─オルステッド視点─
ガン!!!
甲高い金属音。
それを受けて、俺は顔をしかめる。
「……不思議だな」
「……」
ガン!ガン!!!
俺の神刀は、奴のカジャクトに止められる。
俺は、それが不思議でならなかった。
確かに、奴は強い。
奴の予見眼は、俺の知っている予見眼とはまるで別物。
これほど予見眼と向き合い、最強へのピースへと昇華させた男を、俺は多大なループの中で何人たりとも見たことはない。
別格と呼ぶに相応しい偉業。
それに加えて剣技は、剣神、水神、北神の全てを凌駕し、土魔術は魔神すらも置き去りにする生成速度と効率。
強い、強い人族。
しかし、それでも、俺は不思議だった。
何故、奴が俺と打ち合えるのか、不思議だった。
「魔術も剣術も俺と同じ神級。しかし、貴様と俺では、天と地の差があるはずだ」
ガン!!!
火花が散る。
奴の鎧にこびり付いた血が、奴の言葉を加速させる。
「ふふ、なんだ、なんだよ。俺は魔龍王の劣化。そう言いたいのか」
理解した目の前の人族。
次のループのために、疑問は解決する。
俺の目標。達成させてやると、答えてやると開かれる奴の口。しかし、その言葉は、意味を為さない。
「撃ち合える理由、それは執念……いいや、欲だ。お前を、オルステッドを殺してやるっていう欲だ。それが、それだけが、俺の全てだ」
まるで、会話にならない。
誰にでも明らかな、奴の壊れた思考。
「恩返し。そんな、最高で幸せの欲だ」
「……そうか。ならば、その欲ごと叩き斬るしかないな」
終わる会話。
俺は神刀を握り締め、目の前の異変を睨みつける。
─────────────────────────
─ルーデウス視点─
面白い。最高だ。気持ちいい。
脳から何かが溶け出す。
俺は、今、ヒトガミに恩返し出来ている。
ぶつかり合う火花。
龍聖闘気。そんなものは感じない。
最強の自負。そんなものは、要らない。
「ははっ。はははっ!!!」
笑う。笑う。
俺は、今、笑えてる。
「最高だ、最高だなぁ!!!」
俺の抜けそうな白髪が揺れる。
そんな俺に、奴が言葉を放つ。
「人族が神級……それほどの努力と引き換えに、壊れたか」
奴の言葉。
俺には、意味が分からなかった。
奴は、神級を会得する努力なら知ってるとかほざきやがった。
俺の脳は、理解を示さなかった。
いや、良い。そんなことは、どうでもいい。
俺が目を見開いたのは、続く奴の言葉。
「俺が、終わらせてやる」
貴様を終わらせてやると。
初めて、ヒトガミ関係なく動かされているかもしれないと。
奴が、俺に向かって呟く。
楽しい、楽しい俺の時間。
壊れた俺に向かって、奴が指先を向ける。
『乱魔』
俺の欲が、終わりを告げる瞬間だった。
─────────────────────────
「ふっ、ふふっ。俺の欲が、この程度で終わると思ったのか?」
俺は笑う。
その理由は、単純。
「俺の泥沼に対して乱魔。お前の、最高傑作」
魔術を防ぐ乱魔(ディスタブマジック)
しかし、その最高傑作は、俺には無意味。
「乱魔。お前の傑作も、考慮すれば簡単に崩せるぜ」
ニヤリと笑う。
しかし、俺の笑みは、終わりを告げる。
「だろうな」
奴の言葉。
刹那、何かが俺の違和感をくすぐる。
「……は?」
目を見開いた。俺は、目を見開かざるをえなかった。
何故なら、奴の動きは、最強の神刀は、俺の目から消えたんだから。
ブン!!!
奴の神刀が、俺の魔導鎧の頬を掠る。
「なんで、こうなる?」
「崩しは一瞬でいい。それは、思考でも同じことだ」
「思考でも、同じ?」
俺は、再度目を見開いた。
思考への崩し。動きじゃない、思考への介入。
……そうか、俺は『考慮』したんじゃない。考慮させられたんだ。
魔術に考慮を含ませる一瞬の隙。
それを、奴は狙っていた。
「これほどの速度。思考を止めることは、死ぬことに等しいぞ」
奴の最高効率の泥沼崩し。
泥沼を放とうとする俺に放たれるのは、奴の魔術。
「ディスタブマジック」
止まる思考。
また、俺の頬を奴の神刀が掠る。
ブン!!!
「また、勘で避けたか。だが、次は無い」
オルステッドの言葉。
俺は、ぼーっとする。
何も考えず、しかし、全ての五感を研ぎ澄ませる。
………
……
…ふふっ。なんだ、なんだよ。まだ、楽しいじゃねぇか。
睨み付ける最強。
勝ちを見つめる最強。
負ける、俺。
……いいや、違う。
まだ、俺の欲は終わらせねぇ。
俺の恩返しは、家族の想いは、終わらせねぇ。
刹那、俺も奴と同様左指を向けた。
それに合わせて、奴も俺に指を向ける。
下に向ける泥沼か、はたまたヤケクソの至近距離ストーンキャノンか。
誰もが、そう考える。オルステッドだって、そう考える。
だから、これだ。
なぁ、そうだろ?みんな。
これが、俺の想いだろ?
俺が指先を向けた先。そこは『上空』
ボトン。
刹那、オルステッドが目を見開いた。
鳴ったのは、醜く鈍い音。
色は茶色。降ってきたのは、泥。
「これが、貴様の選択か」
そう、乱魔を考慮し、俺が放ったのは『泥雨』
上空から放つ、雨と土の混合魔術。
「お前の白い服が茶色くなる……白を汚すのは、ヒトガミに失礼だったかな」
ボトボトと落ちる泥。
言葉と共に落ちる泥に、オルステッドが顔をしかめる。
「分からんな。こんなの、振り解いてしまえば……「沼は、変わる」
俺の言葉に、オルステッドが目を見開く。
さぁ、今度はお前の番だ。
「泥が身体に降りかかってくる。それが纏わりついて、身体から離れなくなるとどうなるんだろうなぁ」
「……」
不快な泥。
それは、まるで執念の様に纏わりつく。
オルステッドの身体を、奴の闘気を。
(重い。俺の身体に触れた瞬間、岩という固体へと変化した。泥の水を凍らせたのか?いや、それにしては、熱い……)
「さぁ、オルステッド。第二ラウンドだ」
オルステッドの身体が重くなる。
執念は、欲になる。
「……魔龍王ラプラスの劣化などではない。貴様は、俺にとって最大の凶器だ」
鈍る動き。
オルステッドが、剣を振るう。
ガン!!!
「だが、俺は、まだ貴様という凶器に傷すら付けられていないぞ」
交差する魔剣。
龍聖闘気は、衰えることを知らない。
老デウスVSオルステッドについて。
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