理を刻む者   作:茅薙

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遅くなってすいません。
アニメを見返したり、有志がまとめてくれた時系列表を見たりしてストーリーを考えてたら遅くなってしまいました。
最低でも1週間に1回は更新したいですが、少なくともこの章はこんな感じの更新頻度かもしれません。
こんな体たらくですがお楽しみいただければ幸いです。

主人公の作品を「礼装」の名称に固定。念礼装を略して礼装
いちいち作品というよりは固有名詞をつけた方が読みやすそうなので変更します。順次過去話も編集すると思います。


14話 講話と抗争

 現在メジャーな念の解釈である四大行と六系統――

 それはハンター協会が成立したことで初めて“標準”として広まり始めた。

 

 それ以前、念は流派や宗教の秘奥として、限られた者へ細々と継承されていた。

 その解釈は、今とほぼ変わらないものもあれば、宗教的価値観に偏った奇抜なものまで実に多様だった。

 

 “練”を危険な外法と恐れた流派。

 “発”は天から選ばれた者にのみ自然発現すると説く宗派。

 逆に、今では邪道とされる「オーラの注入による強制覚醒」を正道と見なす教義まである。

 

 どれか一つが主流とならなかったのには理由がある。

 オーラの自由度の高さと、時代的な情報の扱いの差だ。

 

 オーラには決まった“型”など存在しない。

 どんな解釈で扱おうと、それなりの結果が出てしまう。

 そのせいで、強固な教義の中では“最適解”を探究する必要もなかった。

 

 時代的に「情報とは秘してこそ価値があるもの」という価値観が主流派だったのも大きい。

 オープンソースはおろか、著作権すら未成熟な時代において、情報は道具ではなく資産(権力)だったのだ。

 

 ゆえに、時代も土地も異なれば念の姿はまるで別物のように変質した。

 

 今、カヤが読んでいるのは、その中でも比較的現代の体系に近い、とある流派の資料。

 国家権力と深く繋がり、一時代を築いた宗派でもある。

 

 この流派は念を「氣」と呼び、神秘的生理学に基づいた思想で運用していたらしい。

 経絡、経穴といった言葉が当たり前のように登場する。

 

 とりわけ興味を惹かれたのは、轆轤(チャクラ)と名付けられた“系統”の概念だ。

 

 人間には複数のオーラ放出口(チャクラ)があり、どこを使うかで得られる力が変わる。

 その理解は現代の六系統とほぼ一致しており、適性の存在にも既に気づいていたようだ。

 

 しかし、本題は第七の轆轤(チャクラ)である。

 

 他の六つとは完全に別物として記述されているチャクラ。

 身体次元を超越しており、たどり着いたのは流派の開祖ただ一人。

 “天地と合一し、比類なき力を得る”とあり、開祖は単独で軍を退けたと言い伝えられている。

 

 資料には具体的な方法や詳細な記述はない。

 これは、原文が“国家と結びついて以降に”書かれたもので、開祖の死後、国と結びついた時には既に秘奥を継ぐ者が失われていたためだ。

 国の衰退と共に流派も消え、今では継承者が存在するかも怪しい。

 

 とはいえ、カヤには推測できる点がいくつかある。

 

 この流派では“大地そのものにも経絡が存在する”とされていた。

 つまり第七チャクラとは──

 人体を超え、大地の“氣の流れ”へ直接接続するための回路。

 

 もしそれが真実なら、『天地との合一』も『軍勢を単独で退けた』伝承も大げさではない。

 大地そのものからオーラを汲み上げられるなら、桁外れの出力になる。

 

「それ、まだ続くの?大人しくお茶を楽しまない?」

 

 レストランでの講義を中断させたのはティアナだった。

 

「理由を聞いたのはあなたですよ?」

 

 日付は9月1日。

 オークション初日、マーケットを巡って“掘り出し物”を探している最中だった。

 とはいえ、このマーケットはオークション目当てにヨークシンへ訪れる観光客向けの色が強い。カヤの作品を見て目が肥えていたティアナにはわざわざ回る価値を見出だせず、質問したのだ。

 

「なぜ?」と。

 

 普段まともに指導していないからか、単純に過去の幸運を共有したかったのか、カヤは見つけた古資料の話を延々と語り始め――

 ティアナは、運悪くそのスイッチを押してしまったのである。

 

「話が逸れましたが、こういう古書は価値を知らずに売られている場合が多いんですよ。素人には内容の意味も真偽も分かりませんからね」

 

「だから馬鹿(カモ)を探してそうな露店ばっかり巡ってたんだ。わざわざ防音と認識阻害まで使うからどんな話をするかと思ったら」

 

「そういうことです。暇つぶしの面も大きいのは否定しませんけどね」

 

 ジーンズにセーターのカヤとワンピースにカーディガンのティアナは、いかにも休日の一時といった様子で食後のお茶を飲みながら、話を続ける。そこに周囲の喧騒はとどかず、通行人は見向きもしない。

 一応の納得を得たはずのティアナの顔にはまだ疑問の色が浮かんでいる。

 

「でも、そもそもその流派の考え方は意味あるの?この前は心源流(四大行六系統)が念の修行に最適だって言ってたでしょ」

 

 淘汰された思想を研究して意味があるのか。そう問いかける。

 

「全体の優劣と部分の価値を混同するのはいけません」

 

 心源流の念能力において、外部の力を使う考え方はない。自らの力を高め、バランス良く系統の修行をすることを勧めている。そこには相互協力(ジョイント)型もなく、武術としての考え方の延長にある思想と言える。

 

「心源流は言語化と育成ノウハウに優れています。基礎を覚えるにあたっては最高のものだと思いますよ。

 ですが、あなたなら他の考え方を取り入れたほうがより高みへ登れるでしょう」

 

「そっか。で、今日はいいもの見つかったの?」

 

「全く。そもそも数年に一度しか見つかりませんよ。特にこんなところでは」

 

「え!じゃあなんでわざわざ初日から?」

 

「だから言ったでしょう。付いてきてもつまらないと」

 

 たとえ公権力さえも味方につけていようと、裏のオークションは夜に行われる。

 すると当然、昼は暇になる。工房の設備がないので制作は行えず、修行するにも場所がない。特に動きの少ない初日はこうして露店を冷やかして過ごすことが多い。

 

「でも、明日からは大きく動きますよ。良くも悪くもね」

 

 

 

 ◆◇◆◇◆

 

 

 

 地下競売。

 社会の影に根を張り、暴力を資本とするマフィア達の親玉である、十老頭が主催するオークション。

 落札価格の5%が十老頭への上納金となる故に、マフィア達が自らの名を売る場でもある。

 

 非合法の品が集まり、組織の資金力をアピールするように値段が釣り上がる競売が、今年も始まろうとしていた。

 

「皆様ようこそお集まり頂きました」

 

 気だるげな司会が開始を告げる。

 後ろには面傷の目立つ巨漢が立ち、会場のざわめきが消えて注目が集まる。

 

「それでは、堅苦しい挨拶は抜きにして」

 

 司会のふりをしたフェイタンが耳を塞ぎ、その後ろに立つフランクリンの指が外れる。

 

「くたばりな」

 

 その瞬間、空気が変わった──血の匂いが、まだ満ちてもいないのに。

 惨劇が始まった。

 

 

 

「ちょっと逃しすぎでは?」

 

 掃除機のような念獣を手に、シズクが文句を言いながら現れる。

 会場の出口で待ち構えていた彼女が仕留めたのは8人。会場にいた人数から考えれば驚異的な少なさだが、フランクリンの実力を信頼しているが故の文句だった。

 

「これネ」

 

 死体を漁っていたフェイタンがアクセサリーを取り出す。

 

「カヤの礼装ヨ。妙な硬さはこれのせいネ」

 

 効力を発揮し尽くし、神秘を失ったペンダントはひび割れ、装身具としての価値さえも無くしている。

 

「確かに硬かったな。最近はそんな奴が多くて気にしてなかったがよ」

 

「ふーん。そうなんだ」

 

 文句を言いたかっただけなのだろう。シズクは既に興味を無くし、デメちゃんに証拠を全て吸い取らせている。

 

「問題はないネ。これを着けてる程度は誤差の範囲ヨ」

 

 しかし、彼らは幻影旅団。全員が1流の念能力者であり、素人が多少礼装を持ったところで問題にはならない。

 

 惨劇の痕跡は全て消え、もぬけの殻となった会場のみが残る。

 マフィアンコミュニティに1歩先を行かれて競売品を手に入れることは叶わなかったが、問題はない。

 

 全てを殺して奪い取ればいい。




感想をいただけるととても嬉しいです。

流派周りは作者の自己解釈。
思想と技量が見合っていればこういうこともできるだろうという感じ。アベンガネっていう自然のオーラを精霊と解釈して使う前例はあるので、それの類似。

基本原作と変わらない部分は描写しない予定。
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