ホグワーツ魔法魔術学校特別体育教師“伏黒甚爾” 作:物体Zさん
1994年9月1日、俺は既にホグワーツにいた。まだ生徒の影はどこにもない。広い廊下には風が通って石壁を撫でる音だけが響き、夏の名残りの湿った匂いと、秋の気配が入り混じった空気が流れている。これからあの大騒ぎのガキ共が一気に押し寄せてくるかと思うと、やれやれという気分だが、同時にこの静けさが終わる瞬間を迎える時期でもある。
そんなホグワーツの中心、校長室では教職員が一堂に会していた。それだけじゃない。魔法省の役人どもまでが顔を揃えている。妙に張り詰めた空気を作っているのは間違いなく後者のせいだ。全員が胸に何か刺さったような顔をしている。三大魔法学校対抗試合――その開催が決まった今年は、例年以上に仕事が増えるらしい。
「では組み分けが終わった後に、発表ということですね?」
マクゴナガルが硬い声で言うと、ジジイ――ダンブルドアが鷹揚に頷いた。
「そうじゃ。発表はその時が一番じゃろうて。こちらのバーテミウスさんが説明して下さる」
ダンブルドアの隣に立っていた男――バーテミウス・クラウチ・シニア。仕立ての良いスーツに身を包み、白髪交じりの髪をぴっちり撫でつけ、頬の肉は削げ落ちている。ああ、典型的な役人だ。働きすぎで寿命を削っているような目をしている。
ワールドカップの時も見かけたが、その時よりもさらにげっそりしてやがる。まぁあの騒ぎに闇の印まで出たんだ、こいつも色々あったんだろう。
視線を教職員の顔ぶれに流した時、ふと違和感を覚えた。
――リーマスの姿がない。
あのひょろ長い身体、しゃがれた声がどこにもない。
「おいジジイ、リーマスはどうしたんだ?」
俺の問いに、ダンブルドアは珍しくほんの僅かに表情を曇らせた。
「ふむ……リーマスは少し病気での。今は療養中じゃ。今学期の闇の魔法に対する防衛術は別の者に任せることになっておる」
「そうなのか」
病気、ね。あいつは確かに顔色は悪かったが……あれで今年は乗り切る気だったのかと思うと、確かに妙に胸に引っかかる。リーマスは俺とは違う意味でタフな男だ。だが、あれだけ弱った様子で平気な顔をしていたのかと思うと――いや、考えても仕方ねぇな。
校長室では話が続いていく。クラウチ・シニアが前に出て、厳しい声音で対抗試合の概要を述べ始めた。
「今年の三大魔法学校対抗試合は、特に安全性を重視して進められる。競技内容は厳格に秘匿され、選手の選定は《炎のゴブレット》によって自動的に行われる。選ばれた者は契約のもと、棄権はできない」
周囲がざわついた。棄権できない、という言葉は重い。それだけ危険な競技である証拠だ。
俺は腕を組みながら聞き流す。危険だろうが何だろうが、死人が出ようが、生徒達が望むなら勝手にやらせりゃいい。だが教師としての立場もある以上、責任を押し付けられるのも面倒だ。
クラウチ・シニアは淡々と続けた。
「参加校はホグワーツ、ボーバトン、そしてダームストラング。代表選手は各校一名ずつ。この大会は国際的な友好と魔法能力の向上を目的とし――」
言い回しがとにかく固い。石畳より硬いんじゃねぇかと思うほどだ。
俺は嫌気が差して視線を横に逸らした。スネイプはいつも通り不機嫌そうに顎を引き、マクゴナガルは真剣そのもの。フリットウィックはぶつぶつと何か小声で呟き、ハグリッドは瞳を輝かせている。対抗試合がよほど楽しみらしい。
そしてダンブルドアは――笑っているようで目は笑っていない。
まるで何かを見通しているような、妙に深い影がその目の奥に揺れている。
「……リーマスの病気って、重いのか?」
気づけば口に出していた。
ダンブルドアはこちらを見て、ひどく静かな声で答えた。
「大丈夫じゃよ、フシグロ君。彼は強い。じゃが今は……休む時なのじゃ」
その言葉は嘘ではない。だが真実の全てを語っているとも思えなかった。
俺は舌打ちを噛み殺し、再び会議へと視線を戻した。
この学期は面倒ごとが増える――そう確信するには十分だった。
「というわけで、間も無く生徒達がやってくる。先生方は準備を始めてくれ。バーテミウスさんは残ってくれるかの?」
ジジイの締めの一言で会議は解散になった。役人どもは硬い顔のまま小声で何やら確認し合い、教職員はそれぞれの持ち場へ向かっていく。俺は大きく伸びをしてから校長室を出た。夏の名残りの熱がわずかに残る階段を降り、大広間へ向かう廊下へ足を向ける。誰もいない石造りの廊下は、久しぶりに静寂を取り戻していて、靴底が鳴る音だけがやけに大きく響いた。
さて、生徒達が戻ってくれば、また騒がしい日常が始まる。筋肉痛で泣き叫ぶガキ共、トレーニングに付き合わされる教師、朝から晩まで走り回るホグワーツの喧騒。それをどう捉えるかは気分次第だが――この静けさの中にいると、悪くないなと思う瞬間もある。
そんなことを考えながら歩いていた時、背後から低い声が飛んできた。
「フシグロ」
振り返ると、予想通り、黒いマントを揺らしてスネイプが近づいてきた。相変わらずの顔色だな。血が通ってるのか怪しいぐらいに白い。
「スネイプ、どうした?」
俺が言うと、スネイプは足を止めてじっとこちらの目を覗き込んだ。何か企んでいる時の顔だ。
「闇の魔術に対する防衛術の担任が誰になるか、知っているか?」
なんだ急に。さっきの会議で発表はなかった。俺が知るわけねぇだろ。
「いーや、知らねぇな。リーマスが病気なのも今知ったぐらいだからな」
「ふむ……そうか」
スネイプはほんのわずか、眉を動かした。驚いたような、納得したような、妙な表情だった。
「リーマスの病気をフシグロが知らなかったのは意外だな。ダンブルドアといつも一緒にいるのに、知らされていなかったのか」
「おい、なんだその言い方は。お前は知ってんのか?」
俺が睨むと、スネイプは一瞬口を閉ざし、それからため息をつくように低く呟いた。
「……奴は人狼だ」
「人狼……」
胸の奥で何かが引っかかった。喉の奥に燻った煙のような違和感だ。
人狼。月夜に正体を晒し、周囲を襲う危険な魔法生物。
だが同時に、リーマスの普段の姿が脳裏を掠めた。穏やかで、飄々としていて、どこか達観したような男。授業では生徒の誰よりも丁寧で、優しすぎるほど優しい。その裏にそんな秘密があったというのか。
「奴は毎月満月の夜に変身する。そのせいで身体は弱っている。授業も満足にできんほどにな」
スネイプの声は淡々としている。だがその奥には激しい感情が渦巻いているのが分かった。軽蔑、怒り、恐怖、あるいは憎悪。複雑に絡まり過ぎて分けようがない。
「……病気ってそういうことか」
言葉が口から漏れた。
人狼。確かに“病気”とも言えるし、魔法界では忌避される存在でもある。
「もっと早く言えよジジイ……」
呟いた俺に、スネイプが冷たい目を向けた。
「知ってどうする。フシグロ、お前が奴をどう思っていようと、事実は変わらん。あいつは危険だ。生徒達の近くに置いておくべきではない」
「危険、ねぇ……」
言い返そうとして、喉が詰まった。
リーマスは俺を避けたことも、怯えたことも、敵対したこともない。むしろ他の教師よりも自然に俺と接していた。その姿を思い浮かべ、俺は鼻で笑った。
「スネイプ、俺は別に人狼がどうとか気にしねぇよ。あいつが危険なら、俺が叩きのめして止めりゃいいだけだ」
皮肉でも強がりでもない。本気でそう思った。
スネイプは薄く目を細めた。俺の言葉が気に入らなかったわけではない。ただ、理解できなかったのだろう。スネイプの中では“人狼=危険=排除すべき存在”という線が引かれている。
俺はそういう線引きがどうにも嫌いだ。
沈黙が落ちた。二人の間に、冷たい石壁をすり抜ける風の音だけが残る。
やがてスネイプがマントを翻した。
「……その
「甘くねぇよ。事実を事実として扱わねぇだけだ」
背を向けたスネイプは返事をしなかった。黒いマントが廊下の曲がり角に消えるまで、俺はしばらく立ち尽くしていた。
リーマスが人狼――。
意外と言えば意外だが、腑に落ちる部分もある。
あのいつも疲れ切った目、細い身体、月が昇る夜に見せる妙な焦り。それらが一つに繋がっていく。
「……まぁいい。あいつはあいつだ」
考えても答えは出ない。だったら動ける時に動けばいいだけだ。
俺は再び歩き出した。大広間に、生徒達が戻ってくる騒がしい気配が少しずつ近づいている気がした。
そうして大広間に着いた。生徒はまだ来ていない。だだっ広い石造りの空間は、昼の柔らかい光を取り込んだ天井がゆらぎ、数時間後にはガキ共のざわめきに満ちるのが嘘のように静まり返っていた。
磨かれた床には外から吹き込む冷気が薄く流れ、古い城の匂いと混じって鼻にまとわりつく。俺は肩を鳴らしながらいつもの隅の席に座った。視界の端に、天井近くまで積まれた長テーブルがずらりと並び、どれも準備万端と言わんばかりに白布が張られ、銀器が整然と並んでいる。
隣には呪文学のフリットウィックがちょこんと座り、短い足をぶらつかせていた。
「フシグロ先生、今年は大変な年になりそうですねぇ」
「あぁ?まぁな。三大魔法学校対抗試合がどんなもんか知らねぇが……確か二百年ぶりなんだろ」
「そうですとも!」
小さい老人は身を乗り出し、椅子の上で身体を揺らして続けた。まるで糖分を摂りすぎた子供みたいな落ち着きのなさだ。
「前回大会は資料で見ただけなんですが、三校の校長が負傷するレベルだったようですよ!」
……いやな予感しかしない。
「校長が?生徒じゃなく?」
「えぇ。種目の一つにコカトリスと戦うものがあったそうで、それが逃げ出し――それはもう大騒ぎでしてね。皆が襲われてしまい、以降大会は開かれていなかったのです」
なんだその正気じゃねぇ運動会は。
コカトリスなんざ、二級呪術師でもまともにやり合うのは面倒な部類だ。直接殴り合えば骨は砕けるし、目を合わせれば石化する危険もある。そんなもんを生徒と戦わせようと思う連中の頭の構造はどうなってんだ。脳筋か?いや脳みそが存在してるかどうかすら怪しい。
「それを今年よく復活させようと思ったな」
「確かに……そうですね。国際交流の推進と、暗いムードを払拭するためだとかなんとか……」
「暗いムードねぇ……」
俺の脳裏に、クィディッチワールドカップのスタジアムに浮かんだ“闇の印”がぼんやり浮かんだ。
あの異様な空気。黒いローブで馬鹿騒ぎしていた死喰い人の群れ。燃え上がるテント、逃げ惑う観客。熱気と炎の匂いの中で響いた悲鳴。そしてジジイ――ダンブルドアが放ったふざけた名前の、だが洒落にならん威力の呪文。
あの一瞬、自分が闇の帝王だの死喰い人だのという連中の世界に、どっぷり足を突っ込んでいることを嫌でも思い知らされた。
だが同時に思った。
――まあ、俺には関係ねぇ。絡んできたらぶっ飛ばすだけだ。
そんなことを考えていたら、大広間の扉の向こうから誰かの足音がした。複数人の靴が石床を叩く乾いた音。続いて、誰かが大広間の扉を押す前の、ほんの短い呼吸の気配。
どうやら、生徒達の到着の準備が本格的に始まったらしい。
フリットウィックがその気配に気づいて、胸の前で両手をぱたぱたさせ始めた。
「いよいよですねぇ……! あぁ、忙しくなる……!」
「忙しくなるのはお前らだろ。俺はいつも通り、ガキ共に走らせて殴らせて、汗かかせて、寝かせるだけだ」
俺は椅子の背に寄りかかりながら、大広間の高い天井を見上げた。そこには薄い金色の光が漂い、どこまでも静かだった。今のうちだけだ。この静けさは、数時間後には地響きのような喧騒に変わる。
「ま、何が来ようが関係ねぇ。俺はいつも通りやるだけだ」
胸の奥がじんわり熱を持つ。闇の印だの、死喰い人だの、世界がどう動こうが、目の前に現れた問題に淡々と対処するだけ。
その単純さこそが、俺の生き方であり、呪われた家を出てからずっと続けてきた、生存のための唯一の道だった。
時は少しだけ遡り、いつもの4人とフレッド、ジョージ、ジニーはキングスクロス駅にやってきていた。夏の名残をわずかに留めた風がホームに入り込み、石床に溜まった埃を薄く巻き上げる。改札を抜け、混雑する一般客の波をすり抜けながら、彼らは慣れた足取りで9と4分の3番線へと向かった。壁に手を添え、互いに頷き合いながら歩みを進めると、あの不思議な通り抜ける感覚が身体を包み、視界が一気に開ける。赤い車体のホグワーツ特急が蒸気を噴き上げながら停まり、生徒達の声が反響していた。
列車の前で足を止めた瞬間、数日前のクィディッチワールドカップの記憶が全員の脳裏を過った。熱気と歓声が満ちていたはずの夜が、一転して地獄のような混乱になった光景はまだ鮮明に焼き付いている。
「いやぁ、なんか大変だったな」
ロンがそう言い、伸びた赤毛を後ろに撫でつけた。最近マグルの雑誌で見た映画俳優の髪型を真似ているらしい。筋肉がついて厚くなった肩と首にその髪型は妙に似合っていた。
「私たちがポートキーで移動した後、死喰い人が何者かに惨殺されて、それに闇の印が出たそうよ」
日刊預言者新聞を読みながらハーマイオニーが言った。新聞を持つ腕には浮き上がった血管が走り、鍛え上げられた前腕の筋肉がはっきりと動き、彼女の成長を物語っていた。
「闇の印……あれ、ヴォルデモートのやつだよね」
ハリーは額の傷を指先で軽く摩った。痛みはない。だが、妙にざわつくような感覚が皮膚の下で生き物みたいに動く。昨晩も不気味な夢を見た。どこか分からない、古い墓地の冷たい空気が肌にまとわりつく夢だった。
「そう。13年前には頻繁に空に現れてたわ。あなたが
「……奴はまだ生きてる。いや、生きてるというより……しぶとく残ってるって言った方が正しいのかも」
ハリーの声は小さかったが、その響きには確かな恐れと確信が入り混じっていた。1年生のときに見たクィレルの後頭部に張り付いていた“顔”。2年生で遭遇したトム・リドルの日記が見せた冷たい闇。そして去年、逃げていったピーター・ペティグリュー。どれも断片的だが、一本の線で繋がっているように感じられた。
「なんか……嫌な予感がするよ」
ハリーはそう呟いた。蒸気の音に紛れたその声は誰にも届かないほど小さかったが、ロン、ハーマイオニー、ネビルは自然と振り返った。
ネビルは夏の間ひたすら鍛え続けた身体を揺らしながらハリーの肩に手を置いた。手のひらは分厚く、硬く、そして昔の彼からは想像もできないほど力強かった。
「大丈夫だ。何が来ても、俺たちでぶっ倒す」
その口調は伏黒甚爾の授業で鍛え上げられた証のように荒々しかったが、不思議と安心感があった。ハリーは軽く笑い返した。
そのとき、フレッドとジョージが振り返り、声を張り上げた。
「とりあえず乗ろうぜ!」
「そうだそうだ!ワールドカップの賭けでたんまり勝ったからよ、お前らにも車内販売奢るぞ〜!チョコカエルでもカボチャパスティでも何でも来いや!」
2人は勝ち誇った顔で胸を張り、ガラガラと荷物を引きずりながら列車へと乗り込んでいく。
「いこうか」
「そうだな」
「……うん」
ハリーは深呼吸を一つした。蒸気の匂い、騒ぎ始めた生徒の声、レールが軋む低い音。どれも毎年変わらないホグワーツ特急の風景なのに、何かが確実に変わり始めている気配があった。
だが、その不安を振り払うように4人はハリーの後ろに続き、赤い車体の中へと消えていった。列車の扉はゆっくり閉じ、ホグワーツへ向かう長い道のりがまた始まるのだった。
個室に入った4人は、動き始めたホグワーツ特急がゆっくり速度を上げていく揺れの中で、車窓に流れる街並みをぼんやり眺めていた。夏の匂いが消えきらない外気が窓の隙間から流れ込み、鉄の軋む低い音が床板を震わせる。その一定のリズムが、誰も口を開かない沈黙を余計に強調していた。
「……」
ふと視線を伏せたハリーの様子に、向かいのハーマイオニーが気づいた。彼は手を膝の上に置いたまま、額にそっと触れていた。
「ハリー?傷が痛むの?」
「いや、痛いわけじゃないんだけど……なんか変な感じがしてさ。最近、同じ夢を見るんだ」
「夢?どんな夢?」
ハーマイオニーは眉を寄せて身を乗り出し、ハリーの瞳をまっすぐ覗き込んだ。列車の影が彼らの顔を交互に暗くしたり照らしたりして、まるで言葉の内容まで不吉なものにしているように思えた。
「知らない墓地があって、その奥には大きくて不気味な屋敷があるんだ。僕は……いや、“僕の視界”はその屋敷に入っていくんだ」
「なんか怖いな、それ……」
ロンがビクッと肩を震わせた。筋肉のついた腕がわずかに揺れ、鍛えてもなお消えない臆病さが顔を出していた。
「で?続きは?」
ネビルが腕を組んで言った。視線は車窓へ向いたままだが、意識は完全にハリーに向いている。夏の鍛錬でさらに厚くなった胸板が呼吸に合わせて上下していた。
「“僕”は屋敷に入って階段を登るんだ。上から話し声が聞こえて……そのとき思うんだ。この屋敷には人が住んでないはずなのに、って」
「結構ホラー系の夢?まだ続く?」
「ロン黙って」
ハーマイオニーが小声でたしなめ、ロンは口を閉じたが、恐怖を隠すように喉を鳴らした。
「階段を登っていくと部屋が見えた。そこには大きな椅子があるんだけど……誰が座ってるのか見えないんだ。影になってて。で、その椅子の前に人が跪いてて、何かを聞いてるんだ」
車輪がレールの継ぎ目を叩く音だけが小さな個室に響き、4人の間に冷たい沈黙が落ちた。
「跪いてるやつは……誰だった?」
ネビルが低い声で問う。以前の彼なら絶対出せなかった芯のある声だった。
「分からない。でも……その跪いてる人が、すごく怯えてるのが分かるんだよ。僕はその感情まで“感じてる”みたいで……」
ハリーは言いながら自分の腕を擦った。肌の表面が粟立ち、冷たい汗が背中を伝う。
「そしたら“椅子のやつ”が言うんだ。『計画は進んでいるか』って。声は聞こえないのに、意味だけが頭に響くみたいに分かるんだ」
「計画……?」
ハーマイオニーの表情が固くなる。ハリーの夢が単なる悪夢ではないと本能が告げているようだった。
「そして……次の瞬間、“僕”は蛇になる。地面を這って、床の冷たさが腹に伝わって……その感覚が妙にリアルなんだ。僕はそのまま部屋の隅に滑っていって、椅子のそばに……」
「あのさハリー……」
ロンが震える声で口を開いた。
「それ、本当に夢なんだよな?」
ハリーは息を飲んだ。答えようとしたとき、列車がカーブに入った揺れで車体が大きく傾き、窓ガラスがきしりと震えた。
「……分かんない。でも、あの時の闇の印、そしてピーターが逃げたこと……全部、どっかで繋がってる気がするんだ」
その言葉に、ネビルの拳がゆっくり握られた。骨が鳴るほど強く。
「なら、なおさら鍛え続けなきゃいけねぇな。何が来ても守れるように」
4人は互いを見た。列車の揺れは変わらないのに、空気だけが急に重くなる。だがその中で、彼らの眼差しには決意の色が宿りつつあった。
ホグワーツ特急は、遠い山並みへ向かって鉄の音を響かせながら走り続けた。
その道の先で何が待ち受けているのか、誰もまだ知らなかった。
コカトリスって実際どんだけ強いのだろうか?バジリスクの下位互換?デカいニワトリですよね。
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