美少女聖天使、俺   作:ほりぃー

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王様を救え!
セナちゃんの出発パレード!


 

 王都の大通り。城から真っすぐに伸びる石畳の道。その沿道沿いに大勢の国民が集まっていた。大きな歓声が上がっている。

 

 俺は4頭立ての馬車に乗ってその真ん中を行く。

 

「天使様ー」

「天使様ー!うおおお!」

「王様を救ってください!」

 

 国民の期待を一身に浴びる。高い建物から花弁が舞って綺麗だった。俺は祈りのポーズをして両の掌を合わせている。たまに手を振ってあげると大勢の人たちが応えてくれた。

 

 これは俺の出発のためのパレードだ。魔王に捕らわれた王様を救う天から降臨した天使である俺をみんなで祝ってくれているんだって。

 

 ふふ。みんな笑顔で見ている。

 

 めちゃくちゃ恥ずかしいんですけど~!?

 

 なんで俺が国民全員に注目されなくちゃいけないんですか!

 

「天使様かわいい~」

 

 あ、そうかな……はっ。危うく俺は嬉しがるところだった。絶対に堕ちないぞ! 

 

 晴れた空騎士団に守られながら天使を載せた馬車はいく。花びらだけじゃない祝福が左右から胸いっぱいに飛び込んでくる。その中で俺は下唇を軽くかんで恥ずかしさを抑える。できるだけ笑顔って貴族のおじさんたちに言われたから笑顔のつもり……。

 

 ううう。

 

 馬車が王都と草原の境に到達したころやっと応援してくれている人たちの声が途切れてきた。

 

「いってらっしゃい天使様~!」

「頑張って!」

 

 王都の方からそう聞こえてくるので振り返るときれいな街並みが見えた。最終的に裁判を受けて城で泊まっただけなんだけどいつか観光とかできるんだろうか……というか日本にも帰れるのだろうか?

 

 騎士団が停まった。俺も馬車降りる。騎士団長のお兄さんが来る。セシリアさんじゃなかった。お兄さんが剣を顔の前に立てる敬礼をする。

 

「天使様のお見送りをさせていただき光栄です」

「ありがとうございました」

 

 ぺこりと俺が頭を下げると騎士団の人たちがなんか感動している。怖い。

 

「おそらく王の捕らわれているのはここから北に向かって30リーグほどにある魔境『死の森』にあるガルガイア城と思われます」

 

 30リーグって何キロだ……? ……死の森???? 急に出てきたワードに俺はあわあわする。騎士団の人たちはどんと大きなカバンを俺にくれる。

 

「食料と薬草、着替えに資金が入っております」

 

 お、重たい……自衛隊じゃねぇんだぞ。

 

「ありがとうございます。みなさんに神のご加護がありますように」

 

 俺の空気を読むスキルが憎い。いつもこれで損している気がする。騎士団の人たちはそれで王都に戻っていった。俺は街道に一人取り残された。

 

 さーて地図でも開いて現実逃避するか~。ぱらり、社会科の授業とかで見た等高線とか書いてないすごい簡易な地図で異世界感がある。とりあえず北の方に歩いていくと死の森があるらしい。死の森まで歩くって処刑台に行くみたいだな……。

 

 俺は祈りのポーズをする。キュリオと交信するためだ。

 

「キュリオさん、キュリオさん。30リーグって何キロ歩くの?」

『1リーグ3.2キロよ。おやすみ」

 

 ぶつりときれた、そっかぁ、簡単な掛け算だな。私、ベンキョウデキナイ。ワカラナイ。ニモツオモタイ。カエリタイ。ナキタイ。

 

「なんで騎士団の人たちはついてこないんじゃ~」

 

 俺は誰もいないところで叫んだ。国家権力~。バックアップしろよぉ!

 

「我を待たせるな早く来い!」

 

 街道の向こうにから声がする。そうパレードの前に彼女たちは先に出たのだ。流石に四天王のラムを前に出すわけにはいかないんだって言ってた。ファルブラウは結局正体がばれなかったな。

 

 俺は早歩きで前に行く。蝶々が飛んでいる。少し行くと大きな岩の上に立ったファルブラウとその岩の傍でぬいぐるみを抱いているラムがいた。ラムは首に魔法の首輪があって本来の力が出せない。

 

 なんでファルブラウは岩の上に立って両手を組んで俺を見ているんだ。赤い髪とコートが風に揺れている。

 

「やっと来たか聖天使。待ちくたびれたぞ。さあ、行くぞ」

「はあはあはあ。結構ここまで歩いただけで疲れたんだけど」

「うるさい! とうっ」

 

 ファルブラウが飛んだ。空中でバランスを崩して俺に向って落ちてくる。わ、わわわ。どしーんっ。いってー! ファルブラウと抱き合うように倒れる。

 

「失敗しただけだ。我の力はこんなものではない」

「と、飛べないのに無理しないで」

 

 俺は精いっぱいの抗議をする。ファルブラウは立ち上がって、俺に手を差し伸べてきた。ん? 前はこんなことをする奴じゃなかった。俺をダルゾーンに放り投げたように結構雑に扱ってきたのに……。

 

 その手を取って立ち上がる。ぺっぺっ、ちょっと砂を噛んだ気がする。そんな様子を見てラムが俺を見る。それからふんと顔を背けてくる。うーん結構強引に仲間に引き込んだからなぁ。

 

 そういえばこの大きな岩は何だろうか。あ、道が刻んである。そうか道しるべか。

 

「とにかくお待たせ。これから北のガルガイア城とかいうところに行くことになったよ」

 

 死の森とは言わなかった。ファルブラウはうんうんと言いつつ、ラムは立ち上がった。

 

「はあ? 50リーグはあるよ!? 歩く気?? 僕はやだよ!」

 

 30リーグってききましたけど……。すでにいろんなことが怪しい。もちろん掛け算なんてしないよ。できるだけ現実からは離れて居たいんだ。

 

「ふむ、我に言い考えがある」

 

 ファルブラウが言う。ラムがすごい疑いの目をしてぬいぐるみを抱きしめている。

 

「どんな愚かな考え?」

「我はちゃんと考えている」

「じゃあなにさ。言ってみてよ」

「飛んでいけばいいのだ」

 

 ……飛んでいく。

 

「ああ、私も変身して飛べばいいのか。でもあれは数分しか変身できないし」

 

 ぽかりと叩かれた。ファルブラウ! 何するんだ。

 

「誰がお前のような貧相貧弱な聖天使に乗るか」

 

 そこまで言わなくていいだろ。ファルブラウにやりと笑った。

 

「我の力を取り戻して竜になって飛んでいけばその程度すぐだ」

 

 力を取り戻す……その瞬間俺はファルブラウとキスをした光景がフラッシュバックして頭がぽんとなる。だ、だめだろ。勝手にほほが紅くなる。でも、竜になるほど俺の力を吸い取られたらミイラになるんじゃ。

 

「だだめだだめ、キスなんて」

「何を言ってるんだお前はバカか?」

 

 ファルブラウの言葉にラムがはっとした顔で言った。

 

「まさか『黒のアドレイド』に会いに行く気なの?」

「そうだ」

 

 『黒のアドレイド』……確か四天王の一人だった。……つまり四天王のファルブラウの力を取り戻しに他の四天王に俺は会いに行くってこと? それっていいの?

 

 でも

 

 でもぉ

 

 歩きたくねぇ~~。

 

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