転生した俺がツンデレショタおにいさまとイチャつきながら最強の魔法使いになるってほんとですか!?~Nothing changed~ 作:かに3
目の前におにいさまのサラサラの銀髪が揺れて「おいちゃまあ」と呼びながら両手で挟んだ。
「んふふ。どうしたんだい、アンジェ? これじゃキスが出来ないよ」
おにいさまは俺のほっぺたにキスするのが好きらしい。分かるよ。赤ちゃんって良い匂いがするしふくふくしてるから最高だよな。でもさっきから後ろでおにいさまのキッスを待ちながらアピールしてるパパがいるので、まずはそっちにお願いします! なんか見てて可哀想になってきた!
「おいちゃま、おえとだけちゅーは、だめよ。ぱあぱともちゅー、してきてね」
「お父さまと?」
「そうよ。ちゅーしてあげてね」
「お前は優しい子だね。分かった、少し待っておいで」
俺には優しいおにいさまも、ちょうど反抗期なのかパパには厳しい。しぶしぶ~~という顔をして無言でキスしたが、口元をハンカチで拭っている。なんで……パパも人間だから傷付く時は傷付くんだよ……。
「ぱあぱ、おえと、ちゅーしよ。ね? ぱあぱ、すきだよ、ちゅーしよう。ね?」
「ありがとうアンジェ……! 愛してるよ……」
「おくちはいや!!!!!」
「やめてください虫歯菌がうつる!!!」
甘い顔したら調子乗りやがって! 危うく俺の可愛い唇が奪われるところだった。一度大声を出したら悲しいも何も無く自動でギャン泣きが始まってしまう幼児の身体は、おにいさまの小さい身体にギュッと抱きしめられて庇われていた。ハンカチで俺の涙を拭ってくれるけど、おにいさまって何枚ハンカチ持ってるんだろう。さっき使っていたやつとは違う柄だね?
息子二人に全力拒否されたパパが悲しみに嘆いているけど、仕方ないことだと思って受け入れて欲しい。俺は歩み寄ろうとしたから許してくれ。
「どうしたの、二人でパパを虐めてるの?」
「違います。お父さまがアンジェに虫歯菌を付けようとしました」
「口にキスはしちゃダメって言ってたでしょう!!虫歯菌は大人からうつるのよ!!」
「未遂です!」
「ロロの時だってあなたは結局キスしちゃったんだから!」
「ごめんなさい!」
パパがママにめちゃくそ怒られてるが、パパ、おにいさまにはやっちゃってたの!? 初耳ですが!?の顔してるおにいさまの顔色がやばいんですが!!
口元にハンカチ(3枚目)をあてて「う……」って言ってんじゃん! おにいさまの賢さが悪い方向に向かってしまっている……!
「おいちゃま、ちゅー。ね? おえとちゅーしたから、だいじょぶ。ね?」
酷い暴力を受けました! の顔をしている美少年はあまりにも痛ましいので、可愛い良い子の俺渾身の天使のキッスでパパの痕跡を塗り替えような……。
唇をあてるだけのかわいいかわいいキスは無罪だろ、たぶん。あ、でも俺の自意識は転生前の大人のままだから、もしかしたら最悪ショタコン仕草してしまった!?
目をまん丸に見開いて驚いてるおにいさまにちょっと慌てて「ちゅー、いや? ごめんね?」と可愛いポーズで謝れば、「んふふ」と吹き出した。良かった! 怒ってはいない!
「せっかく気をつけていたのに、意味がなくなってしまったじゃないか」
「あ! むしばきん!」
「わたしはお父さまにけがされていたらしい……兄さんがわるかった、許しておくれ」
「おいちゃまは、わうくないよ! ぱあぱがわういよ!」
「見てみなさい、美しい兄弟愛。全部あなたが悪いのよ」
「可愛すぎて……! キスが、したくて……!」
おにいさまは本気で言ってると思うけど、唇を触れ合わせるだけでは菌の共有も無さそうだ。パパとママはこんなことを言ってるが笑っている。
今世の家族は本当に優しくて、最高に幸せ。まだ俺を抱きしめてるおにいさまを俺も抱きしめて、「だあいすき」と頭を押し付ける。
少し遠慮がちで、優しい手つきの小さな手が、俺を撫でる。
「わたしもおまえが、大好きだよ。可愛い良い子、わたしの宝物」
「んふふ! おいちゃまも、おえの、たからもの!」
「んふふ、そう。そうか、嬉しいよ」
毎日沢山言葉を喋って、滑舌もマシになってきた。
俺が『おにいさま』とハッキリ喋れるようになった時に喜んでくれたおにいさまも、「もう『おいちゃま』とは言ってくれないのか?」とたまに懐かしんでいる。その年頃特有の間違えた言葉って可愛いもんな、わかるよ。
おにいさまに読んでもらった本に出てた茨の谷の時期王、マレウス・ドラコニアの名が、口に出すと何故か『どらうす・まれこにゃー』と全てがめちゃくちゃになったし、ツボに嵌ったのか普段静かに「んふふ」と笑う程度のおにいさまが無言大爆笑してソファから転がり落ちていった。
これは鉄板ネタになってるみたいなので、俺も不意打ちで「どらうす・まれこにゃー」と言って大笑いさせてる。
どらうす……違った。マレウス・ドラコニアっていうのは、茨の谷の次期王で、なんと妖精らしい! そう、この世界は妖精もいるし魔法もあるのだ!
はじまったな……これは……。
『転生した俺がツンデレショタおにいさまとイチャつきながら最強の魔法使いになるってほんとですか!?』の連載がスタートしたな……。
獣人属? っていうケモ耳ケモ尻尾の人もいるし、異世界転生バンザイ!
その上、衛生は俺の前世と同じくらい整ってるし、テレビもゲームもある。なんて過ごしやすい異世界なんだ……。
テレビからはどこかの国で行われてるスポーツの映像が流れている。マジカルシフトっていう、魔法使い達が箒に乗って魔法をバーン! ってやってドーン! として大暴れするスポーツ! ルールとかわかんない! だって爆発してるし!
「おれもこれやる! やりたい!」
おにいさまの隣でわあわあ騒ぐと、おにいさまは俺の頭を優しく撫でながらうんうんと頷いてくれた。
「おまえはお父さまに似てるから、きっと背が高くなる。魔法士にだってなれる。いっしょうけんめい努力したら、よい選手になれるよ」
「おにいさまもいっしょにやろう! きょうだいで選手になんの、かっこいいでしょう!」
「わたしはお母さま似だから、背もそれほど高くならないとおもうよ……」
「かわりにおれがおっきくなって、おたがいをおぎないあう選手になればよいでしょ!」
「おぎないあうだなんて、むずかしい言葉を知ってるね」
「かしこくてよいこのおれなので!」
「賢くて良い子の弟だ」
はじまっちゃうな、『転生した俺がツンデレショタおにいさまとイチャつきながら最強のマジカルシフト選手になるってほんとですか!?』の連載。
「んふふー」
「どうした?」
優しいおにいさまに抱きついて、「なんでもなあい」と笑う。やりたいことが沢山ある。早く大人になりたいな、もっと大きくなって、できることも沢山増えて、この世界を冒険するんだ。それはきっと、とても楽しくて、幸せな事だから。