ホグワーツ魔法魔術学校特別体育教師“伏黒甚爾” 作:物体Zさん
1995年9月1日。ホグワーツが始まる日だ。
朝のロンドンは相変わらず灰色で、空気は湿り気を含み、吐く息が微妙に重い。キングスクロス駅の構内は人で溢れ返り、汽笛や足音、アナウンスの反響が混ざり合って耳にまとわりつく。その雑音の中に身を置きながら、俺は夏の終わりを実感していた。
俺たち4人の賭博旅行みたいな夏休みは、きっちり終わった。結果は分かりやすい。俺はほとんど一文無し、ダンブルドアとシリウスは元から金に困らない身分、コーネリウスは競艇と寿司で味を占めたまま、ホクホク顔で魔法省へ帰っていった。公平でも何でもねぇが、世の中なんてそんなもんだ。金の流れは、いつだって俺に優しくない。
そして今、俺はシリウスと並んでキングスクロス駅に立っている。俺はホグワーツへ向かうため、シリウスはハリーたちを見送りに来た。黒いコートを羽織ったシリウスは、人混みの中でも妙に目立つ。背筋は真っ直ぐで、視線は常に周囲を警戒するように動いている。昔アズカバンにいたとは思えねぇ、貴族然とした立ち姿だ。
「甚爾、ハリーを頼むぞ」
9と4分の3番線の入り口、例の柱の前でシリウスが低く言った。声は静かだが、そこに冗談は一切混じっていない。
「護衛だろ。金をもらってるからな。ちゃんとやる」
俺は肩をすくめるように返した。ダンブルドアからも、ハリーが1年生の頃から護衛を頼まれている。それに加えて、シリウスから個別に依頼を受けた形だ。依頼主が増えただけで、やることは同じ。生き残らせる。それだけだ。
殺し屋だった俺が、今じゃ教師をやって、その上で護衛まで引き受けている。自分でもたまに笑えてくる。だが、信条は変わらない。金のためなら何でもやる。誇りだの自尊心だのは、腹を満たしてくれねぇ。
「月1000ガリオンでいいんだな?」
「安いものさ」
即答だった。シリウスにとっては端金なんだろう。
「金持ち貴族様は羨ましいぜ」
「甚爾も同じようなもんだろ?」
「ハッ、どうだか」
短いやり取りの最中、背後から甲高い声が響いた。
「あ!先生ー!」
振り返ると、ガキ共が一団になって走ってくる。ハリー、ロン、ハーマイオニー、ネビル、フレッド、ジョージ、そしてジニー。荷物を抱え、顔は期待と不安が混ざった新学期のそれだ。エネルギーが有り余ってるのが一目で分かる。
「元気なのがきたな」
シリウスが目を細めて言った。その表情は、どこか父親めいている。
「うるせぇくらいだ」
俺は本音を漏らしながら、走り寄ってくるガキ共を眺めた。だが、その中でハリーの位置と周囲の人間関係だけは、無意識に確認している。癖みたいなもんだ。
「ハハ、間違いない」
シリウスが薄く笑う。その笑いの裏にある緊張を、俺は見逃さない。こいつも分かってる。これから始まる1年が、平穏で済むはずがないってことを。
汽笛がもう一度鳴り、人の流れが9と4分の3番線へと傾き始めた。俺は自然と一歩前に出る。護衛の仕事は、もう始まっている。
「ほら、早く行けガキ共」
俺が低く声をかけると、いつもの4人にフレッド、ジョージ、そしてジニーが一斉に頷いた。
「はい!」
元気だけは一人前の返事を残し、ガキ共は順番もほとんど守らず、9と4分の3番線の柱へ突っ込んでいく。荷物の車輪が床を叩く音、コートが翻る気配、そして次の瞬間には、現実の壁の向こう側へと消えていった。
何度見ても、魔術というのは不思議なもんだ。俺みたいに呪力を持たない人間でも、そこに“在る”と理解していれば認識できる。見えないから存在しない、という理屈は通用しない。気づいた瞬間に、世界の方が顔を出す。つまり理屈の上では、マグルだって条件さえ揃えば魔術を認識できるってわけだ。
魔法使いがマグルから魔法界を隠す仕組みは、呪術で言えば帳に近い。一種の結界術で、視界や認識を曖昧にし、そこに“意味が無い”と思わせる構造になっている。だが、俺からすれば結界も帳も、極論すれば領域ですら関係ない。物理的な遮断でなければ、身体を通すこと自体に障害は無い。昔からそうだった。邪魔になるかならないか、それだけだ。
「行こうか、甚爾」
シリウスがそう言って、柱の前に立った。さっきまでガキ共を見送っていた目から、ほんの少しだけ父親の顔が消える。
「あぁ」
短く返し、俺はその背中を見送った。シリウスの身体が壁に溶けるように消えるのを確認してから、俺も歩き出す。躊躇は無い。9と4分の3番線に足を踏み入れる。
視界が切り替わった瞬間、空気の質が変わる。鉄と蒸気の匂い、古い木材の湿り気、そして人の熱気。目の前には赤いホグワーツ特急が堂々と停車していた。車体は相変わらず年季が入っているが、これに乗ると嫌でも新学期を実感させられる。
ホームには、これから学校へ向かうガキとその親、在校生、教員が入り混じっている。別れを惜しむ声、注意を促す声、笑い声。感情が渦巻いていて、自然と気配も雑多になる。俺は無意識のうちに視線を走らせ、魔力の歪みや違和感を探る。今のところ、妙なものは感じない。
「じゃあ、俺はあっちに乗る。シリウスはハリーを見送るんだろ?」
「あぁ、では後で」
短いやり取りを交わし、俺はシリウスと別れた。仕事の話は必要最低限でいい。護衛はもう始まっている。
空いている車両を選び、個室に入る。誰もいない席に腰を下ろし、背もたれに身体を預けた。窓の外では、まだホームを行き交う人影が見える。ガキ共の声が通路越しに響き、笑い声と荷物の音が混じる。今のところ、平和そのものだ。
だが、油断はしない。ホグワーツに向かうこの列車は、過去に何度も厄介事を呼び込んできた。俺の中では、すでに“移動中も戦場”という認識が出来上がっている。
しばらくして、汽笛が鳴った。低く長い音が腹に響き、列車がゆっくりと動き出す。窓の外の景色が流れ始め、キングスクロス駅が遠ざかっていく。
俺は深く息を吐いた。新しい学年、新しい厄介事。静かな時間は、そう長くは続かないだろうが、それでも今は、この揺れに身を任せておく。
なんて考えていたら、個室の前に微かな気配を感じた。足音は軽く、呼吸も浅い。敵意はないが、躊躇と緊張が混じっている。生徒か……と判断した瞬間、閉じていた目をゆっくり開けた。
視界に入ったのは、去年の対抗試合の合間に行われた舞踏会で、ハリーのパートナーを務めたエロイーズ・ミジョンだった。淡い色のローブに身を包み、両手でカバンの紐を握りしめている。あの時より少し背が伸びた気もするが、表情には相変わらず繊細な神経質さが滲んでいる。
ガラガラ、と控えめな音を立てて個室のスライド扉が開いた。廊下の喧騒が一瞬だけ流れ込み、すぐに遮断される。
「フシグロ先生、少しよろしいですか?」
声は震えていないが、目が泳いでいる。勇気を振り絞って来たって顔だ。
「あぁ……別に構いやしねぇが、何だ?」
俺は座ったまま答えた。立ち上がる必要はない。ここは俺の個室で、相手は生徒だ。
エロイーズは一歩だけ中に入り、扉を半分閉めたまま言葉を探すように口を開閉させた。沈黙が数秒流れ、その間に列車の振動が床から伝わってくる。
「名前を呼んではいけない例のあの人……先生は、見たのですか?」
やっぱりそこか。噂は生徒の間にも十分に回っているらしい。不安と恐怖が、好奇心と一緒に膨らんでいるのが分かる。俺は窓の外に視線を投げ、流れていく景色を一瞬だけ見てから答えた。
「ん?あぁ、見たぞ」
事実だ。あの夜、あの場で、確かに見た。至近距離で、嫌というほどだ。なんなら殺した。でもすぐに生き返ったけどな、なんて言葉は喉の奥に押し込む。ガキに聞かせる話じゃねぇ。
エロイーズはごくりと喉を鳴らし、ローブの袖を握りしめた。
「……怖かった、ですか?」
「そりゃまぁな」
即答だった。嘘はつかない。俺だって無敵じゃないし、面倒な相手は嫌いだ。
「でもな、怖いからって動けなくなるほどじゃねぇ。あいつは怪物だが、同時に人間でもある。間違いなく殺せるし、間違いなくまた厄介事を起こす」
俺の言葉に、エロイーズの眉がわずかに寄る。安心したいのか、余計に不安になったのか、その両方だろう。
「じゃあ……また、戦いになるんですか?」
「なるだろうな」
列車がカーブを曲がり、車体がわずかに傾く。金属が軋む音が遠くで鳴った。
「だが、お前らガキが前に出る話じゃねぇ。教師と大人がやる仕事だ。お前は授業に出て、飯食って、寝てりゃいい」
それを聞いて、エロイーズはほんの少しだけ肩の力を抜いた。完全に納得したわけじゃないが、俺の言葉を信じるしかないと理解した顔だ。
「……分かりました。変なことを聞いてすみません」
「気にすんな」
エロイーズは小さく頭を下げ、静かに扉を閉めた。廊下の気配が遠ざかり、個室には再び列車の揺れだけが残る。
俺は背もたれに身体を預け、天井を見上げた。ガキ共は不安になり、大人は忙しくなり、厄介な化け物はまた動き出す。いつもの流れだ。
それでも、この列車は止まらない。ホグワーツへ向かって、確実に進んでいる。
暫くしてホグズミードに到着した。甲高い汽笛が空気を震わせ、列車全体がわずかに揺れながら減速する。長旅の終わりを告げるその音を合図に、生徒たちのざわめきが一斉に膨らんだ。窓の外には湿った土の匂いを含んだ冷たい空気と、夕暮れ前の灰色の空が広がっている。
「さて、行くか」
俺は座席から立ち上がり、肩を軽く回してから個室を出た。通路には既に列車を降りようとする生徒たちが溢れていて、笑い声や荷物がぶつかる音が混じり合う。俺は流れに逆らわず、空いている出口を見つけてそのまま外へ出た。
在校生は馬車で城へ向かう。死を間近で見た者にしか姿を認識できないセストラルという馬型の魔法生物が、その馬車を引いている。人の死を直視した経験を持つ生徒はそう多くない。大半は、ただ魔法で勝手に動く馬車だとしか思っていないだろう。俺には、痩せた体に大きな翼を畳んだその姿がはっきりと見えている。
新入生は例年通りハグリッドが案内し、夜の湖をボートで渡る。暗い水面と城の灯りを初めて目にするあの瞬間は、何度見ても悪くない。だが、教員はまた別だ。森の縁を通る細い道を歩き、遠回りして城へ入る。それが昔からの決まりらしい。
駅を出ようとしたところで、背後から声をかけられた。
「フシグロ先生」
「ん?」
振り向くと、ドラコ・マルフォイが立っていた。相変わらず背筋を伸ばし、妙に大人びた顔をしている。その後ろには、いつもの取り巻きであるクラッブとゴイルが無言で控えていた。
「おう、純血。元気か?」
「はい先生、僕は……元気です」
言葉とは裏腹に、声には微かな揺れがある。何か言いたいことがある顔だ。
「あの……父上なんですが」
「ルシウスか」
ルシウス・マルフォイ。あの墓場でヴォルデモートが復活した夜、俺が撃った後に逃がした男だ。あれからどうしているのかは知らない。生きているだけでも幸運なはずだが。
「フシグロ先生、父上を助けてくれませんか?」
「助ける?何からだ」
「闇の帝王、ヴォルデモートからです」
迷いはあったが、ドラコの目は真剣だった。俺は一瞬だけ考え、顎で馬車を示した。
「へぇ……詳しく聞こうか」
俺たちは同じ馬車に乗り込んだ。セストラルが静かに歩き出し、車輪が砂利を踏む音が一定のリズムで続く。城へ向かう道すがら、ドラコは視線を伏せたまま口を開いた。
「父上が元死喰い人だということは知っているはずです。対抗試合の最後の課題の日……ポッターと先生が戻ってきたあの日から、様子がおかしくて」
「で?」
「問い詰めたんです。そうしたら、父上は……怯えていました。闇の帝王を見捨てて逃げたことを理由に、殺されるんじゃないかと」
「……そうか」
俺は馬車の揺れに身を任せながら、あの夜を思い出す。銃声、倒れる肉体、そして逃げろと吐き捨てた自分の声。生き延びたのなら、今も恐怖に縛られているのも無理はない。
ドラコは拳を握りしめ、歯を食いしばっていた。まだ子供だが、背負っているものは重い。助けるかどうかは別として、話を聞く価値はある。
馬車はゆっくりと坂を上り、ホグワーツの城が視界に大きく広がっていく。夜はもう深くなる。厄介事も、きっと一緒にやってくる。
「助けてほしいってのはわかった。何で俺に頼む?ダンブルドアでも、それこそ親父さんのお得意の交渉術で誰かにお願いすればいい」
馬車の揺れに合わせてそう言うと、ドラコは一瞬だけ視線を上げ、すぐにまた膝の上に落とした。指先が僅かに震えている。ルシウス・マルフォイという男は小物だが、決して無力ではない。ホグワーツ理事の椅子に座り、魔法省でもそれなりの発言力を持つ。少し前にコーネリウスからも聞いた話だ。大臣に顔が利く男が、自分の力だけで身を守れないとは考えにくい。最悪、どこか遠くへ逃げればいい。それが出来る財力も人脈もあるはずだ。
「……それが、出来ないからです」
ドラコはそう言って、喉の奥で息を詰まらせた。まだ変声期の途中の声が、妙に大人びた響きを帯びている。
「父上は……逃げること自体を、もう考えていません。いえ、考えられないんです。闇の帝王に刻まれた恐怖が、頭から離れない。家にいる間も、夜中に何度も目を覚まして、屋敷の結界を確認して……それでも安心できずに、ただ座っている」
馬車の外では、セストラルの蹄が湿った地面を踏みしめる音が規則正しく続いている。森の匂いが強くなり、空気がひんやりと冷えてきた。ドラコの言葉は、その静けさの中で妙に生々しく響いた。
「ダンブルドア先生にも相談しました。でも……父上は、あの方を信用していません。いや、信用できないんです。闇の帝王と真正面から敵対している人物に、助けを求める勇気がない」
「情けねぇ話だな」
俺はそう返しながらも、内心では理解していた。恐怖ってのは理屈じゃない。命を一度でも掴まれた人間は、その感触を一生忘れられない。特にヴォルデモートのような存在なら尚更だ。
「じゃあ何で俺だ」
ドラコは少しだけ考え、意を決したように口を開いた。
「父上は、先生を……恐れていると同時に、信じています」
「は?」
「墓地で闇の帝王を撃った人間は、先生だけだと父上は言っていました。あの場で、ためらいなく引き金を引けた人間なら、約束も裏切らない、と」
思わず鼻で笑いそうになったが、やめた。あの夜、俺がやったことは、信頼だの正義だのとは無縁だ。ただの判断だ。殺すか、殺されるか。それだけの話だった。
「それに……」
ドラコは小さく息を吸い込み、続けた。
「先生は魔法使いじゃない。闇の帝王の理屈が通じない存在だと、父上は考えています」
なるほどな。魔法の世界の連中は、どうしても魔法の枠内で物事を考える。だからこそ、そこから外れた存在を恐れるし、同時に頼りたくもなる。
「……高くつくぞ」
俺は窓の外に視線を向けたまま言った。
「構いません。父上は、命が助かるなら、いくらでも払う覚悟です」
迷いのない答えだった。ドラコ自身も、その覚悟を共有している顔をしている。馬車は城の門に近づき、ホグワーツの巨大な影が俺たちを覆い始める。
面倒な話だ。だが、金になる上に、どうせヴォルデモートとはまた相対することになる。逃げ場は最初からない。
「話は聞いた。親父さんに会わせろ。それからだ」
ドラコの表情が、ほんの少しだけ明るくなった。それを見て、俺は心の中で溜息をついた。厄介事は、いつもこうやって静かに近づいてくる。
「あぁ、それとこの件はダンブルドアにも報告しておくぞ。分かってると思うが、俺は今仕事中だからな。完全にダブルブッキングだ」
馬車の揺れが一瞬だけ大きくなり、セストラルの吐く息が白く霧散した。俺の言葉に、ドラコは小さく頷いた。その仕草が、妙に大人びて見える。まだ十五のガキだが、背負っているものの重さはその年齢に見合っていない。
「分かっています。そういった裏の事情は……色々、目にしてきましたから」
声は落ち着いているが、完全に平坦じゃない。覚悟と諦めが混じった音だ。そりゃそうだ。ルシウス・マルフォイの息子として生きてきたなら、嫌でも目に入る。父親がどんな顔で誰と握手をし、どんな顔で誰を切り捨ててきたか。表と裏を使い分ける世界を、こいつは幼い頃から見ている。
「……親父さんのやってきたことも、だいたい知ってるって顔だな」
俺がそう言うと、ドラコは否定も肯定もせず、視線を逸らした。その沈黙が答えだ。死喰い人としてのルシウス、裏での取引、名前を呼ばれてはいけない例の存在との距離感。知らないわけがない。
俺は視線を横に移し、後部座席に座る二人を見た。
「お前らの父親もそうだろ。クラッブ、ゴイル」
急に話を振られ、二人は一瞬だけ身体を強張らせた。
「……はい」
「そうです……」
短い返事。言葉少なだが、こいつらも分かっている。あの墓場に父親たちがいたことを。ルシウスと同じように、恐怖に背を向けて逃げたことを。誇れる話じゃないが、死ななかったという一点だけが現実だ。
馬車は森を抜け、城へと続く石畳に入った。遠くでフクロウの羽音が聞こえ、ホグワーツの塔が夕闇に沈んでいく。生徒たちの話し声が少しずつ増え、日常が戻ってくる気配がする。
「いいか」
俺は少しだけ声を低くした。
「この件でお前らがやることは一つもねぇ。余計なことも考えるな。金の用意だけしとけ。それだけでいい」
ドラコが驚いたように顔を上げる。
「それだけ……ですか?」
「あぁ。それ以上首突っ込んだら、命がいくつあっても足りねぇ。俺が動く。お前らは、いつも通り生徒として過ごせ。授業受けて、宿題やって、クィディッチで騒げ。分かったな」
強めに言うと、三人は揃って頷いた。安心と不安が入り混じった表情だが、それでいい。ガキはガキらしくしてりゃいい。
城の門が近づき、馬車が速度を落とす。石造りの壁が迫り、松明の火が揺れる。俺は背凭れに身体を預けながら、頭の中で段取りを組み始めていた。ダンブルドアへの報告、ルシウスとの面会、金額の交渉、そして最悪の場合の始末。
仕事は増えた。面倒も増えた。だが、金になる上に、どうせ避けられない相手だ。
馬車が止まり、扉が開く。生徒たちが降りていく中で、俺は最後に立ち上がった。
さて、教師の顔に戻るか。厄介事は、いつもこうやって日常の中に紛れ込んでくる。
不死鳥の騎士団編が割とかなりちょっと展開が思いつかないので、少しだけ考える時間を下さい。90話連続投稿で脳が焼き切れてる感じです。ほんの少し浴をしまして、それから投稿再開します。少々お待ちくださいませ。