フレイヤ・ファミリアの苦労人転生者   作:鬼塚虎吉

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英雄回帰

オラリオの空気が悪い、それは都市に住む者全員が思っていることだ。

 

神イケロスは今回の件の全ての責任を負わされ天界に送還されたが、それに関しては遅かれ早かれだった。

 

しかし、それでも空気は晴れない。

 

【フレイヤ・ファミリア】が【ロキ・ファミリア】とは共闘することはあり得ない、それだけでも僥倖だよな。

 

そう思いながら俺は霧の死ぬ気の炎で姿を隠し竈の館に侵入する、現在【ヘスティア・ファミリア】は【ロキ・ファミリア】二軍人員(メンバー)が交代制で監視されている。

 

少しでもおかしな動きをすればフィン達に連絡が行き、取り押さえられるようにだ。

 

「めんどくせぇ…」

 

俺はそう言葉を漏らすのだった。

 

「よぉ」

 

「ケンマさん⁉」

 

予想外の来客にベル達は驚く。

 

「無茶したな、ベル」

 

「ウィーネを助けるためにあぁするしかなかったんです…」

 

「俺はその事に関して何も言えねぇ、言える口を持ち合わせてねぇ」

 

「…」

 

「前だ」

 

「え…」

 

「お前の手にしたい未来(こと)は前にしかない、だからしっかり立って進め」

 

「はい!!」

 

そうして、事態が動いた。

 

俺は既にウィーネの事はベル達に任せてリド達をダンジョンの隠れ里に夜の炎で送り届けている。

 

つまり、ヘルメスの思惑は破綻している。

 

だが、一体(ひとり)異端児(ゼノス)を除いて。

 

「お前がリドが言っていたアステリオスだな」

 

「誰だ、お前は?」

 

「お前達の知るフェルズの協力者だ」

 

俺の目の前にいる黒いミノタウロスはその正体はベルがLv.1の時に戦った強化種ミノタウロスの生まれ変わりだ。

 

だから、こう言えば乗ってくる。

 

「お前の仲間の異端児(ゼノス)達は無事にダンジョンに帰還した。お前はどうする?」

 

「再戦を…そして、決着を!!」

 

その言葉に俺はこう言った。

 

「お前が再戦を求める相手に心当たりがある、だから『舞台』を用意してやるから存分にその力を奮ってくれ」

 

「……良いだろう」

 

そうして、俺はアステリオスの元を去った。

 

一度、ステイタスの更新にフレイヤのいる摩天楼施設(バベル)に訪れる。

 

「フレイヤ、ステイタスの更新をしてくれ」

 

「いいわよ、後ヘルメスから面白い話を聞いたの」

 

異端児(ゼノス)の事か」

 

「知っていたの?」

 

「あぁ、知っていたというか俺は関係者だし」

 

「なんで教えてくれなかったの?」

 

「あいつらは酷く純粋だ、神々(お前)達の手の上でコロコロと賽子(ダイス)のように転がしていては壊れちまう」

 

「もっと簡潔的に言うと?」

 

「面倒ごとにしかならないから教えたくなかった」

 

「その通りね、今も都市が騒がしいもの」

 

そう言いながらフレイヤは都市を見下ろしながら葡萄酒を飲む。

 

「ヘルメスに『ダイダロス・オーブ』は渡してあるんだろ」

 

「あら、いけなかった?」

 

「別に、俺もう一個持ってるし」

 

ヘルメスが持って行ったのは元【イシュタル・ファミリア】副団長のタンムズ・ベリリがフレイヤに献上したもの。

 

そして、今俺が持っているのは【イケロス・ファミリア】副団長グランの持っていたダイダロス・オーブを持っている。

 

「あなた、何を考えているの?」

 

「さぁな」

 

俺はフレイヤに悪戯を思いついた子供のように笑って見せ、フレイヤに黒いミノタウロスの正体を教えると美の神らしく妖艶な笑みを浮かべるのだった。

 

「ベルに黒いミノタウロスをぶつける」

 

「その話詳しく聞かせてくれる?」

 

「あぁ」

 

俺は計画の一部をフレイヤに話し、強靭なる勇士(エインヘリャル)を動かす。

 

そうして、全てを終わらせる時が来た。

 

【ロキ・ファミリア】を主導としたモンスター大捜索はリリルカの変身魔法と俺の霧の死ぬ気の炎を使った幻覚によって大混乱を齎す。

 

リリルカには自分以外のモンスターを見かけても話しかけずに攪乱を続けるようにだけ伝えてある。

 

というか、伝えておかなければ異端児と間違えて話しかける可能性が十分にあったからだ。

 

「さて、俺は…」

 

更に攪乱させるために有幻覚で作り上げたそれは石竜、紅鷲、閃燕、甲冑を装備した巨大蜂(デッドリー・ホーネット)が吠え、モンスター捜索をしていた冒険者に襲い掛かる。

 

強さ的にはまぁ、あいつら本体よりちょっと強いくらいじゃないと乗り越えることは出来ない。

 

すると、そこへベルがやってきて有幻覚との戦闘に入る。

 

ベルが小声で語り掛けてくるも答えないというか、答えられない。だって、それは実体がある幻覚なだけだから!!

 

そして、ベル達との戦いが終わりに差し掛かった頃…『舞台』は整った。

 

さぁ、来い!!

 

「ヴヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

その咆哮は都市に響き渡り揺るがした、決着を求める獣の咆哮。

 

その咆哮に全員が意識を割かれる、その瞬間戦闘が行われていた場所が爆ぜた。

 

俺は有幻覚達を消し、【ロキ・ファミリア】の足止めに向かおうと思ったが相手が居ないと思った俺はベルの戦いを見守ることにした。

 

戦いは激しさを増していくたびに民衆の心を、冒険者の心を掴んでいく。

 

周囲からベルへの応援が響き渡る。

 

途中、見覚えのある大剣が降ってきたがあれがベルに当たってたらどうする気だったんだあの猪…。

 

だが、このままでは全部を巻き込んでしまうだろう。

 

しかし、それは杞憂だった。

 

ベルとアステリオスは中央広場に移動し、戦いを再開する。

 

ベルを援護しようと動こうとした冒険者はアステリオスの咆哮で動きを封じられ、中央広場に着いてもそれは同じ…いや、魅入ってしまった。

 

こうなってしまえば、ベルとアステリオスの二人舞台。

 

その死闘は摩天楼施設の地下一階、ダンジョンの入り口で着いた。

 

勝者はアステリオス、一勝一敗という結果に終わり互いに次に会った時こそが決着の時だと約束した。

 

そして、戦いの後ベル・クラネルの堕ちた名声などは払拭されるのだった。

 

さて、次は人造迷宮(クノッソス)第一次侵攻だ。

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