十五年前以上のある日、俺は書類整理から離れて自分の夜食用の食材を買い込んでいた。
「さて、今日の夜食は何にする・・・ガッ!?」
夜食の献立を組み立てながら歩いていると、背後から襲われ意識を失ってしまう。
その意識を失う前に見た光景は笑顔を見せるクソ
「で、俺を攫って何しようってんだ?」
「なに、簡単な話よ。私達に料理を教えなさい!!」
「・・・・・・一応聞こうか、何でまた急に料理をする気になった?」
「それは決まっているじゃない、未来の夫に振る舞うための修行よ」
「(息の根を止めるためじゃないのか・・・)」
女帝の言葉に俺はそんなことを考えた。
何故なら、【ヘラ・ファミリア】の女共は家庭的と言う言葉とは真逆の存在なのだから。
男の事は下僕以外何者でもないと言う扱いを受けるし、家事に至っては全員が壊滅的で倫理観も道徳もあったもんじゃない。
そのせいで俺はこいつらに何度も死の淵に立たされている。
「だったら、ザルドに頼めよ。悪食と美食を極めてるあいつの方が美味いぞ」
「それはそうなんだけど、あいつ今オラリオにいないのよ」
「・・・・・・・・・(あいつ、こいつらに消されたって事は無いよな・・・・・・)」
女帝の言葉に俺は思いっきり訝しむ。
「・・・それで、何を作るつもりだ」
「あら、やけに素直じゃあない」
「拒否権なんて皆無なんだからやるしかねぇだろ。あと、俺の言うことには従って貰うぞ」
「なんでよ」
「いや、それが人に教わる態度か」
「私達を誰だと思ってるのよ」
「イカレ
それを言った瞬間、俺は都市壁にめり込んでいた。
まぁ、気を取り直して料理教室を始めるのだが・・・正直に言うのであれば今すぐに帰りたい。
だって、食堂にやって来ると壁とか天井が血塗れで血塗れの麻袋が転がってんだけど・・・ここ拷問部屋じゃないよね!?
「あら、ヘラったらまた狒々爺の好々爺と愛し合ってたのね」
「いや、見るからに惨殺現場にしか見えねぇよ!!」
女帝の的外れすぎる発言に俺は盛大にツッコミを入れる。
「フレイヤの所のクソガキじゃないか、何で貴様がここに居る?」
「あんたの眷族共が料理教室開かせるために拉致られたんだよ、イカレ
「「あぁん!?」」
売り言葉に買い言葉で俺とヘラは睨みあう。
が、こんな事をしているよりさっさと料理を教えて帰ろうと思い行動に移る。
しかし、ここからが地獄だった。
何度教えながらやっても料理は炭化し、汁物はドブ色の何かになったりと様々だった。
「いや、ここまで壊滅的だともはや才能だろ」
「いやぁ、それほどでも」
「褒めてねぇんだよ」
正直に言おう、これこそ未知の領域だわ。
「なんだ、この惨状は」
其処に現れたのは【ヘラ・ファミリア】きっての才禍の怪物【静寂】のアルフィア。
「また無駄なことを繰り返しているのか、食い物を粗末にするだけだと言っているだろう」
バッサリと言ってのけるアルフィアに女帝がキレる。
「じゃあ、アンタは料理が出来るって言うのかしら!!どうせ私達と同じでしょ」
「ふん」
女帝にそう言われてアルフィアが調理場に入り、しばらくして出てくるとそこには美味そうなミルク粥とココアがお盆に乗っていた。
これには俺もだが、女帝達は目を丸くしていた。
「メーテリアにゲテモノなぞ食わせるわけにはいかんからな」
メーテリア、原作主人公のベル・クラネルの母親の名前だったな。
まぁ、そんなことより俺は呆然としている女帝達を掻い潜って
「ケンマ、手作りチョコをあげるわ」
俺は最後の試練を乗り越えるために口に入れると意識を失うのだった。