貼り付けた対象に描かれた変化をもたらす
バフ・デバフアイテム
基本的に効果は弱く、使い捨て。周で強化しても、念能力者には弱っていなければ効かない程度
ゴンとキルアは対戦の頻度を減らし、念の修行に没頭していた。
原作と異なるのは、習得が十日ほど早まったこと。
だが、彼らの才覚をもってすれば──その十日は、充分すぎる差だった。
煙に巻かれたはずの二人が、すでに“纏”を会得して戻ってきた時、ウイングは内心で驚愕した。
だが、カヤの名を聞くと、複雑な表情を浮かべながらも最終的には指導を引き受けた。
“纏”の維持を続け、“練”を習得。
“凝”を用いて“隠”を見破る。
200階へ到達する頃には、四大行のうち“発”を残すのみという段階に至っていた。
ヒソカは、二人がすでに念を扱えると知ると、警告の一言もなく、
ただ妖しい笑みを浮かべるだけだった。
『さぁ! 今日は大注目の一戦です。
まずは破竹の勢いで勝ち上がって参りましたゴン選手が早くも登場です!
対しますギド選手はここまで5戦して4勝1敗とまずまずの戦績を残しています』
実況の声がアリーナに響き、観客がざわめく。
200階以降──そこは名誉を懸けた舞台。
報酬もなく、念能力者であることが前提となる実力者の世界だ。
そんな中で、ゴンは初戦から見事に優位に立っていた。
飛来する独楽の軌道を見切り、避けきれない攻撃は“練”で弾く。
追い詰められたギドは、自らを独楽と化す“竜巻独楽”で接近を防ぐが──
観客席の一角。
カヤはその様子を見つめ、静かに息をついた。
──随分、変わりましたね。
原作では確か、一戦目は敗北だったはず。
この展開なら、順当に勝つでしょう。
思考を巡らせていると、不意に声がかかった。
「見つけましたよ。……密猟者」
「随分な呼び名ですね。女性への接し方は、師匠から学ばれなかったんですか?」
声の主はウイングだった。
カヤの隣に腰を下ろし、探るような視線を向けてくる。
「あなたが、ゴン君たちを念に目覚めさせたんですね」
「押し付けたのは悪かったと思っています。
でも──心源流で学ぶのが、最も効率が良いでしょう?」
ウイングの瞳に、微かな怒気が宿る。
だが、カヤはその視線を受け流すように、穏やかな声で応じた。
「あの年頃の子供が力を得れば、容易に道を踏み外すかもしれない。
……それを分かっていて、手を貸したのですか?」
「それは本人の選択です。
導くのも、止めるのも、やりたい人間がやればいい。──私はそう思います」
一瞬、ウイングの言葉が途切れた。
“師”としての責任を問うつもりだったが、返されたのは“自由”の思想。
正論ではない。けれど、否定もできない。
その間にも試合は進み、ゴンが舞台の石畳を剥がして投げつける。
カヤはその光景を横目に、淡々と告げた。
「あなたの方針を否定するつもりはありません。
あなたはあなたのやり方で導けばいい。
彼らは、彼ら自身の意志で進むでしょう。
私は──ただ、その“可能性”が見たかっただけです」
「……無責任なことを言う」ウイングが低く呟く。
ちょうどその時、試合が決した。
ギドが倒れ、ゴンの勝利が告げられる。
カヤは小さく笑い、言葉を落とす。
「暴力、権力、知力──力の形は様々です。
けれど、"意"を通すのはいつだって強者。……あなたは、私より強いのですか?」
ウイングは黙り込んだ。
オーラの流れだけを見れば互角以上。しかし、彼女の本領は道具を用いることにある。強化系で搦手のない自分が勝てる保障はない。
思想を否定するために、他者の力を借りることなど──論外だ。
「強制はしません。ですが、どうか指導は続けてあげてくださいね。……では」
そう言い残し、カヤは席を立つ。
その背を見送ることなく、ウイングは静かに目を閉じた。
考えを整理するように、深く息を吐きながら。
サダソは、半生を過ごした天空闘技場をあとにしていた。
200階まで登り詰め、片腕を失いながらも念を会得し──もう少しでフロアマスター。
名声を得れば、一生の安泰が約束される。
その甘い見通しに、彼は酔っていたのだ。
だが、キルアの"警告"によって、思い知らされた。
自分はまだ、捕食される側──獲物なのだと。
「……マフィアにでも雇ってもらうかね。能力があれば、また登り詰められるさ」
敗北の痛みよりも、生存本能が彼を動かしていた。
だが──世界は、弱者の立ち直りを待ってはくれない。
路地の影から、手が伸びた。
掴まれた右腕が、瞬時に軋む。
理解するより早く、彼は壁際まで叩きつけられていた。
「ぐ……はっ!?」
(な、なんだ!? 投げ飛ばされたのか!?)
思考が追いつかぬまま、革靴の音が近づいてくる。
「自ら舞台を降りてくれるなんて、親切ですね」
声が響いた。
夕日がビルに遮られ、わずかに差す光が赤い髪を照らす。
念で強化された視界が、その姿を血のように鮮烈に捉えた。
サダソは【見えざる左手】で応戦する。
手応え──確かに掴んだ、はずだった。
……だが、歩みは止まらない。
「確実に念能力者である200階クラスの闘士。
できればカストロが良かったのですが……あなたはあなたで、別の使い道があります」
その瞬間、悟る。
そもそも自分の"左手"は、彼女に触れてすらいなかった。
彼女の纏う壁に阻まれ、何の影響も与えられていない。
「や、やめ──」
「冥土の土産に、一つ教えてあげましょう。偉大な先人の言葉です──」
カヤは胸ぐらを掴み、サダソを軽々と持ち上げた。
指先に抓まれた符が淡く光る。
「弱い者は、死に方すら選べない。
あそこで"己を高める"のではなく、"獲物を探していた"時点で──結果は決まっていたのです」
サダソの意識が遠のく。
最後に聞こえたのは、その静かな声だけだった。
感想いただけるととても嬉しいです。
200階到達が1月遅れた代わりに、怪我がないので全体の進みは1月早くなりました。
アイギスのいいところは、実際の鎧と違って防げていれば主に影響も残さないこと。
文章量を多くしたい気持ちはあるのですが、自分の語彙力の低さを痛感しています。