転生した俺がツンデレショタおにいさまとイチャつきながら最強の魔法使いになるってほんとですか!?~Nothing changed~   作:かに3

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 トムくんが持ってきてくれた魔法の本は、子供向けとは言ってもエレメンタリースクール生向け位のものだった。俺、生まれてから2年目なのでほとんど読めないですねえ!

 

 おにいさまに文字を教えて貰ってたので、簡単な単語だけ拾える。なんとかそこを繋ぎ合わせて解読して、分からないところはトムくんに聞いて、泣いてる子を宥めて一緒に遊んであげて、毎日大忙し。

 こういうのって小説とかだと省略されてたけど、現実だと本当に大変なんだな……俺が年相応に何も知らないベビちゃんだったら大暴れしてたかもしれない。

 

 魔法の本は『自分の中の魔力を練り、イマジネーションを高めて発動させる』『魔法士には各々得意な属性があり、それを自覚することが重要』みたいなことが書いていた。

 無属性って格好よくない!? ゼロにして無限……みたいな……!? 俺これがいい! あ、でも木属性もいいな。一見地味だけど実は強大な力があるとか、ロマン。生活を考えると水も便利だよな、将来バックパッカーとかになっても、新鮮な水がすぐ手に入るってのは最高。水、生きるために必要だから……! 火は、う~ん……。暖炉に火を入れる時、とか? 便利。なんかうっかり失敗して火傷するビジョンが簡単に浮かぶから、ちょっと怖いんだよな。

 でも必殺技として出す時一番映えるかも! 『ユニーク魔法』っていう、その人にしか使えない必殺技があるらしい。

 最近でも夕焼けの草原の第二王子がユニーク魔法に目覚めたってニュースに出てた。対象を砂にするんだって! すごい格好良いよな……これを王族がやるってのが良い。クールだ。なんか紙面では叩かれてたけど、この格好良さが分からないなんて感受性ボロボロなのかもしれない。

 王族にプライバシーがないだけで、本来はユニーク魔法は必殺の切り札だからあまり大っぴらに言いふらしたりはしちゃダメだと本に書いていた。

 ふんふんと素直に読んでたけど、そういえばこの世界そんな『必殺の切り札』が必要なくらい危ないのか? 魔王とかいるタイプの異世界?

 そうだったら、やっぱり火力高め……火属性のユニーク魔法が欲しいな……こう……【煉獄の炎】と書いて……。

 

「ダーク・ファイヤー!!」

「発音としてはファイアの方が良いね」

「お兄さま!! わあん、忘れて! 忘れて!」

 

 いつの間にか迎えに来ていたおにいさまに、1番見て欲しくないところだけ見られた! 恥ずかしくて抱きつきながら顔を隠すと、頭の上で「んふふ」といつもの優しい笑い声が降ってくる。

 

「今のは何の練習? お遊戯会でもするのかな」

「ちがうもん~! おれの必殺技だもん~!」

「おや、私の弟は何かと戦う予定が?」

「わすれてよお!」

 

 ひーん! やっぱりちょっとダサかったですねえ! こういうのって人に見られて恥ずかしいやつはダメだ。

 おにいさまが「格好良かったよ。兄さんにもう一度見せてごらん」と言うので、普段お世話になっている身の上……恥を忍んで渾身の「ダーク・ファイア!!」をしてあげた。後ろでトムくんが顔を逸らして笑ってるの、見えてるからな! 俺が自意識大人の転生者じゃなかったら自尊心ぐちゃぐちゃでグレてたからね!

 

「あのね、ユニーク魔法っていうのがあってね……」

「そうか、それの練習をしていたんだね。アンジェは勤勉な子だ」

「んふふー!」

 

 褒められて簡単にご機嫌になった俺を、おにいさまが突然引き寄せた。そのまま制服のマントで隠されるように抱きしめられる。

 

「ママがいいー!!! 兄ちゃんやだぁ!!!!」

「あーもううっせえな! 捨ててくぞ!!」

「やあだああ!!」

「うるせえ!!!!」

「ぎゃあああん!!!!」

「た、叩かないで! 落ち着いて!」

 

 喧嘩してる子供の声と、オロオロのトムくんの声がする。俺たち以外にもきょうだいが迎えにくる家があるけど、ぐずっちゃったのかな。

 まあ実際、俺たち位の年頃の子供ってこれくらいが普通なんだよな……。

 おにいさまが年齢不相応に賢く美しい天才児で、俺が自意識大人の転生者だからこんなに仲良く平和に生きてるだけだ。

 どれどれ、慰めてあげましょうかね。と、おにいさまのマントから顔を出すと、またそっと戻される。

 

「アンジェ、見てはいけない。野蛮なやからだ」

 

 おにいさま、またハンカチを口元にあてて侮蔑の眼をしてますね?

 見えなくてもわかる。我が兄はちょっぴり潔癖症で神経質な性質なので。そんなところも魅力的で最高だと思います。俺にだけデレてくれるツンデレおにいさま、ありがたいね。

 

 おにいさまが嫌がってるのに無理に介入する必要も無いか。

「トムくんがんばってねえ」と声援だけ送って、マントに隠されたままおうちへ帰る。トムくんのオロオロした情けない声や甲高い爆音泣き声、怒声が遠くなって、はじめて解放された。そのまま手を繋いで横並びで歩き出す。

 

「まったく、あれでアンジェと同い年など信じられない。兄の方もだ、人前で大声を出すなんて」

 

 案の定、ハンカチを口にあてて侮蔑の眼をしていた。おにいさまったら、こういうところが素直で子供らしくて可愛いんだから!

 

「おれたちもいつかけんかするとおもうよ」

「何でそんなことを言うんだ。私たちはずっと良い兄弟でいるだろう」

「仲良しでもけんかはするものなの。そして仲直りして、もっともっと仲良くなるものなんだよ」

「私はお前を傷付けたくないのだが」

「んふふ。お兄さまったらそんなこといって、おれが大きくなってばかやったら「こらー!」って怒ってくれそう」

「弟を導くのは兄の義務だ、喧嘩ではない」

「そこでおれが口答えしたら、けんかよ」

「おや、口答えする気か? 悪い子だ」

「やあだ、くすぐんないでよ。あはっ、んふふ!」

 

 後ろから抱きしめられて喉を擽られる。やだー! と言っておにいさまの後ろに回って抱きしめて動きを封じれば「こら、歩けないだろう」と笑われた。

 

「お兄さま、おんぶして!」

「甘えん坊め」

 

 家がすぐ近くに見えているから、甘えてみる。断ってくれてもいいのに、おにいさまは俺のわがままを出来るかぎり聞いてくれる。優しい。だいすき。

 

「また大きくなったね」

「重い?」

「ああ、重くなった。そのうち私の身長も超えて、おんぶも出来なくなるだろうね」

「そしたら、おれがお兄さまをおんぶしてあげる!」

「それは楽しみだ、早く大きくなるんだよ」

「がんばる!」

 

 おにいさまに背負われたまま手を伸ばして家のチャイムを押すと、パパが出てきて「えっ!? 可愛すぎる!」と叫んで流れるような動作でスマホの連射機能を押した。見えないけど、おにいさまの眉間にシワが寄ったのがわかる。

 

「パパ! ただいま!」

「ただいま帰りました。手を洗いたいので邪魔をするならどいてください」

 

「おかえり息子たち、邪魔をしないから抱きしめさせてくれ……」

 

 おにいさまはため息をついて俺をそっと下ろし、パパのハグを受け取る。反抗期終わったからちょっと当たりが柔らかくなったね。

 俺もパパに全力で抱きついてハグを返す。

 仕事を一旦置いて出て来たママにも、交代でハグをして「だいすき!」と伝える。こういうのは言わないと伝わらないからさ、俺は飽きられても何度でも言うって決めたんだ。

 

「お兄さまも、パパも、ママも、だいすき!」

 

 当たり前のように返される同じ熱量の「だいすき」は、前世で手に入らなかったものだから。大切にしたい。これが当然のものだなんて調子に乗らないで、大切なものをちゃんと大切に出来る人間になるんだ。本当は、それだけでいい。本当は、なにかの主人公にならなくても、いい。

愛して、愛されて、それだけで最高なんだって、ほんとは分かってる。今日も、幸せだ。

 

 

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