ホグワーツ魔法魔術学校特別体育教師“伏黒甚爾” 作:物体Zさん
第一話
1991年。府中競馬場。分厚い雲が空を覆い、曇天の下を馬群が疾走していた。観客席からは歓声と罵声が入り混じったざわめきが響き、汗と土と雨の匂いが混じり合って重く淀んでいる。
「チッ……またハズレかよ」
伏黒甚爾は、握りしめていた馬券をくしゃりと握り潰し、そのまま地面に投げ捨てた。紙片は濡れたアスファルトの上に貼り付き、汚水を吸いながら色を滲ませる。白い息が煙のように吐き出され、冬の冷気が頬を刺した。
隣では、勝ち馬を当てたらしい中年の男が仲間と肩を組み、歓声の渦の中で跳ね回っていた。伏黒は一瞥すらくれず、ポケットに手を突っ込み、顔をしかめた。
「……あ?」
ブーブーと鈍い音を立ててポケットが震えた。携帯電話――当時の携帯は、まるで拳銃の弾倉のように重い。伏黒は乱暴に取り出し、親指で通話ボタンを押す。
「孔時雨か。……なんだ、仕事か?」
受話口から、湿った笑い声が漏れた。
「あぁそうだ。どうせまた負けたんだろ?ちょうどいい。金がたんまり稼げる、いい仕事がある」
「ほぉ」
「ちと拘束期間は長いがな……殺しよりずっと楽に稼げる」
伏黒は眉をわずかにひそめ、煙草の箱を指先で弾いた。
「そんな仕事があんのか? なんだ?」
「教師だ」
「教師ぃ?」
「月2500ガリオン。日本円にして2,120,000円。毎月それだけ。ボーナスもある」
伏黒は無言で煙草を一本くわえ、火をつけた。短い火花が闇を裂き、煙が冷たい風に溶けていく。人いきれと土埃の匂いの中で、煙草の香りだけが異質だった。
「どうだ?」
「やる」
返事は一瞬だった。ためらいも、考える素振りもなかった。
「へっ……即答かよ。まあ、そう来ると思ったぜ。仕事の場所はイギリスだ。“ホグワーツ”って学校。……知ってるか?」
「あぁ、聞いたことはある。呪術と似ても似つかない“魔法”を教える学校だろ」
「よく知ってんじゃねーか」
伏黒は短く鼻で笑った。
「禪院の連中は、昔から“魔法”を疎んでるが、情報自体は入ってくる。魔法使いの連中は呪力とは違うエネルギーを使う。だが、俺から見りゃ似たようなもんだ」
「へぇ……さすが名家の坊ちゃんは違ぇな」
孔時雨のからかうような声に、伏黒の眉間に深い皺が寄った。
「坊ちゃんなんざとっくにやめた」
吐き捨てるような声音。煙草の煙が夜気に散る。禪院家――呪術界の名門。その血に生まれながら、呪力を持たなかった彼は、呪術師としては“欠陥”とされた。だからこそ、呪術の世界と魔法の世界の両方を“外側”から見てきた。
「魔法使いのガキ相手に教師やれってのか?」
「まぁそうなるな。お前の仕事は“実技指導”だとよ。要は戦闘訓練だ」
「戦闘、ねぇ……」
伏黒は細く煙を吐き、観客席の喧騒の向こうをぼんやりと見やった。
「俺に杖は使えねぇぞ。あいつらの得意な“魔法”ってやつは知らん」
「それがいいんだとよ。杖がなくても戦える異端が欲しいらしい。魔法界も物騒になってる。あの世界には“闇”があるって話だ」
「闇……か」
伏黒の脳裏に、血と呪詛が渦巻く呪術界の闇がよぎった。人間の欲と業、呪いが肥え太る世界。それと似た臭いが、魔法界にもあるというのか。
「まぁいい。殺すより楽で、金が入るんなら何でもいい」
「話が早ぇ。やっぱお前はそうでなくちゃな」
孔時雨の声が笑い混じりに響き、やがて通信が途切れた。
伏黒は携帯をポケットに戻し、煙草を地面に落として踏み潰した。濡れた馬券と混じり合い、ぐしゃりと音が鳴る。
「教師、ねぇ……笑わせる」
空を覆う雲はますます厚くなり、冷たい風が頬を撫でた。
禪院家の血を持ち、呪術と魔法の両方を知る男――伏黒甚爾。
数日後。
伏黒甚爾は女の部屋の薄暗い窓辺で煙草に火をつけた。雨の残り香が漂う部屋の中には、酒瓶と脱ぎ散らかした服が転がっている。ベッドの上で寝転んでいる女は、まるで壊れた人形のように虚ろな目を天井へと向けていた。
「ちょっと借りるぞ」
伏黒はテーブルの上に置かれた財布を無造作につかみ、札束を抜き取った。女はなにも言わなかった。金を奪われることに、もう慣れきっている。
「お前も学習しねぇな」
乾いた声で吐き捨てると、伏黒はドアを開け、夜の湿った空気の中へと踏み出した。雨上がりのアスファルトは濡れた黒い鏡のように街灯を映している。ネオンが滲んで光り、夜の街を腐らせるように染めていた。
空港に着く頃には、彼のコートは濡れた夜風でひらめいていた。カウンターでは、偽造された書類と現金がすべての手続きを滑らかに進ませる。法の網の目など、伏黒にとって破るものにすぎない。警備員の目を避ける必要などなかった。
――あの手この手を使い、伏黒甚爾は何事もなく搭乗ゲートを抜けた。
エンジンの轟音とともに機体は滑走路を走り始め、揺れが座席に伝わる。窓の外では、光の海が遠ざかっていった。街灯、車の列、雨に濡れた滑走路の反射。すべてが夜の底へと沈んでいく。
「……月200万か。破格だな」
伏黒はぼそりと呟き、片足を組んで背もたれに体を預けた。分厚い雲の上へと突き抜ける機体。地上の喧噪は薄れ、窓の外には白い雲が流れ始めていた。
「それにしても魔法界、か……」
紫煙がゆっくりと立ち上り、窓に映る彼自身の顔を曇らせた。瞳は氷のように冷えきっている。
「呪術界と同じく、腐ってる場所だな」
その声音には確信がこもっていた。
禪院家に生まれ、呪術師としての世界を嫌というほど見てきた伏黒は、人の“集まり”というものを信じていなかった。表向きの権威、古臭い掟、名家と貴族、派閥と利益――それらが絡み合い、腐臭を放つ。魔法界が呪術界と同じ構造を持っていることなど、想像するまでもない。
「……金があるだけ、マシってことか」
座席の肘掛けに腕を置き、伏黒は眉をしかめながら深く息を吐いた。冷たい機内の空調が肌を撫で、煙草の香りは完全に機外へと吸い込まれていく。
ふと、前の座席の背面に設置されたモニターに目をやる。地図上には、飛行機の航路が線を描き、日本からイギリスの西方へと伸びていた。
「ホグワーツ、か」
魔法界の象徴とも呼ばれる場所。幼いころ、禪院家の蔵書の中で一度だけその名を目にしたことがある。魔法使い共が杖を振り、箒に乗り、魔法と呼ばれる術式で生活している世界。呪術師たちとは異なる体系を持ちながらも、権力と伝統にしがみついた閉ざされた集団。
――人間の群れは、形が違っても本質は同じだ。
伏黒の脳裏に、呪術界の連中の顔がよぎる。
自分を「禪院の恥」と呼んだ老人たちの顔。
血統に固執し、呪力を持たない自分を切り捨てた一族。
その腐臭と同じ匂いが、魔法界にも漂っている。
「ま、俺には関係ねぇ。俺は働いて、金をもらう。それだけだ」
目を閉じると、彼の中で世界が一気に静まり返る。揺れる機体の振動が心地よい眠気を誘った。
隣の席では、初老のビジネスマンが新聞を読み、ワインのグラスを傾けていた。伏黒はちらりとその姿を見たが、すぐに興味を失い、視線を窓の外へ戻した。
分厚い雲の向こうには、夜を突き破る満月が浮かんでいた。鋭い銀色の光が機体の翼を照らし、暗い雲の切れ間を白く染め上げている。
――ホグワーツ。
そこは、魔法使いにとっての「聖地」であり、同時に閉ざされた世界の中心。
呪術界と同じ腐臭を孕んだ、異国の巣窟。
伏黒甚爾は、煙草の幻の煙を指先に感じながら、薄く笑った。
「さて、どんなクソッタレな世界か……見せてもらおうじゃねぇか」
雲の海を抜け、機体は静かにイギリスの空へ向かって進んでいく。
その胸中に、躊躇も不安もなかった。あるのは、ただ金と仕事、そして腐った連中を斬る覚悟だけだった。
――禪院家の落ちこぼれ。呪力なき怪物。天与呪縛の暴君。
そうしてイギリスに降り立ったのは、朝焼けが濃い雲の向こうで滲んでいた頃だった。
薄い霧と雨が混じった冷たい風が、空港の滑走路から流れ込み、伏黒甚爾の頬を刺す。日本の湿気とはまるで違う、乾いた冷たさ。ロンドンの空は灰色に沈み、吐き出した息が白く伸びては霧の中に消えていった。
「……着いたか」
肩に引っかけた薄汚れたコートを直し、伏黒はターミナルの外に出た。荷物はほとんどない。背中に背負った小さな鞄と、体の奥深くに隠した“もう一つの荷物”だけだった。
霧の街のなか、灰色の石畳を踏みしめながら歩いていると、頭上をふわりと影がかすめた。
羽ばたき――フクロウだ。
一羽の茶色いフクロウが彼の肩上空を旋回し、器用に翼を畳んで彼の目の前に降り立った。鋭い爪に掴まれているのは一通の封筒。薄いクリーム色の紙に、見たこともない蝋印が押されている。伏黒は眉をわずかにひそめ、指先で封を破った。
紙の向こうから、ざらりとした“気配”が滲んだ。
呪力と似ているが、違う。もっと滑らかで、温度を帯びている。それは、魔力と呼ばれるものの痕跡だった。
「……なるほどな」
手紙には丁寧な筆記体で文章が記されている。
それによれば――ホグワーツ魔法魔術学校への正式な招待と、指定の経路、そして時間が記されていた。
“キングズ・クロス駅 9と4分の3番線から特急列車に乗車せよ”
「キングズ・クロス駅……9と4分の3番線、ねぇ。……とりあえず駅に行くか」
伏黒は手紙を丸め、コートのポケットに押し込んだ。
所持品は最小限だった。いや、正確には“外見上”の話だ。
――実際には、彼の身体の中には一体の呪霊が潜んでいる。
格納型呪霊。
赤子のような頭部と、芋虫を思わせる長い胴体を持つ異形。皮膚はどす黒く、湿った粘液に覆われ、目は虚ろに開いている。ウロボロスのように自分の尾を呑み込んで輪になり、極限まで身体を小さく縮めることが可能。その状態で伏黒は呪霊を喉の奥から飲み込み、体内に隠している。
本来、呪霊を人間の身体に取り込むなど、毒を飲むようなものだ。常人なら即死だろう。だが伏黒甚爾には、それが通じなかった。
――天与呪縛。
呪力を持たない代わりに、身体能力と感覚を極限まで研ぎ澄まされた特異体質。その強靭な内臓は呪霊の毒性を完全に押し潰し、異形を内包しても平然としていられる。
「……こいつにも、だいぶ世話になってるな」
呟きながら、伏黒は口の中に微かに残る鉄錆のような味を感じた。それは呪霊が腹の底で蠢く感触だ。格納型呪霊の体内には、伏黒が過去に“借りパク”した特級呪具をはじめ、様々な道具が詰め込まれている。刃、鎖、式神封じ、魔除け、そして――対呪霊用の狩猟具。
呪力を持たぬ伏黒にとって、これは武器庫であり、保険であり、命綱でもあった。
「荷物検査の心配はねぇし、便利なもんだ」
キングズ・クロス駅へ向かうバスの中で、伏黒は窓の外を見た。ロンドンの街並みは、濃い霧と雨のせいで霞んでいる。濡れた石造りの建物、黒い街路灯、車のヘッドライトが滲み、全体がモノクロームの絵画のようだった。
観光客らしき人間たちが楽しげに話す声が、彼の耳にはただの雑音にしか聞こえない。
この街の空気は湿っぽく、重く、どこか呪術界と同じ匂いを持っていた。
「……やっぱ腐ってんな、こっちも」
呪力とは違う魔力の流れが、空気にうっすらと漂っている。街の一角に古い魔法道具店があるのか、あるいは防護結界が張られているのか。感覚が鋭すぎる伏黒には、目に見えぬ気配がすべて“匂い”として届いていた。
駅前に着いたとき、ロンドン特有の鈍い鐘の音が響いていた。
伏黒はゆっくりと歩を進め、大きなガラス張りのドーム屋根を見上げる。キングズ・クロス駅――人と魔法の境界線が交わる、最初の門。
構内に入ると、旅行客とスーツ姿のビジネスマン、そして学生らしき子供たちが入り乱れていた。伏黒は群衆の中を迷いなく歩き、手紙に記された目標を探す。
「9と4分の3番線、か」
一般人には見えない、魔法使い専用のホーム。
その仕組みは手紙に詳しく記されていた。9番線と10番線の間にある柱を真っ直ぐに抜ける――それだけで、魔法列車のホームへ辿り着けるらしい。
「子供騙しみてぇな話だ」
だが伏黒は迷わなかった。周囲を確認すると、マントを羽織った小柄な少年と母親らしき女性が、その柱に向かってまっすぐ走り抜けていく。次の瞬間、ふたりの姿は霧のように消えた。
「なるほど、そういう仕掛けか」
伏黒は軽く肩を回し、深呼吸を一つだけした。
何の緊張もなく、柱に向かって歩を進める。
人混みの喧騒が薄れ、空気が少しだけ湿った匂いに変わった。
足元を踏みしめた瞬間、世界が滑らかに切り替わる。
そこにあったのは、蒸気機関車の轟音と真紅の列車が並ぶ異界だった。
「……着いたな」
呪術と魔法。
ふたつの“外道”を知る伏黒甚爾は、確かに魔法界の門をくぐった。
――そして、ホグワーツへの列車が、ゆっくりと汽笛を鳴らした。
とりあえず、目の前の車両に飛び乗った。
蒸気機関車の車輪が軋む音とともに、空気が変わる。ロンドンの霧が後ろに遠ざかり、ホームにいたガキ共とその親の声がくぐもって聞こえてくる。ローブ姿のガキがわんさかと騒ぎ、抱き合い、笑い、泣いている。魔法使いのガキってやつは、想像以上に騒がしい。
空いている個室を見つけて、俺はそこに滑り込んだ。車両の木の床がわずかに軋む。長椅子のシートに腰を下ろし、窓際に肩を預ける。冷たいガラスの向こうでは、親に手を振るガキ共が列をなし、汽笛の音に負けないほど大声で叫んでいる。
「……キーキーうるせぇな」
独りごちた声は、自分でも驚くほど低かった。
俺に教えることなんてあるのか? あのガキどもに。殺し屋上がりの俺が。
だが、月200万。それにボーナス付きだ。
俺にとって重要なのは、そこだけだった。ガキを殴ろうが、鍛えようが、無視しようが、金が入る。それで十分。
蒸気機関車の車輪がじわりと回り始めた。列車がホームを離れる。独特の振動と、金属のきしみ音が座席を通して伝わる。車内の空気が動き、薄い魔力の気配が窓の外から忍び寄ってくる。呪力と違い、ねっとりとした湿気のような魔力の流れ。それが列車そのものに纏わりついているのが、皮膚で分かった。
「……魔法使いのガキ専用列車ってわけか」
そう呟いたとき、ドアがカチャリと音を立てて開いた。
「あ、あの……ここ、いいですか? 他は空いてなくて……」
弱々しい声だった。目を向けると、そこにはメガネをかけたガキが立っていた。黒髪に細い腕。ローブの袖は少し大きく、身体の線は細い。顔にはどこか影が差していて、目の奥に奇妙な気配がある。
……気配、か。
こいつ、ちょっと臭う。普通の魔法使いのガキじゃねぇ。
俺が嗅ぎ慣れた“異物”の臭い。まるで呪霊に憑かれた人間に近い、生臭く淀んだ感じだ。
「勝手にしろ」
俺は英語で答えた。外人の女と遊ぶために覚えた英語だが、こういうとき便利だ。
「ありがとうございます! あの、僕……ハリー・ポッターって言います!」
ガキが無邪気に笑った。その声はやけに明るいくせに、背後には奇妙な影のような気配がこびりついている。心底どうでもいいが、俺の勘は昔から当たる。こいつ、なんかある。
「そうかい」
軽くそう返し、目線を窓の外に戻した。
ハリー・ポッター――知らねぇ名だ。
だが、こいつの名前は、後に俺の記憶のどこかに焼きつくことになるんだろう。そんな予感だけは、なぜかあった。
ガキは遠慮がちに向かいの席に座った。緊張しているのが丸わかりだ。身体が小刻みに震えてやがる。息を吸う音さえ妙に浅くて耳障りだ。
「えっと……」
「なんだ?」
「あなたの名前は……」
「俺は伏黒だ。それだけ覚えとけ」
「あ、はい……」
ガキの気配と、ねっとりこびりついた陰湿な気配が一々気になる。俺の目に呪霊は見えねぇが、気配だけでほとんど見えるみてぇなもんだ。だからコイツの魂の輪郭が俺には見える。コイツには何かが憑いてる。
「お前……」
俺はぼそりと呟いた。ハリーがぱちりと瞬きをして、俺の目を見る。無垢な瞳の奥に、黒い靄のようなものがぬるりと揺れていた。
「な、なんですか?」
「いや……なんでもねぇ」
ここで余計なことを言うのは得策じゃねぇ。まだ俺は“教師”って肩書きの皮を被ったままだ。初日から魔法界のガキに呪いだの憑き物だのと吹き込むのは、どう考えても面倒になる。
それに、コイツが何を背負ってようが、俺の仕事は“ガキに体を叩き込む”だけだ。呪いの処理は俺の仕事じゃねぇ。
「……ハリーとか言ったな」
「え、はい!」
「ホグワーツってとこ、初めてか?」
「はい! 今日から入学なんです!」
声が弾む。希望とか、夢とか、そういう甘いもんが混ざってる声だった。俺にはとうの昔に縁のない響きだ。
「……そうか」
ガキは緊張しているくせに、ずいぶんと目を輝かせていた。
呪いの匂いを背負いながら、何も知らず、無邪気に笑う――そういう面が、逆に鼻につく。
窓の外の景色が流れていく。ロンドンの街並みは遠ざかり、霧の濃い森と草原が車窓いっぱいに広がる。蒸気の音が高くなり、列車が速度を上げた。車内の魔力が一段と濃くなり、皮膚がピリつく。
「うわぁ……すごい」
ハリーが窓に張り付き、子供らしい声で感嘆する。その横顔を、俺はじっと見た。
こいつ、やっぱり普通じゃねぇ。
魔力の流れに同調しているような、妙な“響き”がある。まるで、呪霊が喜んでるみてぇな反応をしてやがる。
「なあ、ガキ」
「はい?」
「お前、自分の周りに変なもん感じたことはねぇか?」
ハリーの目がきょとんとする。
「変な……もん?」
「そうだ。空気が冷たくなったり、嫌な気配がしたり……なんでもいい」
「うーん……よく分からないけど……小さい頃から、変なことはたくさん起きてた気がします」
やっぱりな。
俺は深く息を吐き、背もたれに身体を預けた。列車の振動が腰を叩く。
「そういうガキは、どこの世界にもいる。呪術界にもな」
「じゅ……じゅじゅつ?」
「ああ。お前らが“魔法”って呼んでるモンとはちょっと違う。けど……同じようなクソッタレなもんだ」
ハリーは意味が分からないって顔をした。まあ、今のこいつには理解できねぇ話だ。
外の空が薄く曇り始め、列車が森の奥へと進んでいく。
俺は無言で煙草をくわえかけたが、車内禁煙の注意書きに目を止めてやめた。ガキどもが行き交う列車で一服なんざすれば、教師としての最初の印象が悪くなるらしい。……いや、すでに悪いか。
「……まぁ、勝手にしろよ、ガキ」
「えっ?」
ハリーがぽかんと口を開けた。その顔を見て、俺は少しだけ口の端を上げた。
――ハリー・ポッター。
このガキ、ただの新入生じゃねぇ。
列車の車輪がさらに加速し、魔力の波が車内を満たしていく。
俺の中に、久々に小さな高揚が生まれていた。
「面白ぇ仕事になりそうだな」
それから俺とハリー・ポッターのいる個室に、またガキが入ってきた。
赤毛のガキだ。
「ここいい?他空いてなくてさ!」
声がデカい。ほんとガキはどこに行ってもうるせぇ。
ここも空いてねぇんだがな。
「あの…フシグロさん?どうしますか?」
ハリーが小さな声で俺に訊いてくる。メガネ越しの目が落ち着かない。
「勝手にしろ」
チクショウ、1人でも鬱陶しいのに、また増えやがった。
赤毛のガキは遠慮なんざ一切なく、ドアを閉めると同時にずかずかと入ってきて、ハリーの隣にドカッと腰を下ろした。人の間合いってもんを知らねぇのか。
「ありがとう!僕ロン・ウィーズリー!あ!コイツはスキャバーズ!」
自己紹介と同時に、ガキはポケットから何かを取り出した。
手のひらに乗っていたのは、デカいドブネズミだった。
「クセェ鼠だな」
「シンプルな悪口!?」
ロンと名乗ったガキが目をむく。いや、事実を言っただけだ。鼻にこびりつく獣臭と、鉄錆のような生臭さ。それがこの狭い個室に充満してきやがる。
……それだけじゃねぇ。
このネズミ、獣じゃねぇな。目の動きが違う。普通の小動物にある“浅さ”がねぇ。魂の輪郭も妙にデカい。ドブネズミ一匹にあるもんじゃない。
「汚ねぇもん出すな。早くしまえ」
「ひっでぇな!スキャバーズは家族なんだぞ!」
ロンが鼠を庇うように抱え込む。だが俺は視線を逸らさなかった。魂の“におい”が濃すぎる。普通の生き物とは違う。俺の鼻と肌が、それをはっきりと告げていた。
「……そいつ、ただの鼠じゃねぇぞ」
「え?」
ハリーが目を丸くする。ロンも半笑いの顔を止めた。
「どういうこと?」
「知らねぇならいい。だが、俺の鼻は間違えねぇ。そいつの中身、普通じゃねぇ」
「……へ、変なこと言うなよ!」
ロンの声に、かすかな震えが混じった。反応が妙に素直すぎる。こいつ、多分何か聞いたことがあるんだろう。
ネズミは小刻みに震えていた。目玉をギョロつかせ、俺を睨んでいるような視線を送ってきている。ネズミごときが、人を睨むなんざ気味が悪い。
「まぁいい。俺の仕事じゃねぇ」
そう言い捨てて、背もたれに身体を預けた。
ロンとハリーが目を見合わせる。さっきまでぎこちなかった二人の距離が、一瞬で近づいた気がした。共通の話題を得たガキ同士、こういうのは早い。
「……ねぇ、ロンって言ったよね」
「うん、君はハリーでしょ?有名だよ!」
「えっ」
ロンの一言で、空気が少しだけ変わった。ハリーの肩がびくりと震える。
「な、なんで僕のこと……」
「みんな知ってるよ、“ハリー・ポッター”。名前を呼んではいけない人を倒した子供だろ?」
ロンが得意げに言う。その言葉に、俺の眉がわずかに動いた。
名前を呼んではいけない人――この国の魔法界にいる“闇”の象徴。耳にしたことくらいはある。禪院の蔵書にもその名は載っていたはずだ。こいつは、その渦中にいたガキってわけか。
「……有名人ってわけか、お前」
「そんなの、僕は……」
ハリーは言葉を詰まらせ、拳をぎゅっと握った。こいつの瞳の奥に、幼いくせに妙に深い影があるのは、そのせいか。
「……いいねぇ、友達ができて」
俺の口から、乾いた笑いが漏れた。
「えっ?」
「気にすんな。お前らの友情ごっこには興味ねぇ」
ロンが怪訝そうに眉をひそめ、ハリーが少し困ったような顔をする。その反応がまるで教室のガキそのもので、逆に妙な安心感があった。
窓の外では、列車が森を抜け、霧の海を切り裂いて進んでいる。魔力の濃度がさらに高まっているのが肌で分かった。呪力とは違う湿っぽい“圧”が車両の隅々まで染み込んでいる。
「……なんか、息苦しくなってきたな」
「え?」
「この列車、外から魔力を吸い上げてんだよ。知らなかったか?」
「そんな話、聞いたことないよ」
「お前らみたいなガキが知るわけねぇか」
俺は窓の外に目をやった。霧の中に、ぼんやりと揺らめく影が見える。魔力の密度が高すぎて、まるで列車そのものが魔物の体内を進んでいるようだった。
ロンが怯えたようにネズミを抱きしめる。そのネズミ――スキャバーズとやらは、ますます俺のほうを睨んでいた。牙があるわけでもねぇのに、妙に“知性”を感じる視線。
「そのネズミ、あんま人前に出すなよ。俺みたいな奴に睨まれたくなきゃな」
「な、なんだよそれ!」
「忠告だ。噛みつきゃ殺す」
ロンが青ざめてスキャバーズをポケットに突っ込む。個室の空気が一瞬で静かになった。
「……怖い人ですね」
ハリーが小さくつぶやいた。
「怖いか?」
「うん……ちょっと」
「そうかい」
俺は肩を竦めて笑った。殺し屋が教師なんてやってる時点で、この学校はろくでもねぇに決まってる。
ロンがハリーに話しかけ始める。家のこと、兄弟のこと、魔法界の噂話。俺はそいつらの会話を半分も聞いちゃいなかった。列車の音と魔力の揺らぎのほうが、よっぽど気になる。
それでも、2人の声は自然と耳に入ってくる。ハリーは人見知りっぽいくせに、ロンの話にきちんと相づちを打っている。ロンもロンで、人懐っこい。あっという間に仲良くなりやがった。
「……いい身分だな」
思わず口の端が歪んだ。
俺がその年の頃、隣にいたのは呪詛と血と地獄ばかりだった。笑い合えるガキなんざいなかった。こいつらの無邪気さが、逆に鼻につく。
「おい赤毛ガキ」
「えっ?」
「そのネズミ、ちゃんと見張っとけ。……逃げたらめんどくせぇ」
「な、なんで俺ばっかり……」
「そういう顔してる」
ロンが変な顔をして黙り込む。ハリーは不安そうに俺とロンを見比べていた。
――やっぱり、この列車。退屈しねぇ。
俺は窓の外の濃霧を見つめながら、胸の奥で静かに笑った。
そして、列車はさらに魔力の濃い方角へと進んでいった。
伏黒甚爾がホグワーツ特急に乗り、濃霧を切り裂きながらホグワーツに向かっているその頃――。
城の最上階にある校長室では、暖炉の薪が静かに爆ぜていた。重厚な壁には無数の肖像画が飾られ、往年の校長たちが所在なげにこちらを見下ろしている。外では雨が降り始め、屋根を打つ雨粒が遠い雷鳴とともに不吉なリズムを刻んでいた。
校長室の奥、鳳凰の羽根のような装飾が施された椅子に、白い長髭の老人が腰を下ろしていた。
ホグワーツ魔法魔術学校の校長、アルバス・ダンブルドアである。
その正面に立つのは、背筋を伸ばし、ローブの襟をきっちりと留めた鋭い目の女――ミネルバ・マクゴナガル副校長。冷ややかな眼差しが、書類の束の上に置かれた一枚の資料を突き刺していた。
「アルバス、本当に体育教師なんて呼ぶつもりなのですか?」
「そうじゃ」
ダンブルドアは穏やかに頷き、深く座り直す。彼の目元にはいつものように柔らかな笑みが浮かんでいたが、その光の奥には何かを見透かすような静かな鋭さがあった。
「一体なぜ……? ホグワーツのカリキュラムに“体育”など存在しないでしょう」
マクゴナガルは眉間に皺を寄せ、低い声で言った。厳格な彼女らしい反応だった。
「“必要”だからじゃ」
「しかし……」
マクゴナガルの声がわずかに震えた。
“必要”というその言葉の意味を、彼女も完全に理解していないわけではなかった。だが、それを実際に行動に移すことなど、常識的に考えれば正気の沙汰ではない。
「アルバス。あなたが呼ぼうとしているのは――“あの男”なのでしょう?」
「うむ。伏黒甚爾」
ダンブルドアは淡々とその名を口にした。
「……呪術の名家、禪院家の落ちこぼれ。呪力を持たない“特異体質”の男。殺し屋。しかも、魔法界の人間ではない」
「そうじゃ」
「いくらなんでも――危険すぎます!」
マクゴナガルの声が少しだけ強くなった。彼女の冷静な仮面に、明確な怒りと不安が滲む。
「生徒たちの安全を考えれば、彼を教師として受け入れるなど論外です。彼の評判は魔法界の外にまで広がっている……“魔法使い殺し”と呼ばれる男を、よりによってホグワーツに?」
「彼ほど、生徒たちに“現実”を教えられる者はおらんじゃろう」
ダンブルドアの声は静かだった。しかし、その静けさには強い意志が滲んでいた。
「魔法界は……これから、嵐に呑まれる。いや、すでに風は吹き始めておる」
「……ヴォルデモート」
マクゴナガルが、その名を低く呟いた瞬間、部屋の温度がわずかに下がったように感じられた。肖像画に描かれた歴代校長たちが、ざわ……と音を立てたかのように微かに揺れる。
「彼の名前を囁くだけで空気が凍る。そんな時代が、再びやってくる。あの少年――ハリー・ポッターがホグワーツに入学する年じゃ。平穏になどなるはずがない」
ダンブルドアは机の上に置かれた一通の封書を見つめた。
その封には、伏黒甚爾の名が記されている。
「呪術界の異端。魔法を持たず、魔力にも呪力にも呑まれず、ただ“戦い”という一点で生きてきた男。彼には、杖で戦う者にはない強さがある」
「それが、生徒たちに必要だと?」
「いずれ、ホグワーツは“守らねばならぬ場所”となる。杖の呪文だけでは、護れぬものがある」
「だからといって……生徒たちに彼のような戦い方を教えるというのですか?」
「いや、全員ではない」
ダンブルドアはゆっくりと目を閉じた。
その声音は柔らかいが、どこか覚悟めいた冷たさを含んでいる。
「彼に教わるのは、“選ばれた子供たち”になるだろう。戦場に立つ覚悟を持つことになる者たちじゃ」
「……ハリー・ポッターも、その一人に含まれるのですか?」
「おそらくはな」
ダンブルドアは、暖炉の炎に照らされた横顔を静かに上げた。炎の揺らぎが彼の瞳の奥で金色にきらめき、まるで未来を見据えるように光っている。
「我々はこれまで、“守るための魔法”を教えてきた。だが、これからは“生き残るための戦い”を教えねばならん」
「……まるで戦争の準備のような言い方ですね」
「戦争じゃよ、ミネルバ」
その言葉は、静かに、だが確実に部屋の空気を変えた。
「いずれ、我々は杖を掲げるだけではどうにもならぬ“暴力”に直面する。呪文が届かぬ場所で、敵と目を合わせるしかない瞬間がくる。そのときに必要なのは、知識ではなく……“生き残る技術”じゃ」
マクゴナガルは黙った。
ダンブルドアが軽々しく戦いの話をする人間ではないことを、彼女は誰よりもよく知っている。
「伏黒甚爾は……そのための教師というわけですか」
「うむ」
ダンブルドアは杖を軽く動かした。部屋の隅に置かれた銀の器に、霧のような映像が浮かび上がる。そこには、特急列車の窓辺で煙草も吸えずに不機嫌そうに座る伏黒甚爾の姿が映っていた。
「……いかにも“教師”には見えませんね」
マクゴナガルが小さくため息を漏らす。
「彼は教師ではない。だが、“生き方”を教える者じゃ。杖を持つだけの者には、決してできんことがある」
「本当に……この選択が正しいと?」
「正しいかどうかなど、誰にもわからん。ただ――今、必要なのは“強さ”じゃ」
マクゴナガルは長い沈黙ののち、静かに頷いた。
窓の外では、遠雷が轟いている。
雨粒が校長室の窓を叩き、夜の帳が少しずつ濃くなっていく。
――やがて訪れる戦いの時を前に、城は嵐の気配を孕んでいた。
その渦中へ、呪術界の異端者・伏黒甚爾が足を踏み入れようとしていた。
「ちなみに彼の給金は?」
ミネルバが伺うように眉をひそめ、慎重に問いかけた。
ダンブルドアは深く頷き、両手を胸の前で組む。暖炉の炎が白い髭を照らし、部屋の空気にわずかな熱が広がった。
「うむ……月2500ガリオンじゃ……!」
その瞬間、ミネルバの顔が固まった。
「う、嘘ですよね?」
声が一段高く跳ねた。普段、感情をほとんど顔に出さない彼女の表情に、明らかな動揺が浮かんでいた。
「わ、わたくしが長年務めている給金の……い、いったい何倍ですか……?」
「ミネルバ、君の努力はよくわかっておる。しかし、あやつを呼ぶとなると……それなりの“対価”が必要なのじゃ」
「対価……ですって?」
「うむ。彼は杖を持たず、魔力を持たず、それでも魔法使いを殺せる男じゃ。つまり……普通の教師では到底埋められん“穴”を埋める存在じゃよ」
ミネルバの唇がひくりと震える。普段から毅然とした態度を崩さない彼女にとって、この数字はとんでもない衝撃だったのだろう。
「……そんな額、魔法省の予算が通るんですか?」
「表向きの予算ではない」
「アルバス……!」
「もちろん違法な金ではないよ。だが……“特別予算”じゃ。省庁内でも、ごく一部の者しか知らぬ金の流れというやつじゃな」
ミネルバの表情がさらに険しくなる。
この国の魔法界において、“特別予算”という言葉が持つ意味を、彼女は誰よりも理解している。
「つまり、それだけの金を払ってでも……彼を雇う価値がある、ということですね」
「その通りじゃ」
ダンブルドアは穏やかに笑った。だがその笑みは、どこか冷たい影を含んでいる。
「戦いの時代が来る。杖の呪文や教科書の知識だけで子供たちを守ることなどできぬ。いずれこの城は、“戦場”になる」
「だから……伏黒甚爾を」
「うむ」
ミネルバは深く息を吸い、背筋を伸ばした。眼鏡の奥の瞳には、困惑と警戒、そしてほんの僅かな恐れが混じっている。
「……彼は教師というより、兵士か処刑人のような存在です。そんな男を、生徒の側に置いていいのでしょうか?」
「“側”に置くために呼ぶのではない。彼は、生徒たちに“教える”のじゃ」
「何を、です?」
「死と生き残りの境界を、じゃ」
薪がパチリと音を立て、火の粉が跳ねた。
ダンブルドアの声は相変わらず穏やかだったが、そこに込められた言葉は決して軽くなかった。
「彼が歩んできた道は、普通の魔法使いには想像もできぬ地獄じゃ。彼は生き残った。その力は“呪文”ではなく、“生”そのものじゃよ」
ミネルバは視線を落とし、長い沈黙を置いた。
2500ガリオン――その額の意味は、単なる給与ではない。ホグワーツという城の未来が、ひとりの男に託されることの証でもあった。
「……アルバス、あなたは本当にこの決断を後悔しませんか?」
「……後悔するかもしれん」
「……!」
「だが、何もせずに嵐を迎えるよりは、ましじゃ」
ミネルバの眉がわずかに下がる。いつもの厳しい副校長の顔ではなく、少しだけ年齢を感じさせる静かな顔だった。
「……生徒たちは、そんな覚悟を背負う必要があると?」
「選ばれし子らは、いずれ背負わねばならん。ハリー・ポッターを筆頭にな」
その名を聞いた瞬間、ミネルバの瞳に影が落ちた。
今年から入学する少年――世界の均衡を揺るがす存在。まだ何も知らぬ少年の背に、すでに嵐が近づいている。
「伏黒甚爾には、その嵐の中を生き抜いた者としての“力”がある。杖を振らずに魔法使いを殺せる男じゃ。そんな存在を敵に回すか、味方にするか――わしらには、もう迷っている時間などない」
「……なるほど。だから2500ガリオン」
「そういうことじゃ」
ミネルバは長いため息を吐き、眼鏡を外した。
その仕草には諦めと、ほんのわずかな敬意が混じっていた。
「アルバス。あなたという人は、本当に……とんでもない博打を打ちますね」
「人生とは博打の連続じゃよ、ミネルバ。特に戦争という盤の上ではな」
窓の外では雷鳴が轟き、夜の空気が重く沈む。
炎が揺らめく校長室の奥で、ふたりの対話は静かに終わりを告げた。
――そして、その博打の“賭け札”となる男が、今まさに列車に揺られてこの城へと向かっていた。
伏黒甚爾。呪術界の異端。
嵐の渦の中で、彼の存在がホグワーツの運命を大きく変えていくことになる。
ハリポタと呪術廻戦、似てますよね?
伏黒甚爾の年齢は21歳とします。喫煙者です。
15年後2006年に36歳って感じでお願いします。
それと依頼料なんですが正直わからんかった。月200万はもしかすると甚爾が即決するには安いか?