TS美少女聖天使、俺 作:薄汚いメトロン星人
この空間は何だ……。さっきは戦っていたはずなのにいきなりなんでこんなところに……アドレイドさんを止めないといけないのに。
そうだ、アイリス! 俺はアイリスを振り返った。彼女もあたりを見回しながら不安そうな顔をしている。
「天使様……ここがどこかわかりませんけど、何かされたんですか……」
「い、いや、私は何もしてないけど」
白い壁に囲まれている……俺は端まで行ってそれに触れてみる。柔らかい感触……なんだか気持ちいい。さわさわしてみる。
「う、うひひひ」
俺は振り返った! な、何今の。
アイリスはぶんぶんと顔を振っている。え? 今のアイリスの笑い声なの?
「ど、どうしたのアイリス。今の声」
「え? いえ? 何でもないですよ!」
「でも今」
「き、気のせいです!」
「そ、そっか」
話を合わせるしかない。とりあえず今は壁を調べてみる。
ん? よく考えたら自分の変身も全然大丈夫そうだ。力を維持できている感覚がある。これもこの空間のせいかな……。さらに白い壁をさらに触ると後ろでアイリスがもぞもぞとしている気がする。何してんだ……。
部屋中調べても何もない、うー。こんちくしょー。
俺は壁を蹴ってみる。
「…ぎゃひ……!! お、おろろろ……!!?」
アイリスが吐いた!???? え?? え??? 俺の脳が勝手にアイリスの口から出たものを虹色に変換している。……いや、実際虹色を吐いている!? どうなってんの?
涙とともに虹を吐くアイリスの背中を俺はさする。何とか落ち着いて……!
「アイリス。だ、大丈夫? 虹を吐けるの!?」
「は、吐けるわけないじゃないですか……。天使様が壁を蹴った瞬間におなかを殴られたような気がして……」
「……まさか、この空間はアイリスとつながっているってこと?」
「そんなバカな……私とリンクしているなんて、そんな魔法聞いたことがありません。もしかしてあの魔物の仕業ですか」
「それは……わかんないけど」
アドレイドさんがこんなことをするとは思えない。……と、とにかくこんな狭いところでいつまでもいるわけにもいかない。ファルブラウやラムも心配だし。
俺は思いついた!
「そうだ、この空間がアイリスとつながっているならアイリスが何か思えば形を変えたりしないかな」
「わ、私がですか……?」
「いいでしょ。試して損するわけじゃないし。こう……なんていうか出口を作る感じで」
「わ、わかりました」
アイリスはそういうと両手を組んで祈るようなポーズをした。
「出口……出口」
そうアイリスが言うとごごごごと周りが動き始める……これは、行けるんじゃないか。俺って冴えてる! 俺の足もとに穴が開いた!! おおおおおおおおお!!!!! 必死に穴のふちに手をかけて落ちないようにする!!!!!
「た、助けてぇ!! 出口っていっても俺の足元に穴開ける必要はないでしょ!」
「お、俺!? じゃない、て、天使様!! うんしょ、うんしょ、あ」
アイリスが俺の手をつかむ。アイリスが「あ」という声とともに足を滑らせる。俺の顔におしりがぶつかる形で落ちてくる!! ふごっ! ぎゃくにきよう!!
二人で穴に落ちる!!
「うあああああ!」
「きゃああああ! てんじざまぁ、おちてます!」
なんだこの穴、深い。というかどんどん壁が広がって広くなっていく。俺は天使の羽を広げて飛ぼうとする。その羽にアイリスが捕まる。ひぃ、羽をつかまれたらさすがに飛べません!
「アイリス! 羽はやめてぇ」
「で、でもぉ」
風を感じる。落ちていく深い闇の中に。どんどん奥にいく!
「わああああ!」
まじごわい!! こわい!! 俺は泣いた。
不意にバッと光が広がった。目の前に地面! ぐげっ! そしてアイリスが俺の背中に落ちてくる! ぐええ!
「だ、大丈夫ですか。天使様!!」
「へ、変身してなかったらたぶんしんでた……、うう。なんでこんな目にばっかり……」
このヘンテコな変身に感謝する日が来るとは思わなかった。俺はアイリスがおしりをどかすと……そういえば女の子のおしりにばっかり踏みつけられているな……い、いや変な意味じゃないよ!!
「顔が少し赤くなっています! 天使様、本当に大丈夫ですか」
「う、うん」
気にしないでほしい。俺はできるだけクールに気取って立ち上がることにした。すくっと立ち上がってなんとなく髪をかき上げる。
「まあ、これくらい何でもないよ」
言ってて恥ずかしいな……。アイリスは目を大きく開いて少し感動して……る? 感動する要素がどこにあるんだ。恥ずかしいから気取っただけなのに。
ていうかここ学園の真ん中じゃん、アドレイドさんと話をした中庭。周りには赤いレンガ造りの校舎。いい天気だけど……さっきまでの戦いの後はない。誰もいないし。
って中庭のお花がない……というか、この前見た時とは少し風景が違う。
――誰かが泣いている声がする。声を押し殺して。
アイリスを振りむくと彼女はそのグリーンの瞳を声のほうに向けていた。
「まさか」
アイリスが走っていく。ちょ、ちょっと待って、何が起こっているのかわからない。俺もあわててアイリスの後ろを走っていく。
声のする方に行けばそこには一人の少女が泣いていた。両手で顔を覆ったピンクの髪の少女。学園の制服を着ている。小さな女の子だ。顔は見えない。
「あれは……」
アイリスが呆然と立っている。あの子は彼女に似ている……?
「ここにいたでござるか」
その声に俺とアイリスはあわてて、それこそ顔を見合わせてあわあわして物陰に隠れる。見れば黒い髪に赤いローブを羽織ったアドレイドさんがやってくる。泣いている少女の前に来た。
「アイリス、どこに行っていたか、心配だったでござるよ」
「……」
アイリス……と言われたその女の子の顔を覆っていた手、その指の間からグリーンの瞳が見えた。……俺に横にもアイリス。あの子もアイリス、そしてあのアドレイドさんもどこか違う。これ……。
俺はアイリスと目が合う。あ、アイリスって俺の横にいる大きな方!
「これ、もしかして天使様」
「過去に……来てる?」
どうしてこんなことに……?