美少女聖天使、俺   作:ほりぃー

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セナちゃんマジ泣き!

 

 大変な目にあった。俺は借りた服を着た。修道女のような白を基調としたローブに体のラインを沿う様に黒のラインが引かれて金の鳥の羽の刺繍がされている。結構高いのじゃないかな。まあ、さっきまで俺の着ていた服は変身解除とともに消し飛んだからありがたい。

 

 あれから洗脳が解けた人たちから感謝されて王城に招かれた。貴族たちはなんか会議をするとか言ってたけど、そりゃあ王様が実は偽物だってなら大変だよ。会ったことはないけど。

 

 ……

 

 しかしお尻が痛い。ほんと、本当にろくな目に合わない。

 

「でも、これで四天王の2人目を倒したってことかぁ」

 

 なんで敵対しているのかも、魔王って何って話も誰からも説明を受けてないのにもう2人倒したかぁ。俺は少し立ち止まって考えてみた。そろそろ魔王ってなんだって情報を得ないといけない気がする。

 

 ぐううう。

 

 真面目にしようとするとお腹が鳴った……な、情けない。

 

「おい! 遅いぞ。まったく聖天使の分際で我を待たせるとは……」

 

 うわったった。急な声にびっくりして振り返ると城の廊下に両手を組んで俺を睨みつける少女がいた。赤い髪にぎざぎざの歯の印象的な元竜の女の子ファルブラウだ。こいつ、俺の裁判の時に外に連れていかれてた。それからどこに行ってたかわからないけどいつの間にか帰ってきてた。

 

「なんだ? 我の顔を見て」

「いやぁ、さっきまでどこに行ってたのかなって」

「聞きたいか?」

 

 なんかすごい話をしたそう。俺はとりあえず「うん」と答える。話したいなら聞いてやるのも大人のレデイ……俺はレディではない!! 最近油断をしていると俺は……俺じゃなくなっていく……。

 

「人間どもは我を恐れてパンケーキを献上してきたから食べてやった。はちみつのいっぱいかかった。まあまあおいしかった」

「…………」

「あとはミルクをあったかくして持ってきたから飲んでやった後、少し寝ていた……わかったか? 聖天使。我は人間どもからも慕われて……うぉ……なにをする!」

 

 俺はいつの間にかファルブラウのほっぺたをつまんでいた。ファルブラウも俺に反撃してくる。お互いに顔を引っ張ってくる。

 

「わ、わたひがどれだけ大変な目にあったと、お、おもっているんだぁ。ひとりだけおいしそうなもの食べてぇ」

「ひるかぁ。はなせ聖天使がどうなろうと我には関係ない!」

 

 はあはあはあ。パンケーキ……うううう。おれ、俺はぁ。昨日たべた睡眠薬入りの食事以来何も食べてないからお腹減ったよぉ!! 睡眠薬入りの食事の後に服だけ溶かすスライムに襲われて……偽領主にファルブラウに投げつけられて……逮捕されて、裁判にかけられて四天王とバトルしたんだぞ!!!  そのあとにおしりたたかれたんだぞ!!

 

「うううううう」

 

 涙がぽろぽろ出てくる。俺の異世界転生ハード過ぎない? 

 

 ファルブラウは俺を離してはあと息を吐いた。

 

「仕方ない。おい聖天使。いいものをやろう」

「……いいもの?」

「おう、元気が出るものだ。ほら」

 

 俺の掌にファルブラウは何かを乗せてくる。丸い石だった。

 

「きれいな石だ。さっき拾った。よい形だろう?」

 

 ふふんとファルブラウは鼻を鳴らす。うううう。い、いらねぇ。慰めようとしてんのかこいつ……? だったら、パンケーキ食わせろ!

 

 

 俺の前には豪華な食事があった。

 

 王城の食堂に通されると俺とファルブラウの食事ということで用意されていた。

 

 大きなステーキ。エビっぽい形のグラタン。パエリアみたいないい匂いのご飯……いろんな果物……ああ、もう! 俺の貧相な語彙じゃ説明できない。とにかく空腹な今の俺には目で見るだけで幸せ。

 

「天使様にはご無礼をいたしました」

 

 裁判所にいた眼鏡のお兄さんだ。ほんとだよ。まあ、許すけど。そ、それより食べていい? ファルブラウが骨付き肉を横でおいしそうに食べているから俺たまらないんだけど……よだれが出そうなのを少し耐える。

 

「ささやかならが食事をご用意いたしました。天使様のおかげで我らはラム・段ピールの魔の手から逃れることができたのです……さあ、どうぞ召し上がってください。お話はあとでいたしましょう」

 

「うん!」

 

 ……お、おっと俺はもう高校生なのに小学生みたいな返事をしてしまった。祈りのポーズで「ありがとうございます。いただきます」という。涎を抑える。

 

 近くにあったフォークとナイフをとる。お肉を切って口に運ぼうとしてはっとした。

 

 ――これ、睡眠薬とか媚薬とか入ってないよな?

 

 数日前の俺ならたぶん絶対思わなかったことを警戒してしまう。少しだけ食べてみる。んんん。おいしぃ。お腹減ってたし。いい具合にやわらかいお肉に少し絡みのあるソースがついてるぅ。

 

 ほっぺたを抑えてしまう。

 

 ファルブラウが俺を見る。

 

「目がキラキラしているぞ聖天使」

 

 そう言いながらエビを丸かじりしている。うるさいな! 俺はさっきまで不幸な目にあってばかりだったからいいだろ!

 

「天使様、どうぞお楽しみください」

 

 ……いいの? 

 

 ……いいのよね?

 

 いいんだよねっ!!!!

 

 俺はステーキを食べる! 付け合わせの野菜もソースに漬けて食べるとおいしい!  昨日ぶりの食事……悪意のない食事ぃ……。エビっぽいのもおいしい。異世界だからエビじゃないかもだけど、パエリアのご飯もおいしい!!

 

 おいしい!

 

 もぐもぐ。もぐもぐ。もぐもぐ!

 

 幸せぇ!

 

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