・・・・・・なぁにこれぇ。どんな冷血漢が書いたらこんなレポートに仕上がるんだ?必死に斜め読みしようとしたけど、エグい描写が山ほど出てくる所為で二重の意味で吐き気がしてきた。
特にこの世界の住人を"原生生物"呼ばわりはイカれてんだろ。やっぱ技術の発展って倫理とワンセットじゃなきゃ駄目だわ。というか、コイツ現世に帰ってくる気満々だけど大丈夫かこの世界?
突っ込み出したらキリがないけど、取り敢えず【浄血】についての情報が残ってたのは幸いだった。族滅させるため意図的に遺した欠陥ってのは糞だが、変な細工がされてないだけマシだと思おう。これなら再生医療を試してみても大丈夫そうだな。
「───しっかし、マジで自分都合の視点でしか書いてないなコレ。でもだからこそ引っ掛かるな、
この本の書き振りだと、コイツが復活するまで『始祖の賢者』が活動してなきゃ辻褄が合わない。イカれ異邦人が目覚めてないってことは、記載されてた"条件"はまだ未達ってことだろ?なのに代行者が先に居なくなってちゃ話にならない。
想定より大幅に時間が掛かってて、賢者の寿命が先にきたのか?それならその条件で"万一の保険"とやらが発動してそうなモンだが。
それにジグムントのクソジジイは、ノア少年の力を見た途端コロッと掌返すくらいには賢者に心酔してやがった。本当に博愛精神旺盛な人間なら、精神的支柱の自分が居なきゃどうなるかくらい察するだろ。
責務を放棄したってのも考えにくいし、やっぱ自然死じゃなく殺害されたって考えた方がしっくりくるな。ただその辺りはぶっちゃけ興味がない。俺が引っ掛かってるのは、【浄血】が明らかに限界間近だってのに、"保険"とやらが未だに発動しないのは何故なのかってとこだ。
「───ただ条件を満たしてないだけか、それともイカれ異邦人にとってもイレギュラーな事態なのか・・・・・・前者か後者かで話が変わってくるな。【
人をヒトとも思わないロクデナシだ、苦労して創った【
流石にこの件を放置は論外だ。クイン・・・・・・は自分の身体にコンプレックス持ってるし、アデルの野郎をひん剥いて徹底的に調査するしかないな。
それから調査が必要なのはノア少年もだ。北での『迷宮騒動』も、この本を読んでからだと印象が違ってくる。【
もしかしてだけど、あの事件は『始祖の賢者』を再誕させるために引き起こされたものだったのか?
「・・・・・・確かあの時の【
やってることが正反対過ぎて考えが纏まらない。俺が横槍入れたからノア少年の新しい肉体になったけど、もし俺たちが居なければ『始祖の賢者』として復活してたかもしれない。
そうなればイカれ異邦人の計画も再スタートしたかもな。だけどもし【
それじゃ本末転倒───いや待て、もしそうなったら流石に"保険"とやらが発動するんじゃないのか?もしかしてだが、どっちでも良かったってのか??
「どっちに転んでも目的は果たせる。ならこの際どっちの実験もやっておこうってか?・・・・・・もしそうだとすれば、あの"バシュム"が同列扱いを嫌がる訳だ」
こんな厄ネタ案件で火遊びしようとか、どういう神経してんだ本当に。しかしあの事件が『始祖の賢者』復活のためだったとしたら、何で下手人が【
復活を切望してるのは寧ろ【浄血】の方だろ?特にオニキスフレアあたりなら、唆せば犠牲を厭わず実行したに違いない。【浄血】の象徴のような人物を、【浄血】廃絶を狙う組織が求める理由って何だろう。
賢者の能力だけを狙った?それとも象徴である賢者の功績を穢すことが目的だった?賢者が敵に回るとか【浄血】への最高の皮肉だもんな。
だけど結局爆弾にする機能も【
「───まあいい、此処で考えてても埒が開かない。持ち帰っても騒乱の元だろうから後で全部燃やすとして、今は───『カチッ』───はい???」
誓って言うが俺は何も触れてない。だけど
どうすることも出来ず、アホ面下げて見送るしかなかった。慌てて次の展開に備えて警戒していると、まるでエレベーターみたいに部屋の床全部がゆっくり降下していく。
「・・・・・・隠し部屋に仕込まれた更なる秘密の部屋か、それとも愚かな侵入者を始末する処刑部屋か。さぁてどっちだろうな?」
今ならまだ魔技を使って部屋の外へ脱出出来る。だけどもしこの先に"バシュム"の言ってたお宝とやらが眠っていたら厄介だ。この部屋に残された資料から察するに、絶対ロクなもんじゃねぇだろうし。
連中の玩具にされるくらいならこっちで回収したい。封印するか破壊するかは、安全な場所に戻ってから決めれば良い。
「───止まったか。造りは上の部屋と変わらないけど・・・・・・」
10秒程でエレベーターは停止した。そこまで深くはないが、自力で這い上がるのは困難な高さだな。
通路の構造そのものは同じく白いタイル張り。だけど漂う気配は別物だった。上より更に薄暗いのもあるんだろうが、それ以上に香ってくる微かな"血臭"が悍ましさを演出してる。
「通路は一本道、だけどその両脇に幾つも設置されてるのは・・・・・・檻かコレ?」
『──────ァア』
「───っ!?」
生理的な恐怖を感じさせる呻き声。咄嗟にエレベーターまで引き返したが、後ろから鉄塊を吹き飛ばす轟音が響いてくる。
豪風で留め金を吹き飛ばす、濁流の衝撃で薙ぎ倒す、百万貫の大岩で押し潰す、白炎で視界諸共金属を灰に還す・・・・・・それぞれ違う方法で封を破って出てきたのは、無数の管で繋がれた異形の存在。
「───ああそうか、そりゃ居るよな
ボタンが見当たらないからエレベーターを起動させることも出来ない。そもそも通路との距離が近過ぎて逃げきれない。
何より救いを求める餓鬼のように伸ばされた手を見たら、背を向けて去る選択肢なんて無くなった。このまま逃げたら一生夢に見そうだし、そんなのはごめんだ。
「・・・・・・やるしかないか」
下心を白状するなら、彼らはイカれ異邦人の遺した生きたデータだ。今後のことを思えばウォルフと合流して生きたまま捕獲したい。俺の魔法研究が進めば、彼らにもまともな身体を用意出来るかもしれないしな。
だけどその案は却下だ。理不尽な理由で苦しみ続けた人間に追い討ちかけるほど腐った覚えはないし、呻き声に混ざって聞こえる"願い"を無碍にする気にはなれない。
「来いよ、お望み通り終わらせてやる」
そういえば、魔物を手に掛けた経験はあっても"人殺し"はこれが初めてだな。なるほど、やる前から最悪の気分だよ。