青白い画面にそんな文字を打ち込み、僕は一冊の本を君に渡すことにした。
ある日、PCに謎のファイルを見つけた。
ウイルスを疑い、慌てて消去しようとしたその時、ファイルが勝手に起動してしまった。
Connecting......success
open the file
◼◼◼◼◼を起動します。
─────
この文書が書かれたのは、今君が読んでいる時代よりも100年、ともすれば200年先の事かもしれない。
だから、君が理解できないことも多いだろう。
だが、どうか1度、手に取って読んで見てほしい。
君を退屈させることは無い。
なぜなら、この世界は君たちの世界より、もっと発展した。
完全なるメタバースの創造に成功し、二つの世界を行き来することができるようになったのだ。
そして、全ての争いはメタバースで行われるようになった。
遂に現実(リアル)は平和を得た。
そして、争いは仮想空間(バーチャル)で行われるようになったのだ。
戦争はエンタメに成り下がった。
人々はそれを娯楽の1つとして扱っている。
スポーツとして、あるいは賭け事として。
楽しそうだろう?
全て、ここ数十年で急激に発展した。
結果として、皆幸せに生きているよ。
では、これから紹介することにしよう。
その言葉の後、長い長い動画が再生された。
青白い画面に、なにかの映像が映る。
どうやら、LIVE中継のようだ。
なぜか、食い入るようにみてしまう。
他のことも忘れて意識を動画に集中した。
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──
部屋の様子が映し出された。
床や壁、家具など、全てが白い。
所々に青いラインが入っているのがいかにも未来的だ。
そこには3人の男がおり、何か話をしている。
「今日の作戦通知書が届いた。条件は森林、白兵戦だ。」
「相手は?」
「お隣さん。懲りないよねぇ、あちらさんも。」
「そうだな、まあ、程々にやるとしようか。」
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謎の男性2人が近未来的なタブレットを操作したかと思うと、3人の姿が変化した。
それまで軍服を着用していたのが、武器を持ち、戦闘服のようなものに身を包んでいる。
全員、個性的だが近未来的な装備をしている。
1人は両手にを短機関銃《サブマシンガン》を持ち、背中や足、肘など各所にブースターのようなものが見える。
1人は
大きなバックパックを背負っているのが特徴か。
最後の一人は異質だった。武器が何かおかしい。
まるでアニメのような装備だ。
刀のようなものを肩に吊るしている。
刀、と言っても刃が付いていない。
こんなもの、実際の戦闘で役に立つのだろうか。
装備は1人目と同じく、各所にブースターを取り付けたものになっている。
この人がリーダーなのだろう。
派手だし。全体的に。
「よし、準備できたな。」
刀を吊ったリーダー格の男が2人に話しかける。
「いつでも。」「問題ないよ。」
2人が返事したのを確認したリーダーが、タブレットを操作する。
数秒後、3人の姿が消えた。
カメラが移り変わるとそこは森林だった。
先程見た3人が各々の装備をチェックしている。
battle ready...
3
2
1
start
モニタに表示された文字がスタートに変わると、3人は森の中に飛び込んで行った。
カメラはまず、短機関銃を持った男に追従することにしたようだ。
彼はブースターを器用に使って木から木へと飛び移るように進んでいる。
彼の前には小さく刀を装備した男も見える。
なるほど、そのためのブースターだったのか。
数秒後、小銃を装備した男にカメラが移動した。
彼はブースターを装備していない。
木を遮蔽にしながら移動している。
彼は少し開けたところにたどり着くと、バックパックを地面に置き、中のものを取りだした。
中にはドローンのようなものとタブレットを取りだした。
ドローンを起動すると一気に上空に飛ばし、自分は荷物とともに草葉の陰に隠れた。
その後、自身の装備の腰に付いたボタンを押すと、姿が見えなくなった。
画面は短機関銃を持った男に移る。
彼は大きな木の上に登り、枝の陰に隠れていた。
身につけた小さなインカムで何かを聞いているようだ。
通信を聞き終えると、彼は短機関銃のチャンバーをチェックし、ある一方に目を向けた。
5秒程の短く、緊張した時間がすぎた後、茂みから兵士が1人現れた。
小銃を持ち、索敵しているようだ。
しかし、短機関銃の彼には気づかない。
彼が潜んでいる樹の真下に来た頃、彼は樹から飛び降りた。
両手の短機関銃を相手に向け、乱射する。
地に足をつけた頃、そこにあったのはいくつかの弾痕と物言わぬ塊のみだった。
胸に装備したナイフで首だった部分を刈り取ると、ソレはポリゴンとなって霧散した。
ここで映像が入れ替わる。
今まで映っていなかった、刀を持った男だ。
彼もインカムで何かを聞きながら目にも止まらぬ速さで森を駆け抜ける。
彼が太めの樹を蹴り、別の木に飛ぼうとした瞬間、銃声が鳴り響いた。
彼が蹴った樹に敵が潜んでいたようである。
銃弾を辛うじて交わした男は転がるようにして地面に落ちると、すぐに木の陰に隠れた。
右手で肩の得物を抜くと同時に、腰につけている球状の物体を左手で2つほど手に取った。
お互いに膠着し、緊張した時間が流れる。
一瞬の静寂の後、こちらが動いた。
左手の球を1つ、木の影から相手に見えるように投げたのだ。
当然、相手は反応して正確に弾を打ち込む。
2発ほど命中して、投げた球は爆発した。
男は、爆発の陰に隠れてもう1つの球を相手に投げつけると、両足のブースターをふかして相手に突撃する。
煙から飛び出してきた男に、相手は動揺を見せたものの、確実に処理しようと銃口を男に向けている。
相手が発砲したその瞬間、突撃時に投げた球が変形した。
まるでみかんの皮のような形に6枚の羽が展開した。
その羽は銃弾を防ぎながらビーム弾を乱射し、相手の銃を破壊した。
男は全てのブースターを起動し、刀を構える。
気がつくと、本来刃がある部分が赤い光を放っている。
俗に言うビームサーベル、と言うやつなのだろうか。
実に17メートルを1.5秒で進み、相手に肉薄すると、刀を相手の右腰から左脇まで、逆袈裟に斬り上げた。
2つに分けられた人が霧散するまで、1秒かからなかった。
男は刀を収めると、インカムに何か話しかける。
二言、三言話した後、男は満足そうに頷き、南西方向に飛んで行った。
地面を滑り、木をつたいながら移動して5分ほど、男は敵兵を発見したようだ。
相手は男に全く気づいていない。
一瞬で近づくと、男は敵兵を真っ向から切り下ろした。
ファンファーレが鳴り響き、勝者が告げられる。
3人組は特段嬉しそうな様子もなく、カメラに向けて軽く敬礼を行うと、光に包まれて消えていった。
それと同時に画面が暗転した。
画面が明るくなると、そこに居たのは知らない老人であった。
彼はこちらに向けて話しかけてくる。
「......これが、この世界での娯楽だ。どうだ、イケてるだろう?」
確かに、すごくワクワクしそうだ。
「私は、メタバース世界の研究をしていてね。今は、過去の人間を連れて来る研究をしているんだ。」
きな臭い話になってきたな。
「メタバース世界を通して君の肉体を未来に持っていく、というものなんだ。」
「よければ、協力してはくれないだろうか。」
PCの画面に実験に参加しますか?『YES』 『NO』の文字が映し出される。
嫌だな。失敗するかも分からない実験には協力したくない。
そう思って『NO』をクリックしようとしたその時、画面の先の老人が話しかけてきた。
「あー、今の君の行動を当てて見せよう。断ろうとしているね?こんな胡散臭い研究に参加したくない、と。」
図星だ。思わずカーソルを止めてしまう。
「そうだと思った。事前に報酬の一部を支払わせてもらうよ。」
ピコン、と電子音がなった。
「今、君の口座に1億円振り込んだ。成功報酬はさらにこの2倍だ。是非、受けていただけないだろうか。」
合わせて3億か...心が揺れる。
このまま生きていてもどうせつまらない人生を送るだけになるだろう。
どうせなら、誰も経験したことがないような事をしてみようか。
そう思い、俺は「YES」をクリックした。
「協力ありがとう。では、すぐに準備しよう。君はそのままで大丈夫だ。少し待っていてくれ。」
5分程して、老人がまた話しかけてきた。
「準備が出来た。では、君に会えるのを楽しみにしている。到着したら使者を送る。動かず、待っていてくれ。」
コクリ、と頷く。彼が満足そうに微笑むと、PCが強い光を放つ。
思わず目を瞑ると、体がぐにゃりと変形するのを感じ、思わず意識を手放した。
目を開けると、そこは別世界だった。
目の前にあるのは...駅だろうか。たくさんの人がいる。
動くな、と言われたことを思い出し、キョロキョロと周囲を見回していると、建物の奥から1人の女性が駆け寄ってくるのが見えた。
「貴方、おじいちゃんに連れてこられた人?」
「ここに来る前、確かに老人と話してた。」
「そ、なら貴方が過去から来た人ってことね。」
女性は手を差し出してきた。
「私は相川恵、ここで、あなたの補佐を務める者よ。これからよろしくね。」
「うん、これからよろしく。」
「身分とかはこっちで用意したわ。名前呼ばれた時に反応できるようにしときなさいよ。」
そう言って恵はいくつかの書類を取り出した。
身分証明書の類だろう。1番上のカードを確認すると、自分の名前が確認できた。
「オバタ...ソウスケ...」
「ええ、ここでのあなたの名前は小幡蒼介。改めてよろしく、ソウスケ。」