美少女聖天使、俺   作:ほりぃー

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王様を救うのだ聖天使セナ!

 

 朝に起きると目の前にファルブラウの寝顔があったけど、うーん見なかったことにして起きて体を伸ばした。なんで俺と寝ているん……ふうふう。落ち着け。胸がドキドキするけど抑えろ。

 

 お風呂の時に来た寝巻を白のローブに着替えて。鏡の前に立った。頭の上の天使のリングがぴかぴか光っている。

 

 金髪の美少女がそこにいる、今でも信じられないがこれが今の俺だ。鏡の中の少女は目をキラキラさせている。いかにもやるぞって感じに見える。つまり……俺はみんなにこんなふうに見られているんだろうな……

 

 いや! 本当にやるぞ! 俺はファルブラウとの勝負に勝つぞ。おー。ってひとりで俺は手を上げる。

 

 そもそもなんで俺は王城に泊っているのだろうか。洗脳の溶けた貴族たちに促されてここに来たけど、またよくわかってない。まあおいしいご飯も食べたしお風呂も入れたしよかったんだけど。

 

 コンコン。

 

 部屋をノックする音がする。俺は「はーい」と言って開けようとする。足に履いたスリッパがぱたぱた音がする。開けてみるとそこには銀髪の騎士がいた。鎧に身を固めたその人はセシリアさんだ。

 

「おはよーございます!! 天使様!!!」

「うるせー!!」

 

 ファルブラウが枕を投げてきた! セシリアさんを庇って俺の顔にヒットする。ばふっって音がした。

 

「だ、大丈夫ですか天使様!? おのれ! 天使様のご友人としても許せない」

 

 セシリアさんが落ちた枕を取ってベッドの上で立ち上がったファルブラウに思い切り投げる。ファルブラウはキャッチしてにやりと笑う。彼女は投げ返した。

 

「くらえ!」

「甘いですよ!」

 

 ひょいとセシリアさんがよけて俺に枕が直撃する。

 

「……天使様!? これが狙いか」

「……ねらい? ……そ、そーだ、我の計算だ。わははは」

「く、くそぉ」

 

 俺は枕を手に取る。ちょっとキレそう。怒りがたまると顔が笑顔になる。

 

「あのぉ、セシリアさん。どうしたんですか? 朝から」

「あっ! そうだ。天使様にお話が合ってまいりました。大臣たちが天使様と会談をしたいので玉座の間にお越しくださいとのことです! 実は昨日伝えるつもりだったのですが、忘れてて。へへ」

 

 へへじゃないよ! 結構重要な話じゃないのか……そういえばこの人裁判で俺の弁護をしてくれると言ってたのに影も形もなかったな。問い詰めて……いや、やめておこう。

 

 

 玉座の間という場所は高い天井、赤い絨毯が敷かれて奥に一段高く段差になっている。その上に宝石のはめ込まれた黄金の玉座があった。

 

 その周りに身なりのいい人たちがいる。俺とファルブラウが入ると「おお」「天使様」「天使様だ」「我らの救世主」といろいろとほめてくれる、少しくすぐったい。この人たちは貴族というか大臣なんだろうか、よくわからないけど偉いんだろう。

 

 この偉い人たち昨日の裁判所にいたな。俺の胸も含めてどうのこうのと言ってた……生まれも育ちもいいだろうに……見る目が変わるなあ……。

 

「おはようございます天使様」

 

 メガネの青年だ。ああ、俺のを小さいとか……やめよう。

 

「おはようございます」

 

 大人な俺はぺこりと頭を下げる。大人になったなぁ。って自分で思う。

 

「私は宰相のシュテーゲン・フォン・アイスランドです。魔王軍の四天王に操られていたとはいえ天使様には無礼をしたこと今一度謝罪いたします」

「わ、わ。そんな、もういいんですよ。なんてことないことです」

「なんと寛大な……私たちは天使様を死刑にしようとしてたのに」

 

 そういえばそうだったな……。俺は両の掌を組んで祈るポーズをする。

 

「大したことではありません。すべてなんてことはないことです」

 

 この世界に来てから自分がぺらぺらといろんなことを言う才能に気が付いたが、自分の命かかってもこんなことを言ってしまった……。ま、まあ深く考えても仕方ない。宰相ってあれだよね、総理大臣みたいなそのくせに俺を罪に落とそうとしたり貧乳好きなのか。だめだ!!! 深く考えるな!!!

 

「それで私と会談とお聞きしましたが、シュテーゲン……さんはも私に何か話があるのでしょうか? 私もあります……」

「ええ、我らの王についてです」

 

 シュテーゲンさんが後ろを振り返ると誰もいない玉座がある。あそこに王様が居たんだろう。

 

「王を救出しなければなりません……しかしあの『蒼のラム・ダンピール』の言う通りでれば敵は四天王一人である『白のヴェリエール』です。我らの騎士団全軍を投入して奪回作戦を計画しておりますが……天使様のご助力を得たいのです」

 

 王様が捕らえられてるのはどこかの城ってことだった。そこを守るのが『白のヴェリエール』ってやつなのか……。周りの貴族のおじさんたちも「我らも剣と取るぞ」とか言っている。

 

 ……そのタイミングで俺は聞きたいことを聞いてみた。

 

「それでラムはどうしたんですか?」

 

 その言葉にシュテーゲンさんは言った。

 

「彼女はこの城の地下に拘束しております。魔王軍の幹部となれば始末するしかないでしょう」

 

 ぎりと歯ぎしりが聞こえた。たぶんファルブラウだ。あいつは戦いの結果は仕方ないって感じのことを言ってたから助けにはいかないだろう。でもその態度で考えていることが分かった。

 

 俺は、

 

 前に出た。

 

「だめです! ラムは私とパーティーを組みます」

 

 ゲームみたいなことを言ってしまう。玉座の前で俺は全員に注目される。シュテーゲンさんが慌ててる。

 

「そ、そんなあれの危険性は貴方が一番わかっているはずですよ」

「だからこそ天使の名のもとに彼女を救いたいのです!」

 

 ここ一番で俺は俺の一番不要な才能である口の軽さを使ってやる。

 

「私はこの世界を救うように言われてここに来ました。……魔王と騎士団が戦う前に私は世界を救います。誰も傷つかないように私は……ここに来たのです。あの四天王のラムも私が救うのです」

 

 全員を見渡す。

 

「私が彼女を説得します! そして王様を救出して平和を取り戻します。たとえその中で命を落としたとしても……私は本望です……!」

 

 祈りのポーズをして点を見る。モザイク画に彩られた天井の向こうにキュリオの呆れた顔が見える。祈りのポーズをしているから繋がってしまった。

 

『この世界に送り込んだ自分が言うのもなんだけど、あんたって詐欺師の才能ありそうね」

 

 ねぇよ! 

 

 周りのおじさんたちもしんとしている。だ、大丈夫か。シュテーゲンさんが前に出て涙をハンカチで拭いている。

 

「聖天使……あなたは慈愛の化身でしょうか」

 

 へへへ……慈愛の化身とか言われる未来が俺にあるとは思わなかったよ。だけどこのまま俺は押し切る。ラムに俺は恨みも何にもない。ファルブラウとの勝負もある。

 

「私はただ、皆さんの平和な生活を守りたいのです」

「わかりました……。ぐす……王の救出は聖天使様にお任せいたします……」

「へぇあ?」

「聖天使様……敵は魔王軍の最前線にある古城におります。魔物の群れに囲まれた場所ですが……四天王を2人も倒した聖天使様には我らは足手まとい……。必要なものがあれば言ってください」

 

 ……なんか1人で行く話になってない? ラムを仲間にしたいって言っているだけで一人で王様救出したいなんて言ってないぞ!? 周りのおじさんたちもなんか頷いているし! ラムもファルブラウも同じ四天王の戦いに参加してくれるわけないし……ていうか3対1になりませんか!?

 

「さあ、ラム・ダンピールと聖天使様を合わせるのだ。騎士団長セシリア!」

「はい!」

 

 銀髪の元気な女の子団長が言う。

 

「聖天使様を地下牢へご案内しろ」

「はい! それじゃあいきましょう。聖天使様!」

「……あ、あのぉ」

「なんですか??? おなか減りましたか?」

 

 セシリアが俺の手を掴んでくる。いやぁ、ひとりじゃあ、そのぉ。

 

「わっかりました。任せておいてください。グラタンですね!」

「ぐらたん」

 

 ぐらたん? そう言われると俺はセシリアに手を引かれていく。ああ、連れて行かないでぇ、まだ話がありますぅ。

 

「ふっ」

 

 すれ違ったファルブラウが笑ったのが見えた。ああーでも、俺なんでひとりで戦うことなるの!?

 

 

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