ボーボボ転生   作:ヘビとマングース

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9:協力体制

 大きな水族館内で魚を見ていたビュティとヘッポコ丸はふと違和感を覚えた。

 

「ボーボボたちいないね……いたら絶対どこかで騒ぎになってると思うのに」

「敵も現れないし、もしかして本当にただの水族館なのか?」

 

 疑問を抱いたその時、突然水族館の壁が爆発するように破壊された。

 外から誰かが勢いよく吹っ飛んできて、壁に激突すると突き破って中に入ってきたのだ。

 

「きゃあっ⁉」

「危ない! ビュティ下がって!」

 

 咄嗟にヘッポコ丸がビュティの前に立って彼女を守った。

 館内に居た客たちが悲鳴をあげて逃げていく。その程度の時間はあって、飛び込んできた誰かは倒れていて動き出そうともしなかった。

 

 土煙が徐々に晴れていく。

 警戒して目を離さなかったヘッポコ丸はビュティよりも先に気付いた。

 

「あっ⁉ ボーボボさん!」

「え⁉ ボーボボ!」

「うぐっ、ぐぅぅ……!」

 

 そこに倒れていたのはボーボボだった。

 外傷が多く、口の端からは血を垂らしていて、どう見ても無事な様子ではない。

 ビュティとヘッポコ丸は咄嗟に彼の下へ駆け寄っていく。

 

「どうしたのボーボボ! ひどい怪我だよ!」

「敵ですね! 毛狩り隊の連中と戦っていたんですか!」

「は、離れろ二人とも……! あいつはすぐそこにいるぞ……!」

 

 二人の視線が破壊された壁の向こう側へ向けられた。

 全身が緊張感に包まれ、思わず息を呑む。

 

「ボーボボがここまでやられる相手って、いったい、どんな強さなの……!」

「くっ……! すぐそこに、ボーボボさんを吹っ飛ばした奴が……!」

 

 その人物はすぐに現れた。

 確実に今まで会ったことのない男、バッド。

 壊れた壁の向こうでボーボボが倒れている姿を見ると迷わず館内へ足を踏み入れてくる。

 

 警戒していたヘッポコ丸はビュティとボーボボを守るため戦おうとした。

 しかしバッドは走ってボーボボの前まで来ると手を差し出す。

 

「大丈夫かボーボボ! 立てるか!」

「ええっ⁉ あなたが敵じゃないの⁉」

 

 敵であろうと思った男が予想外にも仲間かのように声をかけてきて、ボーボボも彼の手を握り、起き上がるのを手助けしてもらう。

 一体外で何があったのか。

 ビュティとヘッポコ丸は状況を理解できずに目を白黒させていた。

 

「ああ大丈夫だ。問題ない」

「そうか。しかしあのボーボボを吹き飛ばすとは……かなりの手練れだぞ」

「誰なの⁉ この人敵じゃないの! 味方なの⁉」

「何があったんですかボーボボさん! 本当に平気なんですか!」

 

 遅れて壁を破壊し、今度は首領パッチと天の助が飛んできた。

 ボーボボと同様に勢いよく地面を滑ってくる。

 

「ぐわぁああああああっ⁉」

「つえぇ~⁉」

「首領パッチ君と天の助君も!」

「何が起こってるんだ! 敵は誰だ!」

 

「くっ、追い付いてきたのか……!」

「来るぞボーボボ! 構えろ!」

 

 ビュティとヘッポコ丸が緊張する一瞬、視界の中に現れたのは津山だった。

 

「津山だぁあああああああああああっ‼」

「えええええっ⁉ 津山さんと戦ってたの⁉」

「なんでそうなってんだ⁉」

「いやいやいやいやっ⁉ 俺が敵みたいなのはおかしいだろ!」

 

 “ツッコミトリガー”により津山から「俺が敵みたいなのはおかしいだろ!」が放たれる。

 素早く空を駆けたそれは目にも留まらぬ速さでボーボボに直撃し、隣に立っていたバッドには当たることなく、正確に彼だけを倒した。

 

「ぐわばぁ~⁉」

「ボーボボォ⁉ くぅ、すごいスピードだ……! なんという攻撃だ!」

「っていうかお前敵だろ! なに味方みたいな顔してんだ!」

「ぐほぉ⁉ ぐはぁ⁉」

「きゃああああああああっ⁉」

 

 今度はツッコミでバッドが突き飛ばされた。ボーボボと同じように激しく地面を滑っていく。

 戦闘力を持つ彼らが避けられない攻撃。その光景は改めてビュティたちを驚かせた。

 

「津山さん、またツッコミを……!」

「ボーボボさんたちのハジケに反応してしまったんだ! 全方位ボケ対応型の技なんだ!」

「何言ってんのへっくん⁉ そんなカテゴリーがあるの⁉」

 

「ち、違うぞ! 俺は別に君らを裏切ったわけじゃなくて……!」

 

 津山は焦っている様子だった。

 自分がボーボボたちに攻撃を仕掛けた、と誤解されるのを恐れたが故の反応なのだろうが、少なくともビュティはそんな風に思っていない。

 絶対ボーボボたちがふざけたんだ。そしてツッコミを入れられたんだ。

 仲間たちを理解しているからこそ瞬時にそう判断する。

 

 なぜこの状況になったかはわからないがボーボボたちは津山と戦っている気分のようだ。

 ビュティはひとまず無言で見守ることにした。

 

「ちくしょう! 津山の奴、ツッコミ続けて調子を上げてきてやがるぜ!」

「上げてないよ別に⁉ 上げた自覚はないよ!」

「ぎゃあああっ⁉」

 

 首領パッチがツッコまれた。

 

「落ち着けよお前ら! 今から俺が隙を作ってやる! このところてんギフトを贈れば流石にあいつも喜ぶはず!」

「こんな状況で喜べるか!」

「ぐへぇ⁉ 素直じゃないのね~!」

 

 天の助がツッコまれた。

 

「自分! 出身は毛の王国です! 将来は毛狩り隊に就職したいと思ってます!」

「なんでだよ⁉ 毛狩り隊ぶっ潰す側でしょうが! 入るなよ!」

「ぐぉおああああっ⁉」

 

 ボーボボがツッコまれた。

 

「そうか! よく決心したなボーボボ! それでこそ俺の仲間だ!」

「なに仲間ヅラしてんだお前⁉ お前が敵だろ!」

「ごあああっ⁉」

 

 バッドがツッコまれた。

 

「「「「つえぇ~⁉」」」」

「何がしたいんだよお前らっ!」

 

 完璧に状況を理解したビュティは冷めた目をしていた。

 またボーボボたちの暴走だ。好き勝手に暴れているに過ぎない。

 

 その一方でビュティは少しほっとしてもいる。

 自分以外にツッコミができる人間が現れ、ボーボボたちが楽しそうに遊んでいる。その状況を無言で見ていられることにほっとしているのだ。

 同じくツッコミもできるヘッポコ丸はたまにおかしくなるのでツッコミ専業ではない。

 ここまで無言でじっとしていられる時間は今までならあまり多くなかった。

 

「す、すごい攻撃だ! すごい攻撃だ‼」

「へっくん……おバカ~!」

「ぎゃあっ⁉」

 

 降って湧いたバトルに興奮しているヘッポコ丸にビンタして、ビュティは決心を改める。

 自分が少し楽な立場になった自覚はありつつ、かといって彼らを放っておくわけにはいかない。このまま何もしなければずっとふざけ続けているだろう。

 

「みんな落ち着いてよ! 津山さんは敵じゃないんだからやめようよ!」

「下がってるんだビュティ! でないとツッコまれるぞ!」

「ボケてないからツッコまれないよ⁉」

 

 ボーボボがビュティを気にかけた一方、首領パッチが集団から勢いよく飛び出した。

 

「よーし上等だ! 今から俺が隙を作ってやるぜ!」

「無茶をするな首領パッチィ!」

「ここは水族館! 俺が渾身のイルカショー見せてやる!」

 

 そう言って首領パッチは両手にカニの脚を持った。

 高々と腕を掲げてカニの脚同士をカンカンぶつけ始めて、目が飛び出さん勢いで大声で叫ぶ。

 

「毛~ガニ! タ~ラバ! ズワイガニ~‼」

「どこがイルカだよ!」

「だめかぁ~⁉」

 

 首領パッチは大声を出しただけであり、ツッコミに激突されて吹き飛んだ。

 何がしたかったんだろう、とは見ていたビュティとヘッポコ丸も思うものの、いつものことなので敢えて本人に聞き出そうなどとは思わない。

 

 しかし全くの無意味ではなかった。

 首領パッチの発言を聞いてバッドがハッとした顔になっていた。

 

「そうだ、ここは水族館! それを利用しない手はない!」

「おお! そういうことだな!」

「やってやろうぜ!」

「なんで一体感生まれてんの⁉ 敵だよ!」

「「うばぁ⁉」」

 

 今度はバッドに同調したボーボボと天の助が弾き飛ばされた。

 その一瞬でバッドが自らの真拳を発動する。

 悔しげな顔になるほどボーボボたちを仲間と認めているようで、手加減など一切ない。

 

イルカはいるか!

「いないかイルカ!」

「さっきまでいたんですが!」

「あとで探しときます!」

 

「外野がうるせぇ!」

「「「ぎゃああっ⁉」」」

 

 バッドの前にボンっと突然イルカが出現した。

 攻撃か、と津山が警戒しているが、イルカを見たバッドは笑顔になっている。

 

「いたぞイルカが!」

「終わりかよ⁉」

「ぐほぁああっ⁉ あぁ~イルカがいなくなった⁉」

 

 イルカごとツッコミで打ち抜かれたバッドが勢いよく地面を滑る。

 発動したはずのダジャレ真拳は強制的に効力をかき消され、対抗する素振りすら見せなかった。

 

 状況だけを見れば確かに、圧倒的な強者と蹂躙される者たち。

 言い換えるとこれはツッコミとボケの人たちだ。

 変な状況だ、とビュティは思った。そして津山を責める気にはならなかった。もし自分にツッコミによる攻撃能力があったとしてもきっとツッコむと思ったからだ。

 

「くそ~つえぇ~!」

「これが毛狩り隊の力か!」

「毛狩り隊じゃねぇよ⁉ そいつだって!」

「「「「ぎゃああああっ⁉」」」」

 

 ビュティはツッコまなかった。

 ただボーボボたちが飽きるのを待とうとしていた。

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