美少女聖天使、俺   作:ほりぃー

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騎士団参上!

 

 夜が終わって、街全体に混乱が広がっていくのがわかった。

 

 きれいな朝日が世界を照らしている。ふぁああ。眠たい。……まあ、静かな朝とはいかないんだけど。

 

 街のみんな呆然としていたり、何かを言いながらどこかに走っていく人もいる。うう。俺にはどうしようもない。みんな操られていたことを自覚して混乱しているらしい。

 

 そりゃあ、領主が魔王軍が人間に化けていて自分たちを操っていたという話だったら驚くよな。

 

「ぎゃははは。そらそら」

 

 ファルブラウはなんか笑いながら鳥かごを蹴っている。中ではぴぎーぴぎー言っている蝙蝠が一羽。ダルゾーンのなれの果て……かわいそうに。ファルブラウはどこかから持ってきた鳥かごに押し込めてさっきからご機嫌だ。

 

「我を雑魚扱いして、思い知るがいい! くくくく」

「もう許してやりなよ……」

 

 俺はファルブラウを止める。なんかかわいそうだし……。ファルブラウの赤い目が俺を見た。ドキッとする。あの時の光景を思い出すと顔がかああってなる。

 

「聖天使……おまえは忘れたのか? こいつは普通にお前を始末しようとしていたんだぞ」

「始末……」

 

 服だけ溶かすスライムに漬けられそうになったことか……。それにしても何度考えても俺はろくな目に合わないな。この世界はおかしいだろ。……確かにダルゾーンなんて始末してもいいかもしれない。

 

 ちょっとそう思ったけど、鳥かごに入ったダルゾーンを見れば小さな蝙蝠になっている。逃がすのはできないが、これ以上なんかするのもどうなんだろう。

 

「それでいいからいじめるのはやめよう。ファルブラウが小物みたいになるぞ」

「我が小物……、われは小物ではない!! ……ふん、いいだろう。もう許してやる。感謝しろよ蝙蝠!」

 

 ファルブラウはふんと鼻を鳴らした。そして鳥かごを開けた!! いや、開けるな!!

 

 ダルゾーンは今だとばかりに外に出てきーきー言いながらどこかに飛んでいく。あーあ。

 

 ま、まあ、少し心配だけどとりあえず一件落着だ。

 

 だけど街の喧騒は大きくなっていく。ふう。今のうちに町を出るべきかもしれない……。

 

「騎士団だ! 騎士団が来たぞ!」

 

 その声に俺は顔を上げた。騎士……騎士?! す、少し見たい。

 

 

☆☆

 

 街の入口に白馬に乗った鎧姿の騎士たちが整然と行進している。ファルブラウと一緒に俺は見ている。周りには人だかりができている。

 

 すげぇ。騎士だぁ。本当にいるんだぁ。感動する! 侍と騎士ってちょっと見たいって思うよね。男の子なら!

 

「お前、すごい目がキラキラしているな」

 

 ファルブラウが冷めた目で言ってくる。い、いいだろ! 騎士なんて俺の世界には当たり前だけどいなかったんだから。騎士たちは全身鎧を着て、兜を深くかぶっている。それに赤いマント……重武装だなぁ。

 

 馬もすごい強そうだ。大きな馬たちは騎士を乗せたまま力強く進んでいく。

 

 その中心にひときわ目立つ少女がいた。鎧を着ているけど兜はつけていない。長い銀髪が朝日に光っている。彼女が俺を見た。青い瞳が遠くにいるのに一瞬吸い込まれそうに感じた。

 

 彼女が笑った。俺に手を振っている。え? え? と、とりあえず俺も手を振り返そう。彼女は馬に乗ったまま俺に向かってくるのはなんで……

 

 銀髪の少女は俺の前に来て言った。

 

「天使様! お迎えに上がりました!」

 

 お、俺を迎えに……騎士たちが馬を下りて俺の周りに膝をついた。銀髪の少女も軽やかに馬から降りて同じように片膝をつく。

 

「私の名前は王立第一騎士団団長セシリア・フォン・アンドローズです。この世界に聖天使様が降臨され……近くの村で魔王軍四天王の一人であるファルブラウを討ち取ったことをお聞きし、王都にお迎えするべく参りました。

 

 あ、あ、いやぁ、なんかこんなにかしずかれるとやだぁ。

 

「み、皆さんお立ちになってください。私は当たり前のことをしたまでです。きゃう」

 

 当たり前といった時、ファルブラウが無言で蹴ってきた。きゃうとか言ってしまった。い、今はそんなことを気にしている場合ではない。セシリアさんにもう一度いう。

 

「とにかく立ってください。私はそんなに大したものじゃありません」

 

 電動キックボードにミンチにされて女の子にされただけっていったらこの人どんな反応するんだろう。

 

「聖天使様……もったいなきお言葉。……この街の領主も魔王の手下だったとお聞きしました。わずか数日で四天王だけではなく、領主の悪事も暴くとは……私は感動しました……聖天使様の裁判では必ず良い証言をいたします」

「あはは……、あ、ありがとうございます。え? さいばん?」

「はい……領主を害したということで王都の貴族たちが逮捕状を出しており……。お迎えに上がりました……」

 

 え? 話変わってこない?

 

 俺は周りを見た。騎士に囲まれている。

 

 え? 何これ。やばい? 

 

「ちょ、ちょっと待ってください。領主を害したって……確かに蹴りましたけど、昨日の今日なのに逮捕されるって早すぎないですか?」

 

 セシリアさんはうるうると目に涙をためて居る。

 

「不思議ですよねぇ」

 

 ……不思議だねぇ。

 

 ……ふ、ふしぎちゃんなのかこの人!!! 逮捕状早すぎるでしょ。な、ナニコレ。どうなっているの。

 

 セシリアさんは立ち上がってみんなを見た。

 

「街の衆よ。安心してください。この騎士団長の私が必ずや聖天使様の無罪を勝ち取って見せます!」

 

 その声に街のみんなはおおおおおお! と叫んだ。セシリアさんはうんうんと頷いている。そして俺を振り返った。かわいい顔で笑い。手を伸ばしてくる。

 

「さあ! 聖天使様! 参りましょう! 王都の……」

 

 彼女は一度ためていう。

 

「裁判所へ!」

 

 なんでぇ!!?

 

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