【番外編】幼馴染にフラれたので旅に出ることにした 作:イグアナ
ご安心してお読みくださいませ!
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ムクホおにいさんがいなくなってからいっしゅうかんたった。
もしかしたらひょっこりかえってきてくれるかも……なんて、そんなことばかりかんがえてる。
……わたし、なにかしちゃったのかな? いいこにしてたら、かえってきてくれるのかな?
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ムクホおにいさんがつかっていたへやにいくたびに、おもいでがよみがえってくる。
いっしょにえほんをよんだこと、ほめてもらったこと、おひるねしたこと。
あったかいはずなのに、たのしいおもいでのはずなのに、
おもいだすたびに、むねのあたりがちくちくする。
「…………」
シバリが未来に戻ってから1週間と数日。シロナは今日もシバリが使っていた部屋を訪れていた。
ここにいても思い出がたくさんで辛くなることもあるが、せめて、彼の温かみの欠片だけでも感じていたい。そう思っての行動だった。
「……会いたい、なぁ」
部屋に入ったとき、いつものように笑顔で出迎えてくれた彼はもう居ない。もし彼が居たら、一体自分にどんな言葉をかけてくれただろうか。
(きっといつもみたいに…………あれ?)
(いつもどんな感じに声をかけてくれたんだっけ……?)
一瞬、いつもシバリがどのように自分を迎え入れてくれていたのか思い出せなかった。
その後すぐに思い出したが、それでも一瞬、忘れていた自分が居た。
「そ、そんな……」
たった1週間。この僅かな時間ですら、彼女の記憶は彼との思い出にノイズを差し込んだ。
なら、1ヶ月後はどうなる? 半年後は? 1年後は?
自分は、いつまで彼のことを覚えていられる?
もしかすると、いつか顔すらも思い出せなくなるのでは?
「やだ……」
あの温かさを、笑顔を、優しさを。
自分が大人になるにつれ、
「やだっ! やだよぉ!」
「忘れたく、ないよぉ……」
いつか彼の存在を自分の中で
それが何よりも恐ろしく感じた。
「……そうだ」
だからこの彼女は、この恐怖に対抗するため、日記とは別のノートを用意し、ペンを手に持った。
「それなら、ムクホお兄さんと初めて会ったときからお別れするまでにしたお話、
「そしたらきっと、ずーっと忘れずにいられるよね?」
そうして、彼女は今までのことを思い出しながらペンを走らせ始めた。
◯✕がつ ✕▢にち
ムクホお兄さんとのやりとりを書いていたら、字書きが上達したきがする。少しは読みやすい文書になってるのかな?
これも全部ムクホお兄さんのおかげ。
ねぇ、私いい子にしてるよ? だから──
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カンナギタウンの皆にも話を聞いて、私の知らないムクホお兄さんのことも書き記すことにした。
そうやって話を聞いていく中で、ムクホお兄さんが居なくなった日の前の晩、山の方から奇妙な声を聞いたという話を何人かから聞くことができた。もしかして、ムクホお兄さんが居なくなったことと、何か関係があるのかな?
……そう言えば、ムクホお兄さんとのやり取りを思い返していて、少し気になったことがある。
というのも、ムクホお兄さんは初めて会ったときから私に対してとても良くしてくれていた。子どもに優しい……というのもあるかもしれないけど、私に対してはそれだけじゃない気がする。
まるで私を通して誰かを見ているような、そんな感じ。
……ムクホお兄さん、私に誰を重ねていたのかな?
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ムクホお兄さんがシンオウ神話を調べていたときのメモを見つけた。ディアルガやパルキアが持っていると言われている、時空間へ干渉する権能について詳しくまとめてたみたい。
どうしてこの部分だけピックアップしたんだろう。ディアルガとパルキアに興味があったのかな? それとも、この
「……おはよう」
今となっては誰も居ない部屋を、今日もシロナは訪ねていた。
どこからも返事は返ってこないが、シロナは気にせずに彼がいつも座っていた椅子へ腰を下ろした。
「……ずっと、難しそうなお顔してたよね」
シロナが思い返すのは、シバリがシンオウ神話を調べていた時の表情だった。
何せ、集中しすぎてシロナが部屋に入ってきても気が付かないときもあったくらいだ。なので、彼が調べていたことと彼が消えたことに何か関係があるのではとシロナは考えていた。
彼がよく読んでいた本を開いてみるが、そこには難しい言葉がたくさん羅列されていて──。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ……わからないよぉ……。ムクホお兄さん、わかりやすく噛み砕いて教えてくれてたんだぁ……」
『お勉強しなきゃ……』なんて思いながら机に突っ伏したシロナだったが、ふと顔を横に向けたところで、窓の外に見えるテンガン山が目に入った。
「……そう言えば、ディアルガとパルキアはテンガン山に居るって、ムクホお兄さん言ってたっけ……」
少し考えてシロナは椅子から立ち上がり……。
──久々に、カンナギナウンの外に出てみようと思ったのだった。
「……おっきい」
テンガン山の近くまで来てみたシロナだったが、カンナギの宿から見たときよりも、目の前のテンガン山は遥かに大きいものだった。
「もしかしたらここに、ムクホお兄さんの手かがりがあるのかな……?」
ごくりと息を呑んで、シロナは1人で足を踏み入れたことのないテンガン山へと入山することを決意した。
そして、一歩踏み出したところで──。
「こーら、何してるんですか?」
「ひゃいっ!? ジュンサーさん!?」
シロナの肩に手を置いたジュンサーは、自分の方にシロナを向かせ、目線を合わせるためにしゃがみ込んだ。
「シロナちゃんはお利口さんだけど、だからと言って子どもが1人で山に入ったら危ないでしょう? 保護者の方と一緒でないと、認められません」
「で、でもぉ……」
「もしくはムクホ君……でしたっけ? 彼と一緒でも良いですから……」
「……ムクホ君は、もう……」
「……?」
シロナが事情を話すと、ジュンサーは申し訳なさそうに頭を下げた。
「ごめんなさい、そうだったのね。私ったら知らずに何てことを……」
「ううん、良いの。ジュンサーさんは私を心配してくれたんだもん」
「……本当に、優しい子ね……」
ジュンサーはシロナの頭を優しく撫でると、『あっ』と声をあげた。
「……そう言えば、丁度その日だったかしら」
「え?」
「ムクホ君が居なくなったっていう日の前の晩、私は夜勤の当番で、この辺りを巡回していたんだけど──」
ここでシロナは、思いがけないところでシバリの行方についてのヒントを得ることとなる。
「──鳥ポケモンに乗ってテンガン山に向かっていく、ムクホ君くらいの背丈の男の子を見かけたわ」
「──────ッ!!」
彼女の中で、ピースがひとつ埋まった気がした。残るピースは……。
「夜だったから正確には見えなかったけど、今思えばアレは──」
「……あの、ジュンサーさん」
「なぁに?」
「その前に、テンガン山の方から
「え、えぇ……聞こえた、けど……」
「なら、その鳥ポケモンに乗った人って、
「言われてみれば……! 確かに声が聞こえた方に向かって行ったわ!」
「…………
彼女の中で、全てのピースが繋がった。
シバリがシンオウ神話を調べていた目的。更にシバリが消えた理由。そして何より──。
「…………あは」
「……シロナちゃん?」
シロナは歪む口角を抑えきれなかった。
「えへ、えへへへへへ……そっか、そうなんだぁ……」
「シ、シロナちゃん……?」
ジュンサーが声をかけていることにも気付かず、彼女は熱に浮かされたように笑い続ける。
シバリが自分に誰を重ねていたのか。その答えに辿り着いたからだ。
「──
超重力日記編?
どこだろうね←