マヨちゃんマヨちゃんマヨちゃんマヨちゃんマヨちゃん   作:はらなたわや

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第5話

       

 

        Chapter5

  

 

       ~~~決着~~~

 

 

 後日。わたし達は数度に渡りランドドラゴンの

 縄張りに突入しては

 返り討ちにあった。

 今回は10回目である。つまり9回は死んだ。今回、標的のランドドラゴンは割りとすぐに発見できたのは幸いであった。前回の戦闘の負傷が見受けられ、体力が回復し切っていないのも、これまた幸い。土龍の咆哮とともに、戦闘はすぐに開始された。土龍との攻防が続き、前回と同様の状態に持っていく。

 

 

「マヨちゃん、行くよ」

「わかってる!」

「「〈 金 剛 払 い 〉ッ」」バギギッッ……ッッ

 

「よし。

 姉さん、次よっ」

「オッケ~~」

「「せーのっ__」」

「「〈 竜 滅 千 万 〉ッ」」ドガガッ……ッッ

 

 

 ランドドラゴンの

 悲鳴が轟く。

 特に、顔面を挟むように、両頬を同時に長大金槌で殴られたのは堪えたであろう。龍鱗は頑強な鎧だが、ダメージは蓄積されるもの。その証拠に、顔面の龍鱗はところどころひび割れ、剥がれている。

 幕間。あんた達。わたし達、猟師が使う武器は大抵が魔道武器だ。その構成には特殊な素材が使用され、使用者には特殊な効果がもたらされる。それが武技と呼ばれる力。今の戦いで言えば、〈金剛払い〉〈竜滅千万〉といった技だ。これらは一定の精神力の消費と一定の動作を成すことで発動され、その恩恵は絶大。〈金剛払い〉はその一撃のみに2倍の与ダメージが発揮されるし、〈竜滅千万〉ではその一撃に頑強な龍鱗を溶かす効果(対龍属性)が付与される。大型の生物を狩るにあたっては、もはや猟師には無くてはならない力であり、恩恵である。そう。こんなふうに。

 

 

「〈金剛払い〉ッ」

 

 わたしが

 ランドドラゴンの横っ面をはたき飛ばす。ランドドラゴンが悲鳴をあげる

 

「〈天輪・金剛払い〉!」

 

 姉がさらに一段上の武技で、

 反対側からランドドラゴンの横っ面を殴り飛ばす。龍鱗が砕け散り、破片が飛んだ。土龍は再び悲鳴をあげる。この時だ。ランドドラゴンに異変が起きた。それは戦況を大きく変える危険性を秘めた恐ろしい変化であった。

 龍鱗に覆われた土龍の顔面に、赤い筋が亀裂のように何本も走る。まるで血管が怒張するかのように。そして発声される龍の咆哮。間の大森林全体にドラゴンスクリームが響き渡る。音による衝撃波が襲うが、しかし今度は吹っ飛ばされる訳にはいかない。わたしは耐えた。顔面の赤い亀裂。この独特の兆候をわたしは待っていたのだ。姉を見て合図する。

 

 

 

『グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッ!!!!!』

 

 

 

「〈猛攻〉が来るッ。逃げるよ」

 

「オッケー!」

 

 

 〈猛攻〉

 それは単にその生物が

 激昂して暴れまわる。

 といった行動だけでは留まらない。明らかにその他の特殊効果も付与されている、いわば状態強化である。このランドドラゴンの場合、顔面の赤い亀裂と一際大きいドラゴンスクリーム。これが状態強化の兆候である。その効果は攻撃性、機敏性の上昇は勿論だが、なにより厄介なのは頑強性の著しい向上である。この猛攻状態になっている時は、わたし達のどんな攻撃も一切通用する様子がないため。もはや逃げるしかないのだ。初回はこれを知らず戦闘を継続したためわたし達は呆気なくやられた。

 

 

『姉さん…ッ、早く__こっちきて!』

『広い場所は不利になるわ。

 巨木が密集してる向こうへ行くよッ』

『うそッ!もうそこまで迫ってきてるの!?』

『まったく……っ……あの図体でなんて俊敏性……っ』

 

  

 ランドドラゴンは地面を掘るために発達した前足を

 かくように動かして、

 地表を滑るように迫ってくる。

 それに伴う咆哮。迫る威圧感は凄まじいものだ。直線距離ではあっという間に追い付かれる。それゆえ、開けた場所は明らかにこちらが不利になるので、大木が密集した森域に土龍を誘き寄せるのがここしばらくのわたし達の方針だ。大木やその根っこが土龍の障壁となってくれる。それでも土龍は樹木を縫うように器用に通ってくるので、油断はならないが、それでも大いにましである。

 しかし、ここでもまた誤算が起きた。大木と根っこが絡み合う森域を駆け抜ける中。それは突然とだ。

 

 

 

『グオオオオオオオオオオオオオッッッ……ッ』

 

 バキキキッッ……ッ

 

 

 

 

「……ッ、マヨちゃんッ、後ろッ…ッ」

 

「うっそッッ、木をなぎ倒して追ってきてる!?」

 

  

 幕間。あんた達。

〈猛攻〉による効果が

 さらに強まったのか。

 ランドドラゴンの膂力はさらに増強し、進行妨害と期待していた大木をなぎ倒すほどの攻撃性を示してきた。これはこれまでに見たことのない行動だ。わたしは呆気にとられた。そしてその衝撃的光景に気をとられ、わたしは痛恨のミスを犯してしまう。走っているなかで足をつまずいてしまったのだ。

 宙に浮く感覚がわたしを襲う。視界が傾く。すぐに体の前面が地面に強打した。血と土の味。しまった。そう思った時にはもう遅かった。土龍の大顎。凶悪な数多の歯牙。それがもう、わたしのすぐそばまで龍声とともにやってきていた。……ここまでか。

 

 

 

 

 

 

「まだだよ!!マヨちゃん!!」

 

 

 

 

 気づけば

 次の瞬間、

 わたしの視界は大きく様変わりしていた。つい先ほどまで、目前まで迫っていた土龍の大顎と歯牙は遥か離れたところにある。視界は今もどんどん離れていく。いったいなにがあったのか。しかしすぐに察せられた。姉がわたしを助けたのだ。姉が即座に駆けつけて、瞬時にわたしを遥か遠方へと投げ飛ばした。なんて技前か。

 わたしのいた位置に、今は姉がいる。まさに姉は今、猛然と迫るランドドラゴンに捕食されようとしていた。土龍の大顎に覆われる。しかし姉は変わらない。いつものようにただにっこりと。わたしに希望の瞳を向ける。そして言った。

 

 

『マヨちゃん。怖がらないで』

『マヨちゃんならきっとランドドラゴンを倒せるよ』

『わたしが保証する』

『だって、わたしの自慢の妹なんだもの☆』

 

 

 

『だからね』

 

 

 

『__見せてみて。あなたの可能性を』

 

 

 

 

 

 

 __グシャッッッッ……ッ

 

 

 

「姉ぇさんッッッ……ッ」

  

 

 

 

 血飛沫があがる。

 ランドドラゴンに

 轢かれるように

 補食された姉はあっさりと、その大顎の中で噛み砕かれ命を落とした。それでもランドドラゴンは止まらない。まったくもってその速度を落とさない。次なる標的たるわたしをすぐに捉え、こちらに向かって怒り狂うように猛然と突き進む。龍の咆哮が轟く。姉の血肉と臓物はなんの腹の足しにもならないようだ。〈猛攻〉は健在。赤い亀裂の入った土龍の顔面が、地を滑るようにわたしに差し迫った。

 姉の言葉を胸に、わたしの瞳が赤く淡い光を発した。姉さんにああ言われたのだ。やらなければならない。投げ飛ばされた慣性を利用して、背中の翅を羽ばたかせ回転運動をかける。空中姿勢を調整。華麗に着地し疾走を継続する。遥か遠くに投げ飛ばされたと言っても、あの土龍の俊敏性であれば10秒もすれば追い付く距離だ。立ち止まってなどいられない。

 

 

 地を駆ける。大木の合間を縫って。

 時には

 巨大な根っこの合間を滑り落ちるように、

 大地を疾走する。

 心臓がバクバクと破裂しそうな程に拍動した。痛みが発するほどに肺が軋む。ランドドラゴンは猛然と木々をなぎ倒しててやってきていた。あれほどあった距離なのに。もうそこまで来ている。息が切れる。しかし止まれない。止まれば姉と同じく、凄惨な末路を遂げることだろう。わたしはただ歯を食い縛って疾走する。

 そして目的地が、

 わたしの視界にようやく入った。

 

 

 

「いいじゃないッ」

 

 

 目的地までの距離。

 ランドドラゴンとわたしとの距離。

 そしてわたしのスタミナ。

 そのすべての要素が幸運にも、わたしの理想とした状態で揃っていた。

 

 

 

「来なさいッ!デカブツッッッ!!

 これで決着よッッッ」

  

 

『グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ

  オオ!!!!!!!!』

 

 

 

 

 疾走しながら振り返って

 ランドドラゴンを

 挑発する。

 こんなこと柄ではないが、今のわたしはアドレナリン全開だ。無理に笑って土龍を侮辱する。言葉は通じていないだろうに。しかしそれに反応して狂声をあげるように土龍は咆哮を発した。スピードは向こうが上だ。距離は大きく縮み、土龍の大顎はもはや目と鼻の先であった。わたしは逃げる。土龍が迫る。わたしはさらに逃げる。土龍はさらに迫る。

 そしてついに、

 土龍の大顎がわたしを捉えた。

 

 

 

 ガチンッッッ………ッッ

 

 

 ズッッドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッッ…………ッッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 幕間。あんた達。

 わたしは

 生きていた。

 わたしは食べられてなどいない。最後のあの距離。ランドドラゴンの大顎はわたしを捉えることはできなかった。理由は明白だ。なぜなら、ランドドラゴンはハマってしまったから。……巨大な木の根っこの隙間に。

 土龍が龍声をあげた。大顎をガチガチと鳴らしている。目の前にいるわたしを食べようとしているのだ。しかしそれは叶わない。土龍の首が木の根っこの隙間に深くハマっているからだ。そして、後退して首を抜こうとしても無駄である。ここの大木は元々、わたしと姉が対ランドドラゴン用の罠として魔法をかけてある。頑強性は勿論、木の根っこを操作して締め付けたり、隙間を狭めて首を抜けなくさせることなど造作もない。

 

 

「チェックメイトね」

 

 

 わたしは長大金槌を構えた。

 わたしの愛武器は白銀に覆われた鉄塊。

 その名も『ザ・ホープ』

 武器にはそれぞれに呼応した『必殺技』と呼ばれる武技あり、それを今、ここで解放する。この必殺技のためにこの足止め用の罠を仕掛けたと言ってもいいだろう。わたしは腰を低くし、ザ・ホープを振りかぶるように構えた。この必殺技はいわゆる溜め技であり、隙が大きすぎるのが難点だ。しかし、効果は絶大。特に、ランドドラゴンのような相手には打ってつけと言っていいだろう。その効果はこうだ。『対象の頑強性を0にして3倍のダメージを与える』

 

 

 ザ・ホープが発光し、

 力が充填される。

 狙いは勿論、

 ランドドラゴンの顔面。

 

  

『……あなたは本当に手こずらせてくれたわ』

『でもこれで……ようやく終わりよ』

『死になさい』

 

 

 

『〈 霹 靂 千 万 〉ッ!!』

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 幕間。あんた達。

 わたしはようやく、

 ランドドラゴンを討伐した。

 力なく舌を垂らして絶命するランドドラゴン。その横にわたしはゆっくりと腰を下ろす。胸の中に広がるある種の達成感。穏やかな勝利の風が吹き、髪がなびく。この時、わたしは世界が美しく見えた。無意識にも笑みを浮かべる。

 

 

 

 そして思った。

 やっぱりこれ、わざわざしんどい思いをしてまで狩ることだったのかな。と。

 そう思ったのだった。

 

 

 

 

 

 

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