美少女聖天使、俺   作:ほりぃー

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蒼のラム・ダンピール

 

 し、四天王だって!? 王都にど真ん中の裁判所に何で魔王の四天王がいるんだ。

 

 俺が驚いているのをラムと名乗った少女はくすくすと笑う。ぬいぐるみで口元を隠しつつくくくと笑った。ぬいぐるみはなんだろうかわいい顔をしている何かの生物だ。ネコみたいな耳に丸い体をした怪獣……?

 

「その顔、ウけるね~。きゃはは」

 

 ラムの目が俺をじっと見ている。青い髪の間からちらりと長い耳が見えた。

 

 きーきー!

 

 不意に空を見ると蝙蝠が一羽降りてくる。こ、こんなところに。いや……見たことがある。あいつは……。

 

「ダルゾーン……」

 

 蝙蝠はラムの手に止まり。きーきーと何かを言っている。ラムはそれを聞いて俺を見る。

 

「我が眷属のこの子をいじめてくれたんだって?」

「眷属……?」

「そ。私が人間の姿にしてあげた蝙蝠のダルゾーン。領主としてあの街に配置して降りたのよ。そこにのこのことやってきたがのがあんたってわけ。ふふふ。僕って結構考えているでしょ?」

「罠って言うのは……そういう。いや、待って!」

 

 俺は裁判所に来ている黙りこんだ人々を振り返った。

 

「まさかこの人たちも、そのダルゾーンと同じ」

 

 俺の言葉と同時に後ろでぱちんと指を鳴らす音がした。ラムが指を鳴らすと、裁判所の中にいた一部の人が黒い霧に包まれて蝙蝠の姿になった。ばたばたと羽を鳴らしてラムの周りに集まっていく。

 

 蝙蝠を従える少女は笑う。その口にきらりと牙が見えた。

 

「そうそう。確かにこの中には僕の眷属は混じっているけど、でも全員じゃない。残りの奴らは僕が血を吸ってやって操っているだけ、今はね」

「血を吸う……きゅ、吸血鬼?」

「ふふふ。そう、半分はそう」

 

 ラムが指を鳴らすと蝙蝠たちが空に飛びあがっていく。彼女を中心に黒の蝙蝠がぱたぱたと飛んでいく。

 

「僕は吸血鬼と人間のハーフ。そして今は魔王軍四天王『蒼のラム・ダンピール』。この王都の影の支配者だよ」

 

 か、影の支配者。確かにこんなに堂々としているのに誰も彼女に反応しない。あの偉そうなメガネの人を見れば目を赤くして呆然と立っている。裁判長も、そして傍聴席の人たちも同じだ。

 

「この王都はもう、魔王に……」

 

 俺はやばいことに気が付いた。逆にラムは笑った。

 

「そうそう、セナちゃんあったまいい」

「じゃ、じゃあ、王都の住民も全部……!」

「それは無理だよ。あれだけの人たちの血を吸うなんて小食な僕にはとてもとても」

「そ、それじゃあ。まだ王都は大丈夫……なの……?」

「きゃは! わかってないね」

 

 ラムは口の端を吊り上げた。その表情に俺は邪悪なものを感じる。

 

「今時戦争なんて時代遅れなんだよ? 人間の造った社会。人間の造った権利、人間の造った文化、秩序、法律、そう言ったものをぜーんぶそっくり利用できるようにしちゃうのが僕たちの征服活動なんだ」

 

 ラムは片手を上げる。

 

「ここに集めたのは貴族とか言われるこの国を支配する力を持った大人の人たちだよ。数百人、数千人、数万人を動かすことのできるこの豚どもの血を吸って、僕の奴隷にしてあげたってわけ」

 

 きゃははと笑い声がする。

 

「魔王様は僕たち四天王にそれぞれ任務を与えた。僕はこの王都やその領主たちを奴隷にしたり、眷属にすり替えて人間社会そのものを裏から掌握するって簡単な任務。そうだ! セナちゃんもうひとつ教えてあげる。この国の王様はもう捕まえちゃった」

「!! そんな」

 

 一回も会ったことないけど王様捕まっている……。つ、詰んでない?

 

「魔力が高くて奴隷にできない人間は、別の四天王である『白のヴェリエール』がとある城に監禁している。そして最後の一人である『黒のアドレイド』が人間の庶民達を支配する構造を作り始めている」

 

 くくく、とラムは笑う。俺は漫画とかのイメージでなんとなく魔王が大勢の軍勢を率いて戦争しているのか説明されてないから思っていた。でももっと狡猾にこの国を支配しようとしている……いや、されつつあるってことだ。

 

「2つ聞いてよいですか?」

「もちろん。何? セナちゃん」

「なんでそんなことを私に……」

「ふふふ、決まっているじゃん。ここであなたは私に血を吸われて奴隷になるからだよ? 大丈夫、奴隷にしても大切なおもちゃとしていろいろなことをさせてあげるから」

 

 碌な目にあってこなかったけど、今が一番やばいかもしれない。ただ、もうひとつ気になることがある。

 

「……四天王のファルブラウは何の仕事をしていたの?」

「え?」

 

 ラムは一瞬惚けて。

 

「さ、さあ? あいつ遊んでばかりだったし。気が付いたら飛んでどっか行くから……」

 

 ……あいつ、よく魔王と仲良しだって言えたな……。し、しかし俺もこんなところで奴隷になんてなりたくない。ラムに向き合った。嫌だけど、今はやるしかない。

 

「確かにやばい状況なのはわかったけど。私はそのファルブラウを倒した力がある」

「ああ、変身ってやつね」

 

 俺は祈りのポーズをする。そして叫んだ!

 

『セイクリッド・シンフォニア!』

 

 その言葉とともに俺の体は光に包まれていく。光は俺の体を包み込む。両手に白のロンググローブ。手首に宝石のついたリング。そして短いスカートと少しだけ太ももの見えるニーソックス。

 

 ドレスの衣装。胸元が少しだけ開いている。そして首元に宝石のついた赤いリボン。魔力で進化した大きな羽を広げる。最後に俺の手には光とともに剣が形を成す!

 

 俺はそれを構えてウインクする。勝手に体が動いたんです!

 

「そんな悪いたくらみは絶対許さない。聖天使セナ! 参上!!!」

 

 くち、口が勝手に動く。こ、こんなこと言いたくないのに。

 

 ラムはふふふと笑う。彼女を中心に赤い魔法陣が広がる。

 

「いいよ。セナちゃん。ファルブラウを倒したその姿。この私にも通用するか試してみようか?」

 

 羽。ラムの背中に蝙蝠の巨大なそれが伸びた。右手を伸ばすとそこに魔法陣から液体が伸びて血のような赤い槍が形を成す――。

 

 

 一方そのころ。

 

「わははは! 我の勝ちだぁ!」

 

 裁判所を追い出されたファルブラウは街に繰り出して弱い子ををいじめていたガキ大将に勝利していた。

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