美少女聖天使、俺   作:ほりぃー

9 / 40
天使セナちゃんにんきもの

 

 街があった。

 

 最初の村とは違って低い城壁に囲まれた街だ。うわーすごい、なんかこうゲームの中世の街っぽい。俺、あそこを襲撃するのか? 

 

「無理、無理!!」

「はなせこのくそ天使~」

 

 ファルブラウがどこからか手に入れたこん棒を片手に街に突撃しようとしているのを俺は必死に止めている。

 

「スライムにコテンパンに負けているのに無理だって!」

「あ、あれは油断していただけだ。それに我には考えがある」

「考え?」

「そうだ。いいか聖天使。人間とはボスがいるんだ。一番偉そうなやつのところに行って叩きのめしたらあとは従う。我は昔からそれを見てきた」

「…………そのこん棒であの街の領主かなんかを殴りに行くってこと!?」

「おう!」

 

 おうじゃない! そりゃあ竜の姿で相手を叩きのめしたら従うかもしれないけど。

 

「ファルブラウは今はかわいいだけなんだから竜の時と同じに考えないで~」

「……」

 

 と、止まった。ファルブラウはわかってくれたのか? 俺を彼女は振り返った。

 

「か、かか」

 

 か?

 

「我はかわいくなどない!!!」

 

 びんた! 痛い!

 

 顔を赤くして俺を睨みつけるファルブラウ。

 

「何を破廉恥なことを言っているんだ!」

「誰もいってない!」

 

 ほほがいたい。なぜ俺がこんな目に。し、しかし、とりあえず止まった。

 

「とにかく街には入ろう。こん棒は捨てて。食料とかいろいろないと大変だから……」

 

 金もないけど、とにかく街に入ればなにかあるかもしれない。俺はファルブラウのこん棒を掴んで捨てさせようとした。ぐぐぐ。こ、こいつ力を入れてる。

 

「はーなーしーてー、ファルブラウ!」

「誰がはなすか~我は敵を倒す!」

 

 すごい不毛な時間だった。

 

 

 そんなことしてたら夕方になった。こん棒はブーメランよろしく俺が投げた。犬みたいにファルブラウが取りに行こうとしたのは必死に止めた。

 

 街には門番がいた。大きな街への扉の前に鎧を着た男たちが数人いる。……俺とファルブラウはその横を通って街の中に入ろうとした。その時俺たちの前にその男たちが立ちふさがった。

 

 こ、こわい。鎧で身を固めた男を見上げる俺。小柄な体になったからか普通に怖い。

 

「な、なんでしょうか?」

 

 俺が聞くと鎧の男たちは言った。

 

「天使様……天使セナ様でしょうか?」

「ええ? ああ? は、はい」

 

 そう答えると男たちは歓声を上げた。なに? なに?

 

「近くのエリオス村に降臨されたという聖天使様がお越しになられたぞ!!」

「へ、へえ?」

 

 なんだなんだという感じで街の中からも人が出てくる。あっという間に人垣の中に俺とファルブラウは取り込まれた。

 

「天使だ!」

「羽がある!」

「人々を救うために降臨された……美しい少女だ!」

 

 ど、どうやら俺を見ているらしい。こ、こんなに大勢の人に注目されるのはさすがに恥ずかしい。

 

「み、皆さん。私はただの旅人です」

 

 よくわからんことを口走ると。

 

「なるほど……神の使いとして旅をしていると……」

 

 俺の言ったよくわからん言葉を近くのおっさんがよくわからん解釈をして、周りのおじさんたちが「おお」とか歓声を上げている。やめてくれ。頭が混乱する。

 

「とにかく天使様が来られたんだ。みんな! 今日はお祝いだ!」

 

 おじさんの一人が叫ぶと俺の周りのみんなが楽しそうに「おー」とか手を上げる。おれ、おれも小さく手を上げて小声で「お、おー」って言ってしまう。横を見ればファルブラウは両手を上げて「うおおおお!」って叫んでる、お前は何をやっているんだ。

 

 

 夜に入る。

 

 でも町は明るい。

 

 通りに人が出てそれぞれお酒を飲んだり踊ったりしている。

 

 俺はその明るい中、街の中心にある教会に歩いていく。俺の姿を見ていろんな人たちが俺に手を振る。それ、俺は恥ずかしい、いやめちゃくちゃ恥ずかしいけど手を振り返す。

 

「天使様! 羽って動くの?」

 

 子供にそういわれて俺はぴこぴこと背中の羽を動かす。わああって叫んで目をキラキラさせる子供達。なんかこの羽初めて役に立った?

 

 いろんな人に声をかけられながら大きなお屋敷に来た。いつの間にかついたという感じだ。なんでも領主の家らしい。そこの執事が「ようこそ天使様」と迎えてくれた。

 

 中に入ると吹き抜けの天井、俺とファルブラウが「おー」という。だけどなんでこんなに歓迎されているんだろうか、生贄にされたりしないだろうか。あるいは媚薬とか飲まされたり。うう、しかしほんと碌な目に合ってないなぁ。

 

 そんな俺の心配とは裏腹になんか広い部屋に通された、

 

 長机の上に等間隔に置かれた燭台の火が揺らめている。これ、あれだ。なんか貴族とかが食事するやつ。俺は一番奥の席に案内されて座った。も、もしかして、食事をおごってくれるんですか?

 

 

 う。うう。ずっと黙っていたけどすごいおなか減ってた。朝から何にも食べてないんだもん。そう思っていると食事が運ばれてきた! メイドさんが持ってきた! 綺麗なお皿に野菜と大き目のお肉がじゅーって音を立てている。

 

「た、食べていいんですか?」

 

 執事さんやメイドさんに聞く。

 

「もちろんでございます」

「あ、ありがとうございます。い、いただきまーす!」

 

 備え付けられているナイフとフォークを手に取る。ファルブラウも同じだ! 

 

 ぱくり。おいしい!

 

 ぐー!

 

 …………すやすや。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。