MUVLUV ALTERNATIVE the final episode 作:しおんの書棚
【 香月 夕呼 】
2001年10月22日13:00 国連 横浜基地 香月夕呼執務室
突然現れた訓練生の制服もどきを着た男、白銀武。そいつが通信機越しにとんでもないキーワードを告げてきた。こいつは放置できない存在だと判断した私が検査に向かわせたのは4時間前、その間調べた所によると白銀武は既に死んでいる。
しかし、あいつが
程なくして鳴ったチャイムに私はドアを開き、入ってきたあいつは私を一瞥もせず慣れた素振りでソファに座ると、体のコリを解すように肩を回したり首を捻ったりしている。
そして、思い出した様に私を見た。
「・・・・・・」
あいつは私の視線を受けながらリラックスした様に座り続けていて、イライラがひたすらに募る。たかだか17の餓鬼に舐められている現状、進まない研究。それらが相俟って際限なく怒りを増幅させていたが、それを気取られぬ様にこちらも余裕の態度を崩さない。
ただ普段の私ならメスを入れるかのように切り込む所だけど、何故かこの時は
「検査疲れたでしょ、なんか飲む?」
「はははっ、
まるで前回があったかのような発言、この普通じゃない検査を何度も?
「あっそ。で、飲むの飲まないの?」
「頂きますが、副指令に入れて頂くのも申し訳ないので、
「そ。じゃ、入れて貰おうかしら」
まただ。あいつにとって私にコーヒーを入れる事は
嘗て知ったる我が家とでもいう様に合成コーヒーとカップを取り出し、随分と慣れた手つきで二人分を用意すると、私に手渡してソファに戻って行った。
「それで、さっきの話。どういうことかしら?」
視線は外さずに一口飲んで、デスクの上に飲んでいたコーヒーを置く。そして、それを合図に話し始めた。
「話すことがありすぎますが、まずは自分自身と
これで何度目だろう、すべては過去の事だと・・・・・・。気になることが多すぎるが、ある程度の仮説は立てていた。なら引き出せるだけ引き出して利用し尽くしてやる!
「なら、さっさと話しなさい」
そいつの話を纏めるとこうだ。
1.白銀は、BETAのいない別世界の住人。
2.白銀としては過去となる2001年10月22日、目覚めるとこの世界の自宅自室にいた。
3.白銀が在籍していた学園に向かうと横浜基地になっていた。
4.私がその存在に興味を示し、207B訓練部隊に配属した。
5.207B訓練部隊、総合戦闘技術評価演習合格。
6.戦術機適正試験、白銀が過去最高値を記録。
7.訓練の優遇を受け、隊全体として過去最高速度で錬度向上。
8.12月24日、泥酔した私に強引に誘われベットを共にし、半導体150億個の並列処理装置を掌サイズにする技術が確立できなかったと告げられた。
9.12月24日AL4凍結、12月25日AL5開始をラダビノット指令から告げられた。
10.私が失踪。
11.207B訓練部隊略式任官、3年程横浜基地にて従軍。
12.移民船打ち上げ時、社を乗せる。
13.その後、様々な経緯を経て戦死、再び2001年10月22日へ。
デスクのモニターには嘘偽り無し・・・・・・。
「ああ、脳と脊髄だけの純夏にいつも話しかけてくれている霞。彼女のリーディング結果でご理解頂けましたね?」
そんなことまで知っているのか。因果律量子論によればあり得る話だけど繰り返すなんて。こいつ、どこまで知ってんのよ、まさか・・・・・・?
「まあ、そんな訳ですから、何をどうやっても副指令の手法で00ユニットは完成しません」
思わず音を立てて立ち上がり睨みつける。言ってくれるじゃない、主導権を握るつもりなんでしょうけどそうはさせない。
こんな所で躓いてる暇は無いのよ、でなければ今までの犠牲が無駄になる。そんなことは誰も許さないし、私自身絶対に許容できない。そうよ、話が本当だとしてもまだ期間はある。短くても何とかしてみせるわ!
「ふぅ~ん、私があんたとねぇ。年下は性別認識外なんだけど? 狂人の戯言に付き合う気は無いから言いたい事があるなら本題に入りなさい」
デスクから取り出した拳銃。銃口を向けて催促したにも拘らず全く動じない白銀が、銃を見ることすらせずに見つめているのは私の瞳だった。
最初は深い悲しみを感じさせた。それが一転して苛烈すぎる意思と、尋常じゃない殺気を込めた物へと変わる。比喩でもなんでもなく現象として息が詰まり、銃を持つ手が震えない様にするだけでも必死で、そんな重苦しい雰囲気の中、よく通る声が耳朶を打った。
「香月夕呼の戯言に付き合わされた世界中の人間に対して同じことが言えますか? しかも、
鈍器で殴られた様な気がした。彼はその苦痛を数え切れないほど繰り返した? “香月夕呼”が只の一度も成功しなかったせいで?
きっと今の私は能面の様に無表情なんでしょうね、それでも無様な姿を晒す物かと強気な態度を崩す訳にはいかなかった。
「まあ、それが本当だとして、その"香月夕呼"はそこまでの存在だっただけよ。
目の前にあんたみたいな存在がいて活かせなかった。そんな無能と"私"を一緒にしないで貰いたいわね」
「くくくっ、なんですか、それは?
因果律量子論の第一人者。天才・香月夕呼らしからぬ中途半端で無理やりな回答。
お得意の仮説とやらは? いつもなら私をやり込める講釈を垂れ流している所ですよ」
常に相手の手の内や感情の機微を読み、数多の理論武装と経験に基づいた言動で相手を自分の思う方向へ誘導する。確かに私はそういう人間だ。
ただ、この時の私は白銀の手の内を知らず、感情も読み取れないほど内心動揺していた。そこへ追い討ちをかけるように白銀の話は続く。
「まあ、いいでしょう。信じたくないのなら無理やりにでも信じて貰います。何れにせよ、認めるしか貴女には選択肢など無いのですから」
私は無言で聞いていた。ここで余計なことを話せば、私が圧倒的に不利になる、だから・・・・・・。
「どうやって信じさせるっていうのよ」
もう、そう問いかけるしか手が無かった。
「そうですね、では、こういうのはどうでしょう?
俺は衛士です、繰り返す世界の中での最高階級は大佐で、得意なポジションは
この世界の俺は15で死んでいる。そんな人間が例え生きていてどこかで訓練したとしても、得られる技量などたかが知れています。
ですが、俺には別世界の発想のほか、既に数えるのも馬鹿馬鹿しくなる程の経験や、戦い続けて身につけて規格外の技量がある。
ついでに言えば多数のハイブ攻略経験すらありますから、シミュレーターで証明して見せましょう」
今、
「技量が優れているからと言って、さっきの話が真実だって証明になるとでも? まあ、見てやらないこともないけど」
いい訳だ。内心では無駄な足掻きだと感じていながらも、負けを認めたくないだけの虚勢。
「見ては頂けるんですね?
では、見て頂きたい方が副司令の他に4人。A01の伊隅大尉、教導官の神宮寺軍曹、第19独立警備小隊の月詠中尉、
天才研究者、A01第9中隊長の衛士、教導官で元帝国軍富士教導隊の衛士、赤を纏う斯衛の衛士、横浜基地で最も優秀なCP将校。
それぞれ違う立場・視点から前情報無しで見た客観的所感からは絶対に逃げられない、それは証明になるでしょうから」
「ふう、いいわ、やって見せなさい。でも、結果が伴わなければ・・・・・・殺すわ」
「その時は煮るなり焼くなりお好きにどうぞ」
やはり自分の理論が否定されて冷静さを失っていたのだろうか。失態に気づいた時には後の祭りで、私は銃を下ろし、その場を設けてしまった。
まあ、結果的には良かったとも言えるんだけど・・・・・・。
とにかく、この時は忌々しくも乗せられてしまったということだけが事実だった。
1話が8時。今話は、9時前に横浜基地に現れ、9時から検査により4時間経過した13時。
このように時間経過がすこぶる遅いですが、原作ゲームをを知っていれば、こんな時間経過だったなと感じてもらえると嬉しいですね。