで一番凄くて、最っっっ凶にイカれてる奴の仕事なんだぁ。迷宮のぉ、魔物を精製する機能を直接【魔核(コア)】にぶち込んだ怪作だよぉ」

「・・・・・・お前よりイカれてんのかよ」

「流石にアレと比べられるのは心外だよ?僕も"コアトル"も"ティアマト"も、アイツが神様みたいに出鱈目じゃなきゃ殺っちゃってるからね??」

 

 

 

 おおう、能面みたいにスンってなりやがった。間延びしてた口調まで死んでるし、そこまで嫌いなのか。しかもコイツみたいな対生物特化な凄腕でも殺せない類いの変態か。

 

 そういえば"コアトル"もそんなこと言ってたのような・・・・・・?目を付けられたら死ぬより酷い目に遭うバケモンが居るって。

 

 

「・・・・・・にしても、何が楽園を産めるだよ。聞こえの良い文句の下でこんなヤバいもん拵えてんだ。やっぱり蛇どもの言うことなんざ聞くもんじゃないっすね」

「だあぁかぁらぁ、コレはあのイカれが捩じ込んだ別件なんだよぉ。『どーせだからついでにやっちゃおう』とか言ってさぁ、本当にいい迷惑だよぉ」

 

 

 心外とばかりに首振ってるけど、関係ねぇ俺たちからすりゃどっちもどっちだからな?貴族サマ使って面倒持ちこんだきたお前らもいい迷惑だ。

 

 

「とはいえ・・・・・・当初の予定ならぶっ壊して終わりだったけど、アレ破っても大丈夫なのか?」

「止めといた方が良いよぉ?【魔核(コア)】は本来なら迷宮作った時点でマナが大分搾られてるけど、コレは僕たちが寧ろ追加で注いじゃったからねぇ・・・・・・余剰したマナが野に放たれたらどうなるから、今更説明は不要だろう?」

 

 

 おいおいマジかよ。壊さなきゃ迷宮は消えないのに、壊したら別の災害が起きちまうのか!本当に手の込んだテロ活動だよな!?

 

 

「ふむ・・・・・・カーツ君、君の魔力吸収魔法を派生させることは可能かね?」

「・・・・・・マナに直接干渉するのは俺の階梯(レベル)じゃ無理です。けど───アテは一個あります」

「よし、ならば我々は君をあの肉塊まで送り届けることに尽力しよう。マリエッタ、ウォルフ!私に続けっ!!」

 

 

 俺を囲むように組んだフォーメーションで前進する。だがすぐに降ってきた"ドス黒い雨"に進路を阻まれる。

 クインが風で散らしてくれたから無事だったが、俺たちの行き先を塞ぐように"蛇"が前に出る。

 

 

「やらせる訳ないでしょぉ?この中から何が這い出てくるかなんて見たくもないけどぉ、【魔核(コア)】は僕の実験に必要だからねぇ」

「そこをどけ、先ほどまで居た魔物の群れも崩落に巻き込まれて全滅した。数の有利はもう取れまい」

「甘い甘い、此処は僕の実験場だよぉ?───【虚像の虜囚よ、偽りの血肉を纏え】」

 

 

 蛇を守ってた"泥"が制御を失い地に落ちる。それと同時に、"影"が立体化してヒトガタを形取った。しかも形が微妙に俺たちに似てる気がするな。

 

 

「魔力の集積装置と迷宮の仕組みを利用すればぁ、この空間に限り影の尖兵は出し放題さぁ。本体よりかなり弱いけど、同じ能力は使えるし肉盾代わりになるだろぉ?」

「ああもう、支部長余計なこと言わないで欲しいっす!」

「いやはや、コレは想定外だな。自分の強さに苦しめられる経験など滅多にないだろう」

 

 

 ズラッと湧いてきたのは、少なく見積もって50以上か。俺の影は雑魚だろうが、支部長レベルをかなり弱くしても俺やウォルフは大苦戦間違いなしだ。

 

 この肉壁を掻き分けて、しかも"バシュム"の妨害まで防ぎながら【魔核(コア)】に到り着く、か。かなりの無茶振りだがやるしかない。

 

 意を決して挑もうとする俺たちだったが、今度は物凄い"冷気"が黒子の前列を氷漬けにしてしまった。次から次へと何だ!?

 

 

「───ふぅ、何とか間に合いましたわね」

「ああ、囮だけじゃ追加報酬は見込めねぇからな」

「・・・・・・よし、間に合ってくれたかエッジ。しかし随分早いな」

 

 

 上から勢いよく降ってきたのは【明星】のエッジ団長、それから遅れてトゥエルブさんがゆっくり落下してきた。確か崩落直前にトマスさまのブリキ鳥を合図として放ってたけど、支部長の言う通り随分到着が早いな。

 

 

「なぁに、上には仲間と()()を置いてきた。坊ちゃんの予想通り露骨な足止めしてきやがったからな。【細工師】ってのは思ったより便利なんだな。今度人材発掘でもしてみるか?」

「そんなことを言って、どうせ上位冒険者の召集をサボりたいだけでしょう?」

 

 

 目の前にワラワラ敵が居るのに他愛ない会話を続ける二人。思い出補正もあるかもだけどやっぱり頼り甲斐があるな。

 

 とはいえこの二人に特別な対呪詛能力があるって聞いた覚えはない。だがその辺も抜かりはないらしい。トゥエルブさんが薄く笑いながら此方へ向き直って情報共有してくれる。

 

 

「───ご安心を、遅れた分用意は十全に整っておりますから。ちょうど今朝、以前呪詛の検体を提供した防人さまから預かりものを頂戴しましたので」

「うえぇ・・・・・・【浄血】まで来てんのぉ?面倒臭いなぁ」

「ああ、お陰で上は任せてこっちに集中出来るってもんだ」

 

 

 トゥエルブさんが右手で何かを掲げる。目を凝らしてみると、あの村で呪詛を閉じ込めたロザリオに似てるな。宝石やら装飾やら色々追加されてるけど。

 

 ロザリオの光が伝播するように俺たちの身体にも纏わりつく。まるで膜のような、コーティングみたいな感じがするな。

 

 

「・・・・・・やっぱり現物まで持ってかれると解析されちゃうよねぇ。まあ半世紀近くもったんだし替え時かぁ、今度新しいのつーくろっと」

「今度なんてねぇよ、テメェは此処で終わらせる。おら、これで3分は呪詛を喰らわねぇ。とっとと仕留めるぞ!!」

 

 

 慌てて部分的な【不全魔法(マルファンクション)】を解いた。するとまあ、そこから先は凄かった。

 

 やっぱり魔力操作の阻害を完全には防げてなかったのか、それとも後顧の憂いのなさ故か。特に支部長とマリエッタさんの動きが別物だ。

 

 斬撃がまるでバウンドするみたいに跳ね回って影を蹂躙し、クインとトゥエルブさんが風と氷で拘束する。

 

 "バシュム"が影を追加し、自分も右手から鉤爪みたいな暗器を取り出して迎撃に加わった。けどエッジ団長が壁面諸共影を斬断しながら、大振りの隙を支部長が埋める所為でまとめて釘付けだ。

 

 

「───あの二人を相手に接近戦やれるって、どんだけ多才なんだよアイツ・・・・・・」

「ですが、流石にもう此方へちょっかいを出す余裕はないものかと。影の相手は私が務めます。貴方達は【魔核(コア)】の対処を」

「了解っす、締めはアンタの仕事だぜカーツ」

 

 

 そこまで言われちゃ嫌でもやる気が湧いてくる。ちょいと遠いが三人で駆け抜けよう。

 

 トゥエルブさんが氷の壁で影の群れを押し除けるように道を作ってくれる。蛇がこっちに魔法を撃とうとするのも見えたが、団長達が食い止めてくれてる。お陰で真っ直ぐ【魔核(コア)】まで辿り着けそうだ。

 

 

「───格好は治癒士なのに属性魔法、それも氷・・・・・・ああ、"ナンバーズ"かぁ。君達も僕らのこと言える立場かなぁ?」

「・・・・・・さぁな、国のやることなんざ知るかよ。ただ、今のイーグレットは俺の部下だ。光属性以外を使わせんのもこういう時だけだ。アイツを脅かすヤツは俺がタダじゃおかねぇ」

「へえぇ、良いご主人サマに巡り会えたもんだぁ。かぁっこいいねぇ」

 

 

 何か言い合ってるけど剣戟やら氷結やらでやく聞こえねぇ。まあ気にするほどでもないだろう、今は目の前に集中だ。

 

 無事フロアの中央に辿り着いたことだし、早速【魔核(コア)】に【検査魔法《インスペクト》】を使用する。大した情報は出ないだろうが、今はほんの少しでもヒントが欲しい。

 

 

「───ふむふむ。何を産み出すかは空欄っぽいな。そこも含めて"お楽しみ"って感じみたいだし、"バシュム"が言う通りイカれてんな」

「それって出来上がったヤツが制御不能な怪物でもお構いなしってことっすよね。よくやるぜ本当に」

「先ほど支部長にアテがあると仰ってましたが、どうするのですか?」

「ああそれな、取り敢えず【吸魔魔法(ドレイン)】の解釈を広げてみる。ただ魔力を吸い上げるだけじゃなく、マナから魔力を分離させられるように」

 

 

 自然現象で可能なんだし、俺の階梯(レベル)が多少不安でも何とかなるだろ。というか何とかする以外の選択肢なんてない。

 

 あと単純に、カーツ少年にとって極上の箔になるし是非習得したい。蛇の言い分だとマナの分解技術って存在してないっぽいし。もし可能になれば歴史に名を残せそうだ。

 

 

「自然がマナを大量に含むと災害になるんだよな。マナの分解にエネルギーを使うのか、それとも分解した際にエネルギーが発生するのか・・・・・・どっちにせよ反動は凄そうだ。クイン、そっちの方は任せて良いか?」

「お任せを、風に乗せて散らせてみせましょう!」

「ほんじゃ、俺は解体作業に集中するアンタ達の護衛っすね。指一本触れさせねぇから安心して没頭しといてくれ」

 

 

 本当に頼もしい仲間だよコイツらは。なら全力で応えてやらねぇとな!!

 

 先人達が誰も成せていない偉業、だが俺には一つアドバンテージがある。俺はこの世界の誰もが当たり前に持ってる、"魔力はあって当然のモノ"という先入観がないことだ。

 

 呼び起こすのはかつての記憶───俺がこの世界に来る前についての記憶だ。魔力の"ま"の字も存在しない、退屈だが思い返せばそう悪くなかった思い出を引っ張り出す。

 

 そうして作り上げた"魔を否定するイメージ"を魔法に乗せて【魔核(コア)】に叩き付ける。最初は全く手応えを感じられなかったけど、ほんの僅かだが魔力が俺に入り込んでくる感覚が伝わってきた。

 

 

「───ぐっ!」

「思っていたより反動が強い!霧散しようとする力は散らせても、魔法経由でカーツさんに流入する分は手が出せない」

「どうするんすか、このままじゃカーツがバラバラになんぞ!?」

「もちろんやらせません!!私の魔力をカーツさんに譲渡して力の流れを直接操作します。【硬気丹術】を使えるカーツさんなら・・・・・・【吸魔魔法《ドレイン》】を利用すれば可能な筈です」

 

 

 クインが左手で俺の背中を摩るように触れてくる。【魔核(コア)】のエネルギーを散らしながらよくやるよ。

 

 しかも【譲渡魔法(ディバイド)】を散々施術された経験の賜物なのか、俺に不快感を与えない完璧な魔力操作だ。才能の差を文字通り身体で分からせられて、そんな場合じゃないけどちょっとだけ嫉妬してしまう。

 

 それはさておき、鈍足でだが間違いなく蓄えられたマナを消費出来てる。このままいけば時間は掛かっても確実に解体出来る───そう希望を持った俺たちを嘲笑うように、風船を割ったみたいな軽い破裂音が【魔核(コア)】から響き渡った。

 

 

 

 

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