───あれから俺たちは無事脱出出来た、らしい。目覚めた時にはセレストゲイルの屋敷だったからな。何でも約二日ほど寝たきりだったらしい。
発見者のクインによると、アーサー殿下をアデルに託して本人はすぐに現場へ舞い戻ったらしい。もちろん一人ではなく、他の防人さん達も連れての大捜索だったとのこと。
途中で現場の"消毒"にやってきた第一・第二王子の狗と一触即発になったり、ひょっこり現れた"バシュム"の所為で三つ巴の乱戦になったり・・・・・・報告してくれた時の顔がもの凄く疲れ切っていた。
「───そうして収拾がつかない状況に陥っていると、突然地面が割れてカーツさん達が打ち上げられてきまして。そのまま回収して撤退することになりました」
「お、お疲れ様クイン。それに助かった、君が居なかったらどうなってたか・・・・・・考えるだけで怖いな」
・・・・・・割と危機的な状況だったんだな。クインが身を粉にして駆け付けてくれたから、こうしてベッドの上でゆっくりしていられる。他の何処に捕まってても普通に地獄だもんな。
「ところで、何で俺たちは二日も寝込むハメになったんだ?俺はともかく、ウォルフも結構寝てたんだろ」
「・・・・・・やっぱり危ないことしてたんですね?ウォルフさんに伺った話から推測するに、その模倣地下迷宮とやらは時間の流れが異なっていたと思われます」
「ああうん、心配かけてすまん。ちゃんとすぐに説明します・・・・・・その前に、時間の流れが違うって?」
「はい、ウォルフさんによると体感半日は地下に居たそうですね。ですが実際貴方達が脱出したのは、落ちてから
なるほど、半日分の疲労が1時間にギュッと凝縮された所為で身体のキャパがパンクしたって感じか?そりゃ寝込むわ。
それでもウォルフは1日ちょいで目が覚めたらしい。今はカイツ殿と一緒にラリマー子爵家へ報告に行ってるとか。随分と助けられたことだし、俺も手土産持って一回顔出しとかないとな。
「それで、なんですが・・・・・・地下に落ちてからの経緯を伺っても?」
「ああそうだな、クインにもちょっと協力してもらわないとだし・・・・・・意識が戻ったのは割とすぐだったかな?あと結構な高さだった筈なのに怪我らしい怪我もなくてな。ただかなり暗かったんで、光属性魔法を灯代わりにしようとしたんだ。すると───」
そんな感じで、色々思い出しながら掻い摘んでの説明になった。いきなり隣りに現れた"バシュム"とその狙い、そこから殺意マシマシの罠を掻い潜りながら、イカれた異邦人の研究を改めたこと。
それから更に下へと降り、【浄血】のプロトタイプと会敵したこと。途中でウォルフと合流して撃退し、扉の先で見たものまで全部。一通り話し終えると、クインは労るように手を握ってくれた。
「───お話してくださりありがとうございます。そして勝手なことを言いますが、鎖に縛られた彼らを救っていただき感謝します。私ならきっと、終わらせてくれた貴方を恨むようなことはないでしょう」
「・・・・・・そっか、そうだと良いな。俺の方こそありがとう。少し楽になったよ」
「いいえ、そもそもカーツさんは『治癒士』なんですよ?【硬気丹術】や魔技だってあくまで自衛のために学んだもの。他人の生命を奪うことに抵抗を持つのは当然です」
そう言って慰めてくれるクイン。他にもっと劇的な内容は盛り沢山だってのに・・・・・・本当に、俺には勿体ない相棒だよ。
まあ正直一番心にキたのはあの時だったからな。殆どウォルフに押し付ける形になったのも申し訳ないし。クインの優しさがささくれた心にジーンと効いてくるな。
・・・・・・うん?今度は頭をがっちり掴まれたんだが??あ、ちょっとだけミシミシいってる。もしかしてクインさん、魔力で強化してらっしゃいません!?
「───それはそうと、無警戒に無茶し過ぎです。道中については不可抗力としても、最後不用心に触れる必要がありましたか!?」
「あだだだだっ!?いや、【
必死に弁明してみたが、頭を掴む握力は緩むどころかますます増していく。そして怒りに吊り上がっていた眉が一転して下がると、今度は静かに燃える青い炎が立ち昇るのを幻視した。
「回収するなとは言いませんよ?ですがカーツさんは【
「・・・・・・・・・・・・」
「───やっぱり知的好奇心と技術向上意欲に負けてやらかしましたね貴方はぁ!!」
「アアァーーーーー!!?」
やっぱりバレたああぁ!!?いやほら学校生活が思ってたより数十倍無味乾燥過ぎて焦ってたと言いますか何というかいでででで!!
正直リスクは重々認識してたけど新しい魔法開拓とか大昔の超技術とかそういうぶら下げられた餌にまんまと釣られましたごめんなさいぃ!
「───はぁ、お願いですからご自愛ください。貴方が周囲を気にかけたり、私たちのために努力してくださってるのは素晴らしいと尊敬しますし嬉しく思います。それでも貴方が自分を軽んじるような真似は看過出来ません」
「・・・・・・すみませんでした」
そうだな、ちょっと前のめりが過ぎたよな。クインやノア少年がどう思うかってのが抜けてしまってた。それもこれも、次から次へとトラブルが起こるのが悪い。俺は悪くね───ウソですすみません反省しますっ!!
「・・・・・・はぁ、反省していただけたのならもう言いません。しかし貴方ともあろう人がまんまと"蛇"に唆されるとは意外でした」
「え、どゆこと??」
「"バシュム"が言ったのでしょう?彼らが労力を注ぎ込むだけの宝が彼処に存在すると。迷宮で見つけた資料も要因でしょうけど、もしその邂逅が無ければ貴方も無茶はしなかった筈です」
・・・・・・確かにそうだ。そもそも記録を覗いた時には遺物は破壊する前提で動いてた筈なのに、いつの間にか回収することしか考えてなかったな。
あのSF空間にそういう作用でもあったかな?仮にあったとしても、あの毒蛇の言った"宝"って響きが引っ掛かったのは否定出来ない。
「取り敢えずはカーツさんの精密検査ですね。専用の魔導具はこの屋敷にありますが、必要なら他の治癒士さんをお呼びしましょう」
「普段なら【
「はい、カーツさんの認識に干渉されているのであれば、『万全な状態』そのものを誤認させられる危険があります」
やっぱそうだよな。今のところ情緒不安定だとか、そういった目立つ影響は無さそうだが・・・・・・そう思わせておいて水面下でって可能性もある。慎重過ぎるくらいが丁度良いだろう。
そういう事情だから、ノア少年にはアデルと一緒に一時避難してもらってる。本当なら顔を見せて無事を知らせたいとこなんだけどな。
だがノア少年の身体は『始祖の賢者』と縁深い代物だと判明したんだ。ノア少年を見た途端、あのチップが暴走されちゃ堪らないからな。さっさと片付けてから、直接本人に謝ろう。
「この後の予定はそれで構わないんだけど、アーサー殿下の方はどうなった?よくよく考えたら、こっちが頼れる戦力が全員出払ってて正直不安しかないんだけど」
「・・・・・・ご明察です。ウォルフさんがラリマー子爵家へ向かったのもそれが理由ですね」
気になってたことを尋ねると、クインの表情が曇っていく。主人を置いて逃げ出すような取り巻き共しか居ないんだ、やっぱり何かあったのか?
「───アーサー殿下は現在意識不明の重体・・・・・・いえ、おそらく意図的に目覚めないようにされています。更に如何なる面会も謝絶されており、状況を確認することすら出来ません」
「・・・・・・マジか」
想像以上にヤバい状況だった・・・・・・。