美少女聖天使、俺   作:ほりぃー

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美少女聖天使セナちゃん! 参上!
美少女聖天使、俺


「じゃーなー。セナ」

 

 放課後。部活に行く友達と別れて校門を出たところでなんとなく気が抜けて欠伸をしてしまう。あーあ今日も終わった。

 

 制服のネクタイを緩めて鞄の紐を引く。家に帰るこの時間はやっぱりすごい開放感がある。かえってゴロゴロしたい。

 

「あ、そういや髪切りに行くかな……」

 

 前髪をつまみながら俺は一人で言う。高校の前の坂道をのろのろと降りていく。そばを自転車通学の奴らがシャーっと通り過ぎていく。

 

 俺は自分で言うのもなんだけど男子っぽくない。何回か女の子に間違われたことがあるし、学校の知らん男子の奴から告白されたこともある。だから髪も必要以上に伸ばしておくのは嫌いだ。あと、女の子に間違えられるたびに俺ってそんなに背が小さいのか……? って傷つく。

 

 そんなことを考えながら駅に向かう。

 

 その帰り道に交差点がある。結構交通量の多い交差点だ。そこで信号待ちをしながらぼけーっとしている。夕日がきれいだなんて思っているくらいに何もすることがない。スマホをするにもさっき充電が切れた。

 

「あ?」

 

 視界の端に何が動いた気がした、そっちを見ると小さな女の子が歩道から少し飛び出した。車道には出てない。ここでひかれそうになったら俺が助けて異世界転生かなぁなんて思ってしまう。

 

 振り向いた。

 

 車道と歩道すれすれで向かってくる何かが見えた。人が乗っている……電動キックボードだ。最近街のいろんなところに設置されているからすぐに分かった。わかったのは、そいつが女の子の方に突っ込んできているってことをだ。

 

 体が勝手に動いた。俺は見知らぬ女の子を庇って飛び出した。女の子とキックボードの間に飛び出した。

 

「待て! とまれ! あん……ぐえっ!」

 

 キックボードが俺を吹っ飛ばす。運転手の驚いた顔。驚いてるのは俺だ。足が浮く。宙を舞う感覚がした。

 

 

 どこだここは。

 

 はっと目を覚ますと真っ白な天井が見えた。病院? 俺はあたりを見回してみると何か真っ白な部屋にいることに気が付いた。かなり明るいけど蛍光灯のようなものは見当たらない。

 

「目を覚ましたようね」

 

 はっと声のした方を見る。さっきいなかったはずのの少女が俺を見下ろしていた。

 

 宙に浮いた椅子に両足を組んで偉そうに見下ろす少女。白いローブのようなものを着ているが下はハーフパンツで太ももが見えていて、黒のブーツを履いている。

 

 少女は不思議な髪の色をしてる。紫の……ほのかに光っている。印象的なツインテール……いや、ツインテールがふわふわ浮いている。

 

 俺は目を疑った。夢を見ているのかと自分でほっぺたをつねってみたら普通に痛い。そんな俺を見ながら少女は笑った。

 

「あはは、混乱しているようねセナ。貴方はついさっき電動キックボードにミンチにされて死んだのよ」

「し、死んだ!? 電動キックボードで!? 俺ミンチになったの!?」

「ええ、かわいそうに。とても哀れだわ。みじめ……」

 

 うるさいなこいつ! 

 

「で、でも俺ここに生きているし……君は誰なんだ?」

「あたし? あたしは聖天使キュリオ。貴方から見れば異世界ヴァルドランドを救うように天上の主より命を受けたものよ」

「て、んし?」

「そう」

 

 キュリオはそう言ったあと右手を前に出す。まばゆい光があたりを包む。な、なんだ? と思った次の瞬間にはキュリオは片手にポップコーンを持ってぼりぼり食べている。え?

 

「そう、異世界ヴァルドランドは今魔王とかいうくそナメクジ野郎のせいで著しく治安が終わっているらしいのよね。そこで行って来いって言うんだけど、めんどくさいからあんた代わりに行ってきて」

「はあ?」

「もちろんただでとは言わないわ。うまく魔王を倒せたらそうね。生き返らせてあげる。あと必要な力とかはあげるから」

「い、いや待ってくれよ。なんか話しがどんどん先に進んでいくから頭に入らないんだけど」

「なんで下等な生物に二度説明しないといけないの?」

 

 きょとんとした顔でキュリオは言った。それはもうう不思議な顔をした。アリさんから話しかけられたら俺もこんな顔をするかもしれない。

 

 …………こいつ悪魔なんじゃないの? ぼりぼりポップコーン食べて、どこから持ってきたのかジュースをストローで飲み始めた。で、でもだめだ。ここで抗議しないとなんかわけわからんままどこかに行かされそう。

 

 俺は声を上げた。

 

「何言ってんだお前! 俺だって選択する権利とかあるだろ」

 

 俺の訴えを無視して。キュリオはつづけた。

 

「天使として美少女に転生させてあげる。さあ、使命さぼったら心まで女の子になる契約を此処に締結する。セナ、世界を救いなさい!」

 

 ……?

 

 ………??????

 

 ……??????????????

 

 何を言ってんだこいつ。美少女? 天使? さぼったら心まで女の子?????

 

 惚けている俺を無視してキュリオは指をぱっちんする。その瞬間にぱあと俺の周りが光り始めた。俺の体が光を放ち始めたんだ。黄金の光に包まれる。

 

「なんだよこれ。ナニコレ?」

 

 髪が伸びていく。すうっと黄金が溶けていくように髪は綺麗な金髪になっていく。体全体があつい。胸のあたりが違和感があった。息苦しさを覚えて膝をつく。

 

「はあはあはあ」

 

 ほほが熱い。赤くなっているかもしれない。なんか服が変わっていく。腕が細くなって……。光が消えていく。

 

「はあはあはあ。なに、これ」

 

 高い声がした。誰の声だ。と頭が理解を拒んだ。

 

「まあまあね」

 

 いつの間にかキュリオが目の前にいた。俺はそちらに目を向ける。

 

 邪悪な笑みにしか見えない顔でこの天使は俺を見下ろしていた。両手を組んで顎を上げているその姿。

 

「な、何をした?」

「あら、見てみる? ほら」

 

 キュリオが指をパッチンとすると大きな丸い鏡が現れた。

 

 そこには美少女がいた。長い金髪の綺麗な青い瞳。透き通るような肌。俺が見たことのある女の子の中で一番かわいいと思う。彼女は膝立ちして自分の顔を手で触っている。

 

 白いローブ。黒のハーフパンツ。細い腕、細い足。驚愕した顔。

 

「な」

 

 背中には白い羽があった。

 

「なんじゃこりゃ~」

 

 声がかわいい。くそ!!! 

 

「ひひひ、これであたしはいく必要はないわ。さあ、聖天使セナ。異世界ヴァルドランドをあたしの代わりに救いなさい! もしそれができない場合――」

 

 キュリオは今までで一番邪悪な顔をした。

 

「身だけじゃなく心も女の子になるわよ」

 

 次の瞬間天井からまばゆい光が放たれた。

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