異世界憑依生活記〜治癒士と厄ネタを添えて〜   作:章介

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第八十三話 やっぱりチームプレイって楽

 

 

 

 

 

 

「───さあいよいよ実習ですねユークレス卿!先生方に覚えてもらえるよう頑張りましょう!!」

「うんうん、元気があって何よりだイアン殿。だがもう少し慎ましさがあると尚良しだ」

「貴方には何も言ってませんよカイツ殿、留年なんかしてまで編入してきた貴方が上から目線は止めてください」

「はっはっはっ、耳が痛いな!だが良薬というのは苦いもんだ。こういう立場・・・・・・いや"以前は"嫡男だったからな!そういうことを言ってくれる人は貴重だし、俺は好ましく思うぞ!」

「どわあっ!?あ、頭を撫で回さないでください!暴力反対っ!!」

 

 

 ・・・・・・俺の班は随分賑やかだなぁ。睨み合ってるよりはずっと良いけど、これはこれで前途多難だ。単独行動とか絶対許してくれそうにないな。

 

 メンバーは俺とカイツ殿、そして初日にガッツある挨拶をくれたイアン少年と、席が隣りのジレット少年だ。一人全力で気配を消そうとしてるがちゃんと四人一組のチームだ。

 

 

「ブツブツ・・・・・・どうして私がこんな面倒な班に・・・・・・一体何処の陰謀ですか・・・・・・南部?北部?西部?そ、それとも故郷の競合相手・・・・・・?」

「こらこら、さっきから隅っこで何を一人で喋ってるんだジレット殿!君も輪に入ってくると良い」

「ひいぃっ!?ち、近寄ってこないでください!貴方なら卵を潰すくらい容易く私をグチャッとしてしまうんでしょう!!?プレナイト様のように!!」

「なんだ、アイツを知ってるのか・・・・・・どうせ説明するなら正確に伝えてほしいな。握り潰したのは人間ではなく剣と盾だけだぞ?」

 

 

 あ、凄い勢いでイアン少年が距離を取ったな。まあ俺も軽口叩いた後だったら、多分同じ反応してるだろうな。

 

 言われたい放題のカイツ殿は、不思議そうに頭を搔いてるけど。普通は余程階梯(レベル)が高くないと鋼より硬くないんだよ、人間って。逆に何故貴方はそんな表情をしてるんだ。

 

 

「───カイツ殿のお陰で緊張が解れましたね。別の意味で緊張してる人は居ますが・・・・・・こと"戦闘"という意味でなら、この方ほど頼りになる者は学校に居ません。安心して実習に臨みましょう」

「「はいっ、ユークレス卿」」

「男爵閣下も【魔技】を扱える本格派じゃないですか。私だけ怪物みたいに言わないでくださいよ」

 

 

 二人が『何言ってんだコイツ?』みたいな視線を向けてるけど、言ってることは正しい。俺の階梯(レベル)は二人とは比べ物にならない練度だし、彼らが無事に帰還出来る程度の魔物ならどうとでもなる。

 

 ・・・・・・無事戻れる程度なら、ね。『教育学部』はそもそも戦闘を想定していない生徒が志望する学部だ。俺の見立てだと、二人はこの国で最弱の怪物が相手でも怪我じゃすまなさそうだ。実習に出張ってきた騎士サマ連中はいったい何を考えてるんだか。

 

 

「(───どう思います、カイツ殿?)」

「(ちょっとお待ちください。トマスから貰った覚書には・・・・・・『僕なら亜人型の魔物に扮した騎士を投入する』とのことです)」

「(いや、ご自身でも考えましょうよ・・・・・・適材適所とは言いますけども)」

 

 

 本当にこの人、トマス殿が弟で幸運だったな。あとその覚書は適当なタイミングで読ませてもらおう。多分そのつもりで渡してるだろうし。

 

 しかし魔物に化けさせるか・・・・・・プライドが滅茶苦茶高い貴族にそんな真似させたら激昂するだろうけど、近衛クラスの忠臣なら黙って従うか。

 

 殺したらマズい奴は適当に襲って気絶させ、失格扱いで回収する算段って訳か。教育学部の生徒ならこんな変則的な実習、脱落しても面子に響かないだろうし。単位関係さえ補填すれば、生徒からも文句はあまり出ないか。

 

 

「(しかし厄介ですね。もしトマス殿の想定通りなら、我々が殿下の元へ近付けば彼らも無事じゃすみません。これも連中の策の一つでしょうか?)」

「(いや、流石にそこまでやるで───まさか、同じ班が平民二人なのはその為でしょうか?)」

 

 

 その可能性は低くないだろう。貴族令息は生贄にするにはリスクがデカ過ぎるからな。彼らなら裁判所を騒がせるほど大事にはなりにくく、それでいて地方貴族肝煎りの人材だから、公然と非難する材料にはなり得るか。

 

 学校の不行き届きで亡くなったのではなく、俺たちが()()()()()()()()()()()で生命の危険に晒された・・・・・・そういう流れに持っていけば責任を此方へ擦り付けられる。そんなところだろうか?

 

 

「(彼らは自分の身を守ることも出来ず、当然俺たちと並走することも不可能です。リスク覚悟で置いていった場合、最悪手勢を使って彼らを───カイツ殿?)」

「(・・・・・・平民なら切り捨てて良い?捨て駒に丁度良いとでも??───分かってはいたことだが、中等部にいた頃から此処(中央)はちっとも変わってないらしい)」

 

 

 あ、顔は朗らかなままだけどすっごく怒ってらっしゃる。目が笑ってない笑顔も、この人がやると迫力が凄いな。後ろの二人は気付いてないっぽいけど。

 

 だけど気持ちは分かる。そもそも殿下の生命目当てに、教育学部全員を巻き込むやり口は吐き気がする。そんなことする奴が、この国の未来の王様気取ってるんだから救いようがない。

 

 

「(・・・・・・俺は彼らを巻き込みたくない。申し訳ないが、貴方だけで先行してもらえませんか?すぐ追い付きますので)」

「(それは全然構いませんが、カイツ殿はどうする───)」

「あのー、さっきからお二人だけで何をこそこ───はぺっ」

「あふんっ」

 

 

 ・・・・・・・・・・・・恐ろしく速い手刀、俺なんかじゃ普通に見逃しちゃうね。いや何でその速度で当てて手加減が出来るんです??首が飛んでなくて不思議ってどういうことだよ。

 

 

「足手纏いがご所望なら、こっちの手で失格させてしまえば良い。確かセレン先生とやらは貴方と敵対してないんですよね?ちょっと引き渡してきます」

「・・・・・・逆転の発想って奴ですね。もしかしてそれも───」

「もちろんトマスの考えです!俺にそんな難しいこと思い付く訳ないでしょう?それじゃ大急ぎで行ってきますんで!!」

 

 

 ま、まあ予想が付いてんだから対策もセットで考えてるよな。マジであの人が味方で助かったよ。ウォルフとの合流も魔導具頼りだし、足向けて寝れねぇよ本当に。

 

 しかし出発の合図とほぼ同時に気絶って絶妙なタイミングだよな。よし、カイツ殿に視線が集中してる間に森へ入ってしまおう。見張り役に凄腕を配置するとは思えないし、手刀はバレてないだろ。

 

 少なくとも教師達は反応出来てなさそうだし、緊張のし過ぎで過呼吸になったとでも説明すれば何も言えない筈だ。しかし俺一人だったらどうにもならなかっただろうな。

 

 

「結局戦力を分散させられたのは痛いけど・・・・・・まあ切り替えていこうか」

 

 

 巻き込む相手が居なくなっただけでも大分動き易い。あとはウォルフと殿下のところへ合流するだけだ。

 

 

 

 

 

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