「友達だぁ?」
ファルブラウは何を言ってんだこいつと表情に出して俺を見ている。俺だって何を言っているのかわからない。。そもそも魔王軍と友達になっていいのか……?
……よく考えたら魔王軍ってなんだ。俺はこの世界に来てからほとんど説明を受けてない。キュリオから魔王がなんかあれやこれやで治安が終わっているって説明……になってないだろ。終わってんのはあの天使の説明だよ。
ファルブラウは竜だっていうけど……どう見てもただの女の子なんだよな。もちろんあの戦いでたぶん傷ついたとかそういうのだろうけど。
それにしても今この場をどうするか。殴り合いのけんかすらいやだし、女の子と戦うなんていやだ。俺はできるだけ穏便に済むように演技をすることにした。
顎を上げて偉そうにしてみる。
「ふふふ。私の勝負はすんごいですぞ」
ですぞってなんだ。ええい、このままやってやる。
「竜だか何だか知らないですけど、王都に着いたら勝負と行きましょう」
「……!」
ファルブラウも両手を組んでぎざぎざの歯をむき出しにして笑った。
「いい度胸だ。聖天使。お前が負けた時のことが今から楽しみだ。くくく」
「ふふふ」
「はーっはっはっはっは」
「あはははは」
なんで笑っているんだ。俺たちは。
☆
「おーい、はやくこい」
大きく足を上げて、ポケットに両手を突っ込んだファルブラウは俺の前を歩いている。勢いのまま王都まで行くことになってしまった。
しかし、ファルブラウと勝負をすることになったが、俺は勝負する方法なんて何も考えてない。王都まで考えておかないといけない。
街道を歩いていくと標識があった。大きな石に刻まれている。この先王都って……なんで異世界の文字が読めるのかってこれはチートなのか。少し感動している俺にファルブラウが話しかけてきた。
「それよりもおまえ目立つな」
「え?」
「その羽とわっかだ」
俺はなんとなく自分の背中を見た。小さな白い羽がある。うまく飛べないし微妙に役に立たない羽。あと頭の上のリング。確かにすぐに天使とわかるから目立つ。どうやって隠せばいいんだ。
「うーん」
羽がぴこぴこ動く。だめだ消えそうにない。
「千切ったらいいだろ」
「絶対いや!」
羽が邪魔だから千切るってどういう思考なんだよ。俺はさすがにそんなことはしたくないぞ! ……ん? 街道の向こうになんかいる。道の真ん中にぶよぶよした青い何かが……まさかあれは……スライム!?
す、少し感動してしまった。異世界なんだここって思った。
雑魚モンスターのスライム。俺はへーって思って近寄る。バスケットボールくらいの大きさのぶよぶよした塊がうねうねしている。なんでこれで生きているんだろ、すげー。
スライムが俺のみぞおちに体当たりしてきた。
「ぎゅえ!」
俺はあまりのことに後ろに倒れる。バスケットボール大の水の塊がおもいっきりぶつかってきた。いたい。普通に痛い。げほげほ。
「何を雑魚と遊んでいるんだ聖天使」
そんな俺をファルブラウが見下ろしてくる。心底愉快そうでイラっとする。
「ふん、あんな雑魚モンスターごときに後れを取るとはな、見て居ろ。この我が……げふっ」
スライムがファルブラウのおなかに体当たりした。彼女は膝をついてよだれを垂らしながらおなかを抑える。
「わ、我を四天王と知っての狼藉かぁ?」
スライムはぽよんぽよんとどこかに消えていく。逃げるというか勝ったという感じだ。俺とファルブラウはスライムに負けた? ええ? こんなことあっていいの?
☆
最初はのほほんとしていたんだけど、想像以上に自分たちが弱いということに気づかされた。変身すればいいのだろうが、スライムと戦うたびに奥の手を出すわけにはいかない。
「本当の我は強い! お前のせいで傷を治すのにすべての魔力を使ったから力が出ないんだぁ」
とか泣きながらファルブラウにほっぺたをつねられた時はどうしようかと思った。しかし、今はスライムにも苦戦するレベルだ。
そして金がない。武器もない。アイテムとかもない!
やばい。いまさらそんなことに気が付いた。王都までどれくらいでつくのか……いや、王都についても何があるのか。
俺は祈りのポーズをした。キュリオに助けを求めるためだ。
紫の髪をサイドテールにしてキュリオがソファに寝転んだまま携帯ゲームのスウィッチ3をしている姿が頭に浮かんだ。パジャマで両足をぱたぱたさせてゲームしている。こ、このやろう!
『今いいところだから後で』
「そ、そんなこといっても食料もないにもないんだよ!?」
『はあ。いい? これは神の与えたもうた試練よ。試練というものはそれを乗り越えられないものには与えられないものなのよ』
何を取ってつけたようなことを~。こちとらこのままじゃ人生初の野宿をすることになるんだぞ! 女の子2人で! お、おれは女の子じゃないけど!
『変身してひとっとびで王都に行けば? じゃ』
王都まで行った後に俺は全裸になるだろうが!! 絶対いやだぞ!
「おい。聖天使」
「はっ」
お祈りのポーズをやめてファルブラウを見る。彼女は何か言う前におなかをぐるぐつ言わせてバツが悪そうな顔をする。
「我も竜に戻る力はない。このままでは勝負の前に倒れるかもしれん」
ファルブラウはびしっと後方に指を指した。
「近くに街がある。そこを襲撃するぞ」
俺は何を言っているのかわからなかった。