症例『魔法少女』:マジカル•シンドローム   作:透亜九郎

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初の魔法少女!
ちょっと厳し目な世界観で生きる少女たち


カルテNo.000:ボクたちの暮らす箱庭

 

 ボクたちの暮らすこの『都市』には、化け物が存在する。

 

 警報が鳴り響き、様々な箇所に備え付けられた拡声器から市民に向けて放送が流れた。

 

『市民の皆様、C-6ブロックにおいてウィアドが発生しました。該当ブロックから速やかに避難してください。繰り返します——』

 

 ()()はおおよそ生き物とはかけ離れた醜悪な姿をしていて、伸ばされた複数の鋭利な先端を持つ触手で次々と逃げ惑う人々の顔面を削ぎ落としていく。

 顔を削ぎ落とすたび化け物の身体には顔が増えていく。それらは全て被害者の苦悶する顔だった。浮かび上がるそれらを撫でては嗤い、次の犠牲者を生む。悪辣な災害。

 

 警報と悲鳴と嗤い声。それらが混ざり合って悪趣味な音楽を奏でる。阿鼻叫喚に街が包まれた。

 

「そこまでよ!」

 

 その時、混沌とした街中にそぐわぬ凛とした少女の声が響いた。空からだ。

 声に反応して化け物がそちらを向けば、艶やかな桃色の髪を靡かせて、ピンク色のポップな衣装を見に纏った可憐な少女が宙に立っている。彼女は手にしたステッキを構えて、彼女は口上を述べた。

 

「魔法少女リリィここに現着!暴れるウィアド、今私が解放してあげる!」

 

 この『都市』には化け物がいる。

 同時に、それに対する対抗手段(カウンター)である者たちが存在する。それが『魔法少女』だ。

 

「カオぉぉぉぉぉ、ヨコせェェェェェェ!!」

 

 吼えながら化け物——ウィアドは魔法少女に触手を伸ばしてその可憐な顔面を削ぎ落とさんと刃を振るう。無数に迫り来る触手に、彼女は避ける素振りも見せず宙に立っている。

 手にしたステッキを触手に向けて構えると、彼女は『魔法』を行使した。

 

「〈ラジアル•プレッシャー〉!!」

 

 まさに触手の群れが魔法少女を襲わんとしたとき、それらは直前で上から何かに潰されたようにへし折れて地に落ちた。触手にも痛覚があるのか、ウィアドは悍ましい悲鳴を上げる。

 

 ウィアドが怯んだその隙に、魔法少女は懐に急接近しステッキ上に掲げる。

 

「ごめんね。今、楽にしてあげるから。——〈マギ•プレッシャー〉!」

 

 魔法を唱えてステッキを振り下ろすと、見えない圧力がウィアドを圧し潰してひしゃげた。断末魔の叫びを上げた後に、小さく「綺麗な、顔」そう聞こえた。そして沈黙。

 魔法少女は物言わぬ醜悪な肉塊となったウィアドを悲しそうな目で見つめている。

 そうしていると重いエンジン音を響かせて、三台の黒灰色をした厳つい特殊車両がやってきて、中から防護服を見に纏った人々が周囲の除染と肉塊の回収を始めた。

 魔法少女はそのうちの一人と一言二言言葉を交わすと、何処かへ飛び去って行った。

 

 そうして『清掃』が終了し、防護服を着た連中は再び車両に乗り込み去っていく。

 数分もすれば市民がぽつぽつと戻り始めて、更に数分経って街は人通りに溢れ、何事もなかったかのように日々の営みが再開される。

 

 これが、ボクたちの暮らす『都市』の日常だった。

 

 

 ——これは不治の病が蔓延する箱庭で生きる『魔法少女』たちの物語。

 




なんとなく、この『都市』の世界観がお分かりいただければ幸いです
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