ダイスケは部屋から外を見下ろすと水も食料も少ない中で懸命に暮らすサンドリムの住人が目に映る。
「俺たちだけこんな贅沢してて良いのかな、シルヴァーナ」
「この窮地を私たちが救いに来たのよ。少しぐらいの贅沢は許されるわ。たくさん食べて私に沢山精力をよこしなさい。」
「それもそうだな、気にせず食うべ」ガツガツ
「…………」
「…………」
「二人ともダイスケみたいにしっかり食べないと明日倒れてしまうよ」(´~`)モグモグ
「今はお前たちの感性をとても羨ましく感じるよ。」
エレナとアリアはサンドリムの現状を見て目の前の豪華な料理の数々に手が進まない。
美味しいのに……
晩餐会の間に街一番の商人を名乗る男に話しかけた。
「商人さん商人さん。」
「なんでしょう?召喚士雑」
「アクセルボアを1ダース買わないか?」
「なんと!?」
これはシルヴァーナの入れ知恵である。
ダイスケの捕まえたアクセルボアはファスターでは安く買い叩かれてしまう。
それをこのような食糧難の場所で売りつけようという悪魔の囁きである。
「俺のアクセルボアはユニークスキルのお陰で見た目が違うから驚かないでくれよ…『サモン』」
「おお、こんなに丸々と太ったアクセルボアは初めてだ。」
「どうだ?急な遠征で数を揃えられなかったんだが、1ダース7000Gで買わないか?」
「買う!買わせてもらおう!」
「毎度ありー。」
契約書にサインして用意された檻にリリースすると商人は小躍りしていた。
それを見ながら一人の部屋に戻る。
「はー、緊張した〜」
「もっとふっかけろって言ったでしょうが」ガブッ
「いたたたたたたたたたた」
「お貴族様の信用と食糧難を盾に吊り上げ交渉するのが冒険者でしょうが!」ガブッガブッ
「無理だよぉ!俺交渉とかやったことなんだよぉ!!」
「アレは20000Gでも安かったのよぉぉマナドレイン』!!」
「あばばばばばばばばっ」
やめてシルヴァーナ、俺死んじゃう……
「あっ………」
その日は死んだようによく寝れ
件のサンドリムの遺跡は近くにある。
しかし、何故か遺跡の近くだけ砂嵐が吹き荒れている。
「吹き荒れてんねぇ。」
予定通り調査に出たが直ぐに躓いてしまった。
「まずは謎解きをしないといけないな」
「謎解きでどうにかなるものなのか?」
「どうにかなるんじゃない?」
「…………ここに古代語の石板があるよ。」
「アリア、読んでみてくれ。」
「『風の文様を読め』って書いてある。」
「へー…………って読めるかぁ!」
「いや、読めるんじゃないか?ルーク。」
「ああ、多分、ダイスケも読めると思うよ………よく見てみなよ。」
「はぁ?んなわけ………………」
よくよく見ると風が一定区間で方向が変わっている。
「すげー。読めるわー」
「アリア。右右左だよ。」
「はい。解けた。」
アリアが石板を動かすと砂嵐が一部収まり、遺跡の入り口が現れる。
「おー、ファンタジー!」
「さっさと進みなさい。」
「うっす。『サモン』カツ、モッチ。探知を頼む。」
「ぷぎっ」モチモチ
「ンモッチ」モチモチ
二匹に周辺の気配を探らせる。
「なんでスライムにも探知をさせてるの?」
「ヴァレリアさんが前にスライムの育成には召喚士の性格が出るほど多岐にわたるんだって教えてもらったんだ。だから、色んなスキルを覚えてサポーターになってもらいたいんだ。」
今のところ罠はなさそうだ。
少し進むと少し開けた場所に出る。
そこには巨大な彫像が鎮座していた。
「「メッチャ動きそう……」」
「くっそぉおお、このバカと一緒の思考になってたぁ」ガブッ
「いってぇぇ理不尽だぁあああああ!」
「おーい、奥の扉は鍵がかかってるみたいだー!」
噛まれている間にエレナさんが扉の確認をしてくれようだ。
「それで、カツとモッチは何か見つけたか?」
「ぷぎっ」モチモチ
「モッチ」モチモチ
「そうか。見つけてないか……おーい、シルヴァーナは上を探してくれー!」
あれ?エレナさん、最近俺より召喚獣達と話してないか?
話し相手も失い、召喚獣達も出払っている今。
やることを失ったので巨大な彫像の台座が座るのにちょうど良さそうなのでそこで待つとことにした。
「あぁー。暇だぁー。」
俺はそのまま後ろに倒れこみ彫像を見上げる。
凛々しい彫像の顔はどこかを見つめている。
「……出来のいい彫像だなぁ……」
「ここいいねぇ。僕も休もうかな。」
ルークも戦力外通告を受けたらしく隣に寝転ぶ。
「なぁ。ルーク。」
「なんだい、ダイスケ。」
「彫像の目が動いてる気がするんだけど……」
「そうだね。さっきからエレナを目で追っているね。」
「多分ギミックだよなぁ。」
「そうだね。」
「伝える?」
「シルヴァーナが先に気がついてもうそれを考慮に入れてるよ。」
「そっかー。」
本当に俺たちは戦力外のようだ。
「あ、解けた。」
「「やったー」」
(いいなぁぁ、アイツら楽しそうだなぁ)
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ
「なぁルーク。」
「なんだい、ダイスケ。」
「揺れてね?」
「そうだね。君も避けたほうがいい。」
気がついた時にはルークは台座から離れていた。
「ヤバっ」
ドゴーンッ
巨大な彫像の拳が振り落とされる。
「気がついてるな先に言え!」
「君なら避けられると思っていたよ。」
全員戦闘態勢になる。
「サンドゴーレムよ。気をつけなさい。」
「ああ、そうみたいだな。」
奇しくも俺たちの予想が当たっていたことになる。
今非常に良くないことはタンク役のエレナさんと後衛職の俺の場所が離れていて俺が一番敵に近いこと。
「すまん!ダイスケ、なんとかもう一発しのいでくれ!」
「りょーかいです!」
「ダイスケから離れろ……」
ルークが剣撃をお見舞いするがサンドゴーレムに効果は薄いようだ。
「『サモン』クロ。何とか距離を離れるぞ!」
「わふっ」モフモフ
クロに乗って距離を取ろうとするがまだサンドゴーレムが持っていた剣の攻撃範囲内である。本当に一発は何とかする必要がありそうだ。
サンドゴーレムが剣を振り上げる。
「ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい。」
振りおろし始めた音が聞こえる。
「クロ!横に飛べ!」
「わっふ」モフモフ
ドーンッ!!
「「ダイスケ!!」」
「「クロ!!」」
衝撃で吹き飛ばされたがなんとか無事である。
(アレ?今、クロの方を心配してる奴いなかった?)
「ダイスケ!大丈夫?」
「ああ、なんとか。クロもほとんど無傷だ。」
「やっと合流できた。クロはアリアを乗せて逃げ回ってくれ。」
「わふっ」モフモフ
「シルヴァーナはバフを頼む」
「はーい。『チアフルエール』がんばれーファイト〜」
えー。みんなエレナさんに従順になってるー。
「ダイスケ、よく耐えてくれた。陣形は整ったからもう大丈夫だぞ。」
「ありがとうございます。」
「ルーク!今回お前の剣撃は通じない。足止め頼む!」
「………わかったよ。」
(あいつ、すっげぇ不服そうだな)
「アリア!魔法攻撃を頼む!」
「わかってる」
「『ウォークライ』『アテンション』」
サンドゴーレムがエレナを注視する。
「来い!『ドーン・リフレクト』!」
サンドゴーレムの剣撃を盾で受けると閃光を放ちパーティー全体の防御力を上げる。
「すっげぇ。」
「私のユニークスキルだ。」
「ふふっ流石はエレナ……とりあえず足止めはコレでいいかな。」
ルークがサンドゴーレムの足を切り刻むとバランスを崩す。
「【深淵の底よ、忘れられた嵐の揺籃よ、永遠の眠りから目覚めよ、怒涛の抱擁で湧き立て『アビサルサージ』】」
水流の渦が発生しサンドゴーレムを飲み込む。
「『サンダー………「アリア。僕がやる」
ルークが剣を振るい、ゴーレムを切り刻む。
剣を収めるとゴーレムは水と混ざり泥になると。
ゴゴゴゴッという地響きとともに閉ざされていた扉が開く。
「すげー」
「エレナ、中に宝石が入ってたよ。」
「後で使うかもしれないから預かっておこう。」
四人揃って奥に進むと今度は光り輝く廊下にたどり着いた。
「……古代文字だ。」
「うわっ。なにこれ。」
光っているのは壁の古代文字であった。
バタンッ
後ろの扉が固く閉ざされる。
「おそらくまたコレを解読して進めってことね。」
「「俺(僕)は隅っこにいる」」
「ああ、そうしてくれ。」
ダイスケとルークは周りを警戒しながらどっちのほうが垂直跳びで高く跳べるかを競い始める。特に理由はない。なんか気になったからやってるだけである。
そして、直ぐに一人加わる。シルヴァーナも古代文字はお手上げなので今回は戦力外となってしまったのだ。
「ねぇねぇ、これ楽しい?」
「「楽しい」」
「そう……なんか、あの古代文字が目に見えない?」
「「確かに…」」
「そんでさ、飛び跳ねてる二人を目で追っかけてない?」
「それは………不気味だね」
「なんか光ってね?」
「………よけようか。」
「そうだな。」
ビチュンッ
3人でその場を離れるとそこに光の矢が放たれ、地面に弾けて霧散する。それから、一番動きが速かったルークを追って光の矢が何度も打ち込まれる。
「あー、エレナさん。アリアさん。早く解読したほうがいいかも。」
「……『光の矢は快活な者を狙う』って意味らしいよ。」
「動ける奴を疲弊させる空間かぁ。」
「ルークは少しぐらい疲れたほうがいい。」
ご尤もである。
(いや、最大戦力が疲弊したらダメでしょ。)
「ルーク。その光の矢は鏡で跳ね返すのが正解。目標はあそこ」
「わかったよ。」
ルークが剣を抜くと刀身で光の矢を反射させて的に当てるとコトンと宝石が降ってくる。
「「おぉ」」パチパチパチパチ
「ふふっ、簡単だな」
「それで、扉は…………」
ガコンッ
どうやら扉は地面にあったらしい。
俺たちはそのまま落ちる。
「やっべ、『サモン』モッチ」
「モッチ」モチモチ
自分はモッチに包まれて無事だったが他の人達は………
アリアは魔法で軽減し、ルークは普通に着地してた。
エレナさんはシルヴァーナと共にゆっくりと降りてきた。
「危ないところだった助かったよシルヴァーナ。」
「お安い御用よ」
(いやおかしいだろ)
シルヴァーナに一言言ってやろうと近づいたとき唸り声と共に魔獣が目を覚ました。
「我の部屋へようこそ小さき者共よ。」
下半身はライオン、上半身は女性。
炎を纏い、炎の息を吐く、巨大な魔獣。
『フレイムスフィンクス』である。
(くそっ。見えそうだけど見えねぇ………)
何も着てないので色々見えそうなのだが、猫のような重箱座りをしていて見えないのをダイスケは悔しがる。
「我が息吹は熱く、全てをのみ込む。だが、触れずとも心を焦がす物は何じゃ?」
「わからん」
「答えは『太陽』だ。サンドリムの市民達は太陽に身も心も焦がされている。」
「正解じゃ。」
燃えるスフィンクスの後ろにある燭台に炎が一つ灯る。
「砂漠に舞い、足跡をた残さず消える。炎のごとく熱く、雪のごとく冷たくなるものは?」
「………」
(わっかんねぇ………)
「答えは『風』じゃない?暑ければ『熱風』寒ければ『吹雪』になるから」
「正解じゃ」
燭台に2つ目の火が灯る。
「燃え上がり灰となり再び蘇る。神殿の試練のごとく、終わりなき炎の輪とは何じゃ?」
「………あー、『フェニックス』じゃね?」
「正解じゃ」
「なんだお前ら。なんでそんな偽物を見るような目をするんだよ。」
「『マナドレイン』」
「あばばばばばばばばばばっ」
「大丈夫、このダイスケ様は本物よ!」
「触れれば焼け、離れれば冷え、砂漠の心臓に潜む。民の命を奪う、静かなる炎とは?」
「めっちゃ難しいんだけど。」
「答えは『干ばつ』じゃないか?」
「正解じゃ」
燭台に4つ目の火が灯る。
「はっはっは!愉快じゃ。また寝れるわい。」
スフィンクスはまた眠りにつこうとする。
「え?終わり?ダンジョンの先に進めるんじゃないの?」
「なんじゃ?我は汝らと遊びたかっただけじゃ。ダンジョンなんぞ知らん。」
「………じゃあ倒してもいいんだよね?」
「ルーク。あの巨体が暴れるとどうなるかわからない。襲いかかるなよ?」
「なんじゃなんじゃ、おぬしは剣士か?そんな貧相な身体と剣で我の炎が切れるとでも………」
「別に斬る必要もないよね?」
「ハハハハハッ愉快愉快、剣も抜かずに我に……ドゴンッ
ルークの鞘付きの剣に顎を跳ね上げられたフレイムスフィンクスは後頭部を天井に強打する。
「なんじゃ貴様ぁぁ!」
フレイムスフィンクスが怒り炎を操ってルークを焼き殺そうとするが、抜いた剣身で炎を切られ、鞘でまた顎を跳ね上げられて後頭部を強打する。
「別に、その目、もらってもいいんだけど。」
ルークがフレイムスフィンクスの髪にぶら下がり眼前に迫る。
「我は本当に知らんのじゃ!ずっとここに閉じ込められただけなのじゃ!」
「ル、ルークそこまでに……」
「ぎゃああああああああああ!!!」
ルークは容赦なく右目に剣を突き立てる。
「ダイスケ!スフィンクスをキャプチャーしろ!」
「わかった。『キャプチャー』!ルーク、なんでそんなにキレてるの?」
「さっきの質問は1問を除いて外の状態がわかる奴の問題なんだよね。そんな奴が知らぬ存ぜぬは通らないよね。」
「『サモン』」
「痛いのじゃぁあああああ………アレ?痛くないのじゃ」モチモチ
「「「ちっちゃ。」」」
巨大なフレイムスフィンクスはシルヴァーナのような小さくて丸っこい姿に変わっていた。
「奥への進む道を教えてもらおうか。」
ルークはフレイムスフィンクスの首根っこを掴み上げて剣を突きつける。
「鍵は燭台なのじゃあ!動かすと開くのじゃぁ!」
言われた通り燭台をズラすと壁が消えて道が現れる。
「……燭台の飾りの宝石。コレ集めてる宝石と一緒だ。」
「これは『太陽の宝石』なのじゃ。アーティファクトを動かすエネルギー源になるのじゃ。」
「へー」
ルークが手を離すとフレイムスフィンクスはダイスケの背中に隠れる。
「我アイツ嫌いじゃ。」
「そりゃ怒るだろうよ。」
「先に進もう」
通路を進む間にシルヴァーナと共にフレイムスフィンクスと話した。
名前は『ソラリス・リドル』ずっとここで寝ていたらしい。
頭にシルヴァーナ、背中にソラリスをくっつけているので重いのだが、この間シルヴァーナに重いって言ったら死にかけるまで『マナドレイン』をかけられた。辛い。
「それ熱くないの?」
「熱くないけど、温い。」
そんなこんなで最深部。
『太陽の祭壇』へたどり着くことができた。
「あそこ、台座の上にはめ込むくぼみがあるよ。」
「手に入れた宝石をあそこにはめればクリアだよなぁ…
「そうだろうな。」
「そのためにはあの巨神像を倒さないといけないと…………謎解きもなくてシンプル。簡単でいいじゃないか。剣も持っているし。」
宝石をはめる台座は
『太陽の巨神像』は剣を振り上げると我々に向けて叩きつける。
「『ドーン・リフレクト』……くっ。」
「『プロテクション』」
『太陽の巨神像』の一撃はエレナ一人では耐えきれるものではなかった。
「誰も……邪魔をしないでくれよ。」
ルークの放った殺気に敵は後ろに退く。
「じゃあ、ルークの兄貴はアイツを締めてくだせぇ。俺は隙を狙って宝石をあそこにぶち込むんで。」
型に乗ったシルヴァーナが両手で一つ、ダイスケが片手に一つづつ宝石を持ち準備体操をしている。
「なにっ、いつの間に宝石を取っていたんだ。」
「まるで盗賊ね。」
「二人とも俺にはサポート甘々で頼むぜ。ルークと違って雑魚なんで。『サモン』クロ」
「わふっ」モフモフ
「『ヘイスト』!」
ルークが『太陽の巨神像』と斬り合いをしている間にダイスケが宝石のはめ込みを狙う。
シャドウウルフのクロに跨りエリア内を疾走すると、人間サイズの『太陽の神像』達が召喚され、襲いかかってくる。
その間をクロは速度を落とさずに突き進む。
「『サンダーアロー』『サンダーアロー』『サンダーアロー』」
アリアの援護も受けて1つ目の宝石をはめ込む。
「次!」
「やられた。台座は向こうよ!」
どうやら誘導されたらしく大量の『太陽の神像』が固めている反対側に台座がある。
「んじゃ、いってらっしゃい!」
「うぇ!?ああああああああああああ!」
「『サモン』カツ!届けてやれ」
「ぶー!」モチモチ
カツが投げ飛ばされたシルヴァーナの背中に突進しそのまま神像の大群の上を高速で通過していく。
「ああああああああああ!!」
そして、台座にシルヴァーナが叩きつけられて倒れ、カツが代わりに宝石をはめ込む。
「………よーし、次っ。」
バゴンッ
2つの宝石がはめ込み終わったとき、高速で移動するダイスケの目の背後にルークが叩きつけられる。
「ルーク!?大丈……」
ドゴッ
『太陽の巨神像』の手刀が腹部に当たり吹っ飛ぶ。一瞬意識が飛び召喚獣たちが全員戻される。
「ゴホッゴホッ、エレナさん達は?」
吹き飛ばされた先で2人を探すと大量の『太陽の神像』に囲まれていた。
「くそっ。」
絶体絶命のピンチである。
「ふふふふふはははははははははは!」
「ルーク、お前……」
利き腕を折られたルークが左手で剣を握り笑いながら『太陽の巨神像』へ歩いていく。
「クソがよ………『サモン』モッチ、カツ、リーさん、クロ、シルヴァーナ。宝石を台座にはめてくれ。作戦は『おまかせ』で頼む。」
『太陽の神像』達が身体を重ねて壁を作り我々に向けて少しずつ近づいてくる。
「このままだと出血と魔力切れでアンタ死ぬわよ」
「なら早めに宝石をぶち込んでくれ」
後は身体を壁にもたれかけさせて休む。
「……………なんだよルーク。お前、右利きじゃねえのかよ。」
左手に剣を持ったルークは生き生きと『太陽の巨神像』と切合を繰り広げていた。
召喚獣達はクロとカツ、シルヴァーナをつかった一点突破のロケット多段ブースター方式で『太陽の神像』の群を突破するらしい。
(頼むぜ俺、まだ、気絶できねぇんだよ)
視界が掠れる、魔力切れも近い。
リーさんとモッチが敵を食い止めている。
クロが助走をつけて『太陽の神像』の群に向かって飛びかかると。背中からシルヴァーナを背負ったカツが飛び立つ。そこからシルヴァーナが飛び立ち速さで、武器を投げたり、ラグビーのリフトみたいな事をしたり、あの手この手で止めようとする敵を掻い潜った。
「ダイスケ!できた……」
シルヴァーナが振り返ろうとした瞬間、魔力切れで召喚獣達が消える。
(ああ……もう無理……)
ここでダイスケの冒険は終わり………
ということは起こることはなく。
「いやぁー死ぬかと思ったー、野菜うめー」モシャモシャ
「流石にSランク魔獣は倒せなかったから助かったよ」(´~`)モグモグ
現在、サンドリムは数カ月ぶりの雨が降っている。
恵みの雨である。
「ダイスケすまない、公務のためもう少し滞在することになった。」
「別にいいよ。少し休みたいし。」
「それはよかった……そうだ、サンドリムの商人たちが私たちに露天風呂を用意してくれたんだ。それで入浴の順番を相談したくてだな……」
順番はジャンケンでルークがアリアに負けて男が後になった。
それはそうと、俺はとある準備を始める。
「ダイスケ、何やってるんだい?」
ダイスケは紙に用意された露天風呂の図面を引いていた。
「ルーク、女子が露天風呂に入るって言ってるとき、男子は何をするのが礼儀だと思う?」
「露天風呂に入浴のルールがあるのかい?」
「ああ、女子の露天風呂を男子は本気で覗こうとするのが礼儀なんだ。」
「それは本当かい?」
「ああ、本当だ。おそらくアリアの認識阻害魔法が使われて遠くからは覗けなくなってるだろう。だから俺たちは物理的に入るしかない。」
「それなら普通に入ればいいだろう」
「バッカ野郎。それじゃあ失礼だろ」
「そうなのかい?」
「そうなんだよ。彼女たちにバレないようにやるのが礼儀なんだよ。」
「本当なのかいシルヴァーナ」
「ええそうよ。」モチモチ
「そうなのか。」
外見が丸くて忘れがちだがシルヴァーナはサキュバスである。
この手の煩悩を高めるような行動は彼女の大好物であり、図面作成のための偵察まで本気でこなしてくれている。
「じゃあ僕もやらないといけないね」
ついでにサキュバス自体が放つ微量な淫気がルークの判断を間違えさせる。
「……よし、侵入ルートは決まった。」
建物の縁をつたい、壁を登り、露天風呂のある屋上の柵の裏まで来た。
アリアの認識阻害魔法のおかげで我々も他の人から見えない。
やる気になったルークに正気に戻られると困るのでシルヴァーナを頭に取り憑かせる。
僥倖、圧倒的追い風、負ける気がしない。
俺たちの桃源郷のために俺は行く。
「せーので見るぞ」
「ああ」
「せーのっ!」
次の瞬間、俺が見たのは桃源郷ではなく眼前に迫る拳大の石であった。