異世界憑依生活記〜治癒士と厄ネタを添えて〜   作:章介

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第四十八話 お手柔らかにお願いします・・・・・・

 

 

 

 

 

 さて、目まぐるしい状況説明をされた翌日。色々尻に火が付いた状況を自覚した訳だが、やることはそう劇的に変わったりしない。

 

 

「それじゃあ早速始めるからな───【譲渡魔法(ディバイド)】」

 

 

 迷宮に居た頃は、魔力温存を理由に中止させられてたクインの体質改善策。やってることはいつも通りだが、今日からは()()()()()

 

 クインの隣りで施術を受けてるのは、昨日機械に繋がれてた少年少女達だ。不思議そうに魔法を受けてるが、反応から痛みとかは感じてなさそうだな。

 

 

「迷宮から戻ってずっとバタバタしてたからな。修行前の慣らしのつもりだったんだが───」

「私を含め3人に行使しながら、効能は全く落ちていません。素晴らしい成長です、と本来なら素直に賞賛したいところですが・・・・・・」

 

 

 難しそうにクインが見つめる先は俺の右腕。階梯(レベル)が上がったところで俺の光属性魔法は成長しない筈。心当たりといえば、カーツ少年を構築する際繋がってたコイツしかないよな。

 

 掌を握ったり開いたりしてみるが、感覚は以前と変わりない。ちゃんと調べてもらったけど肉体構造にも異常なし・・・・・・なんだけども。

 

 

「・・・・・・何というか魔力の流れ、みたいな感覚が前と違うんだよな。詰まりがないというか、流れに引っ掛かりがないというか」

「もう一人のカーツさんを構築する際に影響を受けたのでしょうか?奇跡と言って差し支えない魔法でしたので、何も変化しない方が不自然ですが」

 

 

 そうだよな、肉体創造なんてトンデモ作業に巻き込まれた。しかも明らかに制御不能な状態なんだから影響の一つや二つ出ても不思議じゃない。

 

 ただ、ちょっと無視出来ない悪影響も出てるんだよな。説明するより実際に試した方が早いな。

 

 

「それじゃ次は───【快復魔法(ヒーリング)】」

「・・・・・・?カーツさん、これは───」

「───あぁ、()()()()()()()。そりゃそうだよな、元々カーツ少年のモノだし」

 

 

 使えない訳じゃないが、治すのに掛かる時間が大体1.5倍くらいになってるな。こうして平時の治療ならどうにでもなるけど、討伐依頼とか外で使うには少し心許ない。

 

 とはいえ全部一律で落ちてる訳じゃない。最初に使った【譲渡魔法(ディバイド)】とかは寧ろ性能上がってたし。

 

 おっと、此処からは込み入った話になるな。先に子ども達を送り返してから、改めて話を再会する。

 

 

「魔法を使うのに必要な要素は、肉体だけじゃないってことか。新発見は良いんだが、このタイミングで弱体化は痛いな」

「───まさか、【硬気丹術】の方も?」

「ご明察だ。あっちはカーツ少年の補助ありきで使えたからな。でも使い方は身体が覚えてる。こっちはすぐに習得し直せるだろ、専門家も居るし」

 

 

 散々棚上げだった【硬気丹術】の修行だが、どうやらセレストゲイルが請け負ってくれるらしい。聞くところによると、元々は彼ら【浄血】が発祥の技術だとか。

 

 それを模倣して【浄血】以外でも使えるようにしたのが修道教会なんだとか。それでも基本無害な光属性のみで、他属性は【浄血】だけが使えるそうだ。

 

 

「そういえばクインが使ってるのは見たことないな。どうしてだ?」

「セレストゲイルの【硬気丹術】は風雷魔法が軸になりますから。雷を操れない私には不可能なんです」

「あ、ごめん・・・・・・」

「いえいえ、カーツさんに会うまでは身体も貧弱でしたので特に問題でもなかったですし。今ならある程度戦えそうですし、改めて修行したいと思います。貴方に置いていかれない為にも」

 

 

 そっか、焦ってるのは俺だけじゃないか。ちょっと安心した。まあクインは強化ありとはいえ、片手で俺を持ち上げてみせたからな。実は肉弾戦の才能もあるんじゃないか?

 

 

「まあ難しく考えることはないか。【快復魔法(ヒーリング)】も不眠不休で働く分には不足しないし。夜中だろうと鍛錬の時間は確保出来そうだ」

「───それは朗報ですな。今は1分1秒が惜しい。睡眠時間を削っても修行の質が落ちないのは大変ありがたい」

 

 

 スンっと表情が抜けた気がする。声がする方を見ると、予想通り辛気臭い顔がこっちに近づいてきた。

 

 アデルの野郎とは"コアトル"と遭遇して以来だな。助けてもらっといてアレだけど、初対面が悪過ぎるんだよなぁ。色々言いたいことはあるけど、真っ先に言いたいのはこれだ。

 

 

「えっと、何で敬語?正直滅茶苦茶気持ち悪いんだけど」

「・・・・・・貴殿は御当主さまの客人だ。下々が軽んじて良い相手ではありませんので」

「うん、お願いだから喋り方戻してくれない?鳥肌がヤバい」

 

 

 敬意ゼロの虚無顔で敬語使われても薄ら寒いだけだ。このタイミングで来たってことはそういうことだし、寧ろ遜るのはこっちだろうし。兎に角落ち着かないから止めてほしい。

 

 

「・・・・・・分かった。気付いていると思うが、俺がお前()()の指導を務めることとなった。都合が良ければ早速始めるが?」

「アデルさまが・・・・・・お前たち、ですか?」

「貴様は防人に加え、新たな任務を仰せつかっただろう?今のままでは力不足も良いところだからな」

 

 

 はぁ?何で仲間である俺の許可なく任務を与えてるんだ??後から返せなんてダサいこと言うなっつったよなオイ。

 

 

「・・・・・・そう睨むな、コレのやることは今までと変わらん。ただこれまでは貴殿と俺の口約束でしかなかったからな。正式な役目として命令が降っただけだ」

「セレストゲイル家は元々、繋がりの深い南部貴族の要人警護も担っています。その中にカーツさんも加わり、私が護衛役を任じられた訳です」

「あ、そういうことか・・・・・・ん?貴族って言ったよな??俺ただの平民なんだけど」

 

 

 "要人"については昨日の説明で重々承知してる。だけど態々好評しないだろうけど、平民にピッタリ防人さまが引っ付いてちゃ勘繰られるだろ。

 

 ラリマー領に留まってたのも、形式上はクインの長期休暇だったしな。俺は偶々仲良くなって使用人扱いされてたけど、今後もずっと一緒となると不自然に映るよなぁ。絶対手放す気はないけど。

 

 

「・・・・・・おい、伝えていないのか貴様?」

「えっと、申し訳ありません。連絡事項は特に承っておりませんが」

「はぁ、そういうことか・・・・・・下世話な真似を」

「おーい、俺にも分かるように話してくれ」

 

 

 頭を抱えるアデルにおろおろするクイン。実にカオスな光景で全く話に着いていけない。何だ何だ?

 

 

「【浄血】には王国から爵位が幾つか用意されていてな。誰に叙爵するかも自由裁量とされている」

「・・・・・・まさか」

「そのまさか、だ。貴殿にはセレストゲイル家直下の貴族になってもらう。面倒が嫌なら準貴族でも構わんが」

「・・・・・・・・・・・・俺が、貴族?え、何で??いやどうしてそうなる!?」

 

 

 意味が分からん。それにいきなりなれって言われて出来るもんでもないだろう!?誰か詳細な説明プリーズ?!!

 

 

「混乱しているところ悪いが、これは既に決定事項だ。よく考えろ、我々に出来るということはオニキスフレアも同じことが可能なのだと」

「・・・・・・あっ」

「二度にわたる『大蛇衆』の撃退、それに奴等の実験場へと堕ちた迷宮の攻略への貢献・・・・・・叙爵する理由としては充分だろう」

 

 

 どれも表沙汰には出来ない事件だが、信賞必罰は世の習いだ。寧ろそれだけの成果を挙げたのに報いないのは何事だ・・・・・・なんて言えば、部外者のオニキスフレアが介入しても不自然じゃなくなるか。

 

 

「水面下で調整は進めてある。一応は南部貴族扱いだが、セレストゲイル直下の貴族は我々同様市政には関わらん。故に派閥争い等の面倒とは無縁だ」

「・・・・・・そいつを聞けて何よりだよ。それじゃあ【浄血】の下の貴族って何してるんだ?」

「そうだな、貴殿のように何かしらの技術や魔法を買われた者や、保有する領土の管理をする者が多い。あとは没落した元貴族を折衝役に起用した例もあるな」

 

 

 なるほど、普通の貴族を軍人や領主的な立場を求められる『帯剣貴族』とするなら、俺がやらされるのは『法衣貴族』みたいなもんか。それならちょっと安心かな。

 

 要は北部で口封じされた、迷宮一帯の管理者みたいな立場ってことか。俺が研究と修行に集中出来るようにって配慮もあるんだろうな。逃げ道を潰されてるとも言えるが。

 

 

「───さて、事前説明はこれで充分か?思っていたより時間が押してしまった。ここからは巻きでいくぞ」

「・・・・・・よろしくお願いします。ところで、修行ってまず何をするんだ?」

「まずは基礎から徹底的に学んでもらう。そこで何かしら現在の不足を補う術も見つかるだろう。そこからは・・・・・・ひたすら俺を相手に実戦稽古だ」

 

 

 ───思わず尻餅を付きそうになった。迷宮騒動の前なら間違いなく膝が笑ってただろう。

 

 "コアトル"にも向けた本気の"圧"が襲い掛かってくる。何とか立ったままの俺たちを見て、今日初めてアデルが笑みを浮かべる。

 

 

「なぁに、この屋敷には回復用の魔導具が幾らでも常備してある。たとえ内臓を焼き潰そうが即座に治る。問題は気力と体力についてだが・・・・・・先程の会話を聞くに、此方も問題はないな?」

 

 

 それだけ言い置いて踵を返す。さっさと着いて来いと、肩越しに向けられた視線に思わずクインと顔を見合わせた。

 

 

「・・・・・・クイン、頑張って・・・・・・生き残ろうな?」

「はい・・・・・・物理的にも精神的にも死なないよう、最善を尽くしましょう・・・・・・」

 

 

 どうやら【浄血】の修行は滅茶苦茶ハードらしい・・・・・・泣いて良いか?

 

 

 

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