善吉と鈴の二人はあの後秋にテックライトニング4で拾われ、そのままEINsの基地へと連れてこられていた
「なるほどなぁ、キミたちは秋がかつて懇意にしていた子たちなんだね」
対面に座る男ー影浦 耀が口を開く
「まぁ…それ以外はその…なんもないんスけどね…」
「いやいや、結構結構。熱意があるなら僕としては大歓迎だ」
はぁ、と耀の隣に腰掛けていた穏やかそうな雰囲気の青年がため息を吐き出す
「…正直、オレは止めておきたい気はします。彼ら一般人ですから」
「まぁ、それは…僕も気は引けてるよ。ただ、猫の手も借りたいモノだからねぇ…」
バツの悪そうに耀が頬をかく
青年はしばし思い悩んでいる様子だったが、ため息を一つ吐き出すと肩の力を抜く
「まぁ、ひとまず。オレは
「よ、よろしくお願いします」
「お願いします!」
勇介の挨拶に善吉と鈴が頭を下げる
その隣に整然と腰掛けて沈黙を保っていた女性隊員も口を開く
「……
流は改めて善吉と鈴に向き直る
「一般とはいえ、隊長も認可したならば考えあっての事だと理解します。しかし、キミたちが訓練をまだ受けていないことも確か」
厳しい言葉に善吉と鈴が背を正す
「……困ったことがあれば、必ず我々を頼ること。同じ隊に属するということは、そういうことですから」
流は不器用ながら微笑みを見せる
その様子を見た善吉と鈴は少し肩の力が抜けた
「ごめーん!遅くなった!」
会議室に遅れて秋が入ってくる
「言い出しっぺが遅れてどうするんだ…」
「いやーすまん…シズとゾイルに話通してたら遅くなっちゃって…」
秋は善吉と鈴に歩み寄ると、抱えていたものを二人に渡す
「ひとまずはこれを。急遽用意したからちょっとサイズ違うかもだけど、そこら辺は後で調整しよう」
渡されたものを持って二人が一旦離席する
戻ってきた二人は水色地に青と紫のラインが入ったEINsの隊服姿となっていた。他隊員と比べると上着はジャンパーのようになっている
「豊島 善吉くんと花村 鈴ちゃん。二人はあたしの古馴染みなんだけど、昔生き物のことを教えたりして、特に善吉は今でもその熱意を持ってくれてる」
秋が善吉と鈴の肩を叩く
「二人はこれから、あたしを主軸にしたラボチーム組として活躍してもらうことにしたわ。地上での避難誘導、怪獣のアナライズ、そして虹弓諸島の保護怪獣の世話。そういったことを優先したチームね」
「なるほど…確かに今までは分析とかは秋とネムの二人作業だったから手が回らない場面が多かったが、そこに二人も加入してくれるならできることは格段に増えるな」
「ですね。即戦力としては訓練とかも必要だけど、そういった場面での活動を主にするなら、訓練との同時並行も可能だ」
「異論はありません。隊として迅速な対応につながるならば」
秋の提案に皆が頷く
「了承ももらえたみたいだし…早速だけど、善吉と鈴には任務を与えます」
グッとサムズアップして秋が笑う
「EINsとしての活動。その短期集中研修はじめるわよ!」
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
後日、秋から言われた通りの準備をしてやってきたのはEINsの格納庫
「すげぇ……」
「ふわぁ……」
善吉と鈴の目の前にハンガーに固定された状態からテックスパークβとテックプラズマがコンバイン。テックライトニング4となって二人の目の前に降下してくる
「コレがEINsのメイン戦闘機。テックスパークとテックプラズマ。それがコンバインしたテックライトニングよ」
秋がヘルメットを片手に得意げに紹介する
「あたしと耀、それからもう一人のラボチームの子で設計して作った最新鋭の作戦機体。4つのコンバインモードがあるんだけど、あたしはこの4番がお気に入りなんだよね」
「秋姐もこれ操縦できんのか…」
「なーに言ってんの。キミらも操縦できるように訓練するのよ」
「ほぁ…なんだか、大変そう…」
鈴が声を上げるのを見て善吉が複雑そうな顔を見せる
「……なんか、すまん。俺のわがままについて来させるみたいな形になっちまっー」
謝ろうとしていた善吉の口を鈴は両手で塞ぐ
「わがままなんかじゃないよ。善ちゃん、夢だったでしょ?たくさんの動物を助けられる人になりたいって」
にへへ、と鈴がふわりとした笑みを見せる
「私もさ、夢だったんだ。そんな善ちゃんのお手伝いするの」
パン、と秋が手を合わせる
「お熱いのは結構だけど、そろそろ出発するわよお二人さん。伝えてた通り、しばらくの泊まりの荷物は持ってきた?」
秋の言葉に善吉がスポーツバッグを、鈴がキャリーバッグを見せる
「準備万端だぜ」
「はい!」
「なら結構!それじゃあ、虹弓諸島に出発よ!!!」
テックライトニング4に揺られることものの数分
「見えてきたわよ〜あそこが、虹弓諸島よ!」
秋の言葉に善吉と鈴が窓の外を見る
「おお…!」
「すごい…!」
眼下に広がっていたのは3つの島で構成された群島だった
中心の大きな島と、それを対角に囲むような三日月型の小島
中央島の北側にある山の周辺には雷雲が渦巻いていた
怪獣保護区・虹弓諸島
EINsの怪獣保護活動が始まって間もない頃に発見された未開の群島
そこをEINsが開拓し、拠点を設けて捕獲した怪獣の保護区としたものだ
「この島々周辺は落ち着いた気候帯なのよね。色んな生き物が生育するのに適した環境になってるの」
「なるほど…それなら怪獣を保護するのにうってつけなんスね」
テックライトニングは中央島にあるこじんまりとした建物ー怪獣保護観察センターの近くのカタパルトへと降り立つ
テックライトニングから降りた善吉と鈴、秋は突然の地響きに驚きたたらを踏む
ーギャオォォォォォォォォォンッ!
どすん、どすんと足音を鳴らしながら近づいてきたのは先日保護されたばかりのグラルデだった
「あ、あの時の!」
「識別名は古代怪獣グラルデ。ちょっと荒っぽいけど、のんびり屋さんの可愛い子だよ」
ーグォォォォン…
グラルデは興味深そうに善吉たちをしげしげと見つめる
善吉の存在に気づくと、しゃがんでゴロゴロと喉を鳴らし出した
『ーもしかすると、あの怪獣はキミが助けてくれたことを理解してくれているのかもしれない』
善吉は胸ポケットを触る
そこに収められたケレスプラックが淡く光り、善吉の脳裏にケレスの声を届けていた
(俺だけじゃない。多分、あなたのことに気づいてるのかも)
『そうかもしれないな。彼らは感覚が鋭いようだ』
「島の案内と怪獣たちの紹介の前に、ここのメンバーともう一人EINsの隊員を紹介しないとね。さ、センターにいらっしゃーい」
秋の案内でセンターへと善吉たちが足を向ける
ふと振り返った鈴にグラルデが手を振るような仕草を見せ、鈴もそれに応じて小さく手を振った
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
「はぁーーーーーーーーー癒し。癒しだわぁ…」
にゃー………
案内されたセンターのロビーでは、ソファに寝転がっていた黒いワンピース型の服の上から白衣のような独特の意匠の上着をきた女性が
一心不乱に黒猫の背に顔を埋めて吸っていた
観念したように黒猫が力無く鳴いている
「あぁ……マジで最高。地球すごいわ…こんな癒しの塊がそこかしこにいるだとか…楽園…?」
「あー……お楽しみのとこ悪いけど、来たわよシズ」
秋の言葉を聞いただろうシズと呼ばれた女性がバッとものすごい勢いで黒猫を顔から離し、ものすごい形相でこちらを見て固まる
「……………」
シズはゆっくり体を起こして黒猫を床に下ろし、頭を撫でる
起こした顔は、鬼のような形相になり青筋が走っていた
「……来る時は一報入れろって言ったわよね秋ぃ…???」
「あーごめん…忘れちった」
「もう五度目なんだけど!?!?!?!?わたしのリラックスタイムとかもあるから、無防備な姿見せるわけにはいかないからって何度も言ってるんだけど!?!?!?!?」
呑気にたははと笑う秋に対してシズが猛抗議する
「ほらほら、そんな怖い顔しないで。新人くんちゃんが萎縮しちゃうでしょう?」
秋の言葉に我に返ったシズが善吉たちに気づく
「…あんたたちが秋の秘蔵っ子?」
『おや、賑やかな気配がしたと思えばお早い到着だな』
秋たちが入ってきたロビーの入り口から新たな人影が姿を現す
声に気づいた善吉と鈴が驚いて思わず後退った
そこに現れたのは、黒い体表と黄色い目を持つ大柄な怪人だった
「う、宇宙人!?!?」
「待って!彼らは確かに宇宙人だけど、侵略者とかじゃないの」
「じゃあいったい…」
秋の言葉に善吉たちが固まっていると、黒い怪人は手を振る
『いや、彼らが警戒するのも無理はない。今回は知らせなく出てきてしまった私に非がある』
怪人は善吉たちに向き直り頭を下げた
『すまなかった。驚かせてしまったね』
「あ……いや、俺たちも過剰に反応しちゃって、申し訳ない…」
「ごめんなさい……急なことでびっくりしちゃって…」
善吉たちも頭を下げたのを見て、怪人は頷き二人の肩を優しく叩く
『顔を上げてくれ。驚かせてしまった私にそこまでの優しい言葉をかけてくれるとは、アキの眼は確かなようだ』
怪人が顎を撫で、告げる
『地球の言葉で言うならば……「誠実」な人なんだな。キミたちは』
怪人の隣にシズが並んで微笑む
「安心して、新人くんたち。ゾイルは顔は怖いけど、気さくでいい男だから。おしゃべり大好きだしね」
『オイオイ、シズ。私の自己紹介を奪わないでくれ』
ゾイルと呼ばれた怪人が胸に手を当て会釈する
『私は、惑星ファビラスからこの地球にきた、ゾイルだ。よろしく、二人とも』
鈴と握手を交わし、善吉とも握手をする
「強面……俺も、よくそれでビビられてるので仲間…ッスね」
『ほう?そうなのかい?フフッ、奇妙な繋がりだが、嬉しい話だね』
こほん、とシズが咳払いして続ける
「改めて、シズよ。よろしく。惑星ギャシーから地球に生態調査に来てたんだけど、侵略者扱いされそうになったとこを秋に拾われたの」
『私もだ。私の場合は、滅んだ母星から旅を続けてここを安住の地にしたくて、だがね。拾われた恩に報いるのと、地球の文化を学ぶためにここに勤めている』
シズとゾイルの言葉に善吉と鈴ははっとする
「……すまない、俺たちは…」
『……やはり優しいな。キミたちは』
「……安心しなさい。初対面で驚かれるくらいで気には病まないわよ」
シズは善吉と鈴の手を取って握手し、柔和に笑う
「よろしくね。二人とも」
「はい、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします、シズさん!ゾイルさん!」
自己紹介が終わった四人の周りをフラフラと何か小さなものが飛び回り、ロビーの長机に降りる
ーパムパム〜
それは黄色と白のふわふわとした毛を持つ小さな珍獣だった
青い目がくりくりと輝く顔の上には黄色く細長い耳がぴこぴこ動き、背中には小さな羽が生えている
「可愛い…!」
鈴が目をキラキラさせながら珍獣に顔を近づける
ふんす、と鼻息を漏らしながら自慢げに胸を張る
『この子はムーキット。私の星では神獣とされていた小怪獣でね。この子は特に私の家族として共に宇宙を旅していたんだ』
ーパムパム〜
ムーキットは小さな羽をぱたぱた動かし、ゾイルの肩に乗って頬擦りする
「ここじゃ、ハネタローって呼ばれてるの。結構賢いのよ、確か地球で言うとこのショーガクセーくらい?とか」
「そうなのか…?」
ハネタローが首を回すと、首輪からホログラムキーボードが展開され、器用に口でそれをカタカタと高速タイプする
エンターキーを押すと共にハネタローの横にホログラムの吹き出しが現れた
《くるしゅうない》
「どこで覚えたんだそんな言葉…」
思わぬ渋い言葉のチョイスに善吉と鈴が目を丸くする
《よろしくしてやる。シンジン》
「なんか顔に似合わず豪快なんだなハネタロー…」
《さんをつけよ》
「えぇ…」
ゾイルの肩から飛び立ち、善吉の肩に乗る
《とまりごこち、◎》
「…それは何よりで」
苦笑いする善吉を見てシズと鈴がぷっ、と吹き出し、秋とゾイルが愉快そうに笑う
「ひとまず、泊まりがけの研修って聞いてるから部屋に案内するわ二人とも。そうこうしてたらネムも帰ってくると思うし」
シズが二人を案内し、ハネタローが興味深そうにそれに続いていった
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
『アキは怪獣被害の後処理に一旦帰ることになったって。色々済ませたらまた来るそうだ』
ロビーに戻ってきてソファに腰掛けた善吉と鈴の前にジュースを置き、テーブルの上に降りたハネタローには小皿に盛られたナッツを置いてゾイルがシズと並んで対面に座る
「後処理…俺たちはいいのかな…?」
「新人のキミらはガジェットの練習と怪獣への慣れがやっぱり先決でしょうからねぇ」
シズは机の上に携帯端末と銃のグリップ部分だけのようなガジェットを二人分並べる
「EINsで使ってる万能端末、ラウンダーモバイルとシフトグリップよ」
手にとって確かめている二人の前で自分のラウンダーモバイルとシフトグリップを取り出し、二つを接続してみせる
「ラウンダーモバイルはそのままでも通信とかが可能だけど、こうしてシフトグリップにジョイントしたら更にアナライズ機能を特化できる。こうしてモバイルを倒せば…」
ジャコッとモバイル側から銃口が伸びる
「ーアタックモードに早変わり。モバイル側のアプリを操作することでパラライザーとかビームショットが撃てる。まぁ、二人のはまだ研修用だからビームワイヤーと閃光弾くらいしか使えないから安心してね」
「なるほど。危なくないのは助かります、俺不器用なので…」
与えられていたベルトのホルスターにそれぞれを固定する
「さっきも言ったけど、二人の研修目的は、怪獣たちに慣れてもらうこととガジェットの操作を覚えてもらうこと」
「怪獣たちに…?」
『ああ、いきなり身の丈の数倍以上ある巨大生物と触れ合うとなると、慣れていないと恐怖の方が勝ってしまうだろうからね』
なるほど、と善吉と鈴が頷く
「鈴はわたしと海中エリアと副島2つの怪獣たちのお世話と、あるデバイスの設置を手伝ってもらうわ。と言っても副島に怪獣はまだ保護されてないんだけど」
シズがタブレットに柱型の装置の画像を出す
「これはエネルギーバリアフィールド発生装置。あのカオスヘッダーとかいう謎の光体の侵入を防ぐための秘策よ」
「カオスヘッダー…あの虹色の光ですね」
「…そう。目下、怪獣を凶暴化させるアレに対処しないと、虹弓諸島が保護してる7種9個体の怪獣たちが、最悪みんな暴れだすなんてことになる」
「だからこその、バリア…」
不安そうな鈴にシズが微笑む
「わたしもいるから大丈夫。日にちも5日も確保してもらってるし、ゆっくり色々覚えながらやっていきましょ」
説明を聞いていた善吉が改めて口を開く
「あの…俺は、この感じだとゾイルさんと中央島ですか?」
「いや、ゾイルはここで怪獣たちの観察とか家事のほうしてもらってるのよ。ゾイルの作る料理とか最高よ」
『というか、キミが家事の類が壊滅的だからこその分担だー』
シズが笑顔のまま隣のゾイルの足を踏みつけて静かにさせる
「……じゃあ、俺は誰と…?」
「ごめーん!!!遅くなったぁ!!!」
ロビーに新しい人影が駆け込んでくる
タンクトップにホットパンツ、そこにEINs制服のジャケットを羽織った金髪で日焼けした小麦色の肌が目立つ女性が、息を整えながら顔を上げる
いわゆるギャルそのもののその姿に驚く善吉と鈴、呆れた様子のシズの前で女性はピースを決めてウインクをする
「ちわーっす!新人くんちゃん!私は、EINsの
「EINsの…!?」
「はぁ…ユカリ。なんでこんな大遅刻してんのアンタは…」
呆れた様子でシズが紫に訊ねる
「ごっめーんシズりん!ゴモちとレッキーがいつも以上にケンカヒートアップしちゃってて〜……新入りのグラちんも不安そうにしてたからほっとけなくて〜…」
紫が手を合わせて謝意を伝えて、善吉に気づいてそちらに駆け寄る
「たいちょーが言ってたのはキミだね〜えーっとぉ……」
「豊島 善吉ッス…」
「なるほど、じゃーゼンきゅんだ」
「ゼンきゅん!?」
「とよピーでもいいよ〜?」
「ゼンきゅんでいいです…」
にひひと楽しそうに笑う紫は善吉の手を握って立たせる
「ゼンきゅんの教官役はわたし〜!さ、早速いこ!」
「え、ちょっ!?は、はい!!!」
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
半ば強引に連れ出される形となり、紫の操縦するトレーラーバギーの助手席に座らされたまま、中央島の南部を走っていた
「そろそろ見えてくるよ〜左手にごちゅうもくー!」
紫の言葉に従い、左側を見やる
ーギャオォォォォォォン!!!!
「うお…!」
咆哮を上げる巨体に善吉も少し圧倒される
三日月型のツノを持つ黒褐色の肌を持つ恐竜のような怪獣がジャングルの中を闊歩していた
バギーを止めた紫に促され、降りて並んで怪獣を見やる
「ゴモちーーー!!!さっきぶりーーーー!!!」
ーギャオォォォォォォォォォン!!!
ゴモちと呼ばれた怪獣は手を振る紫の姿を見つけるとそれに返事をするかのように両手を振ってみせる
「ゴモち?」
「あー正式名称は古代怪獣ゴモラ。ゴモラザウルスって恐竜の生き残りが独自進化した怪獣なんだ〜」
紫の呼びかけに応える形でゴモラがこちらに近づき、かがみ込んで顔を近づけてくる
「目覚ましたばっかの時は、暴れん坊だったんだけど、ここに来てからは落ち着いたみたい。きっと昔過ごした環境に近かったんだねぇ」
ーギャオォォォ…
近づけられたゴモラの鼻先を紫が撫でる
「ほれほれ、ゼンきゅんも撫でてみ〜」
「は、はい」
善吉もゴモラの鼻先を撫でる
ーギャオォォォ……
初対面の善吉にも恐れず、ゴモラはリラックスした声を上げる
「……なんだか、可愛いヤツですね」
「でしょでしょ!!!ゴモち、強面だけどめっちゃ人懐っこくて可愛いんだ〜!!」
ーキシャオォォォォォォ!!!
そこに新たな咆哮と共に別の怪獣が現れる
黄色い蛇腹のような体表をした頭の小さな怪獣。頭こそ小さいが、面構えはかなり凶暴そうだ
ーキシャオォォォォォォォォォ!!!
新たに現れた怪獣は激しく首元をドラミングし、ゴモラの尻尾を掴んで引っ張りだす
ーギャオォォォ!?!?
ゴモラは驚いた声を上げ、すぐさま立ち上がって尻尾を振り回して怪獣を振り払うと、すぐさま取っ組み合いをはじめてしまう
「レッキー……懲りないなぁもう」
「ケンカ始めちゃいましたけどいいんスか!?」
「だいじょーぶ。レッキー…どくろ怪獣レッドキングってば、いつもあんな感じなの。めーっちゃ暴れん坊でさ」
呆れたように紫が肩を竦める
「虹弓諸島に最初からいた大先輩の一匹なんだけどさ、レッキーめっちゃ暴れん坊だから最初は駆除されそうだったの。でもゴモちが来てからはよくケンカはするけど、他のものとか人には当たらなくなったんだよね」
「怪獣どうしを巡り合わせる形で、それぞれのストレスの無い形の環境作りをしてるんスね」
善吉の言葉に紫が微笑む
「そ。ゴモちも普段おとなしいけど、そのままだと運動不足になるっぽくて、レッキーとバトるとそれも解消されていい感じみたい。なんだかんだバイタルも安定してんだよね〜」
紫が運転席のコンソールを操作すると、後部のトレーラーが開き、中に入れられていた巨大魚の山が姿を現す
「ほーらー!ご飯持ってきたから食べなーーー!!!」
ーギャオォォォォォォン!!
ーキシャオォォォォォォッ!!!
魚の匂いに気づいたのか、2体の怪獣は喧嘩をやめ、トレーラーに殺到して巨大魚を食べ始める
「ほらほら、今のうちにバイタル調べちゃお」
「了解ッス」
紫に合わせて善吉もラウンダーモバイルをグリップにジョイントしてアナライザーアプリを起動、怪獣たちに向ける
ゴモラとレッドキング、共に異常無しのグリーン判定が表示される
ストレス値の分析も問題ない。紫との触れ合いを邪魔されたゴモラは若干ストレスを感じていたようだが、許容範囲らしい
「はい、よくできました!」
「ありがとうございます。凄いですねコレ」
「私が開発したの。コレから大切に使ってね〜」
胸を張る紫に善吉は肩の力を抜いて微笑む
「じゃあ、ここらにバリアフィールド設置しちゃお!レッツゴー!」
「はい!」
虹弓諸島周辺海域
出発前に操作方法を教えてもらった小型潜水艇ダイブボーイを鈴はおっかなびっくり操縦していた
「ここを、こうして……レバーはしっかり握って……」
初めての操作故に緊張しながらダイブボーイを進めていく
『リラックス、リラックス。わたしたちもついてるから安心して、スズ』
鈴の脳裏にシズの声が響く
ダイブボーイに並ぶように、ダイブスーツのようなものを着たシズが泳いでくる。その下半身は人魚のようなヒレになっていた
「はは…ありがとうございます、シズさん…」
『海の中はわたしたちのテリトリーみたいなもんだから。なんかあったらすぐ助けるから安心してよ』
ーキュアァァァァ…
ダイブボーイとシズの側に大きな影が重なる
エイのような姿をした怪獣が、ダイブボーイを追従していた
「レイジャ…えっと、リーラさんはなんて?」
『…私と同じ。落ち着いて、大丈夫って』
海底怪獣レイジャはこの虹弓諸島に保護された水棲怪獣の一体
コミュニティデバイスという器官でテレパシーを行えるらしく、その波長が合うギャシー星人のシズとは友人のような関係になっているらしい
潜水直前にいきなり海から現れた時は驚いたが、鈴もすっかり打ち解けていた
そうこうしているうちに大陸棚となっている浅海底に到着。そこには二枚貝のような怪獣が静かに三匹並んでいた
ークァァァ…
「あの子達が……」
『そ、貝獣ジェルガ。とてもおとなしい水棲中型怪獣よ』
ジェルガたちはダイブボーイを興味深そうに眺めていたが、リラックスしている様子は崩さずに迎えてくれた
『ここら辺は潮目になったり、海流の相互作用もあったりなのか、彼らの餌のプランクトンはいっぱい集まるから過ごしやすいみたい。巨大に成長しやすい魚たちは、島の怪獣たちの餌にもなってくれる』
「自然環境と助け合ってるんですね」
鈴はラウンダーモバイルを操縦桿に装填し、シズのアドバイスに従いながらジェルガたちのバイタルをそれぞれ調べていく
『じゃあ、次はバリアフィールドの敷設やりましょ』
「はい、お願いします!」
去り際に鈴はジェルガたちに手を振る
それに気づいたか否かは不明だが、ジェルガたちは頭部の触角をゆらゆら揺らして見送った
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
「問題はここからなんだよね〜」
バギーから降りた紫と善吉が中央島北部の山を見上げる
その周辺に雷雲が立ち込め、雷がゴロゴロと鳴り続けている
「この山の周辺にさ、レッキーみたいな最古参のもう一匹がいるのよね。雷雲怪鳥サンダード。正直レッキーより気性が荒くてさ」
紫が山へ向けて歩もうとすると
ーギュルルルルルァァァァ!!!
鳴き声と共に紫の周囲に雷が落ちる
飛び去っていく鳥のような巨体は山の方へ飛び去り、山頂付近に降り立っていくのが見えた
「大丈夫ですか!?」
「あはは、平気平気〜。ちょい前までは、私らくらいは近寄らせてくれたんだけどさぁ…なんか最近、私らのことも追い払い出して」
紫が土を払いながら立ち上がる
「そのおかげでバイタルチェックもできなくてさ…彼の近くにいる近縁怪獣みたいな雷雨怪鳥サンダリアって中型怪獣の姿が見えなくて、それも調べたいんだけどさ…」
雷雲の中こちらを睨む雷雲怪鳥サンダードの姿を見て、善吉は一歩前に出る
「……コイツの世話もしないとなんですよね?」
「ん?まぁそうだけど、無理せずちょっとずつでいいよ?」
「いや……なんかその…ほっとけなくて」
ーギュルルルルル……
サンダードは善吉のまっすぐな目線を受け止め、静かに嘶いた
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
そこから数日、それぞれの研修生活が続いた
鈴はゴモラ、レッドキング、グラルデの世話とジェルガの世話をローテーションしながら、シズと紫と共に順調にバリアの準備を進めていた
善吉は、鈴と同様にバリアの準備をしながら加えてサンダードへも挑戦し続けていた
こっそりと入る作戦は即時バレて攻撃され
餌で惹きつける作戦は餌に雷を落とされ断念(餌はサンダードが持ち帰って結局食べたらしい)
仲間として近づこうとサンダードの鳴き声をスピーカーで流してみると、より強烈な雷を落としてきて即刻中止になった
「くっそ…強情なヤツだな…」
サンダードの雷から逃げ回ってボロボロの姿で戻ってきた善吉に紫がスポーツドリンクのペットボトルを手渡す
「おつかれ、ゼンきゅん」
「ありがとうございます」
受け取ってそれを飲みだす善吉を隣に座って眺めていた紫が訊ねる
「……なんでサンダードにそこまでゼンきゅんはこだわるの?」
「こだわり…?そう見えますかね?」
「ばれっばれなんだけド…」
あはは、と善吉が苦笑する
「……昔、拾って鈴と育ててた猫がいたんですよ。近所でめっちゃ暴れてる野良猫だったんです。魚を取ったり、近くにきた人を引っ掻こうとしたり…」
「近所の人らは、早く駆除されたらいいのにって言ってたの聞いて、ほっとけなくて。その猫を捕まえにいったんです。もうめっちゃ引っ掻かれたりして大変で…」
「ようやく餌とか食べてくれるようになってきた時に、そいつあげた餌を少し持って帰ってるのに気づいて…あと追っかけたら、ボロボロで痩せっぽちの同じような毛並みの猫にあげようとしてたんス」
紫が生唾を飲み込む
「その子…どーなったの…?」
「すぐに獣医さんとこ連れて行きました。病気と栄養失調で危なかったみたいで…治療はしてもらえたけど、長くはもたなかったんスよね」
「そんな……」
善吉は顔を上げて続ける
「でも、ちょっと元気になったそいつは、最後の最後にノラの顔を舐めて一声だけ泣いたんス。ありがとうとか、伝えたかったのかも…」
「……善吉くんが、ノラくんにその時間を作ってあげたんだね」
「もうちょっと早かったら、きっとそいつも助けてあげれたかもってのは、ちょっと悔しかったですけど」
「サンダードは、あん時のノラと似た雰囲気をしてたんです。だから、一層ほっとけなくて…無茶なことしてすんません…」
善吉の言葉を静かに聞いていた紫が頬杖をつきながら問う
「……善吉くんはさ、わたしのこと初めて見た時どー思った?」
「……正直に言うと、ギャルっぽい人で…この人で大丈夫かなぁ?って思いました…」
「正直に言ってくれるじゃん」
紫は続けて言う
「わたしさ、実家から家出同然で出ていってんのよね。家業を継いで、医者になれって言われて、べんきょーしてたらさ生き物のこともっと学びたくなって。でも、親父はそれ認めてくれなかったんだよねぇ……」
「『医者になるのに無駄な知識はいらん』『生物はただの科目でそれ以上は必要ない』っての一点張り。わたしのこのカッコも、相応しくないって言っちゃってさ…」
紫は自分のネイルを見ながらぼやく。ぱきっとそのうちの一枚を取り外して見せ、もう一度付け直す
「このオシャレはわたしの好みだから、作業の時は危なくないように外してるし、公私混同はしてないし…こんなカッコでも、わたしが死ぬ気で色々べんきょーして博士号を飛び級で取ったのも、ほんとだし」
紫はネイルを眺めながら寂しそうな目で続ける
「親父以外にもいっぱいいた。このカッコとか、話し方とか、そういう見た目だけでわたしを否定して、見て欲しい中身を見てくれない人たち。そうした方が、世渡りは楽なのはわかるよ」
「でもさ、わたし…自分にまで嘘吐くの苦手なんだよね。面白くないのにヘラヘラ笑うとか、必要ないのに着たくもないカッコして『相応しく』するとか…」
「怪獣たちもさ、初めて見た時怖かったけど、それ以上にわたしと同じだなぁって思っちゃったんだよね。見た目が一番に怖いから、大きくて迷惑だから。ただ生きてるだけなのに、それだからって殺すってのが一番に来ちゃう」
紫は善吉を見てにっと笑う
「そんなの、許せねーじゃんって、体が勝手に動いてたんだわ。だから、わたしは善吉くんのこと無茶なヤツなんて言えないの。わたしの方が、よっぽど無茶してるし」
「……さっき、紫さんの姿に驚いたってのは嘘じゃありません」
善吉の言葉に紫が一瞬むっと頬を膨らませる
「ーでも、動きやすい格好と、入り口側にかけてあった泥だらけのツナギとか見て、この人は信じていい先輩だなってわかってました」
善吉がまっすぐな瞳で告げる
「だから俺も、紫さんのこと笑ったりしません。……ギャル感に慣れるのは…もうちょいかかるかもですけど」
苦笑する善吉の頭をヘッドロックしながら紫が笑う
「あはははは!しょーじきものめ!可愛い後輩だなぁ全く!」
「ちょ、紫さん!?」
じゃれあっていた二人の談笑を突然のアラートが切り裂いた
「どしたの!?」
『ユカリ!中央島北部に固有のエネルギーパターン、アキに共有してもらったカオスヘッダーと同じパターンだ!!』
「北部って……ッ!!!」
それを聞くが早いか、善吉が駆け出していた
「善吉くん!?!?」
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
北部の山地を遠目に見える位置に駆けつけた善吉の瞳が、あの虹色の光が山の頂上に吸い込まれていくのを見た
ーゲギャルルルルルルルルルルルルッ!!!
何度も聞いた嘶きが、酷く歪んで響いてきたのを聞いて善吉は駆け出す
北部に広がっていた暗雲が更に厚く広がり、ジャングルに激しい落雷が降り注ぐ
ジャングルの木に雷が落ちたことで火災が広がっていく
サンダードは大気中の分子を特殊な波形の咆哮で操作し、落雷を降らせて威嚇してくることはあったが、その雷はジャングルの植物がない地帯だけを狙っていた。だからこそ、異常な事態であることが痛いほど伝わってくる
ーゲギャルルルルルルルルッ!!!
燃え盛るジャングルに翼持つ巨体が降り立つ
遠目にしか見えてなかったサンダードだが、肩にねじくれた大きな角とカッターのようなトサカが発達。翼手の爪も大きく鉤爪じみている。そして何よりも凶暴さを物語るかのように赤く光る目が、カオスヘッダーによる寄生を受けたことを如実に表していた
「…?これ、まさかッ!?」
サンダードの状態をラウンダーモバイルで見ていた善吉の頬を冷や汗が伝う
「善吉くん!?」
「紫さん…!サンダードがカオスヘッダーに…」
意を決したように善吉はラウンダーモバイルを倒しアタックモードに
数少ない使用可能アプリの一つ、信号弾アプリを起動して構える
「俺があいつをバリア設置点から離れたとこに誘導します。紫さんは、バリアの準備を!あいつからカオスヘッダーが離れたら、すぐに起動しないと…」
「バカ言わないで!そんなの危険だよ!?」
「大丈夫。無茶はしません!」
善吉が駆け出していく
「善吉くんッ!!!!」
カオスサンダードの目の前で信号弾を炸裂させ、善吉が誘導をはじめる
「こっちだ!!!」
ーゲギャルルルルルルッ!!!
善吉の誘導に乗り、カオスサンダードが追ってくる
落雷から回避しながら、善吉は呼びかける
「サンダード!!!しっかりしろよお前!!」
善吉の声にサンダードが目を細める
「お前、このままいいようにされてたら、お前の寝床も、大切なもんもめちゃくちゃになっちまうんだぞ!!!」
ーゲギャルルッ……
善吉の言葉にサンダードが足を止め、頭を押さえる
だが、すぐにまた赤い目を輝かせ、より雷雨を激しくさせる
『カオスヘッダーの支配が進んでしまっているんだ…!』
「このままじゃ、あいつもヤバい…!」
懐から善吉がケレスプラックを取り出す
「ケレェェェェェェェスッ!!!」
ケレスプラックが「開花」し、青と赤の光が放たれる
ーシュアッ!!!
現れた青い巨人ーケレスがカオスサンダードの進行を受け止める
ーァアァアッ!!
ーゲギャルルルルルルッ!!!
カオスサンダードが落雷を肩の角に集め、電撃放射を放つ
組み付くケレスはたまらず吹き飛ばされる
ーゲギャルルルルルルッ!!!
ーシャッ!!!
カオスサンダードが更に放つ電撃放射をケレスはケレスパークバリアで防ぐが、あまりのパワーに押し込まれ、バリアを破られた上に直撃を食らう
ーグァアァアッ!?!?
ケレスがよろめき膝を突く
そこにカオスサンダードの鉤爪が迫るが、咄嗟に防御し、促す
しばしカオスサンダードの攻撃を促し続けるが、長い鉤爪で捕まれ押し込まれていく
「く、そッ…!?この馬鹿力が……ッ!!」
善吉は初めてケレスと一体化した時の力強い赤い形態を思い出す
が、同時にグラルデが怯える姿も思い出し、躊躇いが現れる
『善吉。私もついている。キミならば、必ず使いこなせる』
「……そうだよな。俺自身に負けたままで…いられるかぁ!!」
インナースペース内で善吉がケレスプラックの下端を捻る
《コロナ・シフト》
善吉とケレスの姿が重なり、手にしたケレスプラックを天高く突き上げ、それを展開する
ケレスがカオスサンダードの鉤爪を振り払い、力の限り拳を突き上げる
拳の先から赤い光がケレスを伝い、その姿が赤いコロナモードへと変化していく
ーフッ、デヤァッ!!!
ーゲギャルルルルルルッ!!!
力強く構え直したケレスにカオスサンダードが迫る
鉤爪の一撃をいなし、ケレスの蹴りが肩口に叩き込まれる
振り下ろされかけたクチバシを頭を捕まえて受け止め、その脚に蹴りを加えてバランスを崩し、腕を持ち上げて脇にチョップを撃ち込んで後退させる
ーデェヤッ!!!
振り向きざまにケレスの回し蹴りがカオスサンダードの頭部を直撃し、よろめいたカオスサンダードが倒れふす
インナースペース内の善吉が再びケレスプラックの下端を回す
《ルナ・シフト》
善吉の姿とケレスの姿が重なり、ケレスプラックが輝く
ーハァァァ……ッ
息を正すように構えを緩めたケレスが青のルナモードに姿を戻す
よろよろと起き上がるカオスサンダードに向けて、ケレスルナエキストラクトが放たれる
カオスサンダードは光のシャワーを浴びると動きを止め、その体からカオスヘッダーが分離していく
『今だ、みんな!!』
モニターを注視していたゾイルの一声で中央島北部への装置停止を終えていた紫、シズ、鈴の3人が一斉にバリア装置を起動させる
再び島へと侵入しようとしていたカオスヘッダーがバリアに弾かれ、エネルギーをスパークさせながら去っていった
「いよし!大成功ッ!!!」
紫がガッツポーズをし、シズが汗を拭い、鈴がほっと一息を吐く
カオスヘッダーが分離したサンダードはうずくまったまま立ち上がろうとしない
「カオスヘッダーのせいで衰弱してるのか…」
ケレスは立ち上がると、空に向けて手を広げる
それに呼応するかのように雷雲から何条もの雷が降り注ぎ、それをバリアで受け止めて丸くエネルギー球にしてまとめていく
ーハァァァ…ッ!
そのエネルギー球を光線と変え、サンダードへ放つ
ばちばちとスパークする光線を受け取ったサンダードは、力強く再び立ち上がった
ーギュルルルルルルッ!!
元気そうに羽ばたきを見せるサンダードを見て、ケレスが頷く
しばらくの雷雨のためか、雷雲は霧散して晴れ間が覗いていた
ーシュウワッ!!!
飛び去っていくケレスをサンダードと共に見送り、鈴が小声で呟く
(よかったね、善ちゃん!)
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
「まぁちょっとトラブルはあったみたいだけど、研修は無事終了したみたいで何より!」
騒動を終えた翌日に迎えに来た秋が満足そうに頷く
「色々あったけど、色々なことを学べたよ」
「うん。怪獣たちももっと身近になったと思います!」
善吉と鈴がシズとゾイル、ハネタローに向き直る
「世話になりました」
「お世話になりました、皆さん!」
「なんだか寂しくなるねぇ…」
『いつでもまた会いに来てくれ。私たちはもちろん、怪獣たちもきっとまた会える日を楽しみにしてくれているよ』
ーパムパム〜《またな ゼンキチ スズ》
シズ、ゾイル、ハネタローに別れを告げ、紫と共にテックライトニングに乗り込もうとしたその時
ーギュルルルルルルッ!!!
聞き覚えのある咆哮が響き渡り、大きな影が飛来する
「へー」
呆けた声を上げる暇もなく、飛来したそれに善吉が連れて行かれる
「善ちゃん!?!?」
「ゼンきゅん!?!?」
「のわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」
サンダードは善吉を加えたまま、山の頂上にある自分たちの巣の元へ飛び、近くに滞空して善吉に巣の中を見せる
「あ……」
そこには、4つの大きな卵が並んでいた
「……無事に産んだんだな。サンダード」
ーギュルルァァァ……
カオスヘッダーを分析した時、善吉はサンダードが身籠っていることに気づいていた
サンダード自体はオスだと聞いていたが、自然界にはタツノオトシゴのようにオスが胎内に卵を預かるものもいる。サンダードもそういう種族なんだなと善吉は推測していた
ーキュアァァァ
巣から顔を覗かせたのはサンダードの3分の1しかない体長の中型怪獣ーサンダリアだった。こちらも卵を労りながら善吉に礼をするように頭を下げる
「……もしかして、お前らって別種じゃなくて個体差がデカいだけの同種…しかもオスメスだったのか!?」
ははは、と善吉は苦笑するが、嬉しそうなサンダリアの様子
そして何よりも、自分の子供に等しい卵をこうも簡単に自分に見せてくれたサンダードからの信頼を感じて、胸の中に確かに暖かいものを感じていた
EINsの隊員としての日々を送る善吉と鈴
ある日、突如として街にケレスが現れ、街を蹂躙し始めた
「ケレスは…俺はここにいるのに!?」
対怪自衛隊とEINsはその報を受け
ケレスを排除が必要な侵略者と認定してしまう
「彼は、そんな人じゃない!!」
「今までの姿が隠れ蓑だったとしたら…?」
はやる気持ちに善吉は怒りを募らせる
『私たちの力は、認められるためのものじゃない』
「落ち着こうよ。乗せられたら、相手の思う壺だ」
ケレス、そして影浦隊長の言葉
善吉は迫り来る侵略者の卑劣な罠を崩せるのか!?
「お前だけは、絶対許さない!!!」
次回、ウルトラマンケレス
「誰が為の力」
「EINs総員に命令!ファンクションレベル・レッド発令」
「侵略者である巨人を、攻撃する!」