ホグワーツ魔法魔術学校特別体育教師“伏黒甚爾”   作:物体Zさん

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第十四話

 

 

 

 

 クリスマスが近くなった日の夜、大広間には巨大なクリスマスツリーが飾られ、呪文学のフリットウィックが浮遊呪文で飾り付けをしていた。

 

 その大広間、テーブルにチキンやお菓子やケーキを並べ食べている生徒達がいた。ハリー・ポッターの一味だ。ハリー、ロン、ハーマイオニー、そしてまた一段と大きくなったネビル。

 

 「なぁネビル…お前筋トレしすぎじゃねーか?部屋でもフンフンうるさいんだよな」

 

 ロンがチキンに齧り付きながら言う。

 

 「フシグロ先生に言われた通り鍛えてるだけだ」

 「いや、それは知ってるけどよ…俺たちも鍛えてるし…」

 「“俺”はもっとデカくなりてぇ」

 「わ、わかったよ」

 

 ロンがビビり、ネビルにチキンを渡した。ネビルはそれを受け取り嬉しそうに頬張った。やっぱり根は変わらないなと思った一同。

 

 「ねぇハリー、声はまだ聞こえる?」

 「え?うん……実は最近また聞こえ始めたんだ。11月は控えめだったんだけどさ」

 「継承者がまた動き始めたのね…ミセスノリスから被害は出てないけど……」

 

 ミセスノリスが石化して以降、石化の被害は起きていない。それは生徒達の警戒心の高さと、気配察知能力が優れているからである。そう、全て伏黒甚爾の授業で身についたものだ。

 

 まず1人で歩かない、どんな状況でも常に警戒する、敵がいつでも来ていいように心構えをしておく。

 

 ハリー達も物を食べながらも警戒は解いていなかった。

 

 「継承者ってのは誰なんだろうな?」

 「マルフォイかな……」

 「アイツじゃねぇな」

 「マルフォイはパーセルタングじゃないしね」

 

 「ねぇ……私たちで見つけてみない?」

 ハーマイオニーが真剣な声で言った。

 

 「実はね…図書室で本を読んでたら面白い薬を見つけたの」

 「薬?」

 

 「ポリジュース薬って知ってる?」

 

 ハーマイオニーの声にロンが眉を上げる。ハリーも興味深そうに顔を向けた。

 

 「ポリジュース薬って、あの誰かに“変身”できるっていう……」

 「そう。特定の人物の髪の毛などを材料に混ぜて飲むことで、その人間の姿に変身できるの」

 「そんな危ねぇもん使って大丈夫かよ」

 「もちろん危険はある。でも、もし継承者が誰かの“身近”にいるなら、姿を変えて近づくのが一番確実」

 

 ロンはまだ信じられないといった顔をしていたが、ネビルは腕を組んでドンと構えた。

 

 「やるなら、やるしかねぇな」

 

 「ちょっと、ネビルまで!簡単に言うな!」

 「でも……本気で犯人を見つけたいなら、こういう手段も必要かもしれないわ」

 

 ハーマイオニーは拳を握り、声を強めた。彼女も恐れていないわけではない。だが今のホグワーツは静かすぎるのだ。継承者が動いているという確信はあるのに、誰も尻尾を出さない。

 

 「材料は揃えるのが大変だけど……やり方はちゃんと調べてあるの。時間はかかるけど、冬休み中ならこっそり作れる」

 

 「冬休み……」ハリーが呟く。

 

 「そうだ、冬休みならマルフォイも残るだろ? アイツの身近な場所に潜り込めば、何か分かるかもしれない」ロンが言った。

 

 「うん……きっと何か手がかりがあるはず」

 

 ハリーも少しずつ覚悟を固めていく。彼は声の存在を一人で抱えるつもりはなかった。仲間がいるなら、戦える。

 

 こうして、冬休みを利用してポリジュース薬を作り、継承者を探る計画が静かに立ち上がったのだった。

 

 「材料は揃えられるのか?」

 「ええ、私に任せて。スネイプ先生の保管庫には全部あるはずよ」

 

 「……おい、スネイプ先生ってお前……」

 ロンが半分青ざめながら叫んだ。

 

 「大丈夫、計画はちゃんと考えてあるわ」

 

 「お前が言うと余計に怖ぇんだよな……」

 

 そんなロンの愚痴をよそに、ハーマイオニーは本格的な準備に入る気満々だ。ネビルも「やるなら徹底的にだ」と腕を鳴らしていた。

 

 その様子を見ながら、ハリーは静かに息を吐いた。

 

 “この声”の正体を掴まなければならない――そうでなければ、また誰かが石になる。

 

 「よし……やろう」

 

 ハリーがそう言うと、ロンとハーマイオニー、ネビルの表情が一斉に引き締まった。

 

 クリスマスツリーが煌めく大広間の片隅で、4人は密かに拳を握った。次に何かが起きた時、自分たちが動けるようにするために。

 

 決心したなら動きは速い。

 

 彼らはその晩からすぐに行動に移った。ポリジュース薬を作るのは冬休み中と決めたが、材料の調達や計画の詰めは今からでもできる。こういう作戦では“準備”が何より大事なのだと、ハーマイオニーは鼻息荒く言い切っていた。

 

 役割分担ははっきりしている。ポリジュース薬の精製はハーマイオニーとネビル。誰に化けるかの選定と毛の調達はハリーとロン。二手に分かれて行動する。

 

 ハーマイオニーとネビルは夜も深くなった時間帯に動いた。透明マントをハリーから借り、忍び足で地下にあるスネイプの貯蔵庫へと向かう。校舎の廊下は静まり返っており、明かりはほとんど消えていた。

 

 「ハーマイオニー、本当にやるのか……?」

 「当たり前でしょ。材料がなきゃ薬は作れないのよ」

 

 緊張しながらも、ハーマイオニーの手は震えていなかった。ネビルもその背中を無言で支えるように立っていた。夜のホグワーツは彼らにとってすっかり慣れた戦場のようなものだった。伏黒甚爾の授業の影響で、彼らの動きには“音を立てない”という習慣が染みついている。

 

 貯蔵庫の扉に辿り着いたハーマイオニーは、事前に調べた呪文とピッキングで錠前を外した。中にはスネイプの厳重な管理のもと、瓶詰めされた素材が整然と並んでいる。

 

 「すごい……本当に全部ある」

 「早くしよう。見つかったら終わりだ」

 

 ハーマイオニーは棚から手際よく材料を取っていく。クサカゲロウ、ヒル、満月草、ニワヤナギ、二角獣の角の粉末、毒ツルヘビの皮、髪の成分を安定させる溶剤など、必要なものをひとつずつ袋に詰めた。

 

 「よし……これで全部」

 

 扉を閉め、ふたりは影のように夜の廊下を去った。

 

 一方、ハリーとロンは別の任務を担っていた。ポリジュース薬で化ける相手を決め、毛を調達することだ。

 

 「なぁ……やっぱマルフォイに化けるのが一番早いんじゃね?」

 「無理だよ。アイツは警戒してる。すぐ気づかれる」

 

 「じゃあ……クラッブとゴイルはどうだ? あいつら、夜になると菓子食って寝てるだけだろ」

 「いいね、それなら簡単そう」

 

 そして2人はクラッブとゴイルの毛を手に入れることに成功した。いつも通りの間抜けな二人は、夜中に廊下で捕まえて軽く気絶させてしまえば、後は簡単だった。ロンが苦笑しながら拾った毛をポケットにしまい、ハリーは慎重に瓶に入れる。

 

 「はは、思ったより簡単だったな」

 「問題はこっからだろ……」

 

 次のターゲットはミリセント・ブルストロード。女子である以上、直接的に手を出すのは難しい。しかし、ハーマイオニーが女子トイレをうまく利用して毛を一本抜き取る算段を立てていた。

 

 結果、こちらもなんとか成功した。

 

 そして……最後のターゲットはスネイプだった。

 

 「おいロン、本気かよ!? スネイプだぞ、スネイプ!」

 「しょうがねぇだろ! こっちが化けられそうなスリザリンに縁ある人で、情報を持ってそうなのは……他にいねぇ!」

 

 本来なら最も危険な相手だった。しかし幸運にも、ある夜にスネイプの研究室付近に落ちていた“髪”を発見した。ロンがそれを掴み取り、ガッツポーズをしたのは言うまでもない。

 

 「な? 運がいいぜ!」

 「ほんとにこれ……スネイプの毛なのか?」

 「知らねぇけど、黒いし長さもそれっぽいだろ!」

 

 しかし――その髪の主はスネイプではなかった。

 その髪は、ある黒いシャツに白いワイドパンツ姿の男――のものだったのだ。

 

 そんなことなど知る由もなく、ハリーとロンは「超ラッキーだった!」と笑いながらその髪を瓶に入れ、作戦の成功を確信していた。

 

 その頃、ハーマイオニーとネビルは城の一角にある隠れ部屋に戻り、材料を机の上に広げていた。

 

 「ふふ、完璧よ」

 「上手くいったな」

 

 2人の手際は良く、計画は順調そのものだった。

 

 「このまま行けば、冬休みには完成してる」

 「でも油断するな。スネイプに気づかれたら終わりだ」

 

 ハーマイオニーは頷きながらも、瓶の中の素材を見て少しだけ不安を覚えた。最後の“髪”に何か違和感があったのだ。しかし、それを深く考える余裕はなかった。

 

 こうして、彼らのポリジュース薬計画は静かに、しかし確実に進行していった。

 

 誰も知らない――その中に、とある人物の髪が混ざっていることを。

 

 

 

 

 一方その頃……伏黒甚爾とアルバス・ダンブルドアは、1年の集大成である有馬記念へと馳せ参じていた。

 

 レースが始まる数時間前に日本へ飛び、腹拵えをし、パチンコを少し打って、マッサージを受け、万全の状態で競馬場へと入った。

 

 競馬場にいる人達は誰も2人に気づかない。それは勿論、日本魔法省とマホウトコロの人員が去年からずっと2人のことを人々の記憶からオブリビエイトしているからである。ダンブルドアがいくら大勝ちしようがテレビには映らないし、映ったとしてもテレビ局に常駐する魔法使いにより直ぐにデータは消去される。

 

 「ジジイ、今年は俺が勝つぜ」

 「ホッホッホ、また《羽虫》がわしに囁くのぉ」

 「馬を見にいくぞ!」

 

 冬の冷たい空気を切り裂くように、2人はパドックへ向かった。観客の視線は熱気に包まれ、馬の吐く白い息が空に溶けていく。甚爾は競馬新聞を片手に馬たちの筋肉と歩様を観察し、ダンブルドアは尻尾の揺れ方と風の流れを占うように見上げていた。

 

 「俺はコイツだ」

 「ふむ、今年はえらく早い決断じゃの」

 「筋肉の張り、歩き方、尻尾の立ち方……完璧だ」

 

 一方、ダンブルドアは妙に尻尾を勢いよく揺らしていた一頭を見て、ニヤリと笑った。

 

 「わしの羽虫が囁いておる……“こやつじゃ”と」

 「尻尾占いで勝ち続けてるのがムカつくんだよ……」

 

 馬券を買い、2人は観客席の上段に陣取った。ファンファーレが鳴り響き、レースが始まる。

 

 「スタートだ!」

 

 ゲートが一斉に開き、馬たちが地響きを立てながら走り出す。甚爾が選んだ馬は序盤から軽快な足取りで前に出た。完璧な位置取りだ。後ろを振り返れば、ダンブルドアが選んだ馬も中団からするりと上がってきている。

 

 「いいぞ、そのまま前を走れ……!」

 「ふふふ……お主、ちと早すぎるのではないかの?」

 

 3コーナーに差しかかると、甚爾の馬は先頭集団の中でも一歩抜けた位置にいた。観客の声援が大きくなる。実況も熱を帯びる。

 

 「このまま押し切れ……押し切れぇ……!!!」

 

 ラスト200m――

 

 「いけぇぇぇえええ!!!」

 

 甚爾が立ち上がり、拳を握ったその瞬間だった。

 

 ――ゴール手前50m。

 

 甚爾の馬が、突然――失速した。

 

 「なっ……!? なんでだ!?!?」

 

 さっきまでしなやかに伸びていた脚が急に重くなったかのように、スピードが落ちる。外から差してきた馬たちにあっという間に抜かれ、トップを走っていたはずのその馬は、一瞬で5位、6位と順位を落としていった。

 

 「おいおいおいおいおいッ!?!? 嘘だろ!? 今まで完璧だったじゃねぇか!」

 

 「ホッホッホ……羽虫の勝ちじゃな」

 

 笑いを堪えきれないジジイの爆笑が耳に刺さる。ダンブルドアが選んだ馬が、綺麗に伸びて先頭を奪い取った。観客席が爆発するような歓声に包まれる中、甚爾は口を半開きにしてゴール板を睨みつけた。

 

 「な、なぜだ……筋肉も張りも完璧だった……スタートもいい……展開も理想……なんで失速する!?」

 

 「ホッホッホ……尻尾が“重い”と囁いておったのじゃよ」

 

 「尻尾ってなんだよ尻尾ってッ!!」

 

 レースが終わり、掲示板にはダンブルドアの馬の番号が大きく映し出される。2人の馬券の明暗はハッキリと分かれた。ダンブルドアはポケットから当たり馬券をひらひらさせ、にやけ顔で甚爾を見た。

 

 「ま、まだ終わりじゃない……まだ……」

 「ふむ、来年も尻尾を信じるとしようかの」

 「うるせぇぇぇ!!!」

 

 甚爾の怒号が冬空に響き渡る。隣のジジイはまるで“勝利の魔法使い”のような顔をして笑っていた。

 

 「では……焼肉じゃな」

 「……チクショウ……」

 

 唇を噛みながらも、甚爾は敗北を認めざるを得なかった。尻尾占い――それが今日もまた、伏黒甚爾の夢を50メートル手前で粉砕した。

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