美少女聖天使、俺   作:ほりぃー

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夢の中へ

 

 変身の限界までどれだけだろうか。ラムと戦った時のスタイルに変わる方法はわからないから……だから全力でぶつかるしかない。

 

「グおおお!!!」

 

 アドレイドさんが声を上げる。空気が震えるのが分かる。威圧感がすごい。

 

 ……あのへんなしゃべり方だけど落ち着いた話し方をしているあの人なのに俺たちに対して言葉をくれたりしない。

 

 きっとわざとだ。もう話をするんじゃなくて戦うしかないって言っているんだ。

 

「何をぼさっとしているのさ、セナ! 僕が隙を作ってあげるよ」

 

 空中に浮かぶラムが大きく蝙蝠の羽を広げている。その周りに赤い血で作られたような槍が浮かんでいた。ラムが右手を振り下ろす。

 

「アドレイド……この程度じゃあんたは死なないでしょ。ブラッティ・スピア!」

 

 高速で撃ちだされた槍がアドレイドさんに迫る。彼女はハルバードを振って「叩き落した」。赤い血の結晶が飛び散る。

 

 マジか! だけど隙はできた。俺は羽を動かして突進する。

 

 アドレイドさんの目が俺を捉える。敵意をむき出しにしているそれに思わず叫んでしまう

 

「なんでだよ!」

 

 体勢を立て直した「アドレイド」がハルバードを構えた。それがすごくゆっくり見える。ラムの作ってくれた隙なんてほんとうに僅かでしかない……。あれが振り下ろされたら――

 

「くくく。我を忘れているか」

 

 すごい悪い顔でアドレイドの頭に登っているファルブラウが見えた。ぎざぎざの歯をむき出しにして顔を噛んだ! アドレイドが悲鳴を上げて唸る。い、いつの間に。

 

「ファルブラウがありがとう!」

 

 いなかったら死んでいた気がする。羽を動かす。さらに加速する。ハルバードを潜り抜けて目の前にアドレイドの顔。俺は剣を握る手に力を込めた。斬る……いや、なんで俺がそんなことをしないといけないんだ。

 

 この世界に来てからいろいろと言いたいことはめちゃくちゃあるけど! 言ってやるぞ! 数日前に来ただけの俺にアイリスを守ることとかいろいろと頼むのはいいいけどさっ! 

 

「この!」

 

 アドレイドの顔を思いっきりぶん殴ってやる! 剣を握った手でそのままに!

 

「ばかやろ~!」

 

 いってー! 人を殴るなんて全然したことがないから普通に手がいたい~。プロボクサーとかすごい、なんであんなに人が殴れるんだ。

 

 アドレイドの目がぎょろりと俺の方を向く。そ、そりゃあ俺が殴っても倒せるわけないよね。こ、こうなったら思いっきり言ってやるぞ。ファルブラウもポカーンとした顔をしているし。お前に呆れられるとそれはそれでむかつく! 

 

 それでも俺は、目の前のアドレイドに叫んだ。さっきから冷静にだけど、それでも暴れまわる彼女が反応してくれるかはわからない。だけどこのままもやもやしたまま戦えない。

 

「アドレイドさん! 確かに魔王との戦いで私たちは敵同士なのかもしれないけど、こんな形でいきなり戦うなんてやっぱりおかしいよ!」

 

 羽を広げてその場に降りる、見上げれば巨大な体をしているアドレイド。もう少しで変身の時間も尽きるってわかっているのに……。それでも言ってやれ。

 

「アイリスが勇者の末裔だからと言ってさ、全然わけのわからないまま襲っても。そんなのはずる、ズルですよ!」

 

 何を言ってんだ俺は、ラムの時もそうだけど気分が高まると変なことを言う。くそ、もっと頭が良ければ、もっと、アドレイドに届く言葉を言えるのに……!

 

 アドレイドが俺の言葉に反応したのかはわからない。ただ、頭の乗ったファルブラウを掴んで投げた。

 

「お、おおお!」

「ファルブラウ!」

 

 投げられていくファルブラウに俺は叫んだ。すさまじい勢いで校舎に飛ばされていく。壁にぶつかれば大けがだ! 

 

 その時ファルブラウを掴んだ一人の少女がいた。ラムが飛んで掴んだ。

 

「げ、げほっ。あんたも油断しすぎだよ」

「バカが」

「バカ……バカだって!? 僕が助けてやらないとどうなっていたか」

「助けるべきは我ではない! あいつだ!」

 

 その声に俺ははっとした。結局アドレイドは俺の言葉に何も返してはくれない。巨大なハルバードを両手で握りしめて振り上げた。圧倒的だった。そうか、ピンチなのはファルブラウじゃない。俺だ。

 

「く、くそ」

 

 やっぱり俺はどうしようもないバカなんだろう。命を懸けた戦いの最中に俺は何をしているんだ。さっき殴ったのだって結局何の意味もない。中途半端な覚悟……って、仕方ないじゃん。俺はここに来たくて来たわけじゃないのに。

 

 戦いたいわけじゃないし。アドレイドのことを傷つけたいわけじゃない。アイリスのことも守ってあげたい……欲張り。欲張りだってわかる。くそ、なんかすごい勢いで頭が回る。これ、死ぬ前の奴なんじゃないのか。

 

 でもそうだよ。俺は巻き込まれてまくってここにいるんだ。天使としての使命を背負わされただけ……。

 

 あ。

 

 そうか。

 

 そうだ。

 

 アドレイドもアイリスもその立場とか生まれでいろんなものを抱え込んだってことか。俺なんかとは全然違うけどそれがなんとなく分かった気がする。

 

「理不尽だ……」

 

 アドレイドの斧が振り下ろされる。俺は剣に力を込めた。前みたいに防御できるとは限らない。だけど感情のままぶつけてやりたい。アドレイドというか、なんかいろんなものが理不尽だと感じるから!

 

 巨大なハルバードが振り下ろされるのは空が落ちてくるようだった。俺は剣を振り上げてそれを迎え撃つ。その時俺の傍に一人の影があったそれは大きな斧を構えた少女だった。桃色の髪が揺れている。

 

「アイリス!?」

「天使様!!」

 

 アドレイドのハルバードを俺の剣とアイリスの斧が受け止める。巨大な衝撃。込めていた魔力が弾けて光があたりを包む。

 

 

 いてて。俺は目を開けると真っ白な空間にいた。

 

 え? ナニコレ。どこ? ここはもしかしてキュリオがいる場所。……ではない気がする。なんだかただっぴろい場所だ。

 

 あ!? アイリスが倒れている。俺は慌てて駆け寄った。

 

「う、うーん」

 

 俺が抱き起した時、アイリスは目を覚ました。

 

「天使様……こ、ここは」

「んと……いつの間にかここにいたんだけど」

 

 アイリスもいるってことはやっぱりキュリオの居る世界じゃない。あ、そうか。俺は今変身しているんだからキュリオを呼べばいいんだ。俺は祈りのポーズをした。

 

 あれ、つながらない。おかしいな。

 

「天使様……こんな時にお祈りですか?」

「あ、ええと、うん。そうなんだけど」

 

 真っ白な空間に2人。アドレイドもいない……。ラムとファルブラウもいない。

 

「ここどこ?」

 

 俺は想ったことをそのままに口に出した。

 

 

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