転生した俺がツンデレショタおにいさまとイチャつきながら最強の魔法使いになるってほんとですか!?~Nothing changed~ 作:かに3
俺の身長がすくすく伸びると同時に、俺の魔法もどんどん上手くなっていった。ずっと練習してたからね!
やっぱり俺は凡人で、妄想していたみたいに強い力に目覚めたり俺だけの特別な能力とかはないみたいだ。
それでも指先からパチパチと出るだけだった火花も、前より大きくなって安定して操作ができるようになってきた。
「お兄様、ほら見て! 火花がキラキラしてる……おもしろい! 魔法ってすごいね!」
「ああ、凄いね。どんどん上手くなる。アンジェは頑張り屋だ」
俺が小さな花火のように炎を出すと、お兄様が笑ってくれる。俺はいつもお兄様のお世話になってるから、嬉しい。
「俺、魔法がだいすき。なんでかしってる?」
「綺麗だから?」
「んふふー、ちょっと違いまーす」
炎を消してお兄様のおなかにドンとぶつかる。そのまま抱きしめられて、まだ制服から着替えていないお兄様のマントにくるまって隠れた。お兄様も身長が伸びたけど、昔みたいに完全に隠れられ無くなっちゃった。顔だけ隠して笑うと、マント越しに優しく撫でられる。
「俺が魔法を使うと……お兄様が、楽しそうにしてくれるから! もっと沢山魔法を使って、もっと沢山覚えて、お兄様にいっっぱい見せてあげる!」
「それは楽しみだ。アンジェは本当に優しい子だね」
「俺は可愛い良い子なので!」
くしゅん。マントから顔を出した瞬間にくしゃみが出た。最近ちょっと体調が悪いから、風邪をひきはじめたのかな。お兄様にうつさないように離れないと……と思ったら、ぎゅっと抱きしめられてマントの中に戻される。
「熱は無いようだけど、冷える時期だから気をつけなさい。今着替えを持ってくるから、それまで兄さんのマントを貸してあげよう」
「いいの?」
「ああ、特別だよ」
来年は俺も通う予定の学校。冬用のビロード風マントがヒラヒラしてて、格好いい。嬉しくてくるくる回りながらマントを翻していると、すぐに帰ってきたお兄様が「こら」と俺の両頬を挟んで止めた。
「回っていたら意味が無いだろう。さっきよりも冷えていないか? ほら、手を上げて。セーターを着なさい」
「やだあ、マントつけてたい」
「セーターの上からならつけていていいよ」
「やったあ!」
バンザーイして服を着替えさせて貰う。手間のかかる弟で申し訳ありませんが、まだまだ可愛がって頂きます!
お兄様も部屋で着替えてきたのか、俺とお揃いのセーターを着ていた。あまり顔が似てないから兄弟って思って貰えないことが多いけど、お揃いにしてたら何も言わなくても分かってもらえて便利!
俺の趣味で全面恐竜柄のセーターになったけど、これをお揃いにしたいと頼んだら即座に「ああ、もちろん構わないよ」と言ってくれた。本来、お兄様の趣味は落ち着いたクラシカルな柄だ。いつまで俺を甘やかしてくれるんだ……個人的には永遠にこのまま甘やかされたいし、お互い20超えてもクリスマスにはクソダサセーターでペアルックきめたい。
「アンジェも来年でエレメンタリースクール生だね」
「うん! お兄様と一緒に通うよ! 俺と一緒でうれし?」
「嬉しいよ。アンジェと通う日が待ち遠しいくらいだ」
「俺も!」
子供の成長って、子供本人からしても早い。割と放任主義なパパとママの代わりに、お兄様が俺にいろいろ教えてくれるからたぶん3年生くらいまでは勉強の先取りができてる。
中学校……ミドルスクールから、飛び級が出来るようになるらしい。すごく頑張れば、お兄様と一緒の学年になれるという訳だ! やったー! と思ったけど、そこまで一緒になりたがったらさすがのお兄様も俺の事うざくなっちゃうかな。
「ね、お兄様。俺のこと好き?」
「何を当たり前のことを……大好きだよ」
「俺が大人になっても、甘えていい? ずっと一緒にいていい?」
「当たり前だ。アンジェの方こそ、大人になっても兄さんのことを邪険にしたりしないでくれるね?」
「しないよお!」
「私は融通が効かないし、神経質だから。いつか大きくなったお前には邪魔な存在になるかもしれない。それが恐ろしい」
「違うの! お兄様は真面目で繊細なの! 俺の最高のお兄様なの!」
「んふふ、そうか、私はアンジェの最高の兄さんなのか」
「そうだよお!」
誰がそんな酷いことを! 絶対に妬みだ。お兄様ったら優秀だから、足を引っ張ろうとする奴がいるんだ!
許せん。俺が最強の魔法使いになって、そういうやつからお兄様を守ってあげるからね! 興奮して聞き取りにくい言葉でわあわあ騒ぐ俺に、「アンジェも私の、最高の弟だよ」と言ってくれる。
親ガチャとか家ガチャとか、前世でそういう言葉があった。俺はたぶんそのガチャで全部ハズレを引いて、俺自身もハズレだった。
前世にも兄がいたけど、あの人は俺のことが嫌いだったし、俺もあの人のことが嫌いだった。ずっとずっとマイナスの連鎖が続いていた。1回でも、「だいすき」って言ってたら、「俺のこと好きになって」って言えていたら、なにか変わってたのかな。もう二度と戻れないから、今更の話だけど。死ぬまで後悔して、やっと俺は変われたんだ。
「お兄様、だいすき。ずっとずっと、仲良くしようね。もっともっと、一緒に遊ぼうね」
「私もそれを望んでいるよ。どうしたんだ、今日は随分甘えん坊だね」
「甘えたくなったの」
「いくらでも甘えていいよ」
暗くなった部屋で、暖炉の炎だけが輝いている。近くのソファに座ったお兄様が膝を軽く叩いて「おいで」と言ったので、そのまま膝枕をしてもらった。夕飯の時間にはまだ少し早くて、いつもなら勉強をしているお兄様が俺を甘やかすためだけにそばに居てくれる。
「ね、お兄様。俺、エレメンタリースクールのマント、お兄様のおさがりがいい」
「これはまだ使っているから、お下がりに出来ないよ」
「1年生の頃のやつ。捨ててないでしょ?」
「私が1年の頃よりも、今のアンジェの方が背が高いからサイズが合わないじゃないか」
「いいの」
「格好よく着れないよ?」
「いいの。お兄様が着てたやつが、いっちばん格好いいんだもん」
「まったく……お前は本当に……」
「かわいい?」
「可愛い良い子だよ」
炎に照らされた赤い部屋が、お兄様の影で暗くなる。頬にキスされて、嬉しくて笑った。お兄様も笑っている。
「んふふー」
「顔色も良くなってきたね」
「暗いのにわかるの?」
「兄さんはアンジェのことならなんでも分かるのだよ」
少し寝ておきなさいと頭を撫でられて、目を閉じる。薪が燃える音とにおい、俺の事をだいすきと言ってくれる人。嬉しいな。こんなに幸せでいいのかしら。そう思いながら、ゆっくりと手を伸ばしてくる眠気に捕まっていった。
もうすぐお祭りがある。お兄様といくんだ。楽しみ…………。