転生した俺がツンデレショタおにいさまとイチャつきながら最強の魔法使いになるってほんとですか!?~Nothing changed~ 作:かに3
俺が2歳になった頃、おにいさまは小学校……エレメンタリースクール? に通い始めるようになった。学校って7歳からじゃないの!? 俺はあと1年はおにいさまとおうちでイチャイチャする予定だったんですが!?
自意識は大人だけど肉体は子供なので盛大に泣いて駄々を捏ねたし、泣きながら「おにいしゃばのせえふくかっこいい~~!」と褒めた。ただでさえ美少年なのに、私立校のピシッとした制服を着ることにより元からあった静謐な美しさが際立つ~~!
「アンジェ、お兄様に行ってらっしゃいのキスは?」
「うええん」
ママに抱きかかえられながら、両手を伸ばしておにいさまの頬にキスをした。ベショベショで汚いのに同じようにキスを返してくれて「行ってきます。良い子の返事を聞かせてくれるね?」と言われたので、「う"ん"」と頷く。俺は可愛い良い子なので待てるよ!
「おにいしゃば、いってら"っしゃい」
「学校が終わったらすぐに迎えに行くから、待っているのだよ」
2度3度振り返りながらドアを開けて出ていったおにいさまの姿が完全に見えなくなって、もう一度泣いた。
「さびしい~~~! えーーーーん!」
ママの身体に抱きついて優しい香水の香りに包まれる。「寂しいわねえ」と、おにいさまによく似た顔を見てなんとか落ち着こうと努力した。……逆か? おにいさまがママに似てるんだもんな。
パパとママは在宅仕事をしているらしく、俺は日中基本的に寝ているかおにいさまに構ってもらって生きていた訳だ。俺はこれから、どうやって生きればいいんだ……! と思っていたら「アンジェもお出かけの用意をするわよ」と部屋に連行された。あ、俺も幼稚園みたいなとこに行くんですね?
可愛さの権化とは俺の事よ! みたいなキュートな服を着せられて、少し行った所にある小さな家に連れてこられた。
個人でやっている保育所らしい。そういえば、何度かここに遊びに来たことがある。あれって入所面接みたいなやつだったんですか?
同じくらいの年頃のちびちゃん達が泣きじゃくっている中、「おれもがっこうかようのね」と完全に理解した顔でキリッとしてみた。
おにいさまはエレメンタリースクールに、俺は保育所に。あ、おにいさまが『待っているのだよ』って言ってたのもしかしてこれ?! 俺のお迎え、おにいさまがしてくれんの!?
「ママ、お兄さまくる? おれのこと、むかえにきてくれる?」
「迎えに来てくれるわよ。ロロがどうしても自分がやるって言って聞かなかったの」
「んふふー! お兄さまは、おれのことがすきだからね!」
「ママだってアンジェの事が好きだから送りは譲りませんでした~~! パパにだって譲らなかったんだから! 可愛いからちゅーしちゃお!」
「きゃあ!」
玄関で「2人で行けば良いのではないかなあ!?」パパが嘆いてたのはこういう事か……。可愛い末っ子の俺ってばモテモテで困っちゃうな。
一通りママにもちもちされてから、保育所内に連れていかれた。優しそうなおばあちゃん先生と、若い男の人がいる。男の人の方はエプロンをしてないから、たぶん先生じゃないのかな?
「はじめまして、アンジェです、にさいです」
ど? 完璧な挨拶でしょ?
ドヤ顔でママに振り返ると拍手されてたのでご満悦。「あら、しっかりしてるわねえ」とおばあちゃん先生に頭を撫でられた。掴みはバッチリ。
ママが家に帰る時には身体が勝手に「さびしい~~!」と泣いたけど、俺より泣きじゃくってる子が沢山いたからすぐに涙が引っ込んだ。
謎の男の人は泣いてる子供の前でオロオロしてたので、俺がかわりに「なかないでねえ」と頭を撫でてハグしてまわりフォローする。
「た、たすかる……」
「いいのよ、がんばったね」
座っても高いところにある頭をよしよしと撫でてハグすると、びっくりした顔をして固まってしまった。子供の扱いに慣れてない人だなあと思ったけど、おばあちゃん先生の孫のトムくんと言うらしい。
最近学校に行けてないからかわりにこっちをお手伝いしてくれているんだとか。途切れ途切れの情報をまとめてわかったことなので、別におばあちゃん先生もトムくんも公言してる訳じゃない。俺がただの子供じゃなかったからわかった事だ。
あら不登校? 嫌なことあった? 俺にも覚えがあるよ、仲良くやろうな。
「トムくんはー、がっこうでなにおべんきょうしてるの」
「魔法士になる勉強をしてるよ」
同じ年頃の子はあまり会話にならないなと分かったので、俺はもっぱらトムくんに引っ付いていた。子供の扱いを知らないトムくんは、子供の質問にも適当に誤魔化したりしないで丁寧に答えてくれるからありがたい。
「おれも魔法使いになれる?」
「魔法『士』な。まあ……魔法を使うには才能がいるけど、イマジネーション……想像力が、1番大事って言われてるから……今からなりたいって思ってたら、なれるんじゃないかな……?」
「魔法のこといっぱい考えてたら、できるようになる?」
「理論的には可能性が上がるというだけで絶対とは言えないけど」
幼児に対する受け答えじゃないんだよなあ~~! 俺じゃなかったらパニックになって泣いてたかもよ。
「……子供向けの魔法の本、持ってこようか?」
「いいの!?」
「僕が小さい時読んでたやつだから、情報とか古いけど」
「ありがとうトムくん! だいすき!」
俺が渾身のハグをすると、わたわたと手を戸惑わせたあとおそるおそるハグを返してくれた。絶対魔法使えるようになりたいもんな、今から頑張って、転生チート主人公ってやつになってみせる!
「……アンジェ」
「お兄さま!」
声を聞いた途端、トムくんの膝から飛び出しておにいさまに抱きつく。
反動で強めに蹴ってしまったらしく「うぐっ」と叫んで平伏しているトムくんに、おにいさまは「弟が失礼しました。ではまた明日」と何故か冷たい声でご挨拶していたけど、おにいさまの制服のマントに包まれて隠されてる俺には何も見えない。
「トムくんごめんね、ばいばい、またあしたね!」
「ま、またね」
声が痛そう。悪いことしちゃったなあ。
それでも俺はおにいさまが迎えに来てくれたことが嬉しくて、にこにこが止まらない。おにいさまはちょっとムスッとしてる。はは~ん、俺がトムくんに「だいすき」って言ってたから嫉妬ですね?
俺は大人だから、こういう時スマートに解決できるのよ。
「お兄さま、ちょっとしゃがんで」
「……なにかね」
「おれ、お兄さまがいっちばんだいすき」
耳元でそう言って、頬にキスする。ムスッとした顔をしていたお兄さまはしばらくその顔を保持したあと、口元をハンカチで隠して「調子のよい子だ」と笑った。
マントに隠されるように歩いていた姿勢を止めて、手を繋ぎなおす。
「お兄さま、夕陽がきれいね」
「ああ、綺麗だね」
「世界が真っ赤!」
「こら、兄さんから手を離さない」
「はあい!」
そういえばおにいさまと2人で外を歩くのは初めてだ。今日教わった歌をうたってご機嫌で歩くと、おにいさまも一緒に歌ってくれた。毎日が楽しすぎる……。最高……。