「うぅ……身体が痛い」
「エコーリヴァーに着きましたよ。」
「え?もう?はやいですねぇ〜」
「自分たちはギルドで1泊する予定ですけど。」
「奇遇ですね。それ、私もなんですよ。」
順調に進んだのでエコーリヴァーには日没前に着くことができた。ギルドの受付にてギルドカードを見せるとすぐに手続きが済み鍵も借りれた。道中ローチェがしたためたソフィアさん宛ての手紙も送ってもらえた。エステラさんとは一度ここで別れる。
彼女はここの教会にいる先輩星読みに到着の挨拶に行くそうだ。
「明日、朝には出発するので」
「わかりましたぁ」
「では、また明日。」
「はーい。」
「さて、物資の補給だ。」
これまでの経験からシルヴァーナを頭に乗せ、ローチェをバックパックに入れて買い物に行く。シルヴァーナは荷物持ちである。
ローチェは様々な索敵をごまかせてドラゴンの存在感を消すことができるし買い物のサポートもできる。というか、俺はローチェの言う通りに買い物するだけである。
「『倉庫市場』で最初に『台車』を借りましょう。塩とパンと干し肉、干し魚。野菜などの物資を買いましょう。マリタイム製の『冷蔵樽』と『ランタン』も欲しいですね。調理器具はまだ最低限で大丈夫。これから行く『ジェムクラウン』や『ハンマーハイヴン』の方が良いものが売ってますので。」モチモチ
明日以降、山を登り鉱山の街や鍛冶の街に行くことになる。
そこではここより安価に金属加工品は買い物ができるらしい。
「水は最悪買わなくても大丈夫です。私が作り出せるので」モチモチ
うわぁ……水魔法ってチートだぁ。
「香草も買いましょう。」モチモチ
「はい。」
ローチェさんが旅のバランスブレイカー過ぎると思ったが、そもそもドラゴンが召喚士のバランスブレイカーなので何も変なところはない。魔法最高。ドラゴン最高。
シルヴァーナも力が強いので重い台車をスイスイと動かす。さすが魔獣。
買うものを揃えてキャラバンに戻り、車載する。
準備万端である。
ギルドで一晩を過ごし次の日の朝、ギルドの待合室でエステラを持っていると。街の男が息を切らせてギルドに入ってきた。
「大変だ大変だ!『影の追放者』が『星読み』を去って行っちまった!」
大慌てで依頼申請をする男を横目に
「なあローチェ。『影の追放者』って?」
「『アストラリア教』の異端者というか、アンチ集団の総称ですね。」
「へー………大変だね。エステラさんはまだ部屋で寝てるのかな?」
気になってギルド宿泊の受付に聞いてみると
「エステラ様は今朝早くに部屋を出られてますけど………」
ダイスケは男が書き上げたギルドの受付嬢が書き上げた依頼書を契約サインの前に奪い取る。
「俺だよ!」
「我々が助けに行きますので。また報告します。」モチモチ
急いでクロとジャックを召喚してエステラの匂いを追う。
「マジかよ。『巡礼の途中の星読み』って絶対にアイツじゃん。」
「なんで朝は無駄に早いのよ!」モチモチ
「まさかですね……」モチモチ
「というか、なんで国の宗教にアンチがいるんだよ!」
「『星読み』って占星術で未来を見通して国王や領主に助言を与えるんです。それが気に入らない連中の集まりなんですよ」モチモチ
「やっべぇ、それ聞いたら俺もイラついてきた、助けなくてもよくないか?」
悪態をつくが追いかける足を止めない。
クロが先行し、ジャックに乗った俺たちが後を追うのだが、街を出て森に入ると二匹の様子が変わる。走りながらも威嚇を始めたのだ。
「……血の匂い。」モチモチ
「は?」
「ちょっまずいかも。みんなも出して」モチモチ
「わかった、『サモン』」
ローチェとソラリスが黒に乗り換え先行する。
こういう時は召喚獣の範囲制限が歯がゆい。
そして、血の匂いがダイスケでもわかるようになったとき、『影の追放者』達が『星読み』を攫って何をしたかったのかがわかった。
漂う血の匂いは儀式殺人によるものだった。
逆さ五芒星に巨大な釘で貼り付けられ腹を切り裂れた。目に光のないエステラと『影の追放者』の一人の死体が残されていた。
「これは……もう死んでるのじゃ」モチモチ
「そうね。クロとジャックは犯人の形跡を探して」モチモチ
「…………なんなんだよこれ!」
「コレって『星の邪神』召喚のための儀式じゃない?巡礼を終えた『星読み』が必要なんだけど。……失敗してる?」モチモチ
「なんなんだよ!!なんなんだよそれ!」
つまりエステラは人違いで攫われたということだ。
「おかしいだろ!こんなの!儀式殺人?なんだよそれ!」
「大昔の魔獣を召喚ための儀式よ。『キャプチャー』が開発される前は魔獣の契約には生贄が必要だったのよ。私も昔そうやって召喚されたんだから。」モチモチ
シルヴァーナがバツの悪そうに話すので、気持ちを落ち着かせる。
「クソがああああああああああああああああああ!!!」
空に叫んで気持ちを落ち着かせる。
「………はぁ……はぁ。」
「………あの〜」
「なに。」
「すみません」
「何よ」モチモチ
「そろそろ降ろしてもらっていいですか?」
「「「!!!!!!」」」
全員の視線が死んだはずのエステラに集中する。
俯いていた彼女の顔が確かに俺を見ていた。
「きゃああああああああ!!!しゃべったああああああああああああ!!!」モチモチ
「ちょ、まって!やめて!ぎゃあああああああああ!!!」
発狂したローチェが口から光線を吐く。
枷が灰となって消えたがエステラ?だけが残っていた。
「いたたたたっ。」
「ダイスケ!こいつ!ゴーストか星の邪神なのじゃ!」モチモチ
「あっつ!私です!私ですって!ぎゃああああああ!!!」
ソラリスが炎で焼くのだが、スライムが一瞬で蒸発する火力で星の邪神?は残っていた。
「倒せない!?ダイスケ!『キャプチャー』よ『キャプチャー』!封印するわよ!」モチモチ
「ちょ、それやめて!それ、大変なことになるから!やめっいった、あっつ!」
総力を尽くして『星の邪神エステラ』の動きを止めている。
「そうだな、『キャプチャー』!」
エステラは召喚領域へ送られる。
少なくとも人間ではなかったようだ。
「びっくりしたぁ……」
「危なかったですね」モチモチ
「それはアンタよ」モチモチ
ローチェはホラーが苦手。覚えておこう。
「うーむ。にしても、邪神やゴーストにしては手応えが変だった気がするのじゃ。」モチモチ
「そうなのか?」
「うむ。変な感じじゃ。だから『星の邪神』を召喚するのじゃダイスケ。」モチモチ
「ちょ、ちょっと、待ってください。心を落ち着かせるので。」モチモチ
「ローチェ。落ち着いて。全然大丈夫だから。」モチモチ
「そう。そんなに強くない。全然倒せる。」モチモチ
「そろそろ、いくぞー。『サモン』」
「なんてことしてくれたんですか!?」モチモチ
現れたのは邪神ではなくモチモチ姿の天使であった。
「私、大天使なんですよ!?しかも視察中なんですよ!人間にバレてもダメなのに召喚士にキャプチャーなんて………もう天界に帰れないですよぉおおおお」モチモチ
ワンワンと泣き始めるエステラ。
なんか見覚えあると思ったけどシルヴァーナだ。
「…………」モチモチ
「…………」モチモチ
「いや、なんで捕まってんのよ」モチモチ
「戒律で人間に攻撃なんてできないんですよ。だから事が住んだら抜け出そうと思ったのに、あなたたちが来るのが早くて。このままだとフレイムスフィンクスに火葬されそうだから、計画変えて助けてもらったら気を消して逃げようと思ったのに……」モチモチ
「いいこと教えてあげるわ!この鏡を見なさい!」モチモチ
「………え、ナニコレ……小さくなって……え!?」モチモチ
「今のアンタ、よくて『キューピッド』よ」モチモチ
「NOOOO!!NOOOOOOOOO!!!」モチモチ
「なあローチェ。キューピッドと天使の使いってなに?」
「神の使いって意味では一緒だけど、仕える神様が違うのよ。しかも今回は階級も落ちてるし、やることも逆。戦闘要員の大天使『アーク・エンジェル』が仕える神も違う位も下で愛を伝える『キューピッド』に見られるのは嫌でしょう。」モチモチ
クロとジャックは『影の追放者』の残りを追うことができなかったらしい。
駄々をこねるクソガキ大天使様を抱えてエコーリヴァーに戻る。
ローチェが作った報告書で『不完全な召喚をされた星の邪神にエステラの遺体は飲み込まれ、我々がそれを処理した』ということにして街を出発した。残されていた『影の追放者』の遺体についての調査はギルドの方でやるそうだ。
キャラバン内にて樽で作られた召喚獣用の部屋がもう一つ作られた。
「大型キャラバン買っといてよかったな〜。」
「シクシク……」モチモチ
部屋の中でエステラはまだ泣いている。
「まさか、天使までキャプチャーするなんて……ダイスケ。アンタ才能あるわよ。」モチモチ
「ええ!?そうかなぁ。」
ド直球に褒められるのは珍しいことなので照れる。
良い気分だ。
これからフェニキシアン連峰を登り数日をかけて向かう『ジェムクラウン』と『ハンマーハイヴン』は宝石と鉱石の採掘と金属加工が有名な街達で『ジェムクラウン』には芸術的な装飾品の職人が『ハンマーハイヴン』には優秀な鍛冶師が沢山いるそう、そのために足を運ぶ冒険者もいる。ルークが好きそうな場所だ。
「エコーリヴァーで色々資料を貰ってきたので、欲しいものをチェックしておいてください。」モチモチ
「せっかくだからナイフ欲しいなぁ。」
職人による一点物のナイフ。ロマンである。
「アンタの場合は杖でしょうが……」モチモチ
「確かに。」
「『幻獣の囁き杖』も確かに良い杖なんだけど、そろそろ不味いんじゃない?」モチモチ
あの爆発実験で俺の愛杖は少しガタが来ている。
買い替えても良い頃かもしれない。
「せっかくだから杖用の触媒も取りに行きましょうよ」モチモチ
「それアンタが石掘りに行きたいだけでしょ?」モチモチ
「もちろんそうよ!でも、私が居ればより良い魔法石見つけることができるわ!」モチモチ
「特に急ぐ旅でもないし、それでもいいかな。」
「よしっ」モチモチ
『ジェムクラウン』の手前にある『ハンマーハイヴン』で採掘道具を購入し『ジェムクラウン』のある『ジェムヴェイン山』で採掘を行う計画になっている。
おそらく最初から彼女はこうする予定だったのだろう。
もう、それで良い。
朝からショッキングな事が起きて疲れたので一度寝ることにした。
目が覚めると揺れがない。
休憩していたらしい。
アイツラの声は聞こえるが少し遠い。おそらくキャラバンの外だろう。
扉を開けると我々のキャラバンは山道に入っており、道幅が広い平地に停められておりクロとジャック以外のウルフパッカー達は召喚が解除されていた。
「クロとジャックもお疲れ様。」
「「わん」」モフモフ
さて、ウチのワガママレディ達はどこだぁ?
「おはよう。」
「「「「おはよー」」」」モチモチ
どうやらキャラバンの屋根に居たらしい。
エステラも元気を取り戻していた。
「なんもねー」
「そりゃ、山の中だからね。」モチモチ
「魔力は大丈夫そうですか?」モチモチ
「おかげさまで大丈夫ー」
シルヴァーナによる『マナドレイン』で鍛えられた最大魔力はかなり高い。この間の爆発実験でもさらに鍛えられたので。皆が本気にならなければ自分の自然回復だけで減ることはそんなにない。
思えばワガママレディ達の燃費の良さ(それでもクソ重いが)は俺のユニークスキルのおかげかもしれない。
戦い始めるとすぐに魔力切れになるので戦闘に参加させる奴は選ばなければならない。
「エステラって何できるの」
「光属性の魔法なら大体できるよー。あと、これ!『イクイップ』」モチモチ
小さな剣と盾が現れる。
「コレもちっちゃいのか……でも。普通に戦えるよー」モチモチ
「そりゃよかったー。回復はー?」
「自分はできるけど他の人は無理ー」モチモチ
「そっかー」(´・ω・`)
俺を労れる奴は確保できてない。
ローチェさんも回復魔法を使えるには使えるが得意じゃないらしい。
天使さんには期待したんだけどね。
仕方ないね。
肩をすくめていると四人ともフヨフヨと降りてきた。
「どれぐらい休んでたんだ?」
「15分ぐらいですね。そろそろ出発ですよ。」モチモチ
「そうっすか。ジャック行けそう?」
「ワンっ!」モフモフ
元気な返事、大丈夫そうだ。
「『サモン』みんな頼むよー」
キャラバンは山道を登っていく。
唯一代わり映えするものと言えば対向から馬車が来たときである。
大量のウルフパッカーがシャドウウルフの先導の元に大型商業キャラバンを引く様子は驚かれはするがあり得ない状態でもないらしく。馬車の運転手たちは驚いた顔をするが、窓から手を振って挨拶すると返してくれる。
そんな中で
「この先、変な連中が集まってるよー」
「ありがとうございまーす。」
すれ違った馬車の運転手が情報をくれた。
この先には昼を食べる予定の休憩所の広場があるはずだ。
しばらく走ると目的地が見えてくる。
そこの広場には変わったキャラバンがいくつも集まっており、皆がキャラバンの前で語らっていた。
クロの先導でキャラバンをソイツらから離れたところに停める。
絡まれると面倒だ。
「ありゃ、『走り屋』だね」モチモチ
「『走り屋』って」
「野良の馬車レースやる連中」モチモチ
「へー。」
そんな頭◯字Dみたいなことする人たちいるんだ。
「まあ、俺には関係ないからいいや。」
「そうね。」モチモチ
「………お昼食べましょう。」モチモチ
「わーい」モチモチ
お昼は今朝用意してきたサンドイッチである。
街まで新鮮なものが食べれるのはここまでなのでありがたく食べよう。
お昼休憩も済ませて。
夜を越す次の休憩地点を目指して出発したのだが。
しばらくして、先ほど見た改造馬車たちが後ろから落ち着いてきた。
クロはいち早く気が付き、遠吠えを上げてウルフパッカー達に減速させる。
大型のキャラバンが改造馬車に比べると速度が遅いので道をゆず部のだろう。対向車もいないので今のうちに済ませようという考えだろう。流石クロだ。よく分かってる。
先頭の馬車が我々のキャラバンを追い抜きウルフパッカーの横を通り過ぎ、ジャックとクロを通り過ぎたとき。
「ワォオオオオオオオン!!!」モフモフ
ジャックが雄叫びを上げて大地を力強く蹴り始める。
「ちょ、え?なに!?」
「ワンっ、ワンワン、」モフモフ
「グルルルっ、ワン!」モフモフ
「くぅーん」モフモフ
負けるなクロ!!
「ワオーン!!!」モフモフ
ジャックの遠吠えにウルフパッカー達が毛を逆立たせる。
「おお、召喚士のにいちゃん。やる気かい。いいよ。やろうよ。スタートはあの大きな切り株からだ。」
「ワン!」モフモフ
「えっ、まって。不味いから!流石に!やめっ」
言い終わる前にジャックが切り株を通り過ぎウルフパッカー達が脚を力強く動かし始めた。
加速によりダイスケはキャラバン前方の出入り口から通路に転げる。
「え?なになに?」モチモチ
「ジャックが野良レース受けやがった」
「おー!イケイケ!ジャックー!」モチモチ
ソラリスも応援しないの。止めてよ!
なんとかソファ座り柱にしがみついて耐える。
「『プロテクション』!」モチモチ
「ローチェありがとう。」
「ジャックさん、負けないでくださいね。」モチモチ
お前もかよ!!
「ならお前らも飛んで持ち上げて手伝えよ!」
「野良レースで飛行はご法度ですよ。牽引用魔獣か馬だけでレースするものなんです。」モチモチ
「なんだよそのこだわり!」
「もちろん、直接的に速度に関する魔法もダメです。これは真の速さを求める男達の戦いなんです。」モチモチ
「知らねぇよ!!うわっ。」
急カーブの慣性でソファから転げ落ちる。
「あーもう。何やってんのよ!」モチモチ
シルヴァーナに支えられてソファに再度座る。
「このあと、ヘアピンカーブがありますが、私が道を作ります。」モチモチ
「わん!」モチモチ
「道ってそこ崖だけど!?」モチモチ
「ジャックさん描いてください……空中に描く最高の
「おいにいちゃん!!そこは崖だぞって、ええぇ!!」
嫌な浮遊感。
「大型商用キャラバンでドリフト!?」
「でも、振られたキャラバンが崖の外に飛び出ちまったぞ!」
キャラバンに近いウルフパッカー達も数匹崖の外に飛び出るが走るのをやめない。すると突然崖から岩が生えて足場になる。
「はっはーやるじゃねえか!!!でも次はキャラバンを逃がせる場所はねえぞ。」
「ワンっ!」モフモフ
右側が崖の左折のカーブを終えて今度は右折。
山肌が邪魔をしてキャラバンを使ったドリフトは使えない………
そう誰もが思っていた。
しかし、今度はジャックが崖に向かって地面を蹴り上げる。
すると、崖下の木々が一気に育ち足場になった。
そして右折のカーブの道をキャラバンがドリフトする。
「「ぎゃああああああああああ」」
シルヴァーナと俺は二人で柱に捕まりながら絶叫した。
「おいおいおいおい、ここまで食らいついてくるとは思わなかったぜ。でもこの先はさらに勾配がきつくなる。お前のその重い車体が牙を向くことになるぜ。」
「ガルルルルルルルッ」モフモフ
煽んなって。
「クソッあのウルフパッカー、やる気満々じゃねえか。」
「なんて奴だあんな血気盛んなウルフパッカーを育てるだなんて。召喚士はかなり凄腕の『走り屋』だぞ。」
違うって。
「シルヴァーナさん。『チアフルエール』です!」モチモチ
「え!、わかった!『チアフルエール』がんばれー」モチモチ
のせられんなって。
「ワオーン」モフモフ
「ワオーン「ワオーン「ワオーン」モフモフ
急勾配の登りをウルフパッカー達はその脚で全力で上がっていく。本来この坂の前で本日最後の休憩をする予定だったが無視される。
『チアフルエール』のおかげか急勾配でも差が広がらない。
「いやぁ。やるじゃねえか。峠を越えればこの先は下り。ロングレースと行こうじゃねえか!!」
「ワウウウンッ」モフモフ
止まって!峠の上が今日の宿泊地だから!
「ジャックさん。しっかり伝わってますよ。あなたの負けたくない気持ち。ここの地形はしっかり覚えてあります。どんなライン取りも自由自在に描いてください。」モチモチ
「この量の『テレパシー』は難しいのじゃ!早く終わらせるのじゃ」モチモチ
ソラリスお前も応援してるだけじゃなくて共犯かよ!
「それ、俺も混ぜろや!」
「嫌じゃ!」モチモチ
俺、主人なんだが?
本日のキャンプ地を通り過ぎ、
今度は峠の下りになる。
すると、ウルフパッカー達はジャックを残して自ら『サモン』を解除する。
そして、魔動キャラバンの牽引にコレまで並走していたクロが加わる。
魔動キャラバン用の牽引用ハーネスは召喚獣の意思でON/OFFできるのでクロにも着けていたのだがまさか初めて使うのが野良レースになるとは思わなかった。
そして、ここからはクロもやる気ということである。
今現状この状況を止められる者は存在しない。
峠の上で見物していた走り屋たちが閃光弾を発射すると。
前方からも閃光弾が発射された
「ふふっ『前方馬車なし』」モチモチ
「え?なんだって!?」
「この先、対向馬車はないから思い切り飛ばせって意味です」モチモチ
そっすか。
次の瞬間。
またあの浮遊感を覚えたあと、すぐに強い横G、そして変な感覚になる。
「おち、おちる!おちるって!!」モチモチ
現状にいち早く気がついたシルヴァーナが強くしがみつく。
「うわあああああああ!!!」
キャラバンが切り立った山肌を走っていた。
「なにぃ!!?」
次のカーブで強い衝撃と共にキャラバン後方への強い遠心力を耐えると、解放されたあとにキャラバンの先頭に向かってクロとジャックが走っていた。
キャラバンの前後が入れ替わり現在後ろを向いて走っていたのである。
二匹の後ろには勝負を仕掛けてきた『走り屋』が見える。
「もういいだろ!」
「何言ってるんですか!?完全に千切るまでやるんですよ!!」モチモチ
「はぁ!?」
クロとジャックはバックで走るキャラバンに飛び乗る。
「2人とも。このあとの広い直線の後のカーブで戻せるはずです!」モチモチ
「「ワン!」」モフモフ
我々はジャックのレーステクニックを侮っていた。
広い直線に入った瞬間ジャックが横に飛び出して体重をかけるとキャラバンが一瞬スリップして180度回転する。
何事もなく牽引して走り出すジャックと少し遅れて走り出すクロ。
あのローチェすら言葉を失っていた。
「今の一瞬でキャラバンをスピンさせて一瞬で進行方向を治しました。あのタイミングでないとスピンのロスで抜かれるのですが……流石ですジャックさん」モチモチ
んなことはいいんだよ!
下りではキャラバンの重さの差は無くなる。
『走り屋』も差は広がらないが攻めあぐねていた。
「このあと、大きなS字カーブがあります………ふふ。わかりました。貴方達の思い描いた道を進んでください」モチモチ
え!?なに!?怖いんだけど!!?
ジャックが『走り屋』を千切るために選んだルートはS字カーブをJの字に通ることだった。
崖の裂け目に飛び出す二匹とそれに続く巨大なキャラバン。
そして、明らかに不自然に吹き上げる上昇気流、今日何度も感じた浮遊感。
「いいいいやあああああああああああああ!!!!」
召喚士の悲鳴がフェニキシアン連峰に木霊する。
何度衝撃や恐怖で意識を失いたいと思ったことか、しかし、これまでの召喚士の修行がそれを許さない。
というか、シルヴァーナ、いつの間にかお前だけサモン解除して逃げるな。
ずるいぞちくしょぉ!!
ズンッ
キャラバンがカーブを直進して道に戻る。
衝撃で頭をぶつけて痛い。
流石の『走り屋』も完全に後方には見えなくなっていた。
ジャックもそれに気がついたのか減速する。
「あっ……ああっ……」
「すごいです。通常2日かかるところを1日で来てしまいました。もうすぐで『ハンマーハイヴン』ですよ」モチモチ
元気だなローチェ。
「あー。気持ち悪いのじゃ〜」モチモチ
お前はリアルタイムでテレパシーしてたからだよな?
「ジャックさん『ハンマーハイヴン』ではキャラバンの足回りを見直しましょう。もう少し責められるはずです。」モチモチ
「ワンっ!」モフモフ
そうだ。物資の無事を確認しよう。
「『サモン』シルヴァーナ、終わったぞ」
「終わった?よかった。」モチモチ
そんな会話をしながら物資の確認をしているうちに『ハンマーハイヴン』へ到着した。
「よし、物資は無事だな…………あっ。」
ダイスケがエステラの部屋の扉を開けるとグロッキーな彼女が降ってきたので受け止める。
「……吐きそう……」モチモチ
「わかる。」
彼女を抱きかかえてキャラバンから降りて二人で草むらで吐く。
「オロロロロ………チーズになるかと思った」モチモチ
「くそっ、なんで飯の後にあんなことやるんだ…オロロロロ」
「2人とも大丈夫ですか?」モチモチ
コップの水を差し出すローチェ
大丈夫なわけないが?
うがいをしてからギルドを目指す。
そして、
「いいですか!?峠道での暴走行為は危険だとアレほど!ア・レ・ほ・ど!!注意喚起されてますよねぇ!!」
ギルドの受付嬢にバチクソに怒られた。
「はい、すみませんでした。……反省してまーす。」
「ムッキイイィ!!!!」
やっべ、態度に出てた。
このあとマジで怒られまくった。
ギルドの宿のベッドに倒れ込むとシルヴァーナとエステラも同じくダイブする。
「疲れた……」
本気の戦闘を続けていたのである。
魔力もほとんど使い果たしていた。ローチェがよくわからない魔法を使いまくっていたのである。
下手な戦闘より魔力を使ったかもしれない。
その日は何も食べずに活動を終えた。