美人女神に転生してしまった俺。いや・・・私は、今日も追放ショタを愛でまくる。 作:雨を呼ぶてるてる坊主
ギルド登録が完了した私達は、その足でとある店に行く。それは、魔族の皮や爪などを買い取ってくれる店だ。そこに行った私達は、店のオーナーに買い取って欲しい品を見せた。
「すまないが、鑑定してくれないか?」
「ふむ、新入りの冒険者さんかね?随分と麗しい女性と、可愛らしい少年だな。さて・・・。これは、ぺパットンの肉と皮か。まぁ、まずまずの品と言ったところだな。他には無いのかね?」
「そうだな、皇級魔族の生き血ならあるぞ。」
そう言うと、私はオークの生き血の瓶詰めを見せる。すると、店のオーナーは興味津々と言ったように瓶を見つめ始めた。
「ほう、この色合いからしてオークの生き血ではないか!!」
「生憎だが、生き血以外の部位は回収できなかった。水圧で、グチャグチャにしてしまったからね。」
「いや!生き血だけでも十分だ!!それは、言い値で買い取ろう!幾らで買い取って欲しい!?」
そう言ってきた彼に対して、私は目的金額を提示する。それは、金貨10枚に銀貨1枚だった。その値段に最初こそ店主は考え込んでいたが、私の交渉術によって快く買い取ってくれた。
「いやー、負けた負けた。冒険者さん、交渉術が上手いね。」
そう快活に笑う彼に対して、私は前世での会社の営業部で
「それはどうも。それにしても・・・持参した私が聞くのもなんだが、オークの生き血など何に使うのだ?」
「あー・・・。女冒険者様と、小さい子供の前で言うのもなんだが・・・。まぁ、男の・・・その・・・下半身を元気にする薬の調剤に使えるんだよ。ここまで言ったら、分かっちまうだろ?」
「・・・理解したよ。」
なるほど、要はバイアグラという事か・・・。確かに、女子供の前では説明がし難いだろうね。そして、私達は買取店を出ると宿に向かう事にする。
宿に到着した私達は受付で支払いを済ませる事にする。どうやら、前払い方式の様で手続きはサッと終わってしまった。そして、部屋に入った私はルルと共にベッドに倒れ込んでしまう。
「ルル。今日は大変だったけど、疲れてはいないかい?」
「ちょっと・・・。疲れちゃったかもしれないです。」
「そうだね・・・。風呂はどうしようか?私の魔法で、汚れを浄化する事もできるが・・・。温かい湯に入りたいかな?」
「はい・・・。ポカポカした御水に、入りたいです・・・。」
「よし、分かった。それじゃあ、一緒に入ろうか。」
私の言葉が終わると、ルルが呆けた顔をしてしまう。そしてしばらく沈黙が流れると、何故か彼は頬を染めてしまった。そんな彼の反応に、私は合点がいった。
「恥ずかしいかな?」
「はい・・・。お、女の人と入った事が無いので・・・。そ、それに・・・ヒサメさんは嫌じゃないんですか?僕は、男の子なんですよ・・・?」
その言葉に私は、少し考え込んでしまう。そもそも私は、心は男であるが故に羞恥心は全く無い。だからと言って、公衆の面前で裸体をひけらかす趣味もないがね。だが、ルルにとっては申し訳ない気持ちでいっぱいなのだろう。
とはいえ、幼い彼を一人で風呂に入れるのには不安感が襲い掛かってしまう。そう考えた私は、秘密を打ち明ける事にする。
「ルル・・・。今日から、私達は種族は違えど旅を共にする相棒だ。それは、理解しているね。」
「は、はい。」
「相棒というのは、御互いの信頼関係から成り立つものだ。だから、これからは御互いに秘密は極力無くしていきたい。・・・まぁ、サプライズなどの嘘は構わないがね。」
「そ、そうですね。・・・でも、それと御風呂にどういった関係が有るんですか・・・?」
そう首を傾げる彼を目の前にして、私は大きく深呼吸をする。もしかしたら、彼に隠し事をしていたことを責められるかもしれない。だとしても、これから信頼関係を築いていく以上は言っておかなくてはならない。
「ルル・・・。実は私にはね、前世の記憶というものがあるんだ。」
「・・・前世の記憶?って何ですか?」
「簡単に言うなら、今の人生・・・。いや、今の私なら神生だな。その神生が始まる以前の記憶の事だよ。」
そういった説明も分からなかったのか、ルルは首を傾げるばかりだ。そんな彼に、私は彼が理解するまで説明をし続ける。すると、数分後に彼はようやく理解してくれた。
「え、えっと・・・。つまり、今のヒサメさんとは違うヒサメさんの記憶って事ですか?」
「あぁ。そして、その前世では魔法や魔族なんてものは存在しなかった。そして、そんな世界に住む人達は電気というものを使って生活していたんだよ。」
そう言いながら私は前世の記憶を頼りに、水魔法でホログラムの様に車や立ち並ぶ高層ビルを作り出す。そんな景色に、ルルは感動したかのように驚きの声を上げる。
「ふわぁぁ・・・。御馬さんが引っ張ってないのに、馬車が走っています・・・!」
「これは、車というものだよ。動く原理としては・・・、エンジンという馬の役割を果たす部分が要になるんだ。私も詳しくは無いんだが、そうだな・・・魔法で例えるなら。空気と燃料を取り込んだ後に、それらを圧縮してから炎魔法で爆発させるんだ。その力が多くの部品を伝わって、この丸く地面と接している"タイヤ"を回して進むんだよ。」
「凄いです・・・!!」
そう言いながら純粋な目を輝かせる彼に、私は愛おしさを感じてしまう。
「さて・・・話がズレてしまったが、私の人生はね・・・君と似たようなものだったんだ。」
「え・・・?ぼ、僕とですか?」
その疑問に答えるかのように、私は苦い記憶を思い出しながら彼に前世の記憶を話し始めた。そんな私の人生に衝撃を受けたのか、ルルの目に涙が溜まっていく。
「これが、私の前世の記憶の全てだよ。笑えるだろう?魔法も使えず、借金苦に苦しんで誰からも看取られずに孤独死した男が、高貴な女神に転生したのだからね。」
そう自嘲気味に笑う私に、ルルはどの様な言葉を掛けるべきなのか迷っている様だ。そんな彼に、無理に言葉を掛けなくて良いと言おうとした瞬間に風呂が溜まった事を、宿のオーナーが知らせてくれた。
「話はこれで終わりだよ。まぁ・・・色々脱線してしまったが、私は心は男のままだから君と入る事に抵抗感は無いんだよ。さぁ、裸の付き合いといこうじゃないか。」
そうして、私は彼を抱き上げて風呂場に行く事になる。安場の宿である事から、少々不安感を抱いていたが清潔な浴室ではあった。まぁ、浴槽が狭いのが難点ではあるのだが・・・。
そう思いながら私は神衣を脱ぎ始めると、私のメリハリの付いた体が露わになる。自分で言うのもなんだが、恐らくは神衣を着たままコミケ会場などに行けばナンパの嵐に合うんだろうな・・・。
そして、恥ずかしげに体を手で隠そうとするルルの身体も見事なものだった。陶器の様に白く滑らかな肌に、肩から流れ落ちる絹糸のような髪・・・。やはり、ルルは可愛らしいな・・・。そう思いながら、私は内心で舌なめずりを・・・ん?・・・舌なめずり?
(いや、待て・・・。まさか、私はこの少年の裸体に欲情しているというのか!?いや・・・っ、そんなはずは無い!)
そう思いながら、私は頭を振ると先程までの邪な気持ちは霧散してしまう。その事を確認した私は、ホッと溜息を吐きつつ彼を抱きながら浴槽に入る。すると、私達の体中の血管が拡張し熱が全身に広まる感覚に陥る。
「心地が良いな・・・。」
「は、はい・・・。ポカポカします・・・。」
「もっと、もたれ掛かってくれてもいいんだよ。」
「で、でも・・・。これ以上もたれ掛かってしまったら・・・、その・・・。」
そう言いながら彼は、頬を上気させながら潤んだ瞳を向けてくる。そんな彼は、まるで媚薬でも盛られたかのような顔をしている。
「私の胸に、埋もれてしまうと?」
そうルルに質問をすると、彼は顔をリンゴの様に赤くしながら私の胸の中で頷いた。そんな彼が愛おしく、ついつい頭を撫でてしまう。
「構わないよ。さっきも言ったように、私の心は男なんだ。別に羞恥心を感じたりはしないから、安心してもたれ掛かると良いよ。」
私がそう言うと、彼は観念したのか私の胸元にもたれ掛かって来る。すると、私の鎖骨付近をルルの髪が漂い始める。そんな彼の髪の毛の感触を楽しみながら、私は浴槽を出て風呂椅子に彼を座らせる。
「さぁ。十二分に温まった事だし、洗髪の時間としようじゃないか。目をしっかり瞑っているんだよ。」
「は、はい・・・。」
そのルルの言葉を聞いた私は、彼の髪を梳かすように指を動かして洗い始める。しかし、初めて出会った頃はボサボサだった髪も、随分と綺麗になったものだな・・・。
「綺麗な髪の毛だね。これは、父君と母君のどちらの色を受け継いだのかな?」
「お、御父さんの色です・・・。でも、御目の色は御母さん譲りだって小さい頃に言われたかもしれません・・・。」
「そうか・・・。もの凄く優しく、美しい父君と母君だったのだろうね。」
「はい・・・。ヒサメさんの、前世・・・?の御父さんは初めから酷い人だったのですか?」
そのルルの言葉に、私は遠い昔の記憶を手繰り寄せながら話し始める。そんな私の記憶に思い浮かぶのは、母が生きている頃の風景だった。そんな記憶の内容は、ピクニックに行った際に私とキャッチボールをしてくれたころの父だ。そんな父は、優しい人だった・・・。仕事を無くしてしまうまでは。
私が居た前世の日本は様々な世界情勢が絡んで、経済が傾いた事により円安が進みリーマンショックともいえる程のリストラの嵐が巻き起こっていた。そして、リストラの該当者には当然父も含まれていた。
初めは再就職先を探そうと駆け回っていた父だったが、そんなときに母が病に伏してしまった。ステージⅣの、大腸癌だった。そんな不景気の中で母の治療費を稼ごうと、父は懸命に働いたが健闘虚しく母は冥界へと旅立ってしまった。
思えば、あの瞬間から歯車が狂ってしまったのだろう。父は酒に溺れ、働かなくなってしまった。そんな父を放ってはおけず、私は学校を中退して働き始めた。生活保護を申請しようとしたが、私がまだ働ける体という事も有って生活保護を受給する事もできなかった。
そして父は、酒を浴びるだけでは飽き足らず賭博にも手を出し始めた。だが、酒に浸った頭では正常な判断は下せずに負け続けるのは自明の理だ。そんなようにも言ったが、父は私が稼いだ金を奪って賭博に明け暮れた。そして、いつの間にか夜の店で出会った女性と共に消息不明となってしまったのだ。
そんな父の行動に、私は怒りも呆れもしなかった。ようやく、一人で暮らす事が出来る・・・。そう思った矢先に、私の玄関から大声が聞こえてきた。
嫌な予感を覚えつつも、私がそのドアを開けるとそこに居たのは借金取りの男達だった。そんな彼等は、私に信じられない言葉を投げかけてきた。
『御前さんの父親が残した借金、元金が7000万円で今じゃあ2億に膨れ上がっている。だが、そんな奴は何処かにトンズラこいちまった。つー訳で、連帯保証人となった息子君に返して欲しいわけよ。』
『借金・・・!?・・・そんな物、聞いた事も有りません!!それに、この様なものは暴利です!!』
『おいおい、知らねぇじゃ済まされねぇんだよ!!それに、暴利だとか言ってるが逆らえる立場だと思ってんのか?ヤクザは、執念深い生き物だ。詐欺罪でパクられたとしても、その罪を清算してから御前さんを闇討ちする事だって出来るんだぜ?』
その脅しに、人生経験の浅かった私は屈する他は道は無かった。毎日借金を返す為に、働き続ける日々・・・。当然、彼女なんてものは出来ずに誰も居ない冷たい家に帰るだけの生活・・・。
会社の人達に相談しようかと思ったが、彼等に危険が及ぶ事を危惧した私は相談する事もできなかった。そして、心身共に限界を迎えた私は・・・。自宅で孤独死していたらしい・・・。父は親戚達からも絶縁されていたらしく、私の遺体は、無縁仏として埋葬されたようだった・・・。
そして、その人生に同情された私は水の女神・・・ヒサメ・アリステラとして転生したというだけの話だ・・・。
「これが、私の前世の全てだ。何とも無価値で、無意味な人生だとは思わないか?」
そう私が自嘲気味に話を終えようとすると、私の身体は温もりに包まれた。ルルが、小さな体で私を抱きしめようとしてくれたのだ。そんな彼は、泣きながら私の方を見て話し始める。
「ヒ・・・、ヒサメさんの人生は無価値なんかじゃないです・・・!!ヒ、ヒサメさんは、僕なんかよりもずっと凄い人です!!」
「ルル・・・。確かに私は、今では高貴な女神へと転生した。だが・・・その心根は、悠久の時を経た今でも臆病なままなんだよ。」
「そ、それでも!ヒサメさんは、生きてるだけで偉いんです!!・・・だから、そんな事言わないでください・・・。」
その言葉に私はドキリとしてしまう。何故なら、ルルが私に掛けてくれた言葉は私がルルに対して掛けた言葉と同じものだったからだ。そして、私に失望をせずに慰めの言葉を掛けてくれた彼に、私は涙腺が緩みそうになってしまう。そんな表情を隠す為にも、私はルルを抱きしめてしまう。
「すまない・・・。ルル、もう少しだけこのままで・・・。」
そして遂に、私の頬を一滴の涙が伝ってしまう。けれども、そんな情けない私に対して失望する事無くルルは私を抱きしめ続けてくれたのだった・・・。
そして、落ち着いた私達は風呂から出て寝室へ入る事になる。夜は冷えてしまうから、神衣を柔らかく温かな素材の服に変えてからベッドに入る。もちろん、二人揃っての添い寝だ。
そんな中、ルルは私に対して恥ずかしそうに話し掛けてくる。
「ヒサメさん・・・。これからも、助け合っていきたいです・・・。」
「そうだね。私達は、パートナーだからね。悩みも苦しみも、共に乗り越えていこう。」
「明日は・・・。ダンジョンに行くんです・・・よね。」
「あぁ、ルルのレベル上げに最適かもしれないね。ただし、本当に危ない所では補助してあげるからね。」
「はい・・・。おやすみなさい、ヒサメ・・・しゃん。」
「あぁ、お休み・・・。」
そう言い合うと、私達は互いの温もりを求めるかのように抱き合って眠る事になる。そんな私達を見守るかのように、窓に映る夜空には満月が浮かび上がっていたのだった。