美少女聖天使、俺   作:ほりぃー

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新たなる旅立ち

 村に帰ると俺は村人たちがみんなで迎えてくれた。遠くでファルブラウが落ちていくのが見えたっていう。

 

 俺は必死に廃城で見つけた粗末な服を着てなんとか歩きで帰ったからへとへとだったけど、いろんな人が喜んでくれるのを見ると普通にうれしかった。

 

「天使様!」

「セナ様!」

「魔王の四天王の一人を倒すとはすごい!」

 

 えへへ。

 

 はっ、普通に褒められて頭をかきながらにやけてしまった。

 

 ただ村中の人がどんどん集まってくる。いつの間にか村中でかがり火がたかれて、そこらじゅうで宴会が始まった。その間に俺は村人から新しい服をもらった。白を基調としたローブとハーフパンツ。最初に着ていたのに似ている。

 

 着替えを終えると俺は村の中央に用意された絨毯に座るように促された。

 

 俺を中心にどこからか料理がどんどんはこばれてくる。いい匂いのする皿いっぱいのお肉。何かのたれがいっぱいかかっておいしそう。それにトマトみたいな色の具のたくさん入ったスープ。それに魚とかパンとかいろいろと。

 

 ぐうう。

 

 お腹が減ってたんだよ……ほんと。村人たちは俺にどうぞどうぞって食べるように勧めてくれる。じゃあ、遠慮なく。

 

「いただきます!」

 

 手を合わせて俺が言うとみんなが俺を見てきょとんとしている。それぞれ顔を見合わせて「イタダキマス?」と言っている。そ、そうかここは日本じゃないもんな。俺はなんとなく説明し始めた。

 

「皆さん、ここにある料理はいろんな命をいただいているということです。それに料理してくれた方にも、畑仕事をして作物を作ってくれた方々にも感謝を込めていただきますといいました」

 

 しかし、ぺらぺら言えるな俺は。でもさ、それなりにうまく説明できたんじゃないか? そう思ってみんなを見ると、しんとしている。 え? わかりにくかっただろうか。不安になる。

 

 最前列のおじさんの顔を見る。すると彼はぽろぽろと泣きだした。な、何事。

 

「ええ? ど、どうしたのおじさん」

「わ、わしはこの年まで畑仕事をしてきたのじゃ。わしらにような下賤なものにもそのような優しい言葉をくださるとは、やはりセナ様は聖天使じゃ」

 

 するとみんなも俺を中心に手のひらを組んで祈り始める。や、やめろ。お、俺に祈っても何もないぞ。どういえば説明がつくんだろうか。

 

「皆さんやめてください……。私に祈られても何もありません。それより一緒に食事をしましょう」

 

 すすり泣く声がする。村人たちが感激している。やめてくれ。恥ずかしいだろ。

 

 村長が前に出てきた。媚薬を俺に飲ませたくそ野郎も目に涙をためて居る。

 

「わしのような罪深いものの許してくれたセナ様に恩返しがしたいのです。どうじゃろう村の衆、セナ様の像を作って代々村で祈りをささげようではないか」

 

 それはいい考えだとみんなが言っている。

 

 やめてくれ。

 

 代々俺を祭るな。

 

 俺に祈っても何もできないんだよ!

 

「村の中央に守護天使として大きな像を作るべきだ!」

 

 止まるどころか。そうだそうだと村人がヒートアップしていく。……ひいぃ。やめてぇ。

 

 

 夜遅くまで宴会は続いた。

 

 正直に言えば楽しかった。おいしいごはんに村人たちは妙に陽気で次々に踊ったり。なんか芸をしたり。俺がぱちぱち手をたたくだけで喜んでくれるのも普通にうれしかった。

 

「ふううう」

 

 それにしてもお腹いっぱいだ。宴会が終わったら疲れがどっと来た。今日はよく眠れそうだ。

 

「そういえば明日から何をすればいいんだろうか」

 

 今日は電動キックボードにひき殺されて天使の女の子になって生贄にされかかって媚薬を飲まされて竜と死闘をして変身をして宴会をした。1日の出来事とは思えないな。昨日が遠い過去のようだ。昨日俺何をしたっけ。

 

 そうだ……キュリオに聞けばいいんだ。

 

 あたりを見回す。誰もいない。宴会の片づけの音がするくらいだ。

 

 空を見れば満天の星。

 

「わぁ」

 

 普通に感動してしまった。どこまでも続く星の道がそこにあった。夜の空が明るいなんてわからなかった。

 

 あ、いけない。俺はその空の下。手のひらを組んで祈りのポーズをする。するとあの声がした。

 

『なによ? そろそろ寝るんだけど』

 

 パジャマ姿のキュリオが見えた。こいつ人を散々な目にあわせておきながら……。

 

「いや、明日からどうすればいいんだって思って」

『そんなの明日でいいでしょ。ふぁーねむ。初日で魔王軍の幹部をやったんだから、順調でしょ』

「魔王を倒せば元の世界に帰れるんだよな」

『そう言ったわ。……そうね、あんたは王都を目指しなさい。明日の朝には出発。いいわね……ふぁーあ。それじゃお休み。あ、それとファルブラウは死んでないから気を付けなさいよ、まあ、大したことはできないでしょうけど』

「はあ? ちょ、ちょっとまって。おい、おーい」

 

 声が消えた。あ、あいつ最後に重要な情報を残していきやがった。ファルブラウが生きているなら村が危ないだろ。ど、どうしよう。それに王都に行けって。

 

「うう」

 

 だめだ。疲れた。今日は眠たい。

 

 俺は村人に用意してもらった小屋に行く。そこにはベットがあった。洗い立てのシーツは多分俺のためにできるだけいいのを用意してくれたんだろう。ベッドにダイブする。横になるとすぐに幸せな気持ちが俺を包んで……くぅ。

 

 

「本当にいってしまうのですか? セナ様。もう少し ゆっくり滞在しても」

 

 早朝に村人たちに見送られながら俺は村を出ることにした。意外と目がぱっちり覚めて、なんか元気。この体ってげんきいっぱいなのかもしれない。

 

「私は王都に行きます。みなさんも元気で」

 

 そう言って旅に出る。正直少し寂しかったけど、気になることがあった。竜のファルブラウが生きているというなら、それを確認したい。

 

 そもそも王都ってどっちだ。

 

 村を出てそう思ったけど、俺の目的地は昨日の廃城だ。あそこの周辺に落ちた、竜を探しに行くことにした。

 

 歩いたら遠いけど、結構歩くことは苦にはならない。昨日は余裕がなかったけど、俺は異世界の朝を散歩する。舗装されていない道を走る。青い空がどこまでも広がって、朝の冷たい空気が心地いい。

 

「異世界ヴァルドランド」

 

 昨日の夜空といい、この朝の景色といい。

 

「きれいなところだなぁ」

 

 俺はなんとなくそういいながら歩いていく。

 

―― 第一部終わり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「聖天使セナ……この我を倒すとは、許すまじぃ」

 

 がれきの山の中から現れた彼女はそういった。

 

 

 

 

 

 

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