ワールドトリガー 〜ウルクの王〜   作:パクチーダンス

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第八話 ウルクの王、もっさりイケメンと出会う

 ここは三門市にあるスーパーマーケット。烏丸京介は、今日も今日とてアルバイトに明け暮れている。彼は5人兄弟の長男。複数のバイトを掛け持ちして、貧乏な家計を支えているのだ。

 

 これは、彼が商品の品出しをしている時だった。烏丸は手を止めて、ある一点を見つめていた。

 

「…………」

 

 烏丸が目を奪われていた先に立っていたのは、金髪でスラッとした体格で長身の男、その男の周りは何故か神々しく光って見えた。何やら商品を見て、顎に手を当てて考えているようだが、その仕草も様になっている。

 

「あ、あの……」

 

 鳥丸は珍しく緊張した面持ちでその男に声を掛けた。仕事上、悩んでいる客を放っておく訳にはいかなかった。

 

「何かお困りごとですか……?」

 

「………………」

 

 その男は血のような真っ赤な瞳をしていた。それが一瞬、烏丸の体を震わせた。鳥丸を数秒見つめたのち、棚に陳列されていた商品2つを手に取って鳥丸の前に突き出した。

 

「貴様、この違いが分かるか?」

 

「それは………」

 

 烏丸の前に出されたのは飲み物。それは日本の代表的なお茶である、あや○かとおー○お茶であった。

 

「どちらも同じ色をしているが、名前が違っているだろう」

 

「…………その2つは同じ原料でなんですが、産地や製造方法の違いがあるんです。飲み比べてみると違いがわかりますよ」

 

「ほう………」

 

 理解してもらえたか不安だったが、男はとても興味を持った様に見受けられた。

 

「なるほど理解した。ならばこの2つを買おうではないか」

 

「ありがとうございます」

 

 こうしてスーパーの売上に貢献した烏丸。心の中でやり遂げたとガッツポーズをとるのだが、ここで終わりではなかった。その男は、自分の目の前に一万円を差し出した。

 

「これでよいか?」

 

「………いえ、こういうのはレジでお願いします」

 

 何が?とは聞き返さなかった。まさかここで会計を済ませようとするとは思わなかった鳥丸は、困惑しつつも丁寧に対応した。

 

「レジ?……レジとは何だ?」

 

(本気で言ってるのかこの人………?)

 

 その男の表情から冗談で言っている様には見えない。本当に分からないらしい。

 

「………とりあえずお連れします」

 

 烏丸は男性をレジまで案内する。男は黙って烏丸に付いてくる。

 

「コチラで店員に商品を渡してお金を支払ってください」

 

 レジ係の人間が男に対してパコリと頭を下げる。それを見た男は、鳥丸とレジ係を交互に見つめて、

 

「物を選び、それを取引場所まで持って来るというわけか。しかも取引場所を数多く配置する事で、効率よく運用する事ができる………なるほど、なかなか手が込んでおる」

 

 その男はブツブツと独り言を呟いていた。鳥丸は離れていた為、上手く聞き取れなかったが、彼の心の中で何か解決した様だ。

 

「……それでは、俺はここで」

 

 まだ品出しが途中な為、急いで戻ろうとすると、

 

「待て。貴様、名は何という?」

 

「……烏丸京介です」

 

「キョウスケか……キョウスケ、世話になったな」

 

「いえ、これも仕事ですのでお構いなく」

 

 烏丸は軽く頭を下げて、男を背にして歩き出した。男はそれを見送ってレジ係に商品を手渡す。レジ係が商品のバーコードを読み取っている間、

 

(あの者もミデンの兵士のようだな)

 

 ギルガメッシュは、烏丸を一目見ただけでボーダーの人間と看破した。

 

(何処にでも潜伏している。我を不敬にも監視しているようには見えなかった。偶然か)

 

 ギルガメッシュは会計を済ませた後、スーパーから出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕日が沈む頃、ボーダー任務を終えた影浦隊の面々は、隊長の影浦雅人の実家が営んでいるお好み焼き『かげうら』で夕飯をとることになった。

 

「あー腹減ったなーー」

 

「ゾエさんもお腹ぺこぺこだよ〜」

 

 影浦の後ろを歩く仁礼光と北添尋が、自身のお腹に手を当てている。それを振り返って影浦はニヤッと笑う。

 

「ハッ、着いたら好きな分だけ食え。金はいらねぇからよ」

 

「そんなにお腹すいてたの2人とも?今日は暇だったでしょ」

 

 影浦の隣を歩く、隊の中で最年少の絵馬ユズル。

 

「暇でも腹は減るんだよユズル。お前も腹減ってるだろう?」

 

 仁礼が前を歩いている絵馬の頭を掴んで髪をわしゃわしゃさせる。それを鬱陶しいと思いながらも、絵馬は何もせずされるがままになる。

 

「……まぁ、少しだけね」

 

「素直じゃねぇな。ツンデレかよ」

 

 仁礼と絵馬の様子に心がほっこりとする影浦。和気藹々としながら影浦の実家を目指す一同だが、目の前から誰かが歩いてくる。

 

(あん?)

 

 影浦は訝しんだ。ここが『普通』の道なら、通行人がいても不思議じゃない。しかし、ここはまだ警戒区域の中だ。ボーダーでもない一般市民が歩いていい場所じゃない。

 

「ねぇカゲさん、あれボーダーの人?」

 

「……いや、見たことねぇ面だな」

 

 男の外見的特徴に当てはまるボーダー隊員はいない。非戦闘員(オペレーター)の可能性もある。しかし、男のオペレーターを影浦は知らない。知らないだけかもしれないが、影浦には目の前を歩いてくる男が非戦闘員だとは到底思えなかった。

 

「誰だアレ?」

 

 後ろにいる仁礼と北添も気が付いたようで、ジッとその男を見つめていた。

 

「……………」

 

 男との距離が縮まっていく。その時、男の真っ赤な瞳が影浦達を捉えた。

 

((((!?))))

 

 男は見ただけだった。しかし、影浦達は言葉では表すことの出来ない何かを感じとり、身体が震えた。男が影浦達を見たのは、ほんの一瞬のこと。すぐに視界から外して、影浦達の横を通り過ぎた。

 

「………あ、あの!」

 

 男に声を掛けたのは仁礼だった。

 

「なんだ娘?」

 

 男は立ち止まり、赤い瞳を向けてくる。その瞳からは強いプレッシャーを感じさせるものであった。

 

「そ、そっちは一般の人は立ち入り禁止です!」

 

 いつもの軽い口調とは裏腹に、今の仁礼はとても礼儀正しい口調を発している。無理もないことである。この時、無礼な物言いをしていた場合、彼女はどうなっていたことか。

 

「もしかして、ボーダーの人ですか?」

 

 続いて話しかけたのは北添。

 

「ボーダーとは、貴様らが属している組織のことだろう?この我が、そんなものに属している様に見えるか?」

 

「いや、それは………」

 

 なんて返したらいいのだろうか。素直にいいえと言えばいいのか。それが失礼に当たったらどうしようか。影浦達はそんなことを考えていると、

 

「そう怖がるでない。俺は少し用があるだけよ。この場所が立ち入り禁止なことも分かっておるわ」

 

「いや、用って………」

 

 一体、何の用があると言うのか。それを聞く前に、男は再び歩き始めていってしまった。

 

「ねぇカゲ、あの人って最近学校で話題になってる金髪の外国人じゃない?」

 

 北添がそう影浦に伝えるが、影浦からの応答がない。

 

「カゲ?」

 

「……アイツ、何も感じなかった」

 

 影浦のサイドエフェクト『感情受信体質』は、自分に向けられる相手の視線から感情が自然と伝わってくる。しかし、

 

「サイドエフェクトを持ってなくても分かる。アイツ、俺達をどうでも良い奴らの様に見てきやがった」

 

 一瞬コチラを見てきたが、その後、まるで影浦達をいないかの様に横を通り過ぎた。

 

「ヤベェぜアイツ」

 

 影浦の見たことのない緊張した面持ちを見て、北添は息を呑んだ。

 

「どうするカゲさん、一応上層部に伝えておく?」

 

「そうだな………」

 

 

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