美人女神に転生してしまった俺。いや・・・私は、今日も追放ショタを愛でまくる。   作:雨を呼ぶてるてる坊主

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早朝の受難

暗闇に包まれた視界が、段々晴れてくる。あぁ、そうだ・・・。私は昨日、ルルに前世の秘密を明かして就寝したんだった・・・。そんな私が隣を見ると、あどけない表情をしたルルが眠っていた。

 

 

「ヒシャメ・・・しゃ。僕達・・・、独りぼっちじゃないれす・・・よ。」

 

 

「寝言か・・・。・・・だが、ありがとう。」

 

 

そうして、私はベッドから起き上がると窓を開ける。そんな私の目の前に飛び込んで来たのは、温かな日差しと爽やかに吹く柔らかな風だ。そんな風と太陽を浴びながら、私は大きく息を吸う。

 

 

(前世では借金漬けだったから、唯一の楽しみは朝の安酒や安煙草を嗜む事だったが・・・。寝起きの澄んだ空気が、此処まで美味しいとはな。それに・・・、ルルという存在が居るのも大きいだろうな。)

 

 

そう思いながら、私はルルの方へと向かい彼の髪を優しく掬ってやる。すると、彼は目を覚ますと気の抜けたような笑顔で私に挨拶をしてくれた。

 

 

「ヒシャメしゃ、おはようございます・・・。」

 

 

「おはよう。今日は、絶好の冒険日和のようだね。顔を洗って、朝食に舌鼓を打ちに行こうか。」

 

 

「はい・・・。美味しい御飯、食べたいです・・・。」

 

 

そう言いながら目を擦る彼に、私は思わず微笑んでしまう。そんな彼を抱きかかえると、私は宿の食堂らしき場所に向かう。すると、そこでは私達以外の冒険者達が卓を囲んでいた・・・。ガラが悪そうな奴等も居るのが気には成るが・・・。

 

 

すると、厨房に居る獣人の女性が話し掛けてくる。そんな彼女は犬の獣人らしく、垂れ耳もあいまって愛くるしい笑顔が特徴的な女性だった。

 

 

「おはよう御座います!よく眠られましたか!?」

 

 

「あぁ。私は心地よい目覚めなんだが・・・、彼が少しね。」

 

 

「あらら・・・。まだ眠気が残ってるみたいですね・・・。では、オーク肉のフライサンドでも作りましょうか。精の付く食べ物ですからね。」

 

 

「お、オーク肉だと・・・!?」

 

 

折角の料理人の彼女からの提案だが、私は少しだけ躊躇してしまう。昨日私が討伐したオークとは、別個体の肉を使っているのか?

 

 

(しかし、オークというのは・・・。忌避感を抱いてしまうな。やはり、日本に居た頃に読んだ創作漫画の影響か?)

 

 

そう。私が前世で読んでいた漫画では、オークは醜く描かれており女エルフを手篭めにする存在だったからだ。

 

 

そう悶々としている私とは対照的に、オークの事を知らないであろうルルは目を輝かせている。

 

 

「ヒサメさん・・・。オーク肉って・・・美味しいですか?」

 

 

「い、いや・・・。私は食べた事は無いよ、ハハハ・・・。」

 

 

そう乾いた笑い声を上げながら、私はルルを連れて二人掛けの宅に座って待つ事にする。そして暫くすると、ウェイトレスがサンドイッチを運んできてくれる。そんな品を見た私は、つい驚きの声を上げてしまう。

 

 

「これが・・・。オーク肉のサンドなのか。」

 

 

「ふわぁぁ・・・良い匂いがします。」

 

 

そう感嘆の声を上げる私達に、料理人の獣人の子は笑顔で説明をしてくれた。

 

 

「お気に召された様で、何よりです!オーク肉と聞かれると、大体の冒険者様は似たような反応を致しますが、実はオーク肉はとても美味しいんですよ。」

 

 

彼女の説明に私は何故か納得してしまう。そういえば・・・前世でもユムシやナマコなど、見た目のインパクトが強い生き物も大概旨いものばかりだったな・・・。

 

 

それに、料理として出された以上は残す訳にもいかん・・・。そう判断した私は、手を合わせて『いただきます』と唱えるとオークの肉にかぶり付く。次の瞬間!私の口内を、肉汁が侵し始めた!!

 

 

「こ、この肉の柔さと旨味は・・・!!」

 

 

そう驚愕する私の横では、ルルが美味しそうにサンドイッチを食べていた。しかし、頬いっぱいに頬張る姿はリスの様で可愛らしいな。

 

 

「ヒサメさん・・・!美味しいです!!飲み込んじゃうのが、勿体無いです!!」

 

 

「あぁ・・・!オーク肉が、此処まで旨いものだったとは・・・!!」

 

 

そう感想を述べあいながら、私達は手を止める事無くサンドイッチを食べ終えてしまう。そして、そんな私達を料理人の獣人の子が嬉しそうに見てくれていた。

 

 

「そこまで美味しそうに食べられるなど、料理人冥利に尽きるというものです。」

 

 

「あぁ。まさに、精の付く食事だったよ。ごちそうさまでした。」

 

 

「ご、ごちそうさまでした・・・!」

 

 

私達がそう言うと料理人の子は食器を下げながら世間話の様に、私達の今後について聞いてくる。

 

 

「御粗末様でした。それで本日は、このままギルド集会場に向かって依頼をこなすのですか?」

 

 

「いや・・・、ダンジョンに挑戦してみる事にするよ。」

 

 

そのとき、獣人の子達は心配そうな顔に成ってしまう。グレイブルの居る、極東のダンジョンとは言って無いんだがな・・・。まぁ、それを抜きにしても当然か・・・。パーティ登録をして一日も経っていない新人達が、挑戦しに行くのだから。

 

 

「き、気は御確かですか?失礼ですが、貴女方のギルドランクは、現時点では最低ランクなのですよ?」

 

 

「問題無いよ。私達は強いからね。」

 

 

「い、いけません!もしも、貴女様とその子に何かあれば・・・!!」

 

 

そう獣人の子が言おうとしたとき、私達が座っていた別のテーブルからガラの悪そうな男達が声を掛けてくる。

 

 

「あーあー。居るんだよなぁ、姉ちゃん等みたいな新人が。」

 

 

「昨日登録したばかりって事は、Eランクなんだろ?その程度のランクじゃ、魔族共の餌にされるのがオチだってぇの。」

 

 

「性欲旺盛な魔族の、苗床にされちまうかもなぁ!ギャハハ!!」

 

 

そう好き勝手言ってくる彼等を無視しようと、私はルルを抱きながら食堂を出てダンジョンへと向かおうとする。しかし、奴の内の一人が私の傍まで来ていた。

 

 

(このスピード・・・。反応できない訳ではないが、並の速さでは無いな。恐らく属性は、雷か風か炎のいずれかだな・・・。)

 

 

私がそう考えていると、男は酒臭い息を吐きながら私に話し掛けてくる。そんな彼の息に、私は眉を顰めていた。酒浸りになった、父を思い出してしまったからだ。

 

 

そんな私の顔を、ルルは怯えた表情で見上げてきた。

 

 

「ヒ、ヒサメさん・・・。」

 

 

「すまないが、通してくれるかい?・・・私のパートナーが、怯えてしまっているんだ。」

 

 

早朝から面倒事を起こしたくなかった私は、極力落ち着いて対応しようとしたが、そうは問屋が卸してくれなかった

 

 

「おいおい、連れねぇこと言うなよ。俺達が、新入りの姉ちゃんを守ってやるからよ。」

 

 

「そうだぜ~。ダンジョン以外の事も、色々教えてやるからよ。」

 

 

そう言ってくる彼等の視線は、私の豊満な胸や(くび)れた腰部。果ては、形の良い臀部へと向けられているのは明らかだった。そんな中、一人の男がルルの方を見遣ってきた。

 

 

「つーか、こんなガキが何でこんな綺麗な姉ちゃんと一緒に居るんだよ。」

 

 

「どう考えても、釣り合わねぇよな。」

 

 

その瞬間、私の体温が数度下がった気がした。・・・このゴミ共は、何を言っているんだ?ルルが・・・、私と釣り合っていないだって・・・?そう考えている私を他所に、男は乱暴そうな手つきでルルを私から引き剥がそうと手を伸ばしてきた。

 

 

「おいコラ、糞餓鬼。テメェが居たら、俺達の冒険の邪魔なんだよ。さっさと、その姉ちゃんから離れな。」

 

 

「力ずくで引き剥がしちまうか!!」

 

 

しかし、そんな汚らわしい手がルルの肌に触れる事は無かった。私が暴漢共の腕を、掴み上げたからだ。しかし、そんな私の態度に暴漢達は嘲笑うばかりだ。

 

 

「おいおい姉ちゃんよ~。こいつは、如何いった腹づもりだぁ?」

 

 

「もしかして、Eランク如きがCランク様に勝てると思ってんのかよ。」

 

 

「まぁ良いじゃねぇか。気が強い女を、屈服させんのも乙だろ?」

 

 

その様子に料理人の獣人の子が、助けを呼ぼうとしたのか厨房からギルド会場に向かおうとするが、私は目線でそれを拒否する。ギルドマスターが場を治めても、こういった輩はまた同じ真似をするのは目に見えている。

 

 

どうやら、身も心もへし折らなければならないようだな・・・。

 

 

「気が強い女を屈服させるのが好みか?出来るものならばやってみろ。それが出来たら、喜んで君達に隷属してやろう。性奴隷にするも良し、好きに扱うと良い。勝負は、この瞬間から始まっているぞ。」

 

 

「良いじゃねぇか。そこの役立たずなガキに変わって、俺達が組んでやろうかぁ?」

 

 

「ギヒヒ・・・!!まさに、俺好みの・・・。」

 

 

しかし、その男から『俺好みの・・・。』以降の言葉が続く事は無かった。私は既に、レベル3魔法である水蛇絡を使用しているからだ。そして、私は奴に氷剣を突きつける。もちろん、他の男達には氷槍を突きつけて威嚇済みだ。

 

 

「な、なんだこれは!・・・ヒッ!!」

 

 

「おい・・・!貴様・・・今、俺のルルを"役立たず"と侮辱したのか・・・!?それに、許可なくルルに触れようともしたな・・・!!ルルの肌は、この世の如何なる物よりも美しい絹のような肌だ・・・!それを汚そうなどとは、まさに鬼畜の所業に他ならない!!俺のルルを侮辱して汚そうとした罰を、この場で受けてみるか!?」

 

 

気付けば、俺は一人称を前世の物に変えてしまう程に殺気立ってしまっていた。そして、食堂内の温度は一気に極低温まで下がってしまう。無意識の内に、無関係の者達には冷気無効の結界を張っていたのが救いか・・・。

 

 

「ひっ!な、なんだ!?く、空気が冷える!!」

 

 

「は、吐き出した息が凍り・・・ムグググ!!」

 

 

「め、目が開かねぇよ!!」

 

 

そんな状況に、冷気無効の結界に護られていた料理人達はこれ以上は駄目だと感じたのか、ギルドマスターの元へ向かってしまっていたようだ。しかし、今の俺にはそんな事はどうでも良い・・・。

 

 

「貴様等・・・!!(なぶ)り殺しにしてやろう・・・!!」

 

 

そう言いながら、涙や唾液が凍った所為で口や(まぶた)を開ける事が出来ない奴等に近づいていく・・・。そもそも前提として神は善人には加護を与えるが、悪人に対しては死のうが苦しもうが如何でも良いと言ったスタンスの種族だ。

 

 

故に、ルルに手を出した男共が死のうがどうでも良い・・・。昨日の件から、俺にとってルルはかけがいの無い者になってしまった。女神になったにもかかわらず、前世の悲しみを抱える俺に寄り添ってくれた存在・・・。

 

 

そんな彼を護る為なら、俺は神の地位も捨ててやろう。彼と一緒なら、俺は何処までも堕ちて行ける・・・。

 

 

「遺言すらも聞きはしない。・・・そもそも、口すらも開けないのだから、遺言を言うことすらもできないか・・・。まぁいい、八寒地獄で泣き叫べ。」

 

 

そう言いながら、俺は奴等に向かって氷剣を振り上げる・・・!だが、そんな俺の剣は振り下ろされる事は無かった。俺の胸の中で、怯えた気配を感じられたからだ。その正体は、もちろんルルだった。

 

 

「ひ、ヒサメさん・・・。もう止めてください・・・。」

 

 

「ルル・・・。・・・すまない、君の事が心配になってしまったんだ。」

 

 

「ぼ、僕は大丈夫ですから・・・。でも・・・、僕の為に怒ってくれて・・・ありがとうございました。」

 

 

そのルルの笑顔に、俺・・・。・・・いや、私は胸の奥に温かみが広がるのを感じる。そして、その温かい気持ちはドロドロと私の心を溶かしてしまいそうだ。

 

 

そう考えていると、ギルドマスターがやって来て事情聴取が行われた。そんな事情聴取は、私が嘘を吐けない神という事もあって、とんとん拍子に進んでいった。

 

 

なにより、先程の男達はギルドの問題児として有名だったとの事だ。話によると奴等は、右も左も分からんような、初心者の女冒険者をターゲットに下劣な事を続けてきていたらしい。

 

 

今まで処分をされなかったのは、決定的な証拠が無かったからだ。まぁ・・・今回でようやく、水神からの証言という信憑性(しんぴょうせい)の高すぎる証言を手に入れた訳だが・・・。

 

 

そんな奴等はギルド追放は兎も角、ランクの降級処分。そして、無期限の昇給不可処分を受ける事になるらしい。

 

 

「つまり、奴らはどれだけ依頼を(こな)そうと万年Eランクのまま固定されると。」

 

 

「その通りにございます。・・・大変、申し訳ございませんでした。ウチのギルドのパーティーが、御迷惑を御掛けしたようで・・・。ましてや、女神様と五大属性の全てを操る奇跡の子に不敬を働くなど・・・。」

 

 

「いや・・・。私も、少しやり過ぎたよ。氷魔法は解除しておこう。」

 

 

「有り難う御座います・・・。では、本日は御約束通りに・・・。」

 

 

「あぁ、ダンジョンの調査だね。要はグレイブルを無力化させればいいのだろう?」

 

 

「はい。・・・どうか、宜しくお願い致します。」

 

 

その言葉に私達は頷くと、宿を出てからダンジョンへと向かって行ったのだった。

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