異世界憑依生活記〜治癒士と厄ネタを添えて〜   作:章介

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第八十七話 埋められた罪と宝

 

 

 

 

 

 

 王都の地下に張り巡らされた"模倣地下迷宮"。『迷宮災害』が自然現象だってんなら、その仕組みを解明して人工的に発生させるのも不可能じゃないだろう。

 

 何なら"バシュム"が北で似たようなことやってたもんな。だけどアデルは見たことも聞いたこともないって言ってたし、どっかで失伝した技術なのか?それとも噂の『始祖の賢者』だけが使える魔法だったりするのかもな。

 

 

「───ってうおぉ!!?あっっっぶね・・・・・・」

 

 

 頭上からギロチンみてぇに降ってきた刃物を『障壁』で防ぐ。この長杖がなかったら多分、五回は死んでるな俺。"治癒なんて甘えだよね?"ってくらい、トラップの殺傷力がマジでヤバい。

 

 今の頭上から襲い掛かる質量兵器は言うに及ばず、突然横から生えてくる槍衾に坂から転がってくる巨岩で出来たボール。トドメは扉を物理的に塞いでから酸のシャワーなんてのもあったな。

 

 

「・・・・・・いったい何のために作られた迷宮なんだ?防衛拠点にしちゃ攻撃に偏り過ぎだし、何より守る為の設備が見当たらないし。順当に考えりゃ、お宝を守る宝物殿なんだろうが」

 

 

 でもそれにしては()()()()。治癒士の俺にはしんどいマップだが、"バシュム"やウォルフなら余裕だろう。侵入者対策としちゃヌルいし、試練とするには学びが薄い。何とも中途半端だ。

 

 わざわざ学校に捜査役を送り込んでたあたり、おそらく此処の存在意義も学校に関わりがある筈。元は対【浄血】用の駆け込み寺として作られた設備に関連するもの・・・・・・さっぱり分からん。

 

 

「そんでもって、やっぱり魔法的な仕掛けが施されてるよなぁ・・・・・・さっきから派手にやってんのに誰も寄ってこないし、同じような音が聞こえてもこない」

 

 

 俺だけが絶望的に不運で貧乏くじ引いてるってんならともかく、周囲で罠と格闘してる気配が皆無なのは不自然過ぎる。ウォルフは出来る男だが罠回避の専門家じゃない。

 

 あのタフガイが俺より寝坊助とは考え難い。物理的にあり得ないなら魔法的な細工だろう。音や振動への細工・・・・・・自分で引っ掛かった罠の分はバッチリ聞こえてるし、あるとすれば認識阻害とかだろうか?

 

 

「───しかしそうなると、もし阻害の対象が俺たち自身も含まれてるなら、偶々同じ部屋に居て肩がぶつかってもお互い気付かないって可能性もあるか。こういうのは最深部に到達すれば解除ってのがセオリーだけど・・・・・・罠の難易度が低い割に面倒な仕掛けだなぁ」

 

 

 クインが居れば力業で解決・・・・・・いや、確か王立学校は【浄血】に侵入不可の契約を交わしてるって言ってたな。この迷宮まで学校の敷地扱いされてたら、どんなペナルティ喰らうか分かったもんじゃねぇ。

 

 咄嗟のことだったけど、結果的にアーサー殿下を任せて正解だったな。とにかく急いで対応しないと全部が後手に回るし・・・・・・つくづく証拠(襲撃者)を木っ端微塵にされたのが痛い。

 

 

「───おっ、毛色の違う部屋に出たな。こういうのも学者や研究者が見たら発狂ものなんだろうけど、俺じゃイマイチ価値が分かんねぇんだよな」

 

 

 THE・迷宮って感じの部屋から一転、まるで研究所みたいな白一色のタイル張りの部屋に到着した。此処は光源もあるから魔力灯も必要ないし、節約のため切っとくか。

 

 室内にあるのは椅子に机、それから大量の本棚と中央に魔導具らしき物体。でもよく見てみると、セレストゲイルで見た調整用の魔道具に似てるな。

 

 

「・・・・・・ってことは、此処にある本も【浄血】関係だったりすんのか?もしかしたらクイン達の問題解決に使えるかもしれない、か」

 

 

 あんまり長居はしたくないけど、こんな量持って帰れる訳ないしなぁ。それにもし【浄血】の利益になるとしたら、判明した瞬間誰かさん達に焚書されかねない。

 

 取り敢えず一冊手に取って広げてみる。もちろん罠が仕込まれてないか警戒してるが、そんな細工は今のところ見当たらない。

 

 

「えーっと、なになに───『私が落ちたこの世界はあまりにも非効率で不完全だった。旧文明の魔導具(ガラクタ)を巡って争い、リソースの管理も出来ず『災害』によって滅ぶ。そして後退した文明ごっこの焼き直しを行う』───どうやら俺の"同類"みたいだな」

 

 

 技術的な内容から察するに、"同郷"ではないか俺よりずっと後の時代から来た感じか?見たことも聞いたこともない単語がちらほら出てくる。

 

 

「───『だから()()()()()()()。壊れ切ったバランスを正す尖兵を、そして私のための理想郷を。そのためにまずは、私の技術に耐える素体を選別し作り替える必要があった』」

 

 

 其処に記されていたのは、何処かの誰かが激らせた妄執だった。まるで救世主を神託する天使にでもなったつもりか、狂気の実験を慈善事業のように綴っている。はっきり言って不気味にも程がある。

 

 現地で採れた素材を元に新種の魔導具を作成。それを呼び水に近くの村を懐柔し、"捨てる予定の人間"を回収したとか何とか。合間に挟まれる自己中っぷりが読んでて不快だけど、何とか呑み込んで読み進める。

 

 

「『名前はもう決めてある。判別しやすいよう色とセットにするつもりだ。【オニキスフレア(黒い焔)】、【アガットランド(緋き地層)】、【ヒュアランレイン(深碧の雨)】、そして【セレストゲイル(蒼穹の颶風)】───おいおいマジかよ」

 

 

 言われてみれば随分メカメカしい魔導具だったなあの装置。道理で普通の魔法使いが真似出来ない訳だ、根本的に魔法体系が違ってたのか。

 

 ───仕方ない、予定を変更しよう。地上のことや"バシュム"の暗躍とか、色々考えなきゃいけないんだろうが後回しだ。えっ、ウォルフ?俺が死んでないんだから心配するだけ無駄だし失礼だろ。それよりもこっちが優先だ。

 

 明らかに書かれてる内容がやば過ぎる。事と次第によっちゃ、脱出する前に俺が燃やさなきゃいけなくなる。

 

 この書き方から察するに、この自己中人間は相当プライドが高い。なら自分が手掛けたものに意図して『欠陥』なんて残すとは思えない。何処がどう悪かったのか、製作者から教えてもらえるなら好都合だ。場合によっては、かなりの工程をショートカット出来る。

 

 久しぶりに『快復魔法(ヒーリング)』で強行軍といきますか。脳疲労と集中力を無理矢理回復させ、ゴリ押しで読み進める。どうか邪魔をしてくるトラップや招かれざる客が来ませんようにっ!

 

 

 

 

 

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