もしも、老デウスがオルステッドと戦っていたら   作:あえch

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神は、思考すらも超える。


老デウスVSオルステッド その3

俺には『想い』があった。

 

「オルステッド、どうだ?」

 

俺には『目的』があった。

 

「ふはっ、ふははっ!オルステッド。俺の魔術の味は、どうだ?」

 

奴の目つきが変わる。

最強の身体に纏わりつくのは、泥という名の執念。

 

ガン!!!

 

守りから攻めへ。

俺の執念の軌跡、王竜剣 カジャクトが光る。

 

「オルステッド、変わるぜ」

 

「……」

 

「執念は欲へ。そして、欲は目的に変わる」

 

さぁ、始めようぜ。オルステッド。

最強を決める最終ラウンド。

俺の、最高の恩返しを。

 

「オルステッド。勝つのは、俺だ」

 

俺の言葉と同時。

刹那、オルステッドが動き出した。

 

 

─────────────────────────

 

 

守りから攻めへ。

俺のカジャクトが、奴の神刀とぶつかる。

 

ガン!!!

 

散り行く火花。

奴に纏わりつく泥が、執念が揺れる。

 

ガン!ガン!ガン!!!

 

三度の銀線。

常人には見ることも許されぬ斬撃は、俺に何かを感じさせる。

 

(……なんで、なんでだ。何か、おかしい)

 

黙るオルステッド。

奴の身体が揺れる。

纏わりつく執念、岩の揺れが、俺の違和感を加速させる。

 

(岩は、全て合わせて二トン以上の重み。なのに、なんで……)

 

ガン!!!

 

恐ろしい銀線。

この一発を、俺は肘を曲げて受ける。

そう、曲がる肘。この事実が証明するのは、たった一つ。

 

(なんで、攻めているはずの俺が差し込まれてる?)

 

俺の魔力が枯渇したか?否、違う。

今の俺の魔力効率ならば、重力魔術で常にバフを掛けても最後まで戦い抜くことなど容易。

魔力も、剣術もベストコンディション。

最高の欲で、最高の舞台で。俺は最大の力を発揮出来ている。

 

間違いなく、今の俺は最強。

 

じゃあ、答えは一つ。

俺が衰えていないのに、差し込まれる。

その理由は、たった一つ。

 

「なんで、お前が速くなるんだよ」

 

「……」

 

最強には二トンの重みも無意味なのか?

いや、ニトンだ。ありえない。

動きが鈍らないなんてあり得ない。

 

目を見開く俺。

刹那、オルステッドが口を開く。

 

「貴様では、人族では、出来ない」

 

「……」

 

「今、終わらせてやる」

 

ガン!!!

 

切り裂かれる俺の頬。

オルステッドの刃が、俺の鎧に傷を付ける。

 

差し込まれ、傷がつく。

もう、何度目かも分からない絶望。

 

果てしなく大きな絶望。

でも、それでもまだ。

まだ、俺は死んでない。

 

速い、速い、確かに速い。

早くなり続ける奴の斬撃。

そして、不思議だった。

なんで、オルステッドはあんなに話した?俺に厄介だとか凶器だとか。

なんで、話してきやがった?

 

なんで、オルステッドは……時間を稼ぎに来た?

 

俺の疑問。

答えは、俺の予見眼に映ってる。

 

「なるほど。やっぱり、ヒトガミは最高だな」

 

ヒトガミの助言でもらった最高の物『予見眼』

そこに、全てが映ってる。

 

「上がり続けるスピード。そりゃあ、俺には出来ないわけだ」

 

ガン!ガン!ガン!!!

 

亀のように固まる。

オルステッドの攻撃を、斬撃を、耐え忍ぶ。

雨のような攻撃。

しかし、そんな攻撃も、俺の予見眼に映るのはブレない一つ。

 

(動き続けることで、勢いを止めず攻撃し続ける。速度は指数関数上に跳ね上がり、それは限界を知らない。上がり続けるパワーとスピード。それに耐えうる肉体は、人族では不可能なわけだ)

 

しかし、その最速で強くて、勢い任せの攻撃は、あまりにも単調。

単調、読める。

先を見れる予見眼とは、あまりにも相性が悪い技術だな。

 

『俺は、水神流の構えを取る』

 

刹那、オルステッドが目を見開いた。

奴の記憶にある人族最高峰の水神流 レイダ・リィア。

俺の背中にあるのは、奴の面影……否、そんな者とは比べ物にならぬほどの水神流。

 

「オルステッド。俺の泥は、お前を単調に仕立て上げた」

 

「……」

 

「さぁ、来い。一発で決めてやる。それだけで十分だったと、証明してやる」

 

シルフィと、そしてエリスの仇である水神流。

それを、俺は、今恩返しのために使う。

目を見開いて、オルステッドの攻撃を返すために使う。

 

さぁ、来い。

 

俺が、お前を殺してやる!!!

 

ガン!ガン!!!

 

二度の銀線。

刹那、ぬるりと、目の前の男が最強を見せる。

 

「もう、貴様を侮ることはない」

 

言葉と同時。

オルステッドが攻撃を仕掛ける。

今までの動きじゃない。

俺のカウンターを想定して、奴は攻撃を作る。

 

『重力魔術』

 

物理法則を無視する動き。

指数関数上に上がっていくスピードを、奴は重力魔術で変化させる。

 

速く、そして、不規則に。

 

「ルーデウス・グレイラット。意表を突くのは、俺だ」

 

オルステッドの言葉。

絶望を加速させる、宿敵の言葉。

しかし、そんな言葉は、俺には通用しない。

 

なぁ、オルステッド。忘れてんじゃねぇか?

 

俺は、重力魔術を習得して、研究したんだぞ?

 

「オルステッドォォぉぉ!」

 

俺の叫び。同時、俺は亀のような防御を終わらせる。

作った水神流を予見眼に乗せ、重力魔術で変化する奴の攻撃を、予見と予測で合わせに行く。

 

重力魔術という不規則を規則的に。

 

何年、何十年と受けてきた絶望。

それに比べたら、お前なんて雑魚に等しい。

 

「やっぱり、お前じゃあヒトガミには勝てねぇよ!」

 

俺の言葉と同時。

刹那、何かが変わる。

オルステッドの動きが、俺の予見眼から外れる。

俺の予測から、消える。

 

「……止まった?」

 

動き出した時間、動き。

しかし、それは俺だけ。

奴は、オルステッドは、真逆。

ここに来て、奴が行ったのは停止。

 

「何、してんだよ」

 

「重力魔術は、攻撃ではない」

 

「……」

 

「貴様の意表を突くために使う」

 

動き出そうとした俺の構え、水神流。

攻撃を返すための技、水神流。

しかし、来ない。返すための攻撃は、俺の元には来なかった。

それによって前のめりになる。

俺の身体が、泳ぐ。

 

落ちる腰、視線。

俺は、オルステッドの腰を見つめて認める。

 

確かに、俺はお前に意表を突かれた。

身体は泳いだし、思考は予測を超えていった。

それは、認めてやる。

 

でも、でもなぁ、お前も勘違いしてるんじゃねぇか?

 

「オルステッド。やっぱり、お前は最強なんかじゃねぇ」

 

動きを止める。

それは、奴にとっての悪手。

 

「意表を突いただけで喜ぶ。良かったなぁ。褒めてやるよ。でもなぁ、そんなとろい動きじゃ、俺は、ヒトガミは、俺の家族は、殺せねぇよ!!!」

 

叫んだ刹那、俺が力を込めるのは足。

泳いだ身体を重力魔術で無理矢理起こし、俺は一人の男を見つめる。

最強で、憎くて、俺の殺すべき相手『龍神 オルステッド』

俺は、奴の動きだけを見つめる。

 

(止めた動き。来るのは一人時間差のタイミングをずらした攻撃、もしくはそう見せかけての重力魔術だろ?)

 

どっちでも関係ねぇ。

どちらでも、潰してやる。

俺が、ヒトガミの意思を継ぐ俺が、対応してやる!

 

俺の水神流の構え。

神級の、努力の結晶。

 

刹那、奴が、その努力に割って入る。

 

「やはり、貴様は強かったな」

 

言葉を放ったオルステッド。

意表を突かれたはずのオルステッド。

しかし、そんな最強の目は、一ミリも見開かれてなどいなかったんだ。

 

バン!!!

 

「……は?」

 

爆音と同時。

俺の左腕が、飛んだ。

 

………

 

……

 

…ボトン

 

空中を舞う俺の左腕が、くるくると空中で弧を描き、後方に飛ぶ。

短くて、長い時間。

その最強を決める戦いの中では長すぎる時間を掛けて、俺はやっと気付く。

 

「……ノーステップの、無音の太刀」

 

「もう一度言ってやる」

 

「……」

 

「意表を突くのは、俺だ」

 

飛んだ俺の左腕。

そこから、ドクドクと血が流れ出す。

とめどなく溢れる血液。

それは止まることを知らない。

 

そして、流れ続ける血液と同じぐらい、俺は止めどなく思考を回す。

この戦況に。今の、この異変に。

 

異変……だって、おかしいだろ?

ノーステップの無音の太刀。

助走無しで放つ刃。

そんなの、おかしいだろ。

 

俺の水神流を崩した理由は、一瞬の溜めを作るため。

助走ではない。奴には、最強には、呼吸を整える時間があれば十分。

 

いや、おかしいだろ。

だって、今のアイツはベストコンディションじゃない。

二トン近い岩が、俺の執念が纏わりついてんだぞ?

 

それに……いや、良い。もう良い。

あぁ、そうか。そうだったんだ。

俺は弱い。最強は、オルステッドだったんだ。

 

ドン!!!

 

鳴る爆音。

刹那、オルステッドが踏み込む。

纏わりついた岩を気にせず、奴は音速の踏み込みを見せる。

 

「これで、終わりだ」

 

耳を揺らす言葉。

気付いた、気付けた、最強はオルステッドという事実。

最悪の、事実。

 

最悪、最悪?

 

いや、違うだろ。

最悪は、違うだろ。

 

最悪は、目的を見失うこと。

家族を、俺の大切な人たちを忘れること。

 

そして、最悪は、ヒトガミに恩返しが出来ないということ。

 

それに比べたら、俺が最強かなんてどうでもいい。

 

「まだ、まだだろ!」

 

刹那、俺は目を見開いた。

切断された左腕。ドクドクと流れる血液を気にせず、俺は歯を食いしばる。

見開いた目。込めた感情は『驚き』ではない『意表』でもない。

込めた感情は『決意』

全てを覆すという、最高の恩返し。

 

「ここに来て、諦めないか……やはり、貴様は他の使徒とは別者だな。だが、遅い」

 

「だからぁ!」

 

握るカジャクト。

俺は、剣を握っている右手の人差し指と中指だけを立てる。

 

「俺は、ヒトガミの友達だって言ってんだろうが!!!」

 

まだ遅くねぇ。

俺がヒトガミから受けた恩は、まだ終わらせねぇ。

 

「オルステッド。流れは、変わるぜ」

 

奴の行った時間稼ぎ。

今度は、俺が利用する。

 

立てた人差し指と中指。

俺は、それを奴に向ける。

奴の纏わりつく岩に、俺の執念に向ける。

 

そして、たった一言。この言葉を置いていく。

 

「爆ぜろ」

 

ドン!!!

 

刹那、鳴ったのは爆音。

この言葉が証明するのは『爆発』

ここに来て、俺が行うのは自らの魔術の消滅。

 

「なぜ、爆ぜる?これほどの岩が……」

 

俺の魔術。それは、岩。

瞬間的に、一瞬にして、奴の纏わりつく岩が爆ぜる。

勢いよく、大きく。

二トンもの巨大な岩が、オルステッドの眼前で弾ける。

 

ここに来て、見開かれるオルステッドの目。

 

まだ、勝負は終わらねぇだろ?

 

「そう、来たか」

 

舌打ちをするオルステッド。

奴が、渋い顔を見せる。

 

(俺に纏わりついた岩、それは熱かった。その理由は単純。奴は、泥の水分を凍らせたのではない。寧ろ真逆。奴は、熱を与え、水分を蒸発させた)

 

最強を使い、行った時間稼ぎ。

その目的が、明らかになる。

 

(そして、その熱は水分を通り越し、岩の中の空気に熱を与え、膨張させた。そして、限界を超え破裂した)

 

空気は熱で膨張する。

まるで気球のように、美しく、大きく。

ここに来て、俺が可能にするのは奇跡に近い神技、混合魔術。

水と土だけじゃない。

雨、土、岩に含ませた空気という風、そして熱という炎。

水、土、風、火。

 

二重ではない。

ヒトガミが居たから出来る、奇跡だけが起こせる『四重混合魔術』

 

「……」

 

「オルステッド。やっと気付いたか。でもなぁ、おせぇよ」

 

俺は、奴と同じ言葉を残す。

遅いという言葉を、最速を誇る最強へと向ける。

 

爆ぜる岩、ドクドクと流れる血液。

 

この戦況。

それを、俺と最強が見つめる。

睨み付ける最強。戦況を見つめる奴は、正に鬼神。

 

「岩は強い。確かに、貴様にはラプラスを超えた何かがある。しかし、それでも……」

 

無傷のオルステッド。

奴が、神刀を握り直す。

 

「爆ぜる岩で視界を潰したのは悪手だったな」

 

奴がトップスピードに乗る。

爆ぜた執念は奴から離れ、スピードを上限なく上げさせる。

奴の攻撃を回避するのは不可能。

それが事実。最強たる所以。

 

でも、そんなことは分かってんだよ。

 

「奇跡の天使よ、汝の聖なる息吹を、汝の前の鼓動する心に授けよ」

 

俺の言葉。

この言葉は、俺の苦手分野。

 

「詠唱魔術……上級か」

 

刹那、俺の左腕が光る。

そう、奴の言う通り。俺が詠唱するのは、上級治癒魔術。

 

(上級治癒魔術か……それでは、欠損は治せん。血液を止めるためか?いや、それだけで詠唱という無駄を奴がするとは思えん)

 

思考するオルステッド。

刹那、踏み込み、思考する奴の目に『あれ』が映る。

 

俺の後方に飛んだ『あれ』

 

『俺の左腕』が、奴の瞳に映る。

 

「そう来るか」

 

言葉と同時。刹那、オルステッドが踏み込みを加速させる。

俺の詠唱を聞き、奴が神速の如き加速を見せる。

 

(普通であれば、後方の腕は拾えまい。重力魔術の補足は、見えない後方では出来ない。しかし、貴様ならばやってくるはず)

 

ヒトガミの切り札、使徒である俺ならば、やってきてもおかしくないと認めるオルステッド。

欠損の治癒ではなく、拾った腕を付ける結合ならば上級でも治癒可能。

そして、それを俺ならやってくる。

奴が俺を、そう評価する。

 

0.01秒にも満たぬ接近戦。

その中で、奴が俺のために思考を割く。

 

でも、まだ甘い。

お前の思考じゃ、俺は倒せない。

 

再度、俺は魔術を込める。

対象は、岩の破片。

 

「ああ、太陽の光に祝福された天よ、深紅を嫌うしもべよ……」

 

(くれてやるよオルステッド。一つ、プレゼントだ)

 

詠唱を続けながら、俺は人差し指をオルステッドへと向ける。

岩の破片を飛ばす。

重力魔術で、鋭い岩を奴の脳天へ。

最速で、最強を射抜く!!!

 

ブン!!!

 

鋭い一つの岩が、オルステッドの脳天に飛び掛かる。

 

「ここに来て、初動をブラフに使うか」

 

初動のブラフ。

あの、初っ端の俺のストーンキャノン。

あの時、俺は、その岩の数々に一つも重力魔術を込めなかった。

自身の身体にのみ、重力魔術というバフを掛けた。

俺が込められる重力はたった一つ。

しかし、今の俺は違う。

カジャクトを握る俺は、カジャクトの重力操作と合わせて二つ重力魔術を込めることが可能。

 

突く意表。

最初のストーンキャノンは、重力魔術で物を動かせないと思わせるためのブラフ。

そう、全ては、この時のために。

賭けるのは、俺の全て。

 

全てを賭けた俺の戦術。

しかし、それでも、最強には届かない。

 

ガギン!!!

 

鋭い音。

奴が、鋭い破片を叩き落とす。

 

「俺の勢いを落とさせるための技。その間に、貴様は腕を治す」

 

続ける詠唱。

最強は、何も焦らない。

 

「しかし、分かっていれば、怖くはない」

 

ドン!!!

 

爆音を鳴らし、奴が踏み込みを終える。

そして、続けて奴が行う、俺へのステップイン。

神速を超える、最速の懐への侵入。

近い奴の瞳。それが、俺の全てを映し出す。

振りかぶる神刀。そこに、俺の全てが映る。

 

そう、俺の全て。

 

俺の戦術の全てが、その神刀に映る。

ここに来て、俺の全てがオルステッドに届く。

 

刹那、オルステッドが俺を見つめる。

 

「何故、左腕の位置が動いていない?」

 

言葉を放ち、奴が目を見開く。

さぁて、始めようか。

俺の最弱は、お前を超えるぜ。

 

「なぁ、オルステッド?シルフィって、すげぇよなぁ」

 

つくづく思うよ。

俺って弱いんだなぁって、凄くないんだなぁって。

でも、だからこそ、出来るんだよ。

 

お前が、俺に最強じゃないって教えてくれたから、出来るんだよ。

 

「ルーデウス・グレイラット。何故、詠唱を辞めた?」

 

シルフィを褒めたという事実。

それが意味するのは詠唱の終わり。

左腕の光、治癒魔術が消える。

緑色の優しい光が、俺から離れていく。

また、左腕からドクドクと血が流れる。

痛々しい光景、辛い光景。

 

でも、それで良い。

俺には、それが心地良い。

 

「オルステッド。教えてやるよ」

 

振り抜かれる神刀。

それに合わせて、俺は突いていく。

弱者の意表を、突いていく。

 

「意表の突き方を、執念の浴びせ方を」

 

言葉が飛ぶ。

それと同時、爆音が鳴る。

 

バン!!!

 

鮮血が舞う。

腕が、飛ぶ。

その宿主は『最強』

 

「……透明の、刃?」

 

飛んだのは左腕。

ここに来て、俺とお揃いになるのは『龍神 オルステッド』

 

「風魔術を凍らせて、透明にする。意表を突くにはぴったりの技だ」

 

鋭い風、龍聖闘気の間を縫う、最速の一手。

神みたいな技。でも、ちげぇんだよな。

シルフィは、もっとすごかった。

俺をレイダ・リィアから守ってくれた彼女の風魔術は、もっと速くて、優しくて、鋭かった。

 

「シルフィは、シルフィは、もっと、もっとすごかったんだ」

 

「何を、言っている」

 

動揺する最強。

そんな男。恐らく、オルステッドには二つの誤算があった。

一つ目は、初めて見た透明の刃。多少の油断があったとはいえ、龍聖闘気を貫通するほどの威力を誇る技が、ストーンキャノン以外にもあったということ。

そして、もう一つ。

これが、一番大きな誤算。

 

(途中で辞めた詠唱。俺は、奴に誘われたのか?)

 

強き者とは、弱さを強さに変えられる者である。

それを、正に俺は体現してみせたんだ。

シルフィみたいに、俺は無詠唱で治癒魔術が使えない。

だから、誘った。

詠唱はブラフ。俺は、最初から治す気なんてなかったんだ。

本来、後方に飛んだ左腕に掛けるはずの重力魔術を自分自身へ掛ける。

それが、攻めを強制させたオルステッドへの回答。

 

俺が弱いから、みんなみたいに強くないから出来た技。

弱さを知っていて、曝け出したからこそ出来た技。

 

やっぱり、みんなはすごいなぁ。

 

「やはり、貴様は壊れている」

 

奴の言葉の証明。

治す気なんてなかったという事実。

俺は、腕を拾う重力魔術を自身に込め、最速で放ってみせた。

攻めを強制させ、完璧なタイミングで、シルフィのような風魔術を、奴の左腕に叩き込んでみせた。

 

「俺が切断した左腕。治す気がないのなら、大量出血で死ぬぞ」

 

俺は不死魔族じゃない。

左腕を失っている奴が言う言葉は、確かに正論。

でも、悪いな。

俺は、壊れちまってんだよ。

 

「お前みたいなクズが、俺を心配すんじゃねぇよ。そんなもん、これで解決だ」

 

バキバキと、俺の左腕が凍る。

 

「痛みは、感じないか」

 

凍り、壊死する腕。

普通なら、想像を絶する痛み。

しかし、俺は、何も感じない。

 

「さぁて、お揃いだ」

 

無くなった左腕。

俺と最強が、魔剣を握る。

 

「そろそろ、恩返しも終わりにしねぇとな」

 

落とした左腕。

身体から消える、両者の片腕。

それが証明するのは、近付く終わり。

 

「さぁて、決めようぜ」

 

諦めた最強の座。

だけど、恩返しだけは諦めねぇ。

 

「恩を返すのは……」

 

人族VS世界最強。

言葉に乗せるのは『気持ち』

 

「俺だ」

 

言葉と同時。

両者が、無くなった左腕を揺らす。

 

 

 

 

老デウスVSオルステッドについて。

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