ボーボボ転生   作:ヘビとマングース

2 / 13
2:なんやかんやで仲間入り

 森の中に男女の二人組が居た。

 

「ボーボボたちどこ行ったんだろう?」

 

 ピンク色のショートカットの少女、ビュティが辺りを見回しながら呟く。

 彼女はボーボボと共に旅をしている仲間の一人であり、ボーボボにとっては最初に見つけた仲間であった。戦闘力はないものの、誰にも負けないツッコミ力を持ち、絶対にパーティーから失ってはいけない人物なのである。

 

「さっきまでこの辺りに居たんだけど」

 

 ビュティの隣に立つのは白髪の少年、ヘッポコ丸。

 故郷を救うためボーボボ一行の力を借りて以来、自らも旅の仲間に加わった。

 今よりもっと強くなるため日々修行を行っているのだ。

 

 二人は今朝もいつも通り過ごしていた。しかし気付けばボーボボたちが居なくなっている。

 今更珍しいことでもないが、ほんの少しだけ気にしていたところだった。

 

「待ちねい! 待ちねい! 待ちねい! 待ちねい!」

「あ、何か聞こえてくる」

「待ちねい……」

 

 ドドドドドという足音と共に、土煙が前方から向かってくる。

 来たな、と思えばその通り、ボーボボと首領パッチがやってきた。

 ただし二人が予想した姿とはまるで違い、頭に鉢巻きを巻いた二人が、ロープでぐるぐるに縛り上げた人間を抱えて走ってくるのだ。

 

「へいお待ちィ!」

「ぐばぁっ⁉」

「きゃあああああああっ⁉」

「うわぁああっ⁉ 何やってんだぁ⁉」

 

 地面に投げつけてビタンと叩きつけられたのはこれまで二人が出会ったことのない人物だった。

 津山はボーボボに勢いよく投げられ、口から血を吐きそうな勢いで息を吐き出す。

 こういう世界だとは知っていた。しかしまさか自分が被害者になるとは想像していなかった。

 

「ぐぅぅ、まさか俺がこの感じになるなんて……」

「誰なのこの人! ボーボボ!」

「その辺に居たから拾ってきた」

「そうなの⁉」

 

 ビュティが驚いてボーボボに声をかける一方、ヘッポコ丸は津山を縛る縄を解いてやった。

 

「ワンちゃんじゃないんだから! 元いたところに帰してあげなよ!」

「だって……だって僕を見てたんだもん! 目が合ったんだもぉん!」

「だからって人は連れて帰っちゃだめでしょ!」

 

「あの、大丈夫か……?」

「あ、ああ。まさかこんな扱いになるとは思わなかったけど……」

 

 ヘッポコ丸が縄を解いたおかげで津山は立ち上がった。

 投げ捨てられた時はそれなりのダメージがあったとはいえ、今になってみれば何の問題もない。体の痛みも不調もなく、万全な状態だ。

 

 ビュティに怒られはしたものの、気にした様子のないボーボボが津山の前に立った。

 改めて対峙して津山は少し戸惑いつつもまっすぐに彼を見つめ返す。

 

「で、お前誰?」

「連れてきといて⁉ さっき名乗ったでしょうよ! 津山ですよ!」

「お前の名前覚えにくいだろうが!」

「どこがだよ⁉ そりゃボーボボには敵わないけど! 普通にすぐ覚えられる名前だろ⁉」

 

 彼らのやり取りを見たビュティは誰よりも早くハッとした。

 

「ツッコミの人だ! へっくん、あの人ツッコミの人だよ! ボケじゃないよ!」

「う、うん。なんでそんな嬉しそうに」

「だってツッコミの人なんだよ! 大体ボケの人しかいないのに! へっくんみたいに中途半端でもないんだよ!」

「ええっ⁉ 中途半端⁉」

 

 ヘッポコ丸がビュティの発言で少なからずショックを受けた。

 だがその程度は些細なこととして周囲からは相手にもされていない。

 

「ちょいと待ちなァ‼」

 

 メイクをしてスカートを履いた首領パッチが大声を発して注目を集めた。

 すでにセーラー服を着ているボーボボが不安そうにぎょっとするが、津山は「また始まった」と言いたげな顔をするだけで驚きもしない。

 

「あたいは認めないよ! そんな男!」

「パチ美姐さん! もう許してやってください、この子も元気でやってたんだから!」

「お黙りよボボ子! あたいのグループに入ろうってんならあたいの許可が必要だろぉ! あたいはそいつを認めたりしないよ!」

 

「え……俺、グループに入るの?」

「もうちょっと付き合ってあげてください」

「うん……」

「中途半端……」

 

 女装したボーボボと首領パッチが対峙した。

 まるで放課後の校舎裏を想像させるかのように冷たい風が吹き、草木が静かに揺れる。

 気付けば両者の表情は変化していて、ピキピキと額に青筋を立てて睨み合い、全身から凄まじいプレッシャーを感じさせていた。

 

「パチ美姐さん……最近のあんたはあんまりにもわがままだ。これ以上無茶言われるとあたしも庇えきれなくなっちまいますよ」

「ボボ子ぉ、あんた誰に何言ってるかわかってんのかい? あんたを守ってやってたのはこのあたいなんだけどねぇ!」

 

「世話になった恩ならありますよ……だからあたしは決めてたんだ。あんたが間違った道に進もうとしてるなら、たとえあんたに歯向かってでも止めるってね!」

「あたいが間違ってるだって⁉ どこをどんな風に間違ってるのか教えてほしいもんだ!」

 

「それを今から教えてやるってんだよビチグソ野郎が‼」

「吐いた唾飲むなよコラァ! 来いや! 来いやぁああああっ‼」

 

 ボーボボと首領パッチが雄叫びを上げながら駆け出した。

 津山もビュティもヘッポコ丸も、冷静にその光景を眺めて何も言わなかった。

 

「うおおおおおおおおっ! 姉さん! 姉さぁあああああああんっ!」

「バカな⁉ こ、この小宇宙(コスモ)は……!」

廬山(ろざん)昇龍(しゅうりゅう)()ァアアアアッ‼」

「ぎゃあああああああ~っ⁉」

 

 ボーボボの攻撃を受けて首領パッチが高く吹っ飛ぶ。

 その様を三人は表情一つ変えることなく見ていた。

 

「ぐふぅ⁉ よ、よくぞあたいを倒したなボボ子……! しかし、これで終わりではない……今に第二、第三の姐さんが現れる……」

「なっ、なんですって⁉」

「覚悟しておくことだ……お前はまだ、あたいという姐さんの入り口に立ったに過ぎない……」

「くっ、なんてこと……! この女が姐さんの入り口だなんて! ならばあたしは! 姐さんどもを迎え撃ち、倒すだけだ! ボボボーボ・ボボ子の名にかけて!」

 

 一通り済んだのだろうか。

 ビュティが隣に立つ津山をちらっと見て声をかけた。

 

「それで……津山さんは一緒に来るんですか?」

「え? あ、あー、うん……そうなるかなぁ」

 

 ビュティに続いてヘッポコ丸も津山を見る。ボーボボが雄叫びを上げていても気にしていない。

 

「あんた何者なんだ? 悪いやつじゃなさそうだけど、戦えそうにないな」

「いやそうなんだ。俺は戦う人間じゃなくて……かなり遠い場所から来た。それで、多分もう故郷には帰れない。だから一緒に旅ができればと思うんだけど、どうかな?」

 

「私はいいと思う。へっくんは?」

「まあ、危ないやつじゃなさそうだし……」

 

「ねぇボーボボ、いいよね?」

「いいよ」

「えっ⁉ さっきの俺との決闘は⁉」

 

 まさかと思うほどあっさり話がついた。

 こうして津山は、ボーボボ一行の仲間入りを果たしたのである。

 

 

 

 

 ボーボボたちの仲間になった津山だったが、早速困ったことが起こった。

 自らの能力が発現したのである。

 それはふとしたタイミング。おどける首領パッチを見ながらついツッコんだ時だった。

 

「いやそれ牛じゃなくてカバだから!」

 

 その瞬間、「牛じゃなくてカバだから!」という言葉が物質化し、文字となって砲弾の如く発射されると首領パッチの体に激突したのだ。

 突然のことで首領パッチも反応できずに「うごぉ⁉」と呻いて直撃し、倒れる。

 

「なに今の⁉」

「攻撃か⁉」

「今の俺の何⁉」

「本人もわかってないの⁉」

 

 途端に一行が騒がしくなった。

 特にビュティとヘッポコ丸が真っ先に正当なリアクションをして、次いで津山自身が誰よりも驚いていたことで、再びビュティが目が飛び出さんほどに驚愕してツッコむ。

 今日は戦いが起きないと油断していたばかりに、誰しもが動揺せざるを得ない。

 

「そういえばそういう能力が俺にあるっていう話は聞いたような!」

「じゃあさっきのは能力なんだ! ツッコミの能力⁉」

 

 ヘッポコ丸がハッとした顔をした瞬間、その反応を見たビュティもハッとした。

 

「聞いたことがある……」

「やっぱり知ってたバトルマニア⁉」

「他者のボケに反応してツッコミを入れると、ツッコミワードが文字になって相手に放たれ、ぶつかることで行動をキャンセルさせるという伝説のアイテム……“ツッコミトリガー”。ハジケリストたちの間では天敵とされているという」

 

 ハジケリストとは、その名の通り自らの意思で“ハジケ”を行う者の総称である。

 他ならぬボーボボと首領パッチがまさにハジケリストであり、唐突に寸劇のように意味不明なやり取りを始めるのは彼らがハジケリストだからだ。

 

 まさかと思うような知識を持っていたヘッポコ丸の解説を聞き、ビュティは戦慄した。

 そのものはなくとも似た力を持つ敵ならばこれまでの戦いで出会ったことがあったからだ。

 

(もしかして魚雷ガールさんみたいな……ハジケリストの天敵! でもボーボボたちならきっと問題ないはず!)

 

 これまで数多くの敵を倒してきたボーボボと首領パッチ。彼らのチームワークは悪く見えるが、力を合わせた時の爆発力はとんでもない。

 彼らならきっと怯えたりしない。

 そう思ってビュティはボーボボと首領パッチに振り返った。

 

あわわわわわ……⁉

ぎゃああああああっ⁉ こここ殺される~っ⁉

「めちゃくちゃ怯えてた⁉」

 

 ボーボボはガタガタ震え、首領パッチは腰が抜けて立つことすらできなくなっていた。

 しかし自分を奮い立たせるとボーボボが表情を変えて、すぐさま立ち上がる。

 

「みんな落ち着け! 俺たちは敵じゃないんだ! まずは落ち着いて話はそれからだ!」

「う、うん!」

「俺がみんなを落ち着かせてやる! 行くぞ! 鼻毛真拳奥義――!

 

 鼻毛真拳。

 それはボーボボが持つ戦闘術であり、毛の王国の正当な継承者のみが使える神秘の力。

 ボーボボは仲間たちを落ち着かせるために迷わず力を振るった。

 

「徹夜1万個ドミノのラスト1個‼」

「全然落ち着けねー⁉」

 

 津山が絶叫すると「全然落ち着けねー⁉」という文字が撃ち出された。

 狙い違わず一瞬でボーボボに接近すると激しく激突する。

 

「ごぱぁ⁉」

「やべっ⁉ ご、ごめんなさい! だめだと思ってもついツッコミが……!」

「ツッコミそのものが攻撃になる……! こんな人今まで見たことない!」

「すごい技だ! すごい攻撃だこれは!」

「へっくんは落ち着いて!」

 

 突如として発現した津山の能力“ツッコミトリガー”

 その力は仲間になったはずのボーボボや首領パッチを苦しめる、これ以上ないほど相性が悪い力なのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。