理を刻む者   作:茅薙

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遅くなりましたが、ヨークシン編導入です。今後も週2話程度は投稿できるよう頑張ります。

カヤの水見式
水が上に降る

ティアナの水見式
葉が沈み、水は色を変えながら溢れ出る


12話 槍と詩

 机の上にリボルバーが置かれ、その銃身に光の線が走る。

 焼き付けるように文字が刻まれていくたび、金属がかすかに鳴いた。

 

 (ウールズ)──原始的なエネルギーを象徴するルーン。ここでは、それを“オーラ”と定義する。

 (ハガラズ)──破壊の力を司る。弾丸を攻撃的な形質へと変える。

 (ゲボ)──贈与と伝達の印。力を遠くへ届ける意味を与える。

 (ソウェイル)──勝利と成功、太陽の象徴。この文字で全体の性能を底上げする。

 

 こうして完成した作品は、鉛ではなく使用者のオーラを弾丸とする──念弾式の銃。

 だが、このままではただの銃に過ぎない。オーラを無駄に消費するだけの、半端な玩具だ。

 

 カヤは手を止めず、追加の符を刻んでいく。

 

 (ウールズ)(スリサズ)(ダガズ)

 エネルギーを高め、障害物を貫く。念弾に貫通効果を付与する構成。

 

 (ライゾ)(ラグズ)(ゲボ)

 結びつきを生み、流れを作る。標的を追尾する力を付与する。

 

 (ケナズ)(ソウェイル)(ハガラズ)

 火を介し、破壊の衝動を具現する。着弾点に爆発を起こすルーンの連結。

 

 (ソウェイル)(エイワズ)(アルジズ)

 電気エネルギーを生み、標的へ導く。着弾と同時に放電効果を発生させる。

 

 そして、シリンダーには(ゲボ)を。

 それぞれのパーツが生み出した効果を、念弾に転写する中継機構。

 

 この工程にも、緻密な"想像"が求められる。

 能力の間接付与は、もはや応用というより芸術だ。

 紙に直接絵を描くのではなく、版画の"版"を彫るように──能力を付与する"ための能力"を刻む。

 この技術を確立したことで、作品の幅は格段に広がった。

 

 本来、弾丸が収まるチャンバー(薬室)にこれらのパーツを収める。

 銃身の念弾発射に加え、フレームに強度上昇とグリップにオーラ貯蓄の効果を刻んだ。

 シリンダーにはまだ空きがあるが、ひとまず必要十分だ。

 

 ──念弾に多様な効果を付与し、時に複合する回転式拳銃。

 複数の弾丸()を内に宿すそれに、『ブリューナク』と名付けた。

 ケルトの太陽神ルーの槍。複数のそれに付けられた後世での総称だが、この銃にはこれが相応しい。

 

 完成したそれは、冷徹な機能美と神秘的な造形を併せ持ち、照明の光を鈍く反射した。

 

「……よし」

 

 角度を変えて観察し、カヤは満足げに頷く。

 

 現代社会において、銃は力の象徴として最も優れた道具だ。

 念能力者の拳が銃弾よりも遥かに致命的であっても、凡人にはそれが理解できない。

 だからこそ、脅すなら銃を突きつけたほうが早い。

 ──そして、手放すことで"偽りの安心"を与えることもできる。

 

 気軽な遠距離攻撃手段はあって困るものでもない。

 多くの距離では走って殴るほうが早い上、そうではない距離ではオーラの減衰でまともな威力にならないが。

 変装した上でこれを具現化すると偽れば、戦闘スタイルの"偽装"にも使えるだろう。

 

 カヤは独りごちるように言い訳を思い浮かべ、わずかに口元を緩めた。

 マフィアに売っている強化拳銃で済ませてもいいのだが、自分用となるとこだわりたくなってしまった。

 あるいは、前世()だった頃の名残が、こうした浪漫を求めさせているのかもしれない。

 

「さて……今年はどうしましょうか」

 

 視線を奥の予定表へ向ける。

 ヨークシンで毎年開催される、世界最大のオークション──合法非合法を問わず、あらゆる品が集う十日間。

 

 カヤはここ数年、必ず参加していた。

 商売は軌道に乗り、資金にも余裕ができた。

 何より、珍しい素材を手に入れやすい。研究し、再現すべき特性を持つ品が出品されることも多い。

 

 だが、希少品を競り落とすには心許ない資金だと言わざるを得ない。この世界の富豪はそれだけの金を持っている。

 

「……旅団の襲撃、でしたね」

 

 原作でのヨークシン編。

 細部は朧げでも、血の匂いと混沌だけは記憶している。

 その中で、どう立ち回るべきか。

 

「ひとまず、参加はしましょうか」

 

 旅団に関わるか否か──その判断は、もう少し先でもいい。

 

「そうだ。占ってもらいましょうか」

 

 ネオン・ノストラード。

 四行詩の形式で未来を示す、特質系の能力者。

 予知としては最高峰。だが、その詩をどう解釈し、どう行動するかで結果は変わる。

 

 以前、彼女の能力を模倣しようとしていくつか"微妙な作品"を生み出したこともあった。

 ならば、今回は本物に頼るのも悪くない。

 

「ノストラードに占いの依頼。それと……ティアナも誘いますかね。あの子、今は何をしているんだったかな」

 

 カヤは卓上の手帳をめくりながら、弟子の顔を思い浮かべる。

 ハンター試験を終えてから、何かと忙しそうにしていた彼女を──また、少し巻き込んでみるのも悪くない。




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未来予知の再現レポート
人がもとから持つ予測能力を強化することで、未来予知の領域に押し上げる。
本人が知らないことは一切考慮されていない未来しか見えず、使用後の消耗も大きい。

運命と言うべき流れから情報を入手する。
情報の選別ができず、情報の濁流を眺めることしかできない。情報処理に優れた念能力者なら使える可能性がある。

結論
特質系の専用の発でなければ実用域にするのは困難。
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