転生した俺がツンデレショタおにいさまとイチャつきながら最強の魔法使いになるってほんとですか!?~Nothing changed~   作:かに3

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 お兄様に言われてた通り、お下がり予定のマントはちょっとだけ小さかった。

 でも、着てたらそんなに気にならないし! 大丈夫!

入学は来年だけど、私立校だから受験がある。もちろん難なく合格して、少し大きい制服を買ってもらった。まだ制服に着られている感じだけど、初々しくて可愛いでしょう!

 

「アンジェ、笑って!」

「んふふー!」

 

 パパがスマホのカメラを連射するので、俺はマントを広げてくるくる回ってみる。パパもママもお兄様もにっこにこだ。

 

「早く入学したーい!」

「気が早いわよ。もう少しママたちと一緒にいてちょうだい」

 

 少し曲がったネクタイを直されて、お兄様の隣に並ぶ。今日は祝日だけど、俺の制服お披露目会のためにわざわざ着替えてくれたんだ。2人並んで写真を撮ってもらったあと、セルフタイマーを使って4人全員の家族写真も撮る。

 前世と違って入学式ってやつがないから、記念写真を撮るタイミングがここになるらしい。前世と違ってっていうか、日本と違って? 外国ではそういうものらしいし、俺の知ってる知識の方が珍しいのかも。

 カメラを置いて駆け寄ってきたパパに背中を預けて、お兄様の真似をして背筋を伸ばして真面目な顔をする。絶対良い写真が撮れたでしょう!

 

「ふふ、同じ顔してる」

「ほんとだ。アンジェは本当にお兄様が好きだね」

「うん、だいすき!」

 

 顔は似てないのに、スマホで撮られた俺はお兄様と同じ表情をしている。早く学校に通いたいな。魔法の勉強は最高学年にならないと出来ないらしいけど、俺は2歳からちょっとだけ勉強したし! そしてなにより、ちょっとだけ魔法が使えるようになったし! これくらいの転生チート能力っていうのが俺には丁度いいんだと思う。

 魔法って誰もが出来るものじゃないらしいから、充分過ぎるチートだ。俺が出来るんだから、お兄様もきっと出来るようになる。兄弟で魔法使いって、格好いいよな。

 

「んふふー」

「そんなに入学が楽しみかな?」

「楽しみだよう。お兄様ともっと一緒にいられるもの。一緒に学校行こうねえ」

「いつまでたっても甘えっ子だ」

「えー、良いでしょう?」

「良いよ。ずっと兄さんの可愛い甘えっ子でいておくれ」

 

 お兄様ったら俺のことがだいすきなんだから! ほっぺたにキスされて、俺もお返しにキスをした。便乗したパパとママにもキスをする。お兄様はパパのキスだけちょっと嫌そうだけど、髭が痛いから仕方ないと思う。この前、永久脱毛のチラシを仕事机の上にそっと置いておいた。気づいて欲しい、息子たちの無言の訴え。

 

 

 遠くから鐘の音がして、「は!」と声を出して止まると、ママが笑って「時間ね、着替えましょう」と言った。

 そう、今日はお祭りの日! 聖人の誕生日とか、そういう感じのやつ。詳しくは知らないけど、屋台が出てパレードがあって花火が打ち上げられる!

 

「ロロ、アンジェのことをよろしくね」

 

「はい、花火を見たらすぐに帰ります」

 

「アンジェ、おにいさまの言うことをちゃんと聞くんだよ」

 

「言うこと聞くよう! 俺は良い子だからね!」

 

 慌てて制服を脱いで着替える。「お兄様も早く着替えてー!」と叫ぶと、「花火はまだだよ。落ち着いて着替えなさい」と言われた。わかんないじゃん! 気が変わって早く打ち上げられるかもでしょ!

 

 花の街は昼間だけじゃなくて夜も花が咲いている。いつもは暗くなったら子供だけで歩いちゃダメだと言われてたけど、今日のお祭りは特別! お兄様は高学年になったし、俺も来年から入学だから、花火が上がる18時半までは1番近くの大通りまでお許しが出たのだ!

 お祭りのメインストリートだから、充分すぎるほど充分!

パパとママにお土産を買って、お祭りを見て、楽しむことが今日のお仕事!

 

 1番手前にあった服を着て靴を履き替え、「お兄様ー! はやくう!」とその場で跳ねてると「祭りは逃げないよ」と笑われた。逃げるかもじゃん!

 

「やっぱり適当に着て……。ほら、そんな服じゃ寒いよ。上にこれも着なさい」

 

 セーターの上から、お兄様の白いフリースジャケットを着せられる。おとなしくバンザイして腕を通してもらうと、首にも同じ素材のマフラーが巻かれた。さっきまでお兄様が巻いていたから温もりが残っていてあったかい。

 

「お兄様は寒くない?」

「大丈夫、他に着込んでいるからね。心配いらないよ」

 

 ちょっと大きいジャケットとマフラーで顔が半分隠れる。あったかい。さっきまで自分が寒かったというのを初めて自覚した。このままだと風邪をひいてしまうところだった! セーフ!

 

「ありがとうお兄様! 行こ!」

「こら、兄さんを引っ張らない」

「んふふー! パパ、ママ! いってきまあす!」

 

「行ってらっしゃい、楽しんでくるのよ」

「寂しいからすぐ帰ってくるんだよ」

 

「はあい! 楽しんでくる! 花火みたら、すぐ帰るね!」

「行ってきます」

 

 

 

 

 

 

 いつも人が多いけど、お祭りとなると外から人も来るから圧倒される。普段は綺麗な花々に目をとられながら歩いても目的地にたどり着ける自信があるけど、今日は無理だ。お兄様から手を離したら一瞬で迷子になってしまう。

 ざわざわと騒がしい雑踏の中で、繋がれた手をぎゅっと強く掴んで「俺の事、はなさないでね」とお願いした。はなされた瞬間、俺はどっかに流されちゃう! 逆もまた然り!

 

「はなさないよ。アンジェも、兄さんを置いていかないでくれるね」

「おいてかないよお!」

 

 マフラーが人混みに紛れて引っ張られないように、端っこをジャケットの中にしまい込む。

 この人の量じゃ、パレードは見れない! だからまずはパパとママへのお土産を買おう! 俺が無理くり人の隙間に頭を突っ込んで突撃すると、お兄様は普通に「申し訳ありません、道を開けていただけますか」とスマートに交渉してくれた。そうか……対話で解決……なんて理知的な……。

 仕方ないなあといった顔で笑われたので、俺も照れ笑いをした。もうエレメンタリースクールに入るんだから、頭突きで突撃はあまりにも子供っぽかったよな。反省。

 

 

 パパとママには大きなアイシングクッキーを買った。花火と花が描かれた綺麗なヤツ。2人とも、今日もお仕事で忙しくて花火も見れないらしい。なので、今日が決行日だ。

 俺渾身のダーク・ファイアで花火を上げて、2人をびっくりさせる! サプライズだ!

 

「んふふー」

「どうした?」

「なんでもなあい。あ! ひもくじやりたい! やっていい?!」

「1回だけだよ」

「はーい!」

 

 こっちの世界でもひもくじがあるんだな。前世ではほぼ詐欺だったけど、この世界はどうなんだろう。一回500マドルは子供にはなかなか痛い出費だから、良いものが当たってくれ! 頼む! 祈りながら選んだ紐を引っ張ると、出店のおっちゃんが「お」と言って何かを渡してくれた。

 

「おめでとう! がおがおドラコーンくんだ!」

「がおがおドラコーンくん!?」

 

 ベルが鳴らされてるってことは良いものが当たったんだろうけど、がおがおドラコーンくん!?

 渡されたのは小さなおもちゃだった。「数年前に流行ったものだね」とお兄様が説明してくれたけど、こんなたまごっちみたいなやつもこの世界にあるの!?

 

「懐かしい! うれしい!」

「アンジェが嬉しいなら何よりだ」

 

 早くあそびたいなあと抱きしめていると「落としてしまうから、兄さんのカバンに入れなさい」とショルダーバッグを開けてくれた。お言葉に甘えてがおがおドラコーンくんを入れる。お土産のアイシングクッキーも一緒だ。

 

「潰さないでね、大事におねがいね」

「大丈夫、潰さないよ」

 

 そう言いながら、お兄様は人混みに押されてぐらついた。慌てて手を握って引っ張る。

 

「……人が増えてきたね、もうすぐ花火だ」

「なんにも見えないね……」

「少し場所を変えよう」

 

 大通りは人混みが激しくて、みんなも花火を見るために集まってきている。上を向いても俺たちの身長じゃ、人しか見えない。

 

 少しずつ移動してなんとか人混みを離れたけど、ここじゃ木が邪魔で見えないだろう。遠くで花火の打ち上げ音と歓声が聞こえる。

 

「見えないね……」

 

 お兄様が残念そうに言った。そうか、お兄様も楽しみにしてたんだ。俺という足でまといがいなかったら、身軽に最前列までいけただろう。途中でひもくじとかやっちゃったから……!

 

 そうだ!

 

「ね、お兄様! 見て!」

 

 気合を入れて、手のひらを頭上に掲げた。ポンという情けない音を立てて火花が散る。

 俺渾身の、ダーク・ファイア!

 

「はなび!」

「わあ、アンジェ……凄く綺麗だね! こんなに大きな火花が出せるようになったのか」

 

 ポン、ポン、ポン。

 繰り返し小さな火花を打ち上げると、俺たちと同じように花火を諦めて人混みを離れた人達も「綺麗ね」「すごい」と褒めてくれる。

 

 魔力が切れてきて疲れたけど、あともう少し見せてあげよう!

 

「アンジェ、お前はすごい魔法士になれるよ」

 

 お兄様にそう言われて、嬉しくて、笑った。笑おうとした。公園の入り口から大声をあげた誰かが走ってくる。なんだろうと思ったけど、なんでか手が上がらなくなった。視界が白黒になった。あれ? なんかあつい。

誰かが身体を押す。いたくない。あれ?

 

 何度も瞬きをすると、視界が真っ赤になっていた。お兄様が俺に手を伸ばしている。お兄様が燃えちゃう。なんで。喉が渇いて、これしか言えなかった。

 

 

 

 

 

 

「お兄様を助けて!!!!」

 

 

 

 

 

 

 沢山の人の手がお兄様を俺から離していく。よかった。俺の火はお兄様を傷つけないで済んだ。

 

 ぼおぼお、ごおごおと音がして、人は死ぬ時に聴覚は最期まで残るらしいということを思い出した。お兄様が俺を呼んでいる。返事がしたかったけど、出来なかった。ぼおぼお、ごおごおと、音が。

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